特集 非侵襲的呼吸管理:NPPV vs. HFNC論争 いま決着のとき
【コラム】本当にNPPV管理中に鎮静薬を使ってよいのだろうか?—現時点でルーチンに使用すべきでない
小林 絵梨
1
,
山本 良平
2
Eri KOBAYASHI
1
,
Ryohei YAMAMOTO
2
1済生会宇都宮病院 救急・集中治療科
2福島県立医科大学 臨床研究イノベーションセンター
キーワード:
デクスメデトミジン
,
使用実態
,
挿管の回避
,
有害事象
Keyword:
デクスメデトミジン
,
使用実態
,
挿管の回避
,
有害事象
pp.554-557
発行日 2025年7月10日
Published Date 2025/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.188348330170040554
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はじめに
非侵襲的陽圧換気non-invasive positive pressure ventilation(NPPV)管理中の鎮静薬使用は,鎮静に伴う有害事象や適切なタイミングでの挿管の遅れなどの懸念のため,従来禁忌とされてきた1)。しかし近年,臨床現場では忍容性不良の改善や譫妄対策を目的として,よく使用されるようになっている。例えば,対処しても改善しない忍容性不良や,不安や譫妄によりマスク装着が困難である患者に対して,鎮静薬を併用することで挿管回避を試みるケースがある。このようなケースで期待されるメリットは,死亡を増やさずに挿管を回避することである。NPPV管理中の鎮静薬の使用は,忍容性不良や不安を軽減し,挿管を回避する可能性がある2〜4)。
一方で,呼吸抑制,CO2貯留,排痰困難による誤嚥や窒息,血行動態への影響(徐脈・低血圧)といった有害事象が生じることで,かえって転帰を悪化させる可能性もある。実際に,挿管割合や死亡割合の増加と関連する5,6)という報告もある。
本コラムでは,NPPV管理中の鎮静薬使用,とりわけ日本国内で広く用いられているデクスメデトミジンに焦点をあて,どのようなエビデンスに基づき使用が正当化され得るのかを考えてみたい。

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