臨床婦人科産科 66巻5号 (2012年4月)

オフィス ギネコロジー 女性のプライマリ・ケア

I 思春期

I章扉

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◆思春期の早発も遅発も患者が幼児や10代の微妙な年ごろの女性であるため,精神的なケアに深く配慮する.

◆思春期の早発は生命にかかわるような原因疾患が存在する可能性があるので,専門医による精査をまず行う.

◆思春期の遅発の多くは治療法が確立しているので,患者の精神的成熟を待ってから治療を開始する.

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◆原発性無月経は稀な疾患であり,その多くは先天異常にもとづく症候群である.

◆原発性無月経には,性器閉鎖症,子宮性,卵巣性,アンドロゲンによるもの,中枢性などがある.

◆婦人科受診時には,無月経のみならず,二次性徴発現不全,他科からの紹介などがある.

◆治療法は多岐にわたるが,専門医のアドバイス,新しい情報の収集が常に必要である.

◆患者ならびに家族へのインフォームド・コンセントが最も重要な点である.

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◆思春期は初経から排卵周期の確立を含めた性成熟過程にあたる.

◆その過程で起こる機能性の月経異常は成長とともに自然軽快することが多い.

◆思春期の月経異常に対する治療は器質的疾患を除外したうえで経過観察が中心となる.

◆貧血および疼痛により生活の質(QOL)の低下を認める場合は薬物療法を行う.

◆薬物療法無効例や手術を要する器質的疾患を認める場合は高次医療機関へ紹介する.

肥満とやせ 甲村 弘子
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◆20歳台女性の25%はBMIが18.5未満の「やせ」である.

◆体重減少による無月経では,体重が標準体重の70%以上になってからホルモン剤による治療を行う.

◆肥満を伴うPCOSに対してはまず体重減少を指導する.無排卵に対しては定期的に消退出血を起こす.

◆やせている女性は,切迫早産,早産,低出生体重児を分娩するリスクが高い傾向がある.

◆肥満女性は,妊娠高血圧症候群,妊娠糖尿病,帝王切開分娩,死産,巨大児などのリスクが高い傾向がある.

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◆HPV感染は性交渉を通じて広く蔓延し,子宮頸がん最大のリスクファクターである.

◆2価のサーバリックス®と4価のガーダシル®がわが国では承認されている.

◆HPV抗体価は接種後7年以上有効なことが現時点では確認されている.

◆性行為前の10~14歳の女性を優先的な接種推奨年齢としている.

◆ワクチンを接種した女性もこれまでと同様に子宮頸がん検診を受ける必要がある.

II 月経異常/不妊・不育/避妊

II章扉

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◆続発性無月経の診断に際しては問診,身体所見を重視する.

◆初診時にホルモン測定と同時にプロゲスチン負荷試験を実施する.

◆LH-RH負荷試験により障害部位を診断する.

◆挙児希望の有無により治療法が異なる.

◆肥満を伴うPCOSは体重減少を原則とする.

第2度無月経 桑原 慶充 , 竹下 俊行
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◆プロゲステロン単独投与で消退出血を認めず,エストロゲンを併用して初めて消退出血が得られるものを第2度無月経と判定する.

◆持続的な低エストロゲン状態にあり,長期化した場合に将来的な骨粗鬆症や心血管系異常のリスクが上昇することから,積極的に治療を行う.

◆挙児希望のない場合は,排卵誘発を積極的に行う必要はなく,Kaufmann療法を施行し,挙児を希望する場合はゴナドトロピン療法を施行する.

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◆思春期女性の続発無月経の原因として,体重減少による無月経が最多となっている.

◆なかでも神経性食欲不振症(AN)は死亡率が高いため,体重減少性無月経とANの鑑別を適切に行う.

◆体重減少を伴う無月経に遭遇した場合,器質的疾患を除外したのちに,食行動の異常,病識の有無などの心身症的背景の有無によって,体重減少性無月経とANに分類する.

◆治療は,体重の回復が第一であり,体重の回復後にホルモン補充療法や不妊治療を開始する.

◆長期間の治療が必要となることが多いため,よりよい患者─医師関係を築くことが大切である.

