臨床婦人科産科 66巻4号 (2012年4月)

今月の臨床 最小侵襲手術アップデート─minimally invasive surgery

腹腔鏡下子宮筋腫核出術 北出 真理
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●腹腔鏡下子宮筋腫核出術(LM)を行うに際しては,LMに適したトロッカー配置で行う(パラレルポートを推奨).

●操作別のポイントを理解したうえで,基本手技を確実に習得する.

●難易度の高い子宮筋腫に対する術式のバリエーションを把握する.

●術後出血に対する配慮が必要.

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●全腹腔鏡下子宮全摘術(TLH)は低侵襲な術式であり,特に細径ポートによるアプローチではさらに整容的であり痛みがきわめて軽い.

●細径ポートの使用にあたり,細径カメラでは視野が狭くなること,および細径鉗子では鉗子先端の大きさの違いから鉗子の位置関係に誤認が生じやすいことを念頭においておく.

●細径鉗子は耐久性に劣るため体腔内での破損や残存に注意が必要である.

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●卵巣腫瘍の手術においては,術前診断が肝要である.機能性囊胞,悪性所見の有無についてはMRIなどの画像診断による慎重な診断を行うことが望ましい.機能性囊胞の診断には,経腟超音波検査を違った周期で再検する必要がある.

●囊腫切除術は機能温存手術であり,卵巣機能温存のために,剝離面の正確な認識,パワーソースの選択とより侵襲の少ない使用方法を学ぶ必要がある.

●付属器切除術では,卵巣動静脈の走行,尿管の走行を正確に認識することが必要である.

●子宮内膜症性囊胞の機能温存手術は,卵巣機能喪失のリスク,年齢による悪性変化のリスク,挙児希望の有無などを考慮して,手術方法(囊腫切除術or焼灼術)の選択,卵巣以外の内膜症病巣(Douglas窩病巣,子宮腺筋症など)の取り扱い,不妊治療を含めた方針などについて,総合的に検討する必要がある.

●子宮内膜症性囊胞の術後は,術後の再発予防のため,低容量ピル(LEP)やディナゲスト®の投与などを症例によって検討することが望ましい.

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●腹腔鏡下広汎子宮全適術にはTLRHとLAVRHとがある.

●リンパ節郭清には腹膜外術式と腹膜開放法とがある.

●子宮頸がん・体がんとも手術の完遂度・根治性に関しては開腹と同等と考えられる.

●予後に関しても腹腔鏡は開腹と差がないとされる.

●周術期のQOLは腹腔鏡が優れている.

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●鉗子操作として,両手のピストン運動,扇状運動,回旋運動が意図的にできるよう練習する.

●Cループ法,Sループ法のどちらでも結紮できるようになっておく.

●針の把持も練習する(single&double hand action,針回し).

●針の彎曲に沿った円弧状運動で運針を行い,運針の幅と深さがコントロールできるよう練習する.

●ゆっくり,大きく,鉗子操作をする.運針技術の習得にはボール回しトレーニングが有用である.

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●単孔式手術 : 臍窩1か所の切開創に複数のトロッカーを挿入し鉗子操作を行う次世代低侵襲手術.

●SSL,multi-trocar法(パラレル法): 特殊なトロッカーを利用せずに直接筋膜にトロッカーを穿刺し単孔式手術を行う方法.

●SILS(クロス法) : SILSポートを用いて行う単孔式手術.

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●まず日本産科婦人科内視鏡学会HP(http://jsgoe.umin.jp/)の申請書をダウンロードし,応募要項を熟読する.

●腹腔鏡ビデオ審査の25評価項目とその基準やチェックポイントをしっかりと把握して手術に臨む.

●すべての評価項目を満たす術式を選択する.体外法などの簡単すぎる症例や,癒着症例などの困難症例は避ける.

●技術認定制度はエキスパートを認定するのではない.ブラインド操作を避け,安全・確実で完遂度の高い手術を心がける.

●パワーソースの作動原理や結紮縫合の理論をしっかりと学び,基本に忠実な手技を身につけておく.

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●da Vinci Surgical S System®システムの特徴と歴史について述べる.

