INTENSIVIST 14巻3号 (2022年7月発行)

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特集　臨床研究

はじめに—質の高い臨床研究実施のために必要な要素とは川口　敦 14巻3号 , 2022年7月 , pp.461-466

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昨今，書店の医学書コーナーにも臨床統計学や論文の書き方などの手ごろな指南書を数多く見かけるようになった。これは欧米ではあまりみない現象だと思う（実際のエビデンスに基づいた話ではない）。それだけ日本の臨床家あるいは医療者は，研究に携わっている，研究に飢えている，あるいは困っているのだろうと思う。筆者の若手時分には，このような研究指南書は今ほど多くは出版されておらず，また周囲に指導を仰げる人もほとんどいなかった。当時はまだインターネットを介して得られる教育コンテンツは多くなく，英語の専門書などで研究デザイン等を独学するしかなかった。結局，海外の専門大学院へ進学し，疫学，生物統計学を中心に学びを続け，医学研究というものがどのような骨格をなし，また医療でどのように機能しているのかの片鱗を知ることになった。

　本特集では「研究」とくに「臨床研究」を，解剖学，病態生理学の両方の視点から解きほぐしていく。つまり，単に研究を進めるための知識（＝解剖），例えば研究デザインや統計学を提供するだけではなく，それぞれの要素がどのように有機的にかかわりあい，またそれをより効果的に機能させるためにはどのようにすればよいか（＝病態生理）のヒントを得ていただきたい。第一線で活躍する方々の論稿を読み進め，研究のダイナミズムを一緒に体感していただきたいと思う。

Part 1　臨床研究のアドバンスな基礎知識

1．臨床疫学とは—EBMを実践するための土台笹渕　裕介 14巻3号 , 2022年7月 , pp.467-475

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臨床疫学は臨床医学と疫学の融合した，目の前の患者の問題を解決するための学問であり，EBMの根幹をなす。臨床疫学の知識を身につけるには臨床疫学研究の実践が必須であり，真のEBMの実践を目指す臨床家こそ行うべきである。優れた臨床疫学研究には優れた設計図が必須である。本稿では臨床疫学研究の実践にあたり，臨床で生じた疑問から論文執筆までの道のりを解説する。

2．生物統計学とは—臨床試験を特徴づける要素とセンスのある試験デザイン飛田　英祐 14巻3号 , 2022年7月 , pp.477-482

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昨今のビッグデータブーム以前から，医学と統計学には深い関係がある。ヒトを対象とした研究をいかに倫理的かつ科学的に実施するか，いかに個体内/個体間差などの不確実性の存在を前提として科学的に推論するか，という問題への対処として，統計学/生物統計学はevidence based medicine（EBM）を実践するうえでの重要な一部である。本稿では，医学研究者が臨床試験を実施するうえで統計家と十分なコミュニケーションをとるために知っておくべきこととして，臨床試験を特徴づける要素，2つの誤差，仮説検定におけるp値および臨床試験におけるestimandを解説する。

3．knowledge translationとは—知識を臨床の場に活かす一二三　亨 14巻3号 , 2022年7月 , pp.483-488

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knowledge translationとは，利害関係者stakeholderが健康や医療に関する意思決定のためにリサーチ・エビデンスを認識し，社会で利用できるようにすることである。translational research（橋渡し研究）とまったく違うものではなく，異なる文脈に適用されていると考えたほうがよい。knowledge translationを現場に当てはめるknowledge to action frameworkによると，translational researchはknowledge creation（知識創造）のなかのknowledge inquiryに位置するとも考えられ，図4全体の流れがknowledge translationのイメージとなる。knowledge translationの概念を理解することが，集中治療領域におけるさまざまな臨床疑問に対する答えを自ら導き出す助けとなる。

4．clinical trial group（CTG）とは—学術的な生産性や仲間意識だけでなく，守秘義務もCTGの維持と成長に必要である西崎　彰 14巻3号 , 2022年7月 , pp.489-494

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重症症例，外傷症例の予後を改善するためには，臨床試験と観察研究は不可欠である。clinical trial group（CTG）（多施設共同臨床研究グループ）は共同研究を促進し，最新の知見を共有し，将来の研究アイデアについて議論を重ねる目的で，それぞれの国または地域（北米，ヨーロッパ，オセアニアなど）で結成されてきた。