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◆過多月経や月経困難症は,その症状がない女性から,本人の生活の質を大きく損なう女性までさまざまである.

◆稀ではあるが,過多月経による重度の貧血から生命が脅かされるようなケースもあり,的確な診断が必要になる場合がある.

◆過多月経や月経困難症を引き起こす背景には,不妊症の原因となる子宮内膜症や子宮筋腫が潜んでいる場合も少なくないため,妊孕性の問題も念頭に置いて診察する必要がある.

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◆月経前症候群(PMS)の症状は黄体期に起こり,月経期には消失する.

◆月経前不快気分障害(PMDD)はPMSのなかで精神症状が重症型のものである.

◆PMSやPMDDの病因として性ステロイドとセロトニンが重要である.

◆PMSやPMDDの診断には患者による前方視的な記録が重要である.

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◆子宮の構造や機能に異常があり,月経の起こらないものが,子宮性無月経である.

◆原発性無月経のものは子宮欠損や精巣女性化症候群を含み,病因の精査が必要である.

◆子宮より下部の性管の構造異常も,子宮性無月経と同様の症状・特徴を有する.

◆月経血量20 mL以下と定義される過少月経は,軽度の無月経と考えて,同様に取り扱う.

◆長期にわたる投薬・観察やカウンセリングなどオフィスでの診療の可能なものがある.

早発卵巣不全(POI) 石塚 文平
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◆早発卵巣不全(POI)は稀な疾患ではなく,不妊治療,ホルモン補充療法について熟知すべきである.

◆病因として,自己免疫機序が占める割合は高い.

◆卵巣予備能を評価するパラメーターがなく,治療終了時期の判断は困難である.

◆不妊治療の成功率は徐々に改善している.

◆今後さらなる治療法の開発が期待される.

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◆排卵障害は全身疾患の影響も受けるので,全身的病因の検索も必要である.

◆一般排卵誘発の目標は単一卵胞発育・単胎妊娠である.

◆初回クロミフェン投与は1日1錠3日間と,なるべく低用量投与で卵胞発育を評価することが大切である.

◆低用量FSH漸増法でdose upする判断に悩むときは,同じdoseを継続するほうが単一卵胞発育になりやすい.

◆HHではhypergonadotropicな状態が卵胞発育を抑制していることもあるので,エストロゲン製剤投与が有効な症例がある.

黄体機能不全 杉野 法広
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◆黄体機能不全は単一の病因による疾患ではなく,多くの病態や病因が含まれている.

◆黄体機能不全(luteal phase defect)は,広い意味で着床不全を意味する.

◆黄体機能不全は高い確率で次周期も繰り返す.

◆黄体期のチェック項目として子宮内膜の厚さの評価も重要である.

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◆卵管性不妊の原因はクラミジア感染と子宮内膜症性癒着によるものが多い.

◆検査法は子宮卵管造影がゴールドスタンダードで,その他に超音波下卵管造影法,卵管通気・通水法,子宮鏡下選択的卵管通水法がある.

◆検査法にはそれぞれメリットがあり,すべての検査手技に習熟し,患者によって使い分けることが大事である.

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◆男性不妊の原因は造精機能障害が83%で,その56%が原因不明である.

◆造精機能障害に対する非内分泌療法の有効性は乏しい.

◆低ゴナドトロピン性性腺機能低下症はFSH/hMG療法が著効する.

◆精索静脈瘤に対する手術療法は有効性が高い.

◆男性不妊治療により30%の症例では治療のステップダウンができる可能性がある.

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◆抗リン脂質抗体には,抗カルジオリピン抗体,抗β2-GPI抗体,LACなどがある.

◆診断基準に,検査所見は12週間以上,2回以上陽性とあるが,その前に治療が必要となることがある.

◆測定法をよく理解し,陽性の意義を理解する.

◆抗リン脂質抗体陽性の出現頻度10~20%である.

◆治療では低用量アスピリン・ヘパリン併用療法が効果的で,アスピリンの投与では投与時期に注意する.

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◆不育症の原因は,夫婦染色体異常,子宮奇形,抗リン脂質抗体である.

◆胎児染色体異常も51%を占め,真の原因不明は約20%と推定できる.

