看護管理 29巻3号 (2019年3月)

特集 「看護研究」を問い直す “現場主体の質改善”を目指すマネジメント

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臨床現場では「看護研究」として,臨床看護師がデータを収集して分析・評価・まとめることに,長年取り組まれてきました。その多くは,看護研究や業務改善の委員会活動として推進され,一定の成果を導いてきました。しかし,看護業務が年々過密化する中,臨床看護師の看護研究への負担感が増していることが指摘されています。つまり,看護研究を実施する目的の共有,そして得られた成果を現場に還元するためのプロセスの再構築が,看護部組織と看護研究を取り巻く課題と言えます。

そこで本特集では,慣習的に継続している「現場の臨床看護師が行う看護研究」の意味や,「現場でこそ取り組むべきことは何か」を問い直す機会とし,そのための事例と方法論を提示します。特に,「データを用いた現場のケアの可視化とケアプロセスの改善」については,専門看護師に実践事例を紹介していただきます。

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看護研究を,「臨床看護師への継続教育」と「日常的な看護の質改善」の両輪で活用できる環境が整ってきた。本稿では特集の背景として看護研究を取り巻く状況を俯瞰するとともに,日本の臨床看護師による「看護研究」の強みを示し,「看護実践と研究の接点を増やす」活動を提案する。

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前稿では特集の方向性として,看護師の継続教育と看護の質改善に向けて看護研究を問い直すという視点を示した。ここでは現場で行う看護研究の「目的」は何かを整理し,それを可能にする研究の進め方を示す。さらに,看護研究を推進する組織文化を醸成するためのポイントを解説する。

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本稿では,組織の業務改善や人材育成の目的で「看護研究」をマネジメントしている看護管理者に向けて,看護研究を担当することになったスタッフが感じる困難とその対処法,望ましいサポート体制について,これまで国内で発表されてきた文献などをもとに解説する。

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院内に看護研究の実施体制を万全に整えることは容易ではない。本稿では,人的リソース,物的リソース,時間・コストの3つの観点から体制整備に向けた基本的考え方を示す。整備に必要となる項目をチェックリストで網羅的に解説するとともに,チェックリストを活用した整備の進め方を2事例で示す。

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本稿ではまとめとして,特集全体で述べてきたことを今一度振り返る。多忙な臨床現場におけるデータ収集や看護研究活動を,質改善や人材育成に効果的に結び付けるための方法を提案するとともに,望まれる組織・チームのあり方を考える。

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ケアの質を改善するための「データの収集・分析・実践へのフィードバック」という一連の取り組みを,日々の臨床で軌道に乗せるための具体的なアプローチは,これまで明確に示される機会は少なかった。本特集230ページからは4人の専門看護師が,エビデンスやデータを用いたケアの質改善活動の実践事例を報告する。本稿はその導入として4つの実践事例の読み方を紹介する。合わせて,組織的に取り組む際のフレームワークとして,米国・アイオワ大学病院で開発されたモデルを紹介する。

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 山形県立中央病院(以下,当院)集中治療室(CCU/SCU)では,「痛み・不穏・せん妄」の適正な管理のために,PADケアバンドルカンファレンス註1)を,毎日実施しています。その結果,看護師による痛み・不穏・せん妄に関する評価回数が経時的に増加し,ICUにおけるせん妄評価法である「CAM-ICU(Confusion Assessment method for the ICU)」の陰性日の割合が増加しました。

 このような取り組みは,「Know-Doギャップ」(スタッフが知識として知っていること[Know]と実際ケアを行うこと[Do]のギャップ)註2)を埋めるものであり,その動機付けや成果の可視化,業務への組み込むは,管理上有効であると考えます。

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 せん妄は,高齢者や身体疾患に合併し,身体的治療の妨げにもなり得る重大な疾患で,予防的介入が有効というエビデンスがあります。そこで,筆者の前所属先である聖路加国際病院でせん妄患者に対するケアの標準化を目指し,「せん妄の予防と対応アルゴリズム」を導入し,その効果を評価しました。

