JIM 13巻2号 (2003年2月)

特集 アレルギーの臨床―第一線での診断と治療

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 「アレルギー」の概念は,19世紀の末に,個体を感染症から防御するしくみとしての「免疫」の概念が確立されたのを受けて,20世紀初頭に,PortierとRichet(1902)がこれと相反する働きとしてアナフィラキシーの現象を発見したことにはじまる.その後,当時よく用いられたジフテリアの血清療法の副作用である血清病の原因が抗原抗体反応によることをつきとめたPirquetによって,共通のしくみをもつ免疫と過敏反応を総称する「アレルギー」の用語が提唱され,時代の流れとともに「アレルギー」を「生体に障害を与える過敏反応」に限定して用いることとなったものである.

 花粉,食物,薬物,昆虫毒,動物のフケ,微生物など,いくつもの外来の物質がアレルゲンとして,さまざまな病型のアレルギーを誘導する.CoombsとGell(1963)は,レアギン(IgE抗体)によって媒介される病型をⅠ型,IgG, IgM抗体の直接的な細胞障害活性によって引き起こされる病型をⅡ型,免疫複合体(immune complex:IC)によって誘導される病型をⅢ型,そしてT細胞が中心的な働きをして誘起される病型をⅣ型と命名した.この分類で,Ⅱ型の中で細胞表面のホルモンや神経伝達物質の受容体が標的となる病型をⅤ型とする場合もある.

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Case

小麦が原因の食物依存性運動誘発アナフィラキシーの1例

 患 者:12歳,女児.

 主 訴:呼吸困難,顔面腫脹.

 家族歴:母がアレルギー性鼻炎.

 既往歴:アトピー性皮膚炎.

 現病歴:数カ月前から時々蕁麻疹あり.入院当日,昼食(ピザ)後テニスをした.30分後に顔面腫脹と呼吸困難が出現し入院.

 現 症:血圧やや低下,顔色やや不良,顔面腫脹,眼瞼浮腫著明,喘鳴,体幹に蕁麻疹.

 検 査:血清中総IgE値408U/ml,血清中特異IgE抗体;ヤケヒョウヒダニ5(クラス),小麦2,卵白0,牛乳0,大豆0,カニ0,エビ0,チーズ0,ソバ0,スクラッチテスト;小麦陽性.

 経 過:ステロイドの静注,塩酸ヒドロキシジンの点滴静注にて軽快し翌日には退院.

 アレルギー疾患の診断には,詳細な問診が不可欠である.現病歴,既往歴および家族歴から,アレルギー疾患を疑い,原因となるアレルゲンを推測して,スクリーニング検査をする.スクリーニング検査で陽性のアレルゲンについてさらに確定診断を施行する.スクリーニング検査としては血清中特異IgE抗体の測定や皮膚テストが,確定診断には誘発試験が有用である.

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減感作療法が著効した通年性アレルギー性鼻炎の1例

 患 者:45歳,女性.

 既往歴:特記すべきことなし.

 家族歴:父が気管支喘息.

 現病歴:30歳頃より通年性の鼻汁,鼻閉出現.症状は夏から秋にとくに強い.さらに昨年より春にくしゃみ,鼻汁,目の痒みが出現した.アレルギーを疑いプリックテスト施行するもすべて陰性.他院で最近まで抗ヒスタミン薬が処方されていたことがわかり,特異的IgEを測定したところ,ハウスダスト(HD),ダニ,スギで陽性が判明.抗ヒスタミン薬を1週間休薬後のプリックテストで,上記アレルゲンのみ陽性.皮内テストで閾値を決め,HDとスギの減感作療法を開始.開始後,症状は軽快した.

in virto検査

血清総IgE

 血清中に存在する免疫グロブリンとしてのIgEの総量である.血清中の濃度はIgGの約10万分の1と微量であり,感度の高い測定法を要する.RIA(radioimmunoassay)によるRIST(radioimmunosorbent test)法や,EIA(enzyme-immuno- assay)法で測定される(J1).対数正規分布(J2)を示すので,集団での平均は幾何平均で表すのが通例である.喘息,アレルギー性鼻炎,アトピー性皮膚炎などのアレルギー性疾患や,寄生虫感染で増加することが多いが,すべてのアレルギー性疾患で上昇するとは限らず,診断的価値は限定される.たとえば,花粉症では特異的IgEのみ高値で,総IgEは正常であることが多い.組織浸潤性の寄生虫感染や,アレルギー性気管支肺アスペルギルス症の診断,経過観察には有用である.

