INTENSIVIST 14巻4号 (2022年10月発行)

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特集　多職種連携

座談会：医師・看護師・薬剤師・理学療法士で語るICU多職種連携—成功のカギは教育の継続と“尊重”する風土作り則末　泰博 , 瀬尾　龍太郎 , 濱本　実也 , 前田　幹広 , 髙田　順子 , 牧野　淳 14巻4号 , 2022年10月 , pp.647-657

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牧野　本日はまず各施設でのICU多職種連携の実態，成功度，課題をお伺いして，多職種連携における自分の役割，チームあるいは集中治療医，他職種に対する思いについてお聞きできればと思っています。最後に，多職種連携をさらに広めていくにはどうすればいいかを，皆さんとディスカッションしたいと思います。

総論：医療における多職種連携

1．なぜ医療において多職種連携が注目されるようになったのか？—医療の質と安全性の向上，医療者の負担軽減を目指して牧野　淳 14巻4号 , 2022年10月 , pp.659-666

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多職種連携は，医療者の業務負担軽減をはじめ医療の質や安全性の向上，医療費削減の観点から，今後期待される働き方のスタイルである。多職種連携の構築は国内外で推奨されているが，標準モデルがなく改善効果も十分証明されていないこと，国内の法整備が進んでいないことから，普及は道半ばである。今後，効果的かつ標準的な多職種連携を構築してゆくためには，米国医学研究所が提案した多職種継続学習モデルを導入し，医療者，医療チーム，施設長，政策者が協働して継続学習ができる教育体制や職場環境を整えてゆくことが大切である。特に学習効果をmixed-method approachを用いた研究で質的・量的に評価することが，教育・システムへつなげるうえで重要である。

多職種連携を構成する要素

2．interprofessional education（IPE）—IPE継続のための問題点とその克服三反田　拓志 14巻4号 , 2022年10月 , pp.667-677

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医療課題がより一層複雑化するなかで，医療従事者不足を緩和するために重要なことは何であろうか？　世界保健機関（WHO）の答えは，多職種連携の教育と連携医療の実践である。専門職連携の教育をinterprofessional education（IPE）という。IPEは，効果的な連携を実現し，健康アウトカムを改善するために複数の専門分野の学習者が互いに学習しあうことである。システマチックレビューでは，救急部チームの協調的チーム行動および臨床エラー率の低下や，手術室での協調的チーム行動などで肯定的な結果が示されたことを引用しながらも，「研究数が少なく，介入や結果が異質なため，IPEの重要な要素やその有効性について一般化できる推論を導き出すことはできない」としている。明確なエビデンスのない領域ながら，本稿では5つの疑問に答えるかたちで，エビデンスを構築するもととなるIPEについての理論やフレームワークについて述べる。

3．collaborative practice（CP）—円滑なCPの構築とその実現のために医療者が果たすべき役割金井　克樹 , 石田　亮介 14巻4号 , 2022年10月 , pp.679-686

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連携医療（CP）は多職種連携教育（IPE）に続く多職種連携の実践段階であり，要である。CPは組織的支援，組織文化，環境といったメカニズムで構成される。CPの実践においては，医療者だけでなく，行政や病院組織，医療チームにそれぞれ役割があり，それぞれが連続的に歯車のように噛み合うことでCPは実現されていく。医療者として，職種間の業務の「隙間」を埋めること，責任や役割の「重なり」を調整すること，他職種と連携するための「場」を作ることが必要である。やるべきこと1つ1つは個人が組織で働くうえでは決して特殊なものではないが，問題点や自分の役割・タスクを明確にすることにより，システムとして円滑なCPの実現を目指していくことが重要である。

4．health and education systems—概要を理解し，患者アウトカムの改善につなげる天野　茂太 , 西川　貴史 , 伊藤　次郎 , 瀬尾　龍太郎 14巻4号 , 2022年10月 , pp.687-698

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多職種連携を構成する3要素の1つであるhealth and education systemsは，医療システムと教育システムを相互的に機能させ，適切な専門技能を習得した医療人材を適正に配置することにより，現代の医療システムが直面している医療人材不足と医療システムの分断という2つの大きな課題の解決をはかるための組織的戦略である。本稿ではhealth and education systemsを有効に機能させるための病院，行政レベルでの具体的な取り組みについて概説したうえで，私たち医療者が多職種連携を実践することでどのように医療の質が改善されるのかについて理論的背景とエビデンスを紹介する。