◆均衡型転座保因者に対する着床前診断の自然妊娠に対する優位性は立証されていない.

◆胚スクリーニングも同様であり,胎児染色体異常による不育症の予後はよい.

◆女性の加齢が最大の危険因子であるため,時間を無駄にさせないことが重要である.

避妊指導 綾部 琢哉
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◆さまざまな避妊方法の副効用やマイナス面を考え,利用者の状況に応じる.

◆卵胞発育機序や排卵機序を理解したうえで,その抑制方法を考える.

◆疾患を内服治療中の場合は,治療薬と避妊方法との相互作用を考える.

◆軽微な症状でも重篤な合併症が潜むことがあり,看過しないようにする.

◆経口避妊薬投与にあたっては子宮がん検診を忘れないようにする.

緊急避妊法 北村 邦夫
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◆緊急避妊法 : 避妊できなかった,避妊に失敗した,レイプされたなどに際して行う最後の避妊法である.

◆緊急避妊薬 : 黄体ホルモン製剤の一種であるレボノルゲストレル1.5 mgを性交後72時間以内に服用する.

◆銅付加子宮内避妊具 : 避妊法の一種.緊急避妊としては性交後72時間以内に挿入し高い避妊効果が得られる.

III 感染症

III章扉

骨盤内炎症性疾患 関 博之
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◆オフィスギネコロジー : 分娩・入院施設をもたずに外来中心の診療形態を示す言葉である.

◆骨盤腹膜炎 : 腟,子宮頸部から子宮内膜,卵管,腹腔内へ上行する微生物により惹起される炎症性疾患である.

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◆梅毒の診断においては生物学的偽陽性が出てくるので注意を要する.

◆梅毒は5類感染症で全例を都道府県知事に届け出る必要がある.

 無症状でもSTSで16倍以上の場合も届け出る.

◆淋菌においては,多剤耐性菌が多く,その治療にあたっては,注意を要する.また,症状によっても抗菌薬の使い分けが重要である.

クラミジア感染症 渡辺 博
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◆性器クラミジア感染女性は2002年をピークとして減少し,2009年にはほぼ半減している.

◆クラミジア感染女性の年齢は20歳台に多く,過半数は無症状である.

◆産婦人科クリニックを受診する若年女性には,積極的にクラミジアの検査を勧める.

◆クラミジアの検査は必ずしも診察台で腟鏡診を行わなくとも可能である.

◆治療後適切な時期の治癒判定と,感染予防のための自己防衛の意識を高めさせる.

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【外陰・腟カンジダ症】

◆外陰腟炎を主訴とする患者の来院時は,まず腟分泌物の検鏡を行う.

Candidaは腟の常在菌の一種であり,症状がなければ治療の対象とはならない.

◆急性期外陰・腟カンジダ症の治療は,イミダゾール系抗真菌薬腟錠(連日通院が原則で腟洗浄後に腟錠を挿入,100 mg錠を連日6日間,または600 mg 1回投与)および局所塗布(1日2~3回,外陰部に薄く広範囲に塗布を連日7日間行い,継続治療が必要かどうか検討.同一薬剤での治療期間は原則14日間まで)を行う.

◆生活指導として,刺激性石けんの使用禁止,通気性のよい下着,患者の下着は最後に洗濯し漂白剤にて殺菌,急性期には性交渉の禁止を指導する.難治性の場合はパートナーも治療する.

◆腟炎としては,トリコモナス腟炎,淋菌性腟炎,非特異性腟炎,老人性腟炎が鑑別診断に挙げられる.

◆外陰部の皮疹,搔痒感を示す疾患で鑑別に挙げられる疾患は,尋常性湿疹,皮膚搔痒症,Fox-Fordyce病,接触性皮膚炎,外陰ヘルペス,外陰Paget病,外陰癌,Behçet病,頑癬が挙げられる.

【トリコモナス腟炎】

◆無症状のキャリアから,しばしば月経直後に激しい急性炎症症状を訴える場合までさまざまである.感染を繰り返す場合が多い.半数以上が帯下増量を訴えるが,常にトリコモナス腟炎に特有な帯下とは限らない.