 その結果,せん妄発症率の減少など一定の効果を得られた一方で,重症化したせん妄や,せん妄にまつわるインシデントなどの課題は残り,ケア全体を俯瞰して改善の余地がないかを検討し,その結果に基づきさらなる再構築が必要でした。

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 筑波大学附属病院(以下,当院)外来化学療法室では,患者の漸増を背景に,安全かつ苦痛を少なく治療を提供するための施設設備やスタッフ配置の検討に当たり,その根拠となるデータ集積が必要と考えた。そこで,患者サービス評価の一貫として,患者待ち時間などを調査し業務評価と業務改善指標の探求およびマニュアル変更の指標作成を継続的に実施している。患者数動向やスタッフ配置によって変化するその時々の課題に関して検討を行い,業務の評価と改善に向けた指標が得られた。その指標が根拠となり,運用体制や人員配置の変更につながった。

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 サーベイランス(コラム1)とは感染症の発生数を数え,その感染対策のプロセスを評価し,改善できる人たちにフィードバックする医療の質の改善活動です。フィードバックは,誰が見ても何をすべきかが分かるデータの示し方と改善方法の提案が重要です。管理者や感染リンクナースが活動の指標とできるアウトカムデータとプロセスデータの両方を「見える化」して継続的にフィードバックすること,自部署の目標値設定を促し,改善活動の支援を行った事例について紹介します。

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現場に相談できる人がいてほしい

 現場では,「エビデンスに基づく実践がしたい」と思う一方で,日常業務に追われ,理想と現実のギャップを感じている看護師は少なくないと思います。臨床で分からないことがあったとき,いきなり原著論文を調べるという人は少ないでしょう。まず先輩や他職種に聞いてみたり,教科書や雑誌の特集を見たりするのではないでしょうか。

 日常の実践から生じる疑問はあっても,それをPICOやFINERといった枠組みを使ってリサーチクエスチョンに落とし込むのはなかなか難しいものです。いざ,情熱を持って信頼できる仲間たちと研究しようと思っても,時間がなかったりメンターがいなかったりするのが現状ではないでしょうか。

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活用しやすい電子カルテ蓄積データの特徴

 電子カルテにはさまざまなデータが蓄積されていますが,それらを研究に活用する際,活用しやすいデータとはどのようなものでしょうか。

・単一施設内や多施設間で表現方法や入力ルールが決まっている(特に診療報酬制度上で)

・入力方法が選択式である

・情報システム側に入力エラーチェックがあり,例外的な入力が発生しない

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 看護師の岩本大希氏,落合実氏が経営を担うWyL株式会社は,2016年に設立。現在は東京都東部のウィル訪問看護ステーション江戸川・江東,豊見城(沖縄),一関(岩手)の4事業所を運営。在宅ケアのアウトカムを量的に評価する「オマハシステム」を先駆的に導入するなど,戦略的な経営を行っている。

 直営店に所属する約30人の訪問看護師と,経営やケアの質に関するデータをできる限り共有していることも特徴。これにより,スタッフの組織へのエンゲージメントやコミットメント,職務満足度が高まり,ひいては人材の定着・確保にもつながるという。同社の組織運営の考え方について話を聞いた。病院看護部の運営にも多いに参考になるだろう。

巻頭 あしたのマネジメントを考えるヒント, このひとに聞く・3

石山恒貴氏 石山 恒貴
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「40代以上の組織人が『ミドル・シニアの憂鬱』を抜け出す方法」について教えてください

書籍『会社人生を後悔しない40代からの仕事術』は,40代以上の組織人であれば誰もが一度は味わう「ミドル・シニアの憂鬱」「キャリアの霧」を自ら晴らし,個人レベルで前向きにアクションするための“リアルな処方箋”として書かれました。

ミドル・シニア当事者である看護管理者のキャリアの棚卸しにも,そしてミドル・シニア世代のスタッフマネジメントにおいても活用できる同書について,著者の石山恒貴氏に話を伺いました。