●当科における大腸領域のda Vinci Surgical S System®システムを使用した手術経験をもとに,その長所と問題点およびその対策について報告する.

●da Vinci Surgical S System®システムを利用するにあたりその特徴を十分理解して操作することが重要である.

●日本における現状では本手術は高額な費用を要することから,本システム特有の長所を見いだすことが重要で,その長所を十分生かせる疾患や症例に対して選択し行うことが望ましい.

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●ロボット支援手術は深くて狭い骨盤腔内で行う手術に適しており,またほとんどの婦人科疾患は腹腔鏡手術と同様ロボット支援手術の適応となることから,婦人科におけるロボット支援手術は急速に普及している.

●ロボット支援手術は開腹手術と腹腔鏡手術の利点を併せもつ手術法であり,婦人科における次世代の手術法となると考えられる.

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はじめに

 近年の分子生物学の進歩により,種々の分子標的治療薬が開発されてきた.分子標的治療薬は従来のcytotoxic drug(細胞毒性薬)に対してcytostatic drug(細胞静止薬)と呼ばれ,がんの生物学的特性に関連した遺伝子の検索(シーズ検索)により創薬される.分子標的治療薬には,主にリガンドおよび受容体を標的とする薬剤(抗体やDecoy受容体)と受容体のチロシンキナーゼ(TK)・ドメインを標的とする薬剤(低分子化合物)とがあり,その標的因子から(1)血管新生阻害薬,(2)増殖因子受容体・シグナル伝達阻害薬,(3)DNA修復・転写制御因子阻害薬に分類される.分子構造が類似した複数の分子を標的とする薬剤はマルチターゲット阻害薬と呼ばれる.

 本邦でもいくつかの分子標的治療薬はすでに保険収載され,大腸癌や肺癌などでは標準治療に組み込まれている.しかしながら,婦人科領域では保険収載された分子標的治療薬は皆無であり.国際的にも出遅れていた1, 2).ようやく卵巣癌を中心に分子標的治療薬の国際臨床試験や治験が行われるようになり,今後の応用が期待される.

 分子標的治療薬の有効性は腫瘍の増殖抑制効果よりも標的分子の阻害効率が指標となる.至適投与量は必ずしも最大耐用量ではなく最少有効量である3).また,作用機転が従来の抗腫瘍薬と異なることから,使用に際しては効果判定や有害反応について十分な理解が求められる.したがって,産婦人科医にも分子生物学的知識が必要となる.

 本稿では,卵巣癌に対する分子標的治療薬の臨床試験の現状について概説する.

連載 Obstetric News

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 子宮頸管短縮は,症状がある妊婦でもない妊婦でも,強力な早産予知指標となる.

 特に無症状,早産ハイリスク妊婦で,妊娠22~24週で行う超音波による頸管長計測は,有用な早産予知方法である.

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症例

患者 68歳,女性.

主訴 右下肢腫脹.

既往歴 3経妊3経産.

現病歴

 子宮体癌IVb期(S状結腸播種)にて67歳時に腹式子宮全摘術,両付属器摘出術,骨盤および傍大動脈リンパ節郭清を施行し,術後化学療法(ドキソルビシン・シスプラチン療法)を6コース施行した.寛解と判定し,その後は外来にて経過観察中であった.術後7か月頃から右下肢腫脹の訴えがあり,血管外科へ紹介した.

連載 Estrogen Series

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 子宮筋腫などの良性疾患で子宮摘出を行うとき,任意に両側の卵巣摘出を行う選択肢(elective bilateral salpingo-oophorectomy : EBS&O)がある.米国では,良性疾患で子宮摘出を行うとき,同時にBS&Oを行う割合は1965年では25%であったが,1999年には55%に増加していた1).このような傾向に対して,米国産婦人科医会(American Congress of Obstetricians and Gynecologist : ACOG)は以下のような推奨を発表している.