◆トリコモナス腟炎患者の半数近くが搔痒を訴え,程度が激しい場合がしばしばある.性交痛,排尿痛,卵管炎を併発すると下腹部痛を訴える場合もある.妊婦では,放置すると混合感染から前期破水や早産に至る場合がある.

◆帯下や尿道分泌物をスライドグラス上で37℃に暖めた生理食塩水に浮遊させ,カバーグラスをのせて検鏡する.ミジンコのように動くTorichomonas原虫を確認する.

◆腟トリコモナス症では腟内だけではなく,Bartholin腺,Skene腺や尿路などにも感染を起こしやすく,腟錠のみの治療より経口投与のほうが有効である.

◆治療は,メトロニダゾール500 mg/日,分2,10日間投与または,メトロニダゾール2,000 mgの単独投与,あるいは,500 mg/日,分2,7日間投与となっている.

◆メトロニダゾールの副作用として,アルコールによる腹部の疝痛,心悸亢進,悪心,嘔吐,めまい,紅潮などが出現することがあり,飲酒を控えるように注意する.

◆妊婦では胎盤通過性があり,動物実験にて催奇性が認められているため,局所投与にする.特に妊娠12週以前の経口投与は禁忌である.治療前に妊娠の可能性の確認を怠ってはいけない.

◆妊婦にはメトロニダゾール腟錠を,1日1回250 mg,7~14日間,腟内挿入する.または,チニダゾール400 mg/日,分2,7日間,または,2,000 mg単回投与の経口投与法もある.チニダゾール腟錠なら,1日1回200 mg,7日間,腟内挿入する.

IV 妊婦

IV章扉

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◆妊娠していても尿妊娠反応陰性の時期や陽性でも子宮内に胎囊が見えない時期がある.

◆子宮内胎囊の診断はpseudo GSに注意して慎重に.White ring,卵黄囊を確認する.

◆妊娠週数・予定日の確認は基礎体温表が正確であり,次善は妊娠8~10週のCRLによる.

◆多胎妊娠では妊娠10週以前にしか膜性を確実に診断することはできないと考える.

◆妊娠10週を過ぎても,λサイン,Tサイン,膜の厚さ,胎盤数は多胎膜性推定に有効である.

異所性妊娠 児玉 由紀 , 鮫島 浩
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◆異所性妊娠は全妊娠の1~2%の頻度で,妊娠関連の死亡の6%を占めている.

◆異所性妊娠の95%以上は卵管妊娠である.

◆異所性妊娠を疑う所見を理解する.

◆異所性妊娠が疑われたら,早い段階で緊急時に対応できる高次施設に紹介する.

流産 八木 洋也 , 濱田 洋実
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◆オフィスギネコロジーで妊娠女性を管理するには,時間外受診時の対応策を講じる必要がある.

◆流産診療の場合には,特にこれらの対応策が重要である.

胞状奇胎 佐村 修
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◆2011年7月に絨毛性疾患の新しい取扱い規約第3版が発刊された.

◆胞状奇胎の診断基準の中心が肉眼的所見から組織学的所見に変更となった.

◆妊娠8週未満の場合,胞状奇胎と通常の流産の鑑別が困難なことがある.

◆流産での子宮内容物に関しては,必ず病理組織検査に提出する.

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◆現時点では,すべての妊婦にNTを測定することは現実的ではない.

◆NTの肥厚が疑われたら,専門医にすぐに紹介する.

◆妊婦には,NTの肥厚が必ずしも胎児の異常を意味するものではないことを伝える.

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◆妊婦健診時のチェック項目を理解する.

◆超音波検査での妊娠週数ごとのチェック項目を理解する.

◆妊婦健診検査項目の結果を理解し,妊婦に指導できるようになる.

◆妊婦のなかから異常妊娠経過の妊婦を判別できるようになる.

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◆子宮筋腫 : 約20%の症例で妊娠中に増大する.妊娠予後は比較的良好であり,直径6 cm以下の子宮筋腫では経過観察とする.

◆子宮頸がん : 上皮内癌ならびに微小浸潤癌の妊娠では経腟分娩,微小浸潤癌の場合は円錐切除術が必要である.