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 抗アレルギー薬は,Ⅰ型アレルギー反応とそれに続発するアレルギー性炎症を抑える薬剤,ことにマスト(肥満)細胞からの化学伝達物質(メディエーター)の生成,遊離を抑制する薬剤,あるいはその作用に拮抗する薬剤を中心として理解されている1).また抗アレルギー薬は,1998年に公表され,2000年に改訂された『喘息予防・管理ガイドライン』2)(以下,JGL98)によれば,Ⅰ型アレルギー反応に関与するメディエーターの遊離ならびに作用を調節するすべての薬剤およびTh2サイトカイン阻害薬を一括する呼称として記されており,喘息発作の予防とその維持を目的とする“長期管理薬”として位置付けられている.

 本稿ではかかる抗アレルギー薬に関し,本特集では扱わない気管支喘息での使い方を含めて,その概要を述べる.

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初期療法を行い2002年のスギ花粉シーズンを軽症で経過しえた症例

 患 者:34歳,女性,会社員.

 既往歴:幼児期にアトピー性皮膚炎.

 家族歴:母,弟がスギ花粉症.

 現病歴:7年前から,毎年2~4月にかけて,頻発するくしゃみ発作,水性鼻汁,鼻づまり,流涙,眼そう痒感などがあり,各種の治療を受けるも,毎年この時期には仕事が満足にできない状態であった.2002年1月末に初期療法を希望して来院.塩酸フェキソフェナジン60 mg×2錠を,この時期から内服するように,投与した.飛散スギ花粉数は例年よりも多いにもかかわらず,花粉飛散中の本剤の内服とステロイド点鼻薬(プロピオン酸フルチカゾン)の頓用のみで,軽症にて花粉シーズンを過ごすことができた.

 花粉を吸うことで,反復するくしゃみ発作,引き続き起こる多量の水性鼻汁,鼻閉,目のかゆみ,流涙,頭痛などの症状を伴う眼や鼻に起こるアレルギーを花粉症という.のどのかゆみや異物感や咳,喘息,皮膚のかゆみなどの症状を伴うこともある.生命に影響することはまずないが,日常生活に大いに支障をきたす厄介な病気である.日本では,約60種の花粉症が今までに報告されているが,その中でも2~4月に大量に飛散するスギ花粉によって起こるスギ花粉症は,国民の約16%が悩んでいると推定され,日常臨床で重要な疾患であるので,スギ花粉症を中心にその診断と治療について述べる.

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定 義

 1902年,Alfred RichetとPaul Portierによりアナフィラキシー(anaphylaxis)という概念が提唱された.イソギンチャクの触手に含まれる毒素をイヌに注射し,2~3週間後に同じ毒素を再注射すると,動物は,嘔吐,出血性下痢などのショック症状を示し,しばしば死亡した.このような現象は,免疫とは反対の意味をもつ現象と考え,防衛状態(-phylaxis)とは反対(ana-)の状態という意味で,アナフィラキシー(anaphylaxis)と命名した.最も重篤な状態がショックであるので,アナフィラキシーとアナフィラキシーショックは同義語のように使われている.

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10歳代より浮腫の出現を繰り返していた1症例

 患 者:60歳,女性.

 家族歴:母が浮腫を繰り返している.

 現病歴:10歳代より全身各部に浮腫を繰り返し,時に呼吸困難や腹痛があり,多くの施設に通院歴がある.54歳時,急性腹症のため開腹術が行われたが原因不明.その後も浮腫を繰り返していたが,ネフローゼ症候群を呈するに至り腎疾患鑑別のため補体を測定した.C4,CH50の著しい低値を認め遺伝性血管性浮腫の診断へ結びついた.

 蕁麻疹は専門領域を問わず経験する疾患である.血管性浮腫は蕁麻疹の亜型として分類されるが,知名度が低く,症状が蕁麻疹に似ており鑑別にあがりにくい.しかし,両者の病態は異なるため,十分な病歴聴取と診察から鑑別できる.