5．多職種連携におけるタスク・シフト/シェア—患者により安全な医療を提供するために杉山　拓也 , 武居　哲洋 14巻4号 , 2022年10月 , pp.699-707

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「医師の働き方改革に関する検討会」と「医師の働き方改革を進めるためのタスク・シフト/シェアの推進に関する検討会」での議論を経て，今後タスク・シフト/シェアをさらに推進するための施策が打ち出されていく。病院内でタスク・シフト/シェアを効果的に推進するには，タスク・シフト/シェアが具体的にどのような概念を指していて，なぜ導入が求められているのかをまず管理者がよく理解し，さらに病院全体で推進していく協力体制を築く必要がある。タスク・シフト/シェアを通じて医師の労働時間を削減することだけに目がいくことが多いが，それが最終目標ではない。タスク・シフト/シェアの推進を通じて達成すべきは，医療界全体の歪みを補正することで医療を効率化し，より安全な医療提供を通じて，究極的にはその恩恵を患者に還元することである。

各論：ICUにおける多職種連携

6．ICU多職種連携による恩恵—患者転帰の改善にとどまらない多岐にわたる効果飯塚　祐基 , 岡田　和也 14巻4号 , 2022年10月 , pp.709-724

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新型コロナウイルス感染症のパンデミック，進み続ける高齢化および生産年齢人口の減少から，医療需要は増え続けている。以前のように個人の労働時間で解決することは，医師の労働時間の上限規制の導入もあり難しくなるだろう。そこで問われるのはいかに人的医療資源を分配するかということであり，改めて多職種連携に注目が集まるようになった。ICU多職種連携の恩恵は患者転帰改善だけでなく，医療従事者の満足度，経済効果と多岐にわたる。本稿では，ICUでの多職種連携による恩恵をさまざまな角度から解説していきたい。

19．Effective Medical Creation 五感（視覚・聴覚・触覚・味覚・嗅覚）＋想感（知恵＋思いやり）—患者・患者家族・デザイナーの経験を通して武澤　恵理子 14巻4号 , 2022年10月 , pp.789-793

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患者および患者家族としての医療参加の経験，またデザイナーとして，コーディネーターとして，医療専門職ではない立場としての医療参加の意義，困難であった点，医療者に求めること，そして患者やその家族も共に働く医療職のチームの一員であるといまだ意識していない方々へのメッセージを，これまでの経験をふまえて述べる。

【コラム】ICUにおける多職種連携に関する調査—JSEPTIC簡単アンケートから見えてきた多職種連携の現状加藤　建吾 , 加茂　徹郎 14巻4号 , 2022年10月 , pp.794-800

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本コラムでは，さまざまな期待が寄せられている多職種連携の現状を明らかにするために，2021年3月にICUの医療従事者を対象に実施された，JSEPTIC簡単アンケートの結果について総括する。筆者らの取り組みを紹介しつつ，本アンケート結果（回答者199人）を，回答者の施設の背景，ICU多職種カンファレンスとICUベッドサイド回診，ICU多職種連携の現状・問題点・今後への期待などを紹介する。アンケート結果から得られた示唆は以下の3点である。①医師，看護師の回答者は少なかったが，それ以外の職種からは多くの前向きな回答が得られ，その姿勢が多職種連携を強力に推進していく力となる可能性がある。②多職種連携にはタイムマネジメントが重要である。③DX（デジタルトランスフォーメーション）が多職種連携をさらに推し進める可能性がある。

20．ICU多職種連携の阻害因子と取り組み—教育のみならず共に過ごす場を作り，職種の垣根を超えた交流が重要内海　達哉 , 武居　哲洋 14巻4号 , 2022年10月 , pp.801-807

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2010年に世界保健機関（WHO）は多職種連携の推進を提唱し，以降日本でもチーム医療の重要性が注目されるようになってきた。2015年，Society of Critical Care Medicineから「集中治療医が主導するICU多職種連携」の概念が提唱され，集中治療領域では特に多職種連携の重要性の認知が強まっている。

　ICU多職種連携は，患者アウトカム，医療者の満足度，経済効果などにおいて，大きな恩恵をもたらす可能性が示唆されている。逆に連携の失敗は患者の安全に重大な影響を与え得るため，適切に導入を進めていく必要がある。しかし，いざ導入を考慮したときには，これを阻害する因子を認識することが少なくない。本稿では，ICU多職種連携を妨げる因子を過去の研究を参考に明らかにしたうえで，その要因を取り除き導入を促進するためにどのような取り組みが必要かを示したい。