◆卵巣囊腫 : 直径6 cm以下の場合は経過観察とする.分娩方法は原則として経腟分娩である.

◆卵巣悪性腫瘍 : 流早産,分娩停止や茎捻転が起こりやすい.治療方法は基本的に非妊娠時と同様である.

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◆妊婦に対し,風疹患者との接触,発疹,発熱,頸部リンパ節腫脹の有無の問診を行う.

◆妊娠初期に,全妊婦に対して風疹HI抗体価を測定する.

◆感染診断検査には,ペア血清HI抗体価および風疹特異的IgM抗体価測定を行う.

◆風疹HI抗体価16倍以下の妊婦には,産褥早期の風疹ワクチン接種を勧める.

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◆日本では毎年,先天性CMV感染で約1,000人,先天性トキソプラズマ感染で136~339人が後障害を起こす.

◆日本では全妊婦の0.21~0.27%が,妊娠初期にトキソプラズマ初感染を起こすと推計される.

◆トキソプラズマIgMやCMV IgM陽性の半数以上は本当の初感染ではなく,persistent IgMや偽陽性である.

◆トキソプラズマIgMやCMV IgM陽性者には,IgG avidity検査が初感染の同定に有用である.

◆トキソプラズマ,CMV,PVB19の胎内感染の出生前診断として羊水PCR検査の選択肢がある.

◆抗体陰性妊婦に対しては,妊娠中に初感染が生じないように教育・啓発を行う.

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◆B型肝炎,C型肝炎の母子感染防止は,児の将来的な悪性疾患回避を意味する.

◆B型肝炎:母体HBe抗原陽性の場合,母子感染のリスクが高い.出生後は児全例に抗HBsヒト免疫グロブリン,HBワクチンを児に投与する.

◆C型肝炎:母体HCV-RNA量高値の場合,母子感染のリスクが高い.この際,帝王切開も考慮する.

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◆HTLV-1はATLやHAMの原因ウイルスであり,そのキャリアは全国に拡散している.

◆HTLV-1キャリア妊婦から児への母子感染の主要経路は母乳感染である.

◆人工栄養はHTLV-1の母子感染への予防効果が最も高い栄養法である.

◆医療者は,出生後の栄養法の選択が児にとって将来のATLの発症リスクを最も効果的に回避しうるチャンスであることに留意して,保健指導を行う.

◆HTLV-1の検査システムには,結果の告知とその後のフォロー体制の確立が重要である.

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◆1st trimesterでは頭頸部の観察が重要である.

◆胎児形態異常のスクリーニングは,各臓器や器官の発達に応じて観察する必要があるため,妊婦健診ごとに超音波検査を行うことが望ましい.

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◆胎盤・臍帯異常は,母体や胎児に致命的な結果を及ぼすことがあるので,系統立てた分娩前スクリーニングが必要である.

◆前置胎盤は,組織学的内子宮口と胎盤の位置関係を詳細に観察して診断することを心がける.

◆臍帯異常のなかでは,卵膜付着,前置血管のスクリーニングが重要である.

◆分娩目的の妊婦を妊娠末期に受けるときには,臍帯や胎盤異常の超音波診断が困難な症例も多く,オフィス診療でのスクリーニングとその情報提供がよりよい妊娠・分娩管理につながる.

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◆ハイリスク妊娠とは,「妊娠期間中あるいは分娩後まもなくに母児のいずれかまたは両者に重大な予後が予想される妊娠」を指す.

◆ハイリスク妊娠のなかには偶発合併症,既往妊娠分娩歴,社会的要因などが含まれ,原因は多岐にわたる.

◆リスクスコアを用いたハイリスク妊娠の抽出は有用である.

◆リスクスコアは完璧なものではないので,常に医師によるリスク評価が必要である.

◆今後,オフィスギネコロジーの1分野として,リスクスコアを用いた周産期オープンシステムへの参加が可能であると考える.

早産の予防 金山 尚裕
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◆分娩発来機構からどのような原因で早産が発生するかを考え,早産予防対策を立てる.

◆絨毛膜羊膜炎,絨毛膜下血腫,ストレス,プロゲステロンに注目する.