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解熱鎮痛薬によるTEN(toxic epidermal necrolysis)型薬疹の1例

 患 者:52歳,男性.

 既往歴:心筋梗塞,心房細動にて内服加療中.

 現病歴:左拇指外傷にて抗生剤などを内服中に発熱,咽頭痛が出現し,近医にて処方された感冒薬を内服.直後より体幹,四肢にそう痒性皮疹を認め,全身に拡大,某総合病院へ入院.口腔内びらんを認め,TEN型薬疹を疑われ当科へ転院.顔面,体幹,肛門,口腔粘膜に広範な表皮剝脱を認めた.プレドニゾロン50 mg/日の点滴静注治療にて皮疹の新生は停止し,その後漸減して中止.DLSTにてアセトアミノフェンが強陽性を示し,原因薬剤と推定された.TEN型のため同薬剤の貼布試験,内服試験は再発の危険性が高いため施行しなかった.

 われわれ臨床医は日常的に薬剤を使用しているが,その結果として薬剤アレルギーが起こりうるということを認識していなければならない.薬剤アレルギーは皮疹(薬疹)1)として発見されることが多く,いち早く気づいて,対処することが重要である.本稿では,薬疹を中心に薬剤アレルギーの診断と治療につき概説する.

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卵摂取でアナフィラキシーを起こした1患児例

 患 者:1歳,女児.

 既往歴:アトピー性皮膚炎にて加療中.

 家族歴:母がアトピー性皮膚炎,兄が気管支喘息,アトピー性皮膚炎.

 現病歴:アトピー性皮膚炎で加療中.6カ月時のアレルギー検査(血液検査)で卵白特異IgE抗体が陽性(スコア4)であり,卵摂取制限を行っていた.1歳時,誤ってマヨネーズをなめてしまい,5分後より顔面膨疹を伴う紅斑,咳嗽・喘鳴が出現,さらに嘔吐し,ぐったりしたため,救急車にて来院.血圧低下も認めたためすぐにエピネフリンの筋注を行い,その後抗ヒスタミン剤,ステロイド静注,さらに気管支拡張剤の吸入を行った.その後バイタル安定し,治療開始後1時間で症状軽快した.

食物アレルギーとは

 食物により引き起こされる生体にとって望ましくない反応をadverse reaction to foodと呼び,このうち免疫学的機序によるものを食物アレルギーという(図1).仮性アレルゲンとは,アレルギー反応によらない,すなわち食物自体にヒスタミン・セロトニンなどかゆみ・蕁麻疹などを誘発する成分が含まれており,この成分により症状が誘発されるものをいう.食物アレルギーとの鑑別が困難な場合があるが,安易に食物アレルギーと診断してはならない.

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喘息,アレルギー性鼻炎,アレルギー性結膜炎,アトピー性皮膚炎の原因が犬アレルゲンによる1例

 患 者:15歳,女児.

 既往歴:4歳時から喘息,8歳時からアレルギー性鼻炎.

 現病歴:喘息は軽快し,季節の変わり目にアレルギー性鼻炎の症状がみられていた.主治医に相談せず,阪神淡路大震災の時に飼い主が不明となったゴールデンレトリバーの里親になった.3~4年目から上記症状が自宅で出現するようになった.全寮制の学校に通学しているために,週末帰宅すると数時間以内に喘息発作が出現し,半日後には皮膚炎が悪化する.犬は今や家族の一員のため手放せず困っている.

 小児のアトピー性皮膚炎はこの20年間で急増した.この疾患に対する医学的な知識がその増加に追いついていないために,さまざまな問題が起きるようになった.それらは医師による見解,治療方針の違いに困惑する患児の保護者の当惑と不安,そして民間療法の増加である1)

 図1には,アトピー性皮膚炎の加齢に伴う原因の推移について一般的な傾向を示した.乳幼児期においては,確かに食物が関与している場合がみられる.しかし,図1に示すように,この年齢のアトピー性皮膚炎のすべてが食物アレルギーで説明されるわけではない.むしろ厳密な食物アレルギーの診断を行えば,アトピー性皮膚炎における食物アレルギーの頻度はそれほど多くないといえる.