シリーズ 看護管理者の組織学習・3

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「学習する看護組織」形成の重要性を述べてきた本シリーズ。第1回では学習する看護組織のコンセプトを,第2回では学習する組織を作る方法論(メソッド)を解説した。第3回は,学習する看護組織の担い手を,院内でどのように育てていけばよいかを考察する(全3回)。

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はじめに

 日本の災害看護教育は,阪神・淡路大震災以降,東日本大震災や各地で頻発する災害をもとに構築され,現在も検討が続いている。久留米大学病院(以下,当院)では,過去の災害で看護師を被災地に派遣したり,被災地から傷病者を受け入れた経験があり,急性期から中長期にかけて対応できる看護師を育成することが課題になっている。

 日本看護協会では,継続教育の偏りをなくし看護実践能力の向上を図るために,「看護師のクリニカルラダー(日本看護協会版)」(以下,JNAラダー)を開発している。しかし,災害看護の臨床教育は一部の組織を除き標準化されておらず,災害看護の継続教育は各病院や施設に委ねられている。そこで,筆者が作成し当院で行っている継続教育としての災害看護教育について紹介する。

連載 看護の可視化 量と質の両面から適切な評価を考える・14

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第13回では,一般病棟用「重症度・看護必要度評価票」をベースにして京大病院独自の看護師算定ルールを開発した経緯について解説しました。今回は,一般病棟用「重症度・看護必要度評価票」の項目が抜本的に見直され,特定集中治療室やハイケアユニットの基準も同時に見直された2014年診療報酬改定を機に,看護師算定ルールをどのように改変していったかを解説します。

連載 マグネットジャーニー 聖路加国際病院のチャレンジ・2

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本連載では,聖路加国際病院看護部が「マグネットホスピタル認証」を取得するまでの道のりを「マグネットジャーニー(マグネット認証への旅)」として紹介していきます。「CNSと管理の研究会」伴走のもと走り続けるこの過程はチャレンジに満ちています。

第2回では,米国のマグネットホスピタル認証病院の視察ツアーにおける学びと,帰国後に看護部の意思決定プロセスの1つとして立ち上げた「ナースの代表者会議」について紹介します。

連載 看護×経済学 経済学で読み解く看護サービスと医療政策・3

産業としての医療と看護 角田 由佳
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本連載は経済学の視点から,看護サービスの特性や取引の規模,看護師の生産性や雇用環境,診療報酬や介護報酬が及ぼす影響などさまざまなデータを活用しながら解説します。

第3回では,マクロの視点から,医療と看護サービスがどれくらい生産され,看護師がどれだけ就業しているのか,全体の動向を見ていきます。

連載 人生の終わりの日々のケアを訪ねて・14

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 シシリー・ソンダースのいう身体・心理・社会そしてスピリチュアルの側面は,人生の終わりの日々を考えるときにも大切です。今回は「ニューヨーク在宅ケア事業所」でホスピス緩和ケアチームのスピリチュアルケア主任を務める岡田圭さん(写真)のお話からまとめます。

 岡田さんは毎年日本各地で病院や在宅ケア関係者への講演会や現場での対話を重ねておられ,日米を経験しての言葉は示唆に富んでいます。

連載 コーチングと組織の関係性システムから考えるコミュニケーション 1人ひとりがイキイキ活きるチーム創り・14【最終回】

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 「コーチングと組織の関係性システムから考えるコミュニケーション」というテーマでこの1年間連載を続けてきましたが,今回が最終回となります。この1年3か月よく書き続けることができたな……というのが率直な感想です。私1人の力だけでは間違いなく続けられるわけもなく,一緒に連載を執筆したパートナーの田渋あづささん,『看護管理』編集室の皆さん,そして読者の皆さんがいらっしゃらなければここまで続けることはできませんでした。

 さらに言えば,本連載のベースの考え方「システム・コーチング®」(図)に興味を持っていただけたクライアントの皆さん,そして同じ想いを持ちそれぞれの分野・業界に「システム・コーチング®」を届けている仲間たち。多くの皆さんの影響を受けて,この連載を続けることができたと感じています。