◆絨毛膜羊膜炎では腟・頸管炎対策,歯周病対策,絨毛膜下血腫では凝固線溶系,各種ストレス対策,プロゲステロン補充を考える.

V 婦人科疾患

V章扉

子宮筋腫 山下 能毅 , 大道 正英
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◆子宮筋腫はエストロゲン依存性の良性疾患であり,閉経後に発見された筋腫や急速に増大するものに関しては子宮肉腫との鑑別を要する.

◆無症状の場合は,治療の必要がなく経過観察のみとし,有症状の症例に対しては治療を行うことが肝要である.

◆治療方法は,挙児希望の有無,閉経までの期間や筋腫の発生部位により異なる.

◆原因不明不妊症においては子宮筋腫が不妊原因となり得るため,生殖医療指導医,内視鏡技術認定医に相談することが望ましい.

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◆異型を伴わない子宮内膜増殖症は定期的な経過観察を行う.

◆子宮内膜異型増殖症は高分化型腺癌との鑑別を要し,またそれらの共存に注意する.

◆子宮鏡検査は内膜ポリープの診断に有用な検査である.

◆内膜ポリープに対して子宮鏡下手術での確実な診断および治療を行うことが勧められる.

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◆超音波断層法とMRI検査は必須の診断法である.

◆子宮内膜症と子宮腺筋症の薬物療法のアルゴリズムは,ほぼ同様である.

◆不妊患者では,ARTへの移行時期を逸しないように留意する.

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◆オフィス診療で卵巣腫瘍を認めた場合,悪性はもちろん良性でも手術適応となる可能性が高いため,それぞれの腫瘍の特徴を把握しておくことが必要である.

◆卵巣腫瘍のなかには,小さな(囊胞径5 cm以下)単純性囊胞や機能性囊胞など,オフィス診療で経過観察可能な囊胞性腫瘍も存在するが,径が大きい(6 cm以上)囊胞性腫瘍や,腫瘍により痛みや圧迫などの症状を伴う場合,小さくても単純性囊胞とは異なる「腫瘍」を疑う場合,充実性腫瘍,また悪性を疑う腫瘍などは高次医療機関で取り扱うこととなる.

◆このため卵巣腫瘍に際しては,自他覚所見,経腟超音波検査,腫瘍マーカー検査などを十分に活用して診断することが重要であり,それらの情報から高次医療機関での精査・治療の必要性を総合的に判断する.

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◆卵巣に囊胞性腫瘤を認めた場合,まずは機能性卵巣囊胞の可能性がないかを検討する.

◆閉経後でも機能性卵巣囊胞が発生することは念頭に置くべきである.

◆出血性黄体囊胞はさまざまなエコー像を呈し,診断が容易でないこともある.

◆手術既往症例などでは,peritoneal inclusion cystの可能性も考慮して鑑別を進める.

◆卵管瘤水腫や卵管瘤膿腫では,症状や検査所見により治療の要否,内容を検討する.

腟部びらん,頸管ポリープ 梁 善光
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◆本疾患・状態の診断には腟鏡診が必須であり,内診時に腟鏡診を省略せずに施行することが重要である.

◆腟部びらんは原則的に病的疾患ではないため,症状の有無が治療を行うかどうかのポイントになる.

◆頸管ポリープと称される疾患の本態はいくつかあり,単独ではないことに留意する.

◆頸管ポリープはきわめて稀ながら,悪性所見が見つかることもあることを念頭に置く必要がある.

◆世界的には頸管ポリープに対する治療方針はcontroversialであり,今後の動向に注意が必要である.

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◆バルトリン囊腫は,感染を伴ったり膿瘍を形成したりした場合は処置が必要である.

◆まず,穿刺・切開,ドレナージを行い,起炎菌を検出し,適当な抗菌薬を投与する.

◆急性期を避けて造袋術を行う.再発例や悪性を疑う場合には,入院して麻酔下に摘出術を行う.

◆外陰の隆起性病変や難治性の湿疹を伴う潰瘍性病変は,組織診で確定診断を行う.

◆組織診は皮下組織を含める必要があり,病変の中心部から局麻下にメスや皮膚生検用トレパンを用いて行う.