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胎児のアレルギー疾患発症予防を相談してきた妊婦の1例

 患 者:妊娠16週,26歳,女性.

 既往歴:小児期に気管支喘息.

 家族歴:夫は健康.子どもは女児1名(3歳),食物アレルギーで食物除去中.

 現病歴:胎児のアレルギー疾患の発症予防として,母親が妊娠中から食物除去を行うべきか相談を受けた.妊娠中における児のアレルギー疾患の発症予防の対策として,妊娠中の特定の食品の除去は有効でないが,妊娠中から受動喫煙を避けること,および環境中のダニ抗原の除去を行うことは有効であると指導した.

 ここ20~30年の間,とくに先進工業国や西洋型の生活様式の諸国において,アトピー体質の頻度やアレルギー疾患の罹患率が急激に増加している(図1)1).本邦においても同様の傾向であり,かつ少子化が進んでいることから,妊婦が,生まれてくる児のアレルギー疾患の発症の予防を望むニーズは,確実に増加していると考えられる.しかし,現時点では,妊婦にできるアレルギー疾患の発症予防に関する報告は限られている.

 アレルギー疾患は,遺伝的要因および環境因子の影響により発症する,すなわち多因子疾患として知られている(アレルギー疾患の発症,J1).遺伝的要因は不変のため,アレルギー疾患の発症予防のストラテジーとしては,環境因子を詳細に検討することにより,発症の促進因子を避ける,もしくは抑制因子を推進するといった方法が考えられる.本稿では,エビデンスに基づいたアレルギー疾患の発症予防を目的とした妊婦指導についての現状を述べる.

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本治療法がうまくいった症例

 患 者:43歳,女性.

 現病歴:1995年の春より,花粉症.抗アレルギー剤などで加療されていた.症状は年々増悪.前年有効であった薬剤が,翌年には無効となってしまうため,不安をおぼえて漢方治療を希望し,2001年5月当科を受診.また,頭痛のため鎮痛剤をしばしば服用していた.初診時より柴胡桂枝乾姜湯を処方.2週間の内服で頭痛が消失.体調良好となる.2002年2月ごろより花粉症の症状が軽度出現.小青竜湯エキス2.5 g・麻黄附子細辛湯カプセル2capを朝一回内服.2002年の春はほとんど症状なく,抗アレルギー薬なども一切使用しないで過ごせた.

 花粉症をはじめとするアレルギー疾患は,日常よく遭遇する疾患である.さまざまな薬物が開発されているが,それだけでは満足が得られず当科を受診する患者さんも多い.これらの患者さんが,当科を受診する理由は大きく分けて以下の3つに集約される.①対症療法への不満,②ステロイド剤を使用することに対する不安感,③十分な効果が得られていない.

 これらの要求をもった患者さんに,必要最低限の西洋薬を併用しながら,漢方治療を施していくことは,非常に有用なことであると思われる.漢方療法では,現在出現している症状に対する標治療法と,根本的に体質を改善し症状を発現しにくくするという本治療法という考え方がある.これらをうまく使い分けることが,アレルギー疾患の漢方療法のポイントである.以下,アレルギー疾患の漢方療法について,とくにアレルギー性鼻炎,アトピー性皮膚炎に絞って概説する.

One more JIM
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Q1 アレルギー疾患を診断するためのポイントを教えてください.

 A 問診(現病歴,既往歴,アレルギー家族歴)によりアレルギー疾患を疑う.アレルゲン特異IgE抗体測定,皮膚テスト,食物除去・負荷試験などを施行して,原因となるアレルゲンを検索する.個々の症例において臨床的な診断が最も重要で,それに加えて各検査法の特徴を理解し,総合的に診断することが大切である.(古川 漸,他→本号p111)

Q2 喘息やアレルギー性鼻炎を疑った場合の血液検査の指針について教えてください.