　基本的にCTGはボランティア活動で支えられているが，個々のCTGの構造，ミーティングスケジュール，そしてアウトカムはさまざまである。しかし，学術的な生産性（論文発表など），メンバー同士の仲間感と友好関係，そして議論した内容の守秘義務と盗用の禁止はCTGが維持，成長していくうえで，不可欠な要素である。

　CTGの将来的な方向性としては，platform trialのような新しい臨床試験のデザインの導入，メンバーの所属するICUで共同参加，共同運用するデータベースの構築，そして複数のCTGが協力する共同研究が考えられる。

5．研究計画書・研究費申請書の書き方—研究を適正かつ円滑に推進するために福田　龍将 14巻3号 , 2022年7月 , pp.495-502

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研究の実施に先立って，研究責任者は研究計画書を作成する必要がある。研究計画書は研究の「倫理的妥当性」や「科学的合理性」が確保され，再現性を担保しつつ適正かつ円滑に推進されるように作成しなければならないが，そのために記載すべき項目や内容はあらかじめ定められている。本稿では，研究計画書について概説するとともに，具体的な記載方法について注意点を交えて解説する。さらに，研究費申請書の書き方についても実例を交えて紹介する。

6．scientific writingとは—新しい知見を広め，知ってもらうために三浦　慎也 , 川口　敦 14巻3号 , 2022年7月 , pp.503-513

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scientific writingは，科学における知見を広め，伝える手段の1つである。科学は他者に（読者に）理解されることで意味が生じる。優れたscientific writingとは，明確，簡潔，シンプル，かつ読みやすい文章を，手順にのっとって作成することである。本稿ではscientific writingの手順を述べるとともに，英語でscientific writingを行う際の秘訣やヒント，またknowledge translationにおいても非常に重要な構成要素となるレイサマリーの作成方法について説明する。

7．研究指導とメンターシップとは—導く者と導かれる者，それぞれのコツとポイント若林　健二 14巻3号 , 2022年7月 , pp.515-520

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医学をはじめとする科学の発展は，研究指導者が次世代の研究者を育てることで達成されてきた。天賦の才能だけで研究者が育つことはまれであり，一流の研究者が育つ背景には，多くの場合，その才能を伸ばしてくれた良き指導者の存在がある。指導者に求められることは，研究技術の伝達だけではなく，研究に対する動機づけ，実際に研究を進めるにあたっての実務的な援助，そして最終的には独立した研究者として巣立っていくための考え方を培う手助けが求められる。近年では，さまざまな角度からの助言を生かすため，メンターシップを活用することも増えている。本稿ではメンターシップ制度も含めて，いくつかの事例や個人的な経験を紹介する。

8．academic intensivistとは—科学的な思考過程が実践でき，診療に加えて研究と教育を担う人材土井　研人 14巻3号 , 2022年7月 , pp.521-524

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academic intensivistとは，いわゆるアカデミアと呼ばれる大学や公的機関に所属する集中治療医を指すものと考えられる。しかし，単に「臨床研究を行う集中治療医」を指すものではなく，真のacademic intensivistとは，科学的な思考過程を十分に理解できるトレーニングを積んで，集中治療医療領域における研究と教育活動を行うことができる人間である，と定義したい。すなわち，基礎研究あるいは臨床研究を問わず，アカデミアにおける真に科学的な研究活動を実際に体験し，その手法を理解することがacademic intensivistには必要不可欠である。

9．査読の裏側—最速でアクセプトされるための「コツ」大下　慎一郎 14巻3号 , 2022年7月 , pp.525-534

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学術論文の発表，研究費の取得，臨床研究の遂行は，アカデミックな視点をもった集中治療医academic intensivistを目指すうえで重要な要素である。しかしそこには，第三者が中立な立場で行う「査読」が加わる。査読者は研究者の申請内容を批判的観点で評価するため，そこで指摘される事項は，研究者が必ずしも容易に解決できる内容ではないことも多い。査読でこのような重大な指摘を受けないようにするためには，科学的新規性・社会的重要性・実施可能性・倫理的正当性などに注意して記述する必要がある。さらに，論文や研究費申請書には，受け入れられやすい書き方のルールがある。このルールを熟知したうえで書類を丁寧に作成することが，申請採択までの近道であろう。

10．研究倫理とは—救急医療の現場で用いられてきたコンセントモデル砂山　勉 , 末永　祐哉 , 堂垂　大志 14巻3号 , 2022年7月 , pp.535-542