21．ICU多職種連携の構築—その理論と当院ICUにおける多職種連携の実際三島　有華 , 若林　健二 14巻4号 , 2022年10月 , pp.809-820

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ICUでの診療には多職種がかかわっており，適切な多職種連携によって患者アウトカムの改善，コスト削減，患者安全の向上が得られる。多職種連携アプローチが求められる主な場面として，ICU回診，ABCDEFバンドル，ICUプロトコル，終末期ケアを例に挙げ，Donabedianモデルに準じてより効果的な連携の方法を検討した。蓄積されたエビデンスが現場で実行されるためには，現場の状況を加味しシステムと人間の両方に介入する多面的な手法が求められる。よりよい多職種連携を促進するために，チームワークやコミュニケーションなどのICU文化を醸成する必要がある。

22．ICU多職種連携の評価—医療の質とCOS，その課題と難点吉廣　尚大 , 櫻谷　正明 14巻4号 , 2022年10月 , pp.821-829

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ICU多職種連携は，現行の診療報酬制度では，加算を得るための要件の1つとなっている。効果的なケアの提供に不可欠であると考えられているが，エビデンスの質は高くない。多職種連携の効果を評価する際には，ICU多職種連携が充実するための要素を評価するだけではなく，医療の質のようなICU多職種連携によってもたらされるアウトカムを評価するべきである。そして，ICU多職種連携のパフォーマンスを向上するためには，組織的な支援を受けることが重要である。

23．ICU退室後の多職種連携：ICUから一般病棟，さらに地域連携へ—患者の旅路を支援するケアシステムの実現のために必要なこと小坂　鎮太郎 14巻4号 , 2022年10月 , pp.831-840

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ICUは，治療が困難な重症患者に対する最後の砦としての特別な存在であると考えられていた。しかし，重症疾患に対する治療の進歩とともに「生命寿命から健康寿命（生活）をゴールにした」治療を考える必要がでてきた。

　ICU入室は患者の疾病経過の一部であり，退院後のICU生存者の生活の質（QOL）を考慮して，5つのケア移行を，相互に関連した連続的な患者の旅路ととらえて，患者転帰を最適化するための介入が重要となる。安全なトリアージ，バンドルの実施や多職種回診，サインアウト，患者エンゲージメント，能動的なICU日記，病状説明，ICU退室後のフォローアップ，ケアコーデイネーション，プライマリケア医への申し送りや外来フォローといった，患者の旅路を豊かにするためのタスクを安全かつ効果的に実現するためには，多職種によるタスクシェアが不可欠である。

ICUにおける各職種の役割：実際の現場から

7．医師の役割Pros & Cons—Pro：術後管理は集中治療医に任せるべき田中　宗伸 , 片岡　惇 14巻4号 , 2022年10月 , pp.725-728

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多職種連携において，医師-医師連携は治療方針を決めるうえで重要な役割を担う。集中治療管理を要するような周術期の重症患者においては，術前診断から術式の選択までは外科医がマネジメントし，術後の管理は集中治療医と連携することが重要である。では，重症患者の術後管理をどのようにすることが患者にとって最善と言えるのだろうか。外科医が主導するか，集中治療医が主導するか，これまでもいくつかの議論がなされてきた。筆者は，術後の集中治療管理は集中治療医が主導していくべきだと考えている。本稿では，自身の勤務する病院で実際に取り組んでいるシステムをもとに，なぜ集中治療医に任せるべきであるかを述べる。

8．医師の役割 Pros & Cons—Con：術後管理は主治医が行うべき神尾　直 14巻4号 , 2022年10月 , pp.729-733

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ICUに入室している術後患者の管理を集中治療医が主体的に行う，いわゆるclosed ICUと，執刀した主治医が主体的に管理を行うICUのどちらがよいかについては議論の余地がある。集中治療医が充足しているとは言えない本邦では，すべての施設でclosed ICU管理を追求していくことは非現実的である。また，ICU退室後の病棟で管理を行うのは主治医であり，その主治医を多職種でサポートする体制を構築し，院内全体の医療の質と安全性の向上に寄与することこそが，今の集中治療医に求められていることなのではないだろうか。

