特集 臨床研究
はじめに—質の高い臨床研究実施のために必要な要素とは
川口 敦
1,2
Atsushi KAWAGUCHI
1,2
1聖マリアンナ医科大学 小児科
2University of Montreal, CHU Sainte Justine
pp.461-466
発行日 2022年7月1日
Published Date 2022/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3102200985
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昨今,書店の医学書コーナーにも臨床統計学や論文の書き方などの手ごろな指南書を数多く見かけるようになった。これは欧米ではあまりみない現象だと思う(実際のエビデンスに基づいた話ではない)。それだけ日本の臨床家あるいは医療者は,研究に携わっている,研究に飢えている,あるいは困っているのだろうと思う。筆者の若手時分には,このような研究指南書は今ほど多くは出版されておらず,また周囲に指導を仰げる人もほとんどいなかった。当時はまだインターネットを介して得られる教育コンテンツは多くなく,英語の専門書などで研究デザイン等を独学するしかなかった。結局,海外の専門大学院へ進学し,疫学,生物統計学を中心に学びを続け,医学研究というものがどのような骨格をなし,また医療でどのように機能しているのかの片鱗を知ることになった。
本特集では「研究」とくに「臨床研究」を,解剖学,病態生理学の両方の視点から解きほぐしていく。つまり,単に研究を進めるための知識(=解剖),例えば研究デザインや統計学を提供するだけではなく,それぞれの要素がどのように有機的にかかわりあい,またそれをより効果的に機能させるためにはどのようにすればよいか(=病態生理)のヒントを得ていただきたい。第一線で活躍する方々の論稿を読み進め,研究のダイナミズムを一緒に体感していただきたいと思う。
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