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臨床研究は自発的な意思をもった被験者が対象となり，そのなかでインフォームド・コンセントは重要な役割を占める。そのため，原則的には研究開始前に文書による同意を取得することが求められ，これは救急，集中治療領域における臨床研究においても同様である。しかし，救急，集中治療のような一刻一秒を争う状況下ではしばしばそれが困難か，あるいは不可能な場合もあり，そのことが救急，集中治療における臨床研究実施の困難さにつながっている。そこで，歴史的にもさまざまなalternative consentが考案され用いられてきた。具体的には，deferred consentやwaiver of consentと呼ばれるような手法である。本稿ではそれらを含めた，救急医療の現場で用いられてきたコンセントモデルを解説する。

Part 2　臨床研究の種類

11．創薬研究—まずは治験について学んでみる徳増　裕宣 14巻3号 , 2022年7月 , pp.543-549

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「治験」とは，医薬品・医療機器としての承認を得るために実施される臨床試験である。治験は，基本的に無作為化比較試験（RCT）で実施されるため，希少疾患や複数の疾患を抱える患者などRCTの対象となりにくい患者群に，どのように対処するかといった課題がある。また治験の実施にかかる期間が長いという問題や実施に伴う費用が高いという問題など，企業側の課題もある。これらへの対応として，リアルワールドデータを用いて生成されたエビデンスを，規制当局の承認申請に使用することが期待されている。このリアルワールドエビデンスを生かして，創薬のフローが効率よく展開される時代は，もうすぐそこまでやってきている。

12．国際共同研究—その実務と醍醐味藤井　智子 , 千田　実 , 一原　直昭 14巻3号 , 2022年7月 , pp.551-559

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国際共同研究は，法規の異なる国・地域に所属する研究者たちが研究課題の解決に向けて協力して研究を遂行するものである。国内の共同研究と異なる点は，研究者の分担・協働の内容によっては関連法規が変わったり，英語でコミュニケーションをとらなければならなかったりすることである。国際共同研究を行う際には，日本の研究者は該当する日本の法令・指針を遵守するとともに，共同研究先の国で該当する法令も遵守しなければならない。日本で観察研究や一部の介入研究に適用される倫理指針は，改正個人情報保護法の学術例外規定に合わせて，2022年3月に改定された。これにより，学術研究目的の個人データ利用も個人情報保護法の適用範囲内に統一され，EU一般データ保護規則（GDPR）のもとでもEUおよび英国と日本でデータの授受ができるようになった。遵守すべき法令やデータの授受にかかる臨床研究契約等の合意形成は重要であり，研究者は学術研究機関の担当部門へ相談しながら手続きを進めていくことが望まれる。

13．薬剤師研究—新たな医療資源として薬剤師と地域薬局を活用するために岡田　浩 14巻3号 , 2022年7月 , pp.561-569

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近年，国内外の地域薬局の役割が，従来の医薬品供給にとどまらない国民の健康を支えるための幅広い分野に拡大している。具体的には，疾病予防におけるワクチン接種や検査，生活習慣の改善を支援する禁煙・節酒プログラム，糖尿病や高血圧などの慢性疾病マネジメントなどさまざまなケアを提供するようになっている。本稿では，主に慢性疾患管理を薬局で実施した場合の研究成果を紹介する。特にカナダで実施されている薬剤師による薬剤処方が，患者アウトカムに与えた効果について紹介する。また国内については，薬剤師による短時間の情報提供が患者アウトカムに与える効果について，COMPASS研究（糖尿病）とCOMPASS-BP研究（高血圧）の結果を紹介する。

14．看護師主導研究—教育機関・研究・臨床の一体化を目指す卯野木　健 14巻3号 , 2022年7月 , pp.571-574

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集中治療領域において看護師主導で行う研究には，さまざまな問題が含まれている。特に研究手法に関しては，医学的手法ではあまり用いられない質的研究が比較的多いことが特徴である。ただし，これは日本だけの特徴であるかもしれず，看護学に一般化できないかもしれない。また，質的研究が多いことから，初学者は質的研究を習得することが多い。しかし，臨床での研究は量的研究が多く見受けられ，それを指導できる看護師の指導者は少ない。これは看護研究における誤った手法や解析が行われる原因の1つであると考えられる。近年は看護師主導の多施設共同研究が少しずつ行われるようになった。今後，ノウハウを蓄積し，さらに広がることが期待される。