 「予防的卵巣摘出を行うかどうかの決定は患者年齢だけではなく,患者の個人的な条件を考慮して,将来の卵巣癌発生の確率と卵巣機能喪失による不利な点を比較検討して行うべきである2)

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要旨

 I型子宮内膜癌において,修復遺伝子であるhMLH1(human mutL homolog1)遺伝子発現の不活化および蛋白発現の消失,それに起因する癌抑制遺伝子の変異の集積による発癌が注目されているが,免疫組織化学的手法を用いたhMLH1蛋白発現に関する研究は少ない.本研究では,内膜組織診検体を用いて,hMLH1蛋白発現を免疫組織化学的手法により検索し,hMLH1蛋白発現と発癌との関連性,発癌過程における蛋白発現消失の時期について検討した.hMLH1蛋白完全消失は,複雑型増殖症では13%,異型増殖症では22%,類内膜腺癌全体では32%と癌および癌以前の病変でみられ,hMLH1蛋白完全消失は発癌の早期段階に関与していると考えられた.病変部と離れた非病変部においてもhMLH1蛋白完全消失がみられ,hMLH1蛋白完全消失した細胞は,形態的に異型が認められない場合でも,発癌する可能性が示唆された.病理組織材料を用いた免疫染色は安価,簡便かつ迅速に行え,臨床的に有用な情報を得ることができる.この手法を用いたhMLH1蛋白発現の有無は,発癌を予測するうえでの有用な補助マーカーとなり,内膜癌の早期発見に結びつくと考えられる.

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 医学や医療の高度化に伴い専門化が進み,体のパーツにはやたら詳しくならねばならないが,全人的な見地で物事を見ることが難しい時代になってきた.もともと産婦人科医は,妊婦健診という場で妊娠女性の健康問題のすべてに対してたとえ専門的治療はできなくとも診断を行い,それぞれの専門家につなぎ,適切な治療・管理を行うという妊婦の健康のゲートキーパー(門番)の役割を担ってきた.妊娠中であっても感冒や膀胱炎といった一般疾患,高血圧,糖尿病などの生活習慣病,うつ状態などの精神的問題,頭蓋内出血や心不全,甲状腺クリーゼなどの生命にかかわる重篤な疾患までが一定の頻度で発生し,健診を行っている産婦人科医が初期対応を行わなければならない.妊婦健診では「○○の臓器しか診ません」という態度・知識では務まらないのである.

 このような知識・経験がある産婦人科医がこれからの超高齢化社会に向かって更年期・老年期女性に対しても当然ゲートキーパーとして貢献するべきである.その際に妊婦とは異なる疾患の頻度や,年齢からくるさまざまな問題に向き合わなければならない.また,患者さんたちの意識が高まり,さまざまな診断や治療,あるいは生活指導に至るまで,私たちの行為すべてに根拠を求められることが多くなった.

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編集後記 倉智 博久
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 今年,山形は31年ぶりともいわれる大雪です.特に,2月2日(木曜日)の大雪は大変なもので,駐車場ですら車が動かなくなり,大変な思いをしました.31年前の昭和56年の豪雪でも,普通は20分程度のところへ行くのに一晩かかったそうです.平成18年も全国的には大雪であったと報道されていましたが,この年は山形ではそう降雪量は多かったという記憶はなく,確か「新潟など大雪で──」という報道を見聞きして,新潟は大変だなあと思ったという記憶があります.雪の降り方は,天から見ればちょっとした雪雲のかかり方で大きく変わるのでしょう.3月に入ってかなり根雪の量が減ったとはいえ,1月,2月は道路わきや駐車場の山のような雪には閉口しました.毎年,冬の2~3か月間は,車を出すときには車の窓や屋根,ボンネットに積もった雪を雪かきしなければならないという程度の不自由はありますが,今年は,これでは到底すまず,毎日のように駐車場の雪かきを余儀なくされました.しばらく放置され踏み固められた雪は,大きな氷の塊になって,スコップでは歯が立たないほど固く,重いものです.車の運転も,特に後輪駆動車は上り坂でのスリップで発進できず本当に困ることがあります.

 聞くところでは,今年の冬の寒さも地球温暖化の影響とのこと.温暖化で,夏は暑く,大雨の被害も頻発し,冬も寒いとなると,「地球温暖化」はまさに悪いことずくめです.

基本情報

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臨床婦人科産科
66巻4号 (2012年4月)
電子版ISSN:1882-1294 印刷版ISSN:0386-9865 医学書院

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