VI がん検診

VI章扉

子宮頸がん検診 井上 正樹
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◆子宮頸がん検診には三位一体の改新が必要である.Bethesdaへの移行,HPV検査の併用,液状細胞診.

◆行政検診,保険診療検診,自費診療検診,それぞれの目的の違いを認識する必要がある.

◆検診はがんの二次予防である.一次予防にはHPVワクチンが有用である.

◆10代からHPVワクチンを,20代から子宮頸がん検診を.

◆がん検診はHPV感染状況よりも病変の状況が重要であることを忘れてはならない.

子宮体がん検診 上坊 敏子
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◆子宮体がんは近年急激に増加し,頸がんの症例数を超えている.

◆若年子宮体がんは39歳以下の発症頻度は低いが,体がん全体の増加に伴って,近年増加しつつある.

◆正しく内膜細胞診を行うことが,体がん検診の最も有用な手段である.

◆体がん検診の対象 : 不正性器出血例,ホルモン補充療法中の女性,乳がん合併例,若い不妊女性.

◆経腟超音波 : 閉経後女性のスクリーニングには経腟超音波が有用である.Cut-off価は4~5 mmとされる.

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◆一般乳房外来では乳がんとその他の乳腺良性疾患との鑑別が重要である.

◆乳がんおよび乳腺良性疾患の発見には視・触診法に超音波,MMGを併用する方法が有用である.

◆妊婦に対する検診には超音波を中心とした方法が有用である.

VII 更年期・老年期

VII章扉

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◆「更年期障害」は40代以降の男性にも起こることがある(男性更年期障害).男女とも症状の強弱には精神的要素が大きくかかわってくる.

◆更年期は多くの疾患が発症し始める時期である.外来では,患者の置かれている周囲環境を考えて,訴えを上手く聞き出して,診療を行う.薬剤に頼りすぎてはうまく行かないこともある.

◆QOLを上昇させる,健康寿命を延ばすことを考慮した,個々人に応じたテーラーメード医療の提供が必要である.

VII 更年期・老年期 全身性疾患

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◆うつ,不安障害ともに女性に多くみられる疾患であり,また更年期障害の症状と類似するため更年期女性の診察の場合には常に念頭に置く必要がある.

◆うつや不安障害の診療に役立つ簡便な心理テストが数種類あり,有用であるが,偽陰性や偽陽性の存在には注意を要する.

◆うつ病および不安障害の治療の第一選択はともにSSRI/SNRIであり,原則は単剤投与である.

◆不安障害の治療におけるベンゾジアゼピン系抗不安薬は原則として高力価のものを用い,抗うつ薬の効果がみられたら漸減する.

◆うつ病の重症化や自殺の可能性,双極性障害の可能性などを認めた場合は専門医へ紹介する.

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◆更年期,特に閉経期以後では「物忘れが多い」と自覚する頻度が高くなる.

◆更年期の物忘れの大部分は良性健忘であるが,老年期に入ると悪性健忘の症例も現れる.

◆必要に応じて三宅式記名力検査を行う.

◆認知症が疑われるときには,認知症スクリーニングテストを行うか,直接専門医に紹介する.

◆HRTを閉経後早期に開始すると,Alzheimer病のリスクが3~4割減少する可能性がある.

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◆女性は40歳頃から肥満者の割合が急に増加し,閉経後に特に肥満が増加する.

◆閉経後は,メタボリック症候群に関与する内臓脂肪の蓄積が増加する.

◆脂肪細胞はエネルギー貯蔵として機能するだけでなく,内分泌臓器としても機能する.

◆内臓脂肪面積100 cm2に相当するウエスト周囲長は,女性は90 cmである.

◆肥満は,子宮体がん,乳がん発生のリスク因子の1つである.

高血圧 嘉川 亜希子
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◆家庭血圧の測定は診断のみならず治療の効果判定にも有用である.

◆高血圧治療の目的は,心血管病変の一次・二次予防や他の臓器障害の進行を抑えることにある.

◆すべての高血圧患者において生活習慣の修正は重要である.

◆第一選択薬は,Ca拮抗薬,ARB,ACE阻害薬,利尿薬,β遮断薬の5種類である.

◆必要な場合は速やかに専門医へ紹介する.