9．看護師の役割—ケア調整により最適な多職種チームケアを実現する瀧口　千枝 , 松井　憲子 14巻4号 , 2022年10月 , pp.735-740

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ICU看護師は，重症患者の救命と機能回復を目指して，ICU内外で多職種と連携しながら包括的な患者ケアを行っている。重症患者への包括的ケアは，たとえ質の高いエビデンスに裏打ちされていても必ず実施されるわけでなく，ケアが実施されるか否かには，患者の状態や医療チームの状況が影響する。看護師は，患者に最適なケアが実施されているかを把握し，必要に応じて多職種間の情報共有を促したり，多職種チームの共同意思決定を促進したりするケア調整によって，適切な多職種チームケアの提供を促進している。また，長期の身体・認知機能・精神機能障害（PICS）による長期的機能障害の存在が明らかになった今，ICUを超えて一般病棟，外来での回復支援に向けて多職種連携を拡大する推進力にもなっている。

10．診療看護師の役割—医学的トレーニングを受け，看護実践を行う永谷　創石 14巻4号 , 2022年10月 , pp.741-746

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診療看護師とは，米国のnurse practitioner（NP）制度を基に本邦で育成が開始された高度実践看護師である。集中治療領域の診療看護師は，ICU多職種連携をICUだけで終わらせず，患者のステージに合わせて包括的なアプローチを継続することを目標に病棟横断的に活動している。「医学的トレーニング」を受けていることを強みとして，多職種連携のなかでさまざまな業務を実施している。本邦では米国のNPのように制度化されておらず，まだ認知度が低いが，新しい職種として多職種連携のなかでの役割を構築し，医療に貢献するために活動している。

11．薬剤師の役割—薬剤の知識をもとに，患者に焦点を当てた意思決定を共同で行う鈴木　俊一郎 14巻4号 , 2022年10月 , pp.747-750

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米国では，1980年代にICUで臨床薬剤業務が発足して以来，Society of Critical Care Medicine（SCCM）は薬剤師の存在は不可欠であるとしている。一方日本では，厚生労働省よりICUにおける薬剤師の役割が初めて明示されたのは2007年であり，ICUにおける多職種連携に薬剤師がかかわるようになってから歴史は浅い。

　本稿では，ICU多職種連携における薬剤師の役割，自施設でのICU多職種連携の現状と薬剤師からみた課題，ICU多職種連携におけるモチベーション，薬剤師と医師の共同意思決定サイクルについて，自施設での現状および筆者の私見を交えて考察していく。

12．理学療法士の役割—多職種でのリハビリテーションで患者の安全を確保する久保　貴嗣 , 野中　利通 , 真弓　俊彦 14巻4号 , 2022年10月 , pp.751-755

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ICU診療において，リハビリテーションは集中治療後症候群（PICS）の予防・改善に重要な役割を果たしている。また，理学療法士や作業療法士だけでなく，医師，看護師，臨床工学技士など多職種の連携により，診療の質，患者のICU退室後の日常生活動作（ADL）や生活の質（QOL）の向上が期待できる。

【コラム】Cookies with Barbara Daniel　Garros , 川口　敦 14巻4号 , 2022年10月 , pp.756-757

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ここでは，2019年にCanadian Medical Association Journal（CMAJ）誌に私の元同僚であるDaniel Garros医師が寄稿した文章を紹介したい。

　多職種による医療は医療者だけで成り立つものではない。周囲をよく見渡してもらいたい。我々の提供しようとしている医療がどれだけ多くの人によって支えられているのか，考えるきっかけにしていただきたいと思う。

13．管理栄養士の役割—適切な栄養状態の評価と栄養療法の選択肢を提示する宮城　朋果 14巻4号 , 2022年10月 , pp.759-763

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令和2年度の診療報酬改定で早期栄養介入管理加算が新設された。それ以降も管理栄養士に関連する加算項目は新設および改定され，活動の幅が広がりつつある。重症患者の病態は日々変化し続け，我々にはその時々で各種ガイドラインや文献に基づいた適切な栄養状態の評価と栄養療法の選択肢の提示が求められる。一方で，施設間で管理栄養士の配置人数に大きな差があり，求められる業務に対する人的リソースが不足していることが多く，加えて現場で活躍するための知識を習得する環境整備の問題を抱えている。ICU多職種連携のなかで，管理栄養士として日頃考えていることや自施設の現時点での取り組みについて述べる。