連載 進化するチーム医療への旅 今求められるレジリエンスとは?・11

1年の旅を振り返ろう 清水 広久
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この連載では,これからの医療現場に必要な「進化するチーム医療」「理想のチーム・組織」のありようについて,主にシステム思考や対話・ダイアログを軸にしながら,読者の皆さんとともに追い求めていきます。

今回は,この1年間の旅(連載)の足跡を皆さんと振り返りたいと思います。

連載 看護師長のための介護保険の基礎知識・3

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 介護保険制度の保険給付は,保険証を持っていればその場で給付(治療)を受けることができる医療保険と異なり,利用にあたっていくつかの手続きが必要です。

 その1つは連載第1回(1月号)で述べた要介護認定ですが,その他にも「ケアプラン作成(ケアマネジメント)」が必要となります。

連載 特定行為研修を修了した看護師としての実践・3

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タイムリーなケアの継続のために

 大阪府済生会吹田病院(以下,当院)は,許可病床500床,7対1看護体制の急性期病院であり,地域医療支援病院として,地域に根ざした医療,保健,福祉活動に取り組んでいます。筆者は2004年に皮膚・排泄ケア認定看護師の資格を取得し,組織横断的に活動してきました。当院初の認定看護師として,創傷管理以外にも,後進育成やチーム医療の推進などの役割も担ってきました。

 そのような中で,医師の手術が終了するまで創傷処置を待たなければならないという経験に,ジレンマを感じることもしばしばありました。加えて,訪問看護師に同行させてもらい地域へ出向き,高齢者世帯,独居高齢者,老老介護などによる介護力不足や通院の負担を目の当たりにし,在宅医療における相談のタイミングの難しさなどを知りました。そこで,院内外を問わずタイムリーなケアの継続につなげることができればと思い,2011年度に特定看護師(仮称)養成調査試行事業に参加し,2016年3月に4区分(創傷管理関連,創部ドレーン管理関連,栄養及び水分管理に係る薬剤投与関連,ろう孔管理関連)の特定行為研修を修了しました。

連載 おとなが読む絵本——ケアする人,ケアされる人のために・152

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 去年の暮れに,用事があって長野県安曇野の森のなかにある絵本美術館森のおうちに立ち寄ったら,たまたま絵本作家・荒井良二さんの絵本原画展が開かれていた。絵本作家は,1枚の絵ごとに,文の言外の意味まで深く考えて,単なる説明的なものではなく,絵自体に何らかの意味をこめたり,文にはない遊びの小物を加えて楽しくしたりして,十分にその絵本の内容と面白さが伝わるように工夫を凝らしている。そのことは,絵本の原画展を鑑賞すると,よくわかる。そういう原画をじっくりと味わって,あらためて絵本を読み直すと,1頁ごとに脳内に刻まれた原画の感触が浮かんできて,絵本の味わいが一段と濃いものになる。

 荒井さんの原画展で格段に深い感動を覚えたのは,絵本『きょうというひ』だった。比較的小型の絵本で,展示されていたどの原画も,大きいものではなかった。だが,原画の1点1点が幼い子が描くようなのびやかな童画的タッチであるのに,とても品格があって,読む側の心が清浄化されていく感じがする。色は,黄色や赤が大胆に使われているが,乱暴な感じは全くなく,不思議なくらい清純さが満ちている。

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「管理」の基本が網羅された幅広い視点が身につく1冊。

 医療専門職は,その専門性を軸にキャリアを積んでいく。わずかな例外を除き,ほとんどの人が,専門性を高めることや専門領域を広げることに関心を持ってキャリアを歩む。

 しかし,ある時期,「管理職」という選択肢が生まれる。予期していた場合もあれば,突然のこともあるだろう。いずれにせよ,新たな役割を自己同一化していく過程には,さまざまな葛藤が生じる。さらに,役割取得後も,スタッフと上司との間で「うまくやる」ことの中で試行錯誤は尽きない。

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目次

INFORMATION

今月の新刊紹介

次号予告・編集後記 小齋 石塚

基本情報

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看護管理
29巻3号 (2019年3月)
電子版ISSN:1345-8590 印刷版ISSN:0917-1355 医学書院

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