脂質異常症 若槻 明彦
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◆閉経後に高コレステロール血症,高中性脂肪血症,低HDL-C血症の頻度が増加する.

◆女性の脂質異常症は冠動脈疾患の発症と密接な関連がある.

◆脂質異常症の診断には12時間以上の絶食後に採血し,総コレステロール,HDL-C,中性脂肪を測定し,LDL-Cはfriedewaldの式から計算する.

◆高LDL-C血症に対するスタチン投与は55歳以上での有用性が示されている.

◆経皮のホルモン補充療法は心筋梗塞の発症リスクを低下させる可能性がある.

糖尿病,耐糖能異常 平松 祐司
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◆妊娠糖尿病,妊娠時に診断された明らかな糖尿病のあった人は,産後も定期的スクリーニングを受けること.

◆糖尿病家族歴,肥満,低出生体重,妊娠糖尿病・巨大児出産既往のある人では積極的に糖尿病スクリーニングを行う.

◆50歳以前に卵巣摘出を受けている人も注意する.

◆更年期以降は心血管障害,骨粗鬆症,認知症などを発症しやすいため注意する.

◆更年期以降の糖尿病患者では,血糖管理だけでなく,喫煙,高血圧,高コレステロール,過体重の厳重管理をする.

骨粗鬆症 茶木 修
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◆閉経後骨粗鬆症は閉経後の急激なエストロゲン減少が主因で骨量の減少をきたすことから発症する.

◆治療にはエストロゲン製剤,ビスホスホネート製剤,活性型ビタミンD,ビタミンK2などのほかSERMも有効である.

VII 更年期・老年期 婦人科疾患

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◆月経周期異常は問診・身体所見・内分泌検査などから原因を検索する.

◆不正性器出血に対して系統的な鑑別診断を行う.

◆機能性と判断して治療を開始する前に必ず器質的原因を除外しておく.

◆悪性腫瘍を疑う場合は細胞診や組織検査を行う.

更年期障害 望月 善子
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◆基礎疾患を見逃さない.

◆更年期についての正しい情報を提供し,診断や治療について啓発する.

◆更年期障害の薬物治療には,ホルモン補充療法(HRT),漢方療法,向精神薬がある.

◆産婦人科という枠にこだわらず,更年期を中心としたトータルヘルスケアを行う.

萎縮性腟炎 樋口 毅 , 水沼 英樹
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◆萎縮性腟炎・外陰炎とは中高年女性,特に閉経後の慢性的なエストロゲン欠乏状態にある女性に多く認められる病態・疾患である.

◆更年期障害・病状の評価をすることが望ましい.

◆帯下の異常,外陰の形態異常を認める場合は感染症,内性器も含めた悪性疾患などの除外が重要である.

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◆更年期,特に閉経後の女性にはエストロゲン分泌欠乏により種々の性的機能の障害がみられる.

◆更年期の性的機能障害にはホルモン補充療法・アンドロゲン療法が有効である.

VII 更年期・老年期 Urogynecology

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◆高齢社会において9人に1人が骨盤臓器脱や尿失禁のために医学的介入が必要となる.

◆膀胱・尿道・子宮・直腸・肛門が腟を中心に支持されて羽蓋弁構造によって脱出を免れる.

◆腟壁の支持破綻によって尿道過可動,膀胱瘤,子宮脱,小腸瘤,直腸瘤が出現する.

◆骨盤臓器脱はペッサリーや骨盤底筋体操の保存的治療で合併症状を軽減することができる.

◆メッシュを用いた低侵襲手術の開発でオフィスギネコロジーでの外科治療も可能となる.

下部尿路障害 中田 真木
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◆内性器疾患と骨盤底支持障害は,女性下部尿路症状(FLUTS)の主要な原因である.

◆過活動膀胱(OAB)は,尿意切迫感を呈する種々の病態を1つに括る一般診療向けの診断区分である.

◆腹圧性尿失禁(SUI)や骨盤臓器脱(POP)の診断と評価において,超音波検査は有用性が高い.

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基本情報

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臨床婦人科産科
66巻5号 (2012年4月)
電子版ISSN:1882-1294 印刷版ISSN:0386-9865 医学書院

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