14．臨床工学技士の役割—工学と医学をつなぎ，ICUでのスムーズな多職種連携を支える古川　豊 14巻4号 , 2022年10月 , pp.765-769

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臨床工学技士は，臨床と工学の両方を担当する日本独自の医療専門職であり，医療職として初めて多職種連携が法律に明記された職種である。工学的な視点をもって診療に臨み，医療機器の専門家として安全と質を保証し，ICUにおけるスムーズな診療を支えることが，多職種チームにおける臨床工学技士の役割である。呼吸，循環，血液浄化などの領域で工学的なアプローチを行い，ほかの医療職とは異なる視点で患者のケアに携わっている。より深い専門性と多職種との協力体制で医療を提供するためには，ICUの医療チームと日常的にコミュニケーションがとれる専任スタッフの存在が望まれる。ICUで働く臨床工学技士は，複数の専門職と連携して働くICUスペシャリストであるべきである。

15．ソーシャルワーカーの役割—シームレスな支援のために医療機関と地域をつなぐ加藤　雅江 14巻4号 , 2022年10月 , pp.771-774

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社会福祉を学び，専門とするソーシャルワーカーが医療の場にいる意味について考える。ソーシャルワーカーの専門職としての在り様を可視化し，言語化することが，多職種連携を実現させることにつながる。ソーシャルワーカーが加わる多職種連携では患者・家族の生活を知り，それに合わせた支援が展開できるように他職種と情報共有し，入院中にとどまらず生活をサポートする「支援」が退院後までシームレスなものとなるように，地域関係機関と医療の場における「支援」をつなぐべくソーシャルワークを活用する，その視点が不可欠となる。

16．緩和ケア医の役割—ICUの患者・家族・医療者を支援する石上　雄一郎 14巻4号 , 2022年10月 , pp.775-779

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緩和ケアは患者の症状緩和と患者家族の生活の質（QOL）の向上を目指している。多職種連携は緩和ケアでもコモンなアプローチであり，集中治療と共通点がある。ICUにおける緩和ケア医の主な役割は，患者家族の意思決定支援・コミュニケーションのサポートである。患者家族の価値観やニーズの聴取は医師よりも看護師，社会福祉士，心理士などが得意なこともある。

　緩和ケアと統合した集中治療を多職種で行ううえで鍵は3つある。それは，医療者向けのコミュニケーショントレーニング・話しやすい倫理的な風土の醸成・倫理的苦悩に対する医療者の心理的サポートであり，これらは今後ますます必要となるだろう。

17．宗教家の役割—チャプレンとスピリチュアルケア上田　憲明 14巻4号 , 2022年10月 , pp.781-784

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スピリチュアルケアとチャプレンについての基本的なことを紹介する。宗教的な求めへの応答だけではなく，宗教性はなくてもスピリチュアルな求めはあるかもしれないという理解についてである。ICU領域においても，死をはじめどうしようもない現実を受け止めていくための援助が必要なのではないだろうか。病気を経て，スピリチュアルケアを受けたのがきっかけで人生を見直したり，祈りの意味に気づいたり，「役に立つこと」や「人に迷惑をかけないこと」だけが人間の価値判断基準ではないことを学んだりすることもある。ただICU領域でのチャプレンと医療職との連携はまだ十分にとれていない現実もあり，これからの展開が必要とされるのではないだろうか。

18．病院管理者の役割—多職種連携を醸成するような文化を築く加藤　良太朗 14巻4号 , 2022年10月 , pp.785-788

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昨今のパンデミックに象徴されるように，常に変化し続ける医療現場において各病院がそのミッションを遂行するためには，分化と統合をダイナミックに操る「統合装置」が必要である。その代表例が多職種連携であり，各病院ごと固有の文脈に沿った連携が大切となる。多職種連携は何かを達成するための手段としても重要であるが，多職種連携そのものが医療従事者の人生を豊かにする可能性がある。そのような連携を醸成する文化をつくることが，病院管理者の最も大切な役割でもある。

招待論文

コラボレーティブ・リーダーシップは組織学習と多職種連携を橋渡しする—日本語版多職種連携評価尺度（AITCS-Ⅱ-J）等を用いた計量的研究松下　博宣 , 石井　馨子 , 木田　亮平 , 藤谷　克己 14巻4号 , 2022年10月 , pp.841-850