15．基礎研究—基礎研究をもう一度とらえ直す松石　雄二朗 14巻3号 , 2022年7月 , pp.575-583

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日本経済団体連合会が定義する未来社会としてのSociety 5.0は「デジタル革新と多様な人々の想像・創造力の融合によって，社会の課題を解決し，価値を創造する社会」であり，これによって学問領域の既存の常識に囚われない研究が加速していくと考える。しかし，どのような学問領域の融合があったとしても，「基本原理の解明」を目指す基礎研究がなされているゆえに「新たな知や技術の発見」があることを忘れてはならない。本稿ではSociety 5.0における集中治療領域とかかわるであろう多分野の基礎研究を概説していく。

16．産学連携研究—企業の選択から研究費出願まで園生　智弘 14巻3号 , 2022年7月 , pp.585-590

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企業を立ち上げて産学連携を実践する医師としての立場から，5つの話題に触れる。

①産学連携研究前に特許申請は検討すべき。

②いわゆる100万円規定にかかわらないCOIの開示は研究の公正性を担保するうえで重要。

③医学研究の倫理指針は個人情報保護法の例外規定の枠内で運用されている。

④企業との協働時には当該企業の強みと一致した提案を持ち込むとよい。

⑤企業のかかわる大型研究費の獲得には要項の読み込みと採択事例の調査が重要。

Part 3　研究の実際あれこれ

【コラム】大学院体験談：国内編—データサイエンスから臨床研究へのアプローチ吉田　拓生 14巻3号 , 2022年7月 , pp.592-595

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筆者は，横浜市立大学データサイエンス研究科ヘルスデータサイエンス専攻の学生である。現在，2年課程のうち1年を終えた。臨床研究，データサイエンスに関する授業を受けながら，各学生は研究テーマをもち，専属の指導教員からの指導を受けつつ研究を進めていく。卒業が認定されれば，ヘルスデータサイエンス修士Master of Health Data Scienceが授与される。働きながら通学するのであれば常に時間捻出との闘いになるが，臨床現場に立ち続けることのメリットもある。2年間でデータサイエンスの素養を身につけることはでき，卒業後，自身でどのように学んでいくべきかのヒントを得られることが何より大きな財産である。

【コラム】大学院体験談：海外編—社会人学生としての公衆衛生大学院留学宮地　麻衣 14巻3号 , 2022年7月 , pp.596-600

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新型コロナウイルス感染症（COVID-19）パンデミックにより，公衆衛生学の重要性が改めて注目された。コロナ禍での授業の急速なオンライン化に伴い，海外の公衆衛生大学院は遠隔からの参加が可能となり，むしろ留学は実現しやすくなったと考える。ハーバード大学公衆衛生大学院疫学修士課程での経験談を，受験準備，授業内容，現地参加とオンライン参加の比較，社会人学生のオプション，米国以外の選択肢（英語圏）の項に分けて記した。多様なかたちでの大学院生活への参加に対して，具体的なイメージをもっていただけたら幸いである。

【コラム】研究留学体験談—目的を明確にし，目標への努力を怠らない江川　悟史 14巻3号 , 2022年7月 , pp.602-606

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海外研究留学は医師人生において有意義な時間である。ただし，研究業績や助成金などの準備が必要であり，それらには数年を要することが多い。自分の人生において，どの時期に留学するかを早くから計画し，それに向けて準備を徐々に開始することをおすすめする。また，留学中，時間を有意義なものにできるかは，上手なスケジューリングと日々それを全うする努力を怠らないことにかかっている。そのためには，留学前に掲げた長期的な目標に向かって，日々の進捗，週単位の進捗を明確にしていくべきである。毎回の研究カンファレンスは自分の報告の内容のみならず，英語の質にも注意するなど丁寧な準備を心掛けることが効果的な自己研鑽のために重要である。

【コラム】メジャー誌掲載体験談—無欲な探究心から生まれた想定外の大成功川副　友 14巻3号 , 2022年7月 , pp.608-612

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筆者は2011年からデクスメデトミジンに関する無作為化比較試験（RCT）であるDESIRE trialを企画し，山村仁先生，森本剛先生らのご指導のお陰で，2016年10月にEuropean Society of Intensive Care Medicine（ESICM）学術集会で発表し，次いで2017年3月にJournal of American Medical Association（JAMA）誌に論文を掲載することができた。この臨床研究が成功するうえでは経験豊富な統計専門家の存在が必要であった。その存在は，統計処理に精通した臨床医とは一線を画し，臨床医と統計家のチームワークを発揮させ，想定を上回る成果を上げることができた。ガイドラインがあふれる時代においてこそ，臨床医にとって目の前の患者のデータをエビデンスにすることが重要である。