 A 患者にアトピー素因があるか,またはどの程度かの判断のために,一度は血清総IgEを測定すべきである.好酸球数も必要である.特異的IgEについてはどの抗原を選ぶかが問題である.日本ではアレルギー性喘息の約80%がダニに対して陽性であり,主要抗原であるダニ1(Der p)とダニ2(Der f)では交差反応性が非常に高い.またハウスダスト(HD)はダニ,ネコ,ゴキブリ,カビ,花粉,繊維など種々のアレルゲンの混合物であるが,HD1,HD2はアメリカの別々の会社で作製されたもので,HD6は日本の家屋から採取したものである.HD2の陽性率はやや低く,HD1とHD6とでは97%の相関がある.したがって,筆者は初診では,ダニ1かダニ2のどちらか一方,さらにHD6かHD1の一方を測定している.さらにネコ,ウサギ,ハムスターなどのペットがいれば追加する.また,喘息ではカビ,ゴキブリ,ユスリカを測定することも多い.鼻炎については季節性ならスギ(春),ブタクサ(秋)など,通年性ならダニを必ず測定する.多種の原因が考えられる時はセット検査やMAST26を利用する.陰性が予想される時やスクリーニングにはマルチアレルゲンが有用である.(田中良一,他→本号p115)

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病 歴

 それまで元気に仕事(電気工事会社経営)をしていた52歳の男性が,3月3日に仕事から帰宅後に,悪寒を伴う39.7℃の発熱をきたした.目が回って少し見えにくい様子で,終日臥床している.翌日には悪寒戦慄をきたし,頸部痛,頭痛と軽度の悪心も認める.バファリン(R)を一回内服したのみで,食事が入らない.3月5日,トイレに行こうとふらふらと立ち上がった際に,家族が自動車に強引に乗せて,救急室を受診.質問には見当違いの返事しかできない.

 既往歴:高血圧,痛風,尿路結石,右鷲手の手術(4カ月前).

 嗜 好:喫煙(-),飲酒ビール大びん1本/日.

JIM Report ミシガン州立大学家庭医療学指導医研修プログラムに参加して(2)

卒前教育でここまでやる 江村 正
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 筆者が渡米する前に,医学教育の中で最も関心のあったのは卒後教育であった.研修医の指導をすることは自分自身の勉強にもなり,やりがいのある仕事ではあったが,教えないといけないことが山ほどあり,何から,どう教えてよいのか困ることがしばしばあった.ミシガン州立大学の卒前教育に参加して,基本的臨床能力に関する卒前教育が非常に充実しているということに気がついた.筆者が卒後教育に苦労していたのは,日本の不十分な卒前教育のつけが,卒後教育の場にまわってきていたからだ,と納得した.そこで今回は,プレクリニカル卒前教育について,とりわけ基本的臨床能力の教育について述べる.

 ミシガン州立大学における基本的臨床能力の教育(Clinical Skills Sequence)は,入学直後から2年生の春学期まで,5学期(ⅠからⅤ)にわたって行われる.

地域・家庭医療学実践記(第14回)

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 今回は,ファミリークリニックのスタッフを紹介し,スタッフからみた家庭医療をみてみます.

 私のクリニックには,へき地で働いている先生から“なんとぜいたくなことか”とお叱りを受けそうなくらいに,恵まれたスタッフがそろっています.それぞれの専門職が腕をみがいて,お互いを尊重しながら,地域を支えるチーム医療の実践をめざしています.

看護師

 従来の看護業務に加え,栄養指導,育児指導などを個別に行い,積極的に患者管理にかかわりをもちます.患者さんとの信頼関係ができるまでの,医師との橋渡し的な役割はとても大切です.困ったことがあれば何でも相談できる,村の保健室のような役割がもてれば,と考えています.家庭医を支えるのですから,年齢,性別,臓器別を問わず,患者中心の医療に理解を示すことができる知識や技能が要求されます.彼女たちは,既に病棟や訪問看護業務の経験をもつベテランです.

かかりつけ医のための家庭医療学(第26回)

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 昔の医師は,受診困難な患者の診療のために,よく往診をした.発熱や呼吸困難などの急性疾患から,在宅での看取りまで,交通手段が未発達で高度な医療機器のない当時,医師が往診かばんを片手に患者宅に訪れるのは,よく見られる光景であった.