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急性期病院Aの全職員を対象にして，ウェブベースの匿名質問票を1,495名に配布し，725名の職員から回答を得て，最終的に632名のデータを分析した。質問項目は，人口統計学的項目と多職種連携協働，コラボレーティブ・リーダーシップ，組織学習に関する認知を計測する3つの尺度を用いた。本研究によって，組織学習と多職種連携協働に対するコラボレーティブ・リーダーシップの媒介効果の可能性が計量的に示された。また，重症ユニット系の看護師と一般病棟の看護師との間には，いくつかの点において認識の差があることが示唆された。

連載

え？　知らないの？人工呼吸器のclosed loop control Part 2 開　正宏 , 森實　雅司 14巻4号 , 2022年10月 , pp.852-860

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前号のPart 1では，closed loop controlの概念を解説し，人工呼吸器メーカーごとにそれぞれ異なるモードを簡単に紹介した。人工呼吸器におけるclosed loop controlの最終目標は，人工呼吸器が患者の状態（情報）を自ら取り入れて演算処理し，最適な換気を連続的，そして持続的に行う完全な自動化である^1）。しかし，いまだ心拍数・血圧・体温などのバイタルサインや努力呼吸の有無・皮膚の湿潤など，そして聴診・触診などから得られるフィジカルアセスメントの情報は人工呼吸器には反映されず，ヒトが診て触って感じて評価するものである。自動化された人工呼吸器は，せいぜい呼吸回数や呼吸仕事量の評価，そして経皮的動脈血酸素飽和度（SpO²）と呼気終末二酸化炭素分圧（PETCO²）の値から自動制御しているにすぎない。しかし，医療者は刻々と変化する患者の病態を四六時中ベッドサイドで見続けることはできず，安全に関してもヒューマンエラーをなくすことについては，自動化された呼吸器のほうがヒトより信頼性が高い。

　本稿の目標は，ヒトが管理するよりも優れた人工呼吸器のclosed loop control機能を有用に使いこなし，医師や看護師などの医療スタッフのタスク軽減を行い，患者にとっても快適性が高く安全な人工呼吸療法をかなえることである。

集中治療に関する最新厳選20論文田邊　翔太 , 吉田　英樹 14巻4号 , 2022年10月 , pp.871-877

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連載　最新エビデンスを読む

第5回：敗血症性ショックにおける輸液制限（CLASSIC trial）小野山　薫 , 片岡　惇 14巻4号 , 2022年10月 , pp.862-865

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「最新エビデンスを読む」では，JSEPTIC多施設ジャーナルクラブで扱った論文のなかから，注目すべきテーマを毎号1つ取り上げて解説します。JSEPTICホームページ上にアップしているスライドとともに，読者の皆様に実臨床に活用していただければ幸いです。

連載　Lefor's Corner

第46回：Vascular Access and Hemodynamic Monitoring Part XXVII：Pediatric Vascular Access—Difficult Venous Access in Children Kazama　Shintaro , Alan Kawarai　Lefor 14巻4号 , 2022年10月 , pp.867-870

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This ongoing series provides the readership of Intensivist with the opportunity to read concise reviews of current topics in Critical Care Medicine, in English. It is hoped that these reviews will stimulate the pursuit of other literature written in English.

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目次 14巻4号 , 2022年10月

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倫理規定 14巻4号 , 2022年10月 , pp.878

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次号予告 14巻4号 , 2022年10月 , pp.879

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基本情報

INTENSIVIST
14巻4号
(2022年10月発行)

電子版ISSN：2186-7852 印刷版ISSN：1883-4833 メディカル・サイエンス・インターナショナル

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第8位え？　知らないの？心臓ペースメーカの使い方永田吾一,上岡晃一 INTENSIVIST 17巻 3号 pp. 430-435 (2025年7月1日) メディカル・サイエンス・インターナショナル
第9位 1.体外循環，心筋保護，低体温循環停止と脳保護中塚大介,田端実 INTENSIVIST 7巻 4号 pp. 687-700 (2015年10月1日) メディカル・サイエンス・インターナショナル
第10位【コラム】抗菌薬の持続投与およびextended infusionの方法と有用性について—PK/PDの変化からみた重症患者における抗菌薬投与原田佳奈,牧野淳 INTENSIVIST 13巻 2号 pp. 308-315 (2021年4月1日) メディカル・サイエンス・インターナショナル