【コラム】失敗経験から学ぶ臨床研究を成功させるためのポイント—同じ過ちを犯さないために真弓　俊彦 14巻3号 , 2022年7月 , pp.614-617

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研究にもタイミングがある。研究前にはシステマチックレビューを行い，未解決課題を明らかにし，key論文をプロトコル作成の参考とする。プロトコルは最も大切で，何度も推敲する。また，研究立案段階から統計学者にアドバイスをもらう。

　研究には強力でひたむきなリーダーの牽引力が必須である。学会やJSEPTIC-CTG（日本集中治療教育研究会臨床研究委員会）などで計画を発表し，会合を開催し，参加施設を募る。大規模研究ではサブ解析を公募し，登録症例数に応じた特典を定める。会合や連絡をこまめに行い，累積症例数や新規登録数を周知する。研究は論文完成期限を公言して必ず論文化し，信頼関係を築き多くの同志を呼び込む。

　無作為化比較試験（RCT）を成功させることは格段に難しい。上記を達成したうえで，さらに，24時間365日同意を取得できる体制を作るか，迅速な登録や開始が必要でないプロトコルとすることが必要である。

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え？　知らないの？人工呼吸器のclosed loop control Part 1 開　正宏 , 森實　雅司 14巻3号 , 2022年7月 , pp.620-624

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近年，オープンシステム（開かれた系）やクローズドシステム（閉じられた系）という言葉を目にすることがある。これは経済やITの業界で多く使われる用語であり，医療業界でも，電子カルテなどがインターネットで外部につながる系をオープンシステム，情報漏洩の危険性から外部ネットワークと連絡しない系がクローズドシステムと呼ばれる。またICUにおいて，集中治療の専門医が指示系統をまとめて管理するか否かによって，クローズドICUやセミクローズドICUとの語もよく耳にする。

　医療機器においては技術進歩が目覚ましく，人工膵臓は血糖を自動測定しインスリンとグルコースを自動注入して，クローズドループclosed loop管理下のもとで血糖を一定の目標値に管理する。一部のペースメーカでは心筋のインピーダンスを自動解析して，レート応答型ペーシング機能を有するCLS（closed loop stimulation）も多く用いられている。

　closed loop control機構を搭載した人工呼吸器が最近増えつつある。これは人工呼吸器が患者の状態（情報）を自ら取り入れて演算処理し，換気制御を行うものである。より高い同調性や呼吸仕事量の低減，人工呼吸器離脱への導きのみならず，患者の増悪時にも設定を調節することで，医療者の負担を軽減することも期待される^1）。

　今回のPART 1では，人工呼吸器におけるclosed loop controlの概念を解説し，人工呼吸器メーカーごとにそれぞれ異なるモードを紹介する。また，次回のPART2では各モードについて詳しく解説する予定である。

集中治療に関する最新厳選20論文田邊　翔太 , 吉田　英樹 14巻3号 , 2022年7月 , pp.636-642

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連載　最新エビデンスを読む

第4回：ブジーとスタイレットを用いた気管挿管の比較（BOUGIE trial）中澤　太一 , 片岡　惇 14巻3号 , 2022年7月 , pp.626-630

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「最新エビデンスを読む」では，JSEPTIC多施設ジャーナルクラブで扱った論文のなかから，注目すべきテーマを毎号1つ取り上げて解説します。JSEPTICホームページ上にアップしているスライドとともに，読者の皆様に実臨床に活用していただければ幸いです。

連載　Lefor's Corner

第45回：Vascular Access and Hemodynamic Monitoring Part XXVI：Pediatric Vascular Access—Techniques II Miwa　Ito , Alan Kawarai　Lefor 14巻3号 , 2022年7月 , pp.632-634

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This ongoing series provides the readership of Intensivist with the opportunity to read concise reviews of current topics in Critical Care Medicine, in English. It is hoped that these reviews will stimulate the pursuit of other literature written in English.

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目次 14巻3号 , 2022年7月

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フリーアクセス

倫理規定 14巻3号 , 2022年7月 , pp.644

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次号予告 14巻3号 , 2022年7月 , pp.645

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基本情報

INTENSIVIST
14巻3号
(2022年7月発行)

電子版ISSN：2186-7852 印刷版ISSN：1883-4833 メディカル・サイエンス・インターナショナル

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特集 臨床研究

Part 1 臨床研究のアドバンスな基礎知識

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Part 3 研究の実際あれこれ

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