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今回は,在宅医療における医学的アセスメント技術のうち,医療面接および身体診察についてとりあげる.
在宅での医療面接の目的
在宅における医療面接の目的は,①信頼関係の構築,②医療情報の収集,③患者・家族の理解,④環境のアセスメントである.「信頼関係の構築」においては,在宅患者は疾患による闘病の歴史をもっており,現疾患の発症から今日までどのように対処してきたのかを理解し,闘病への共感を表すことが大切である.また,在宅医療における「医療情報の収集」は,患者本人からよりも,家族や前医,ケアマネジャーなどのコメディカルスタッフから得られる場合が多く,初回訪問までに医療情報を整理することが可能である.医療面接の目的の中でも,「患者と家族に対する基本的理解」は在宅医療ではとくに重要である.在宅医療は患者のQOLの向上を目的とし,患者の人生観や価値観に寄り添った医療であるので,患者のdemandや価値観を十分知ることからすべてが始まる.また,在宅医療は患者と家族の生活の場における医療であるので,介護者や家族の意向や思いについても十分な理解が必要である.「患者は何をしてきた人なのか?」「これからどうしたいと思っているのか?」「家族はそれぞれ患者にどういう思いをいだいているのか?」「家族は今後どうしたいと思っているのか?」「患者・家族はおのおの在宅医療に何を期待しているのか(依頼動機)」「患者はどういう価値観や死生観をもっているのか?」これらに興味をもち,理解しようとする姿勢が重要である.4つ目に,在宅医療においては入院の場合と異なり,患者のおかれた環境は千差万別である.患者の疾患や健康状態,QOLは環境に左右されるので,「清潔」「温度などの環境(冷暖房の有無)」「転倒のリスクファクター」など,患者のおかれた環境についての十分なアセスメントが必要である.
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