 ところが近年,医療が専門分化し,医療機器による画像診断やさまざまなモニターの発達により,より質の高い医療を求めて,ケアの中心は専門の医療機関へと移っていった.しかし,専門分化の方向に偏りすぎたために,患者の全体像が見えにくくなった.その結果,さまざまな病気を持つ患者を一人の人間として,統合してケアすることが困難となっている.

在宅医療技術の進歩(第2回)

在宅における診察技術 平原 佐斗司
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 今回は,在宅医療における医学的アセスメント技術のうち,医療面接および身体診察についてとりあげる.

在宅での医療面接の目的

 在宅における医療面接の目的は,①信頼関係の構築,②医療情報の収集,③患者・家族の理解,④環境のアセスメントである.「信頼関係の構築」においては,在宅患者は疾患による闘病の歴史をもっており,現疾患の発症から今日までどのように対処してきたのかを理解し,闘病への共感を表すことが大切である.また,在宅医療における「医療情報の収集」は,患者本人からよりも,家族や前医,ケアマネジャーなどのコメディカルスタッフから得られる場合が多く,初回訪問までに医療情報を整理することが可能である.医療面接の目的の中でも,「患者と家族に対する基本的理解」は在宅医療ではとくに重要である.在宅医療は患者のQOLの向上を目的とし,患者の人生観や価値観に寄り添った医療であるので,患者のdemandや価値観を十分知ることからすべてが始まる.また,在宅医療は患者と家族の生活の場における医療であるので,介護者や家族の意向や思いについても十分な理解が必要である.「患者は何をしてきた人なのか?」「これからどうしたいと思っているのか?」「家族はそれぞれ患者にどういう思いをいだいているのか?」「家族は今後どうしたいと思っているのか?」「患者・家族はおのおの在宅医療に何を期待しているのか(依頼動機)」「患者はどういう価値観や死生観をもっているのか?」これらに興味をもち,理解しようとする姿勢が重要である.4つ目に,在宅医療においては入院の場合と異なり,患者のおかれた環境は千差万別である.患者の疾患や健康状態,QOLは環境に左右されるので,「清潔」「温度などの環境(冷暖房の有無)」「転倒のリスクファクター」など,患者のおかれた環境についての十分なアセスメントが必要である.

JIM臨床画像コレクション

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 頭痛は日本人に非常に頻度の高い疾患で,いわゆる頭痛持ちは日本人の3~4人に1人といわれている.その中でも筋緊張型頭痛,片頭痛,群発頭痛の3つが多く,それぞれの頻度は22%,8%,0.1%程度と推定され,これら3つの頭痛は“頭痛の3兄弟”とたとえられることもある1)

 ところで,その中でも最も頻度の高い筋緊張型頭痛の鑑別診断として後頭神経痛がある.「筋肉の痛みなのか」「神経の痛みなのか」は,非常に鑑別に躊躇する.周知のように,国際頭痛学会の分類では両者は区別されているが,その臨床像には以下のようにきわめて類似点が多い.①痛みの部位が類似している.②圧痛点があり,目の周囲や側頭部への放散痛がある.③神経ブロックが両者に共通して有効である2)

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 岡田(司会) 今月のターミナルケア・カンファレンスを始めたいと思います.「米国で進行期胃癌の治療を受け,終末期に帰国した39歳女性」のケースで,内科病棟からPCUに移られた患者さんです.内科病棟で担当されていた岡島先生,プレゼンテーションをお願いします.

症例呈示

 岡島(担当医) 患者さんは39歳の女性です.背景ですが,3人兄妹の末子でした.高校時代に交換留学でアメリカに行かれました.そのきっかけは,「小学校,中学校と規則で縛られていて,このままでは楽しめない,日本にいられない」ということでした.その後,アメリカの地が肌にとても合ったということで,そのまま大学に進学し,大学卒業後もアメリカで法律関係の事務所に勤務されていました.さらに,通訳の職を経て,アメリカの航空会社でフライトアテンダントとして働いておられました.2002年になって胃癌と宣告され,6月に日本に帰国されました.それまでは,アメリカで親代わりとなる日本人の夫妻のもとで暮らしておられ,帰国後はご両親と3人で生活されていました.

基本情報

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JIM
13巻2号 (2003年2月)
電子版ISSN:1882-1197 印刷版ISSN:0917-138X 医学書院

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