看護学雑誌 28巻3号 (1964年3月)

特集 ナースと共働き

共働き論 上坂 冬子
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 つい先だって同じような二つの事件に出くわした。

 一つはこの間のことである。私は現代日本の働く婦人の実態をいろいろな角度からとらえた『私のBG論』(三一書房)という著書を出版したのだが,その本が発売されてから約3日たった朝,速達で読者から感想が送られて来たのである。そのあと,1週間目ぐらいから,今度は日にかならず5〜6通ずつあれよあれよという中に読者からの手紙が舞いこみ,またたくうちに私の書粛のすみは葉書や封書の山ができてしまったのである。といっても,これはかならずしも私の本がすぐれておもしろくかけていたからではない。つまり,私はその著書の基本に,BGからでも,努力しだいでなれる専門職について《手引き》をつけ加えておいたからなのだ。たとえば,BG生活の余暇を活用してどんな特技が身につけられるか,とか,BG生活と両立させながら夜学へ通えば,どんな資格がえられるかとか,いくつもの具体例をのべておいたのだ。私のところへよせられた手紙の大半は,この《手引き》に対する問い合わせだったといってよい。

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 振り落とされそうな震動と,ハッ!と瞬間胸のさされるような驚きに目がさめ,バックの中をひっくり返すようにして定期入れを取り出し,人垣を押し分けて市電を飛び降りた。疲れ果てた体はコンニャクのようで何を考える気力もありません。きょうも8時間寸時の余裕もなくかけ回ったためか,かかとに鈍痛を感じます。ヒールに50キロの重みを交互にささえて,ようようにしてわが家にたどり着きました。

 今春結婚して共働き生活7か月,看護婦と結婚の両立のむずかしさを身にしみて感じております。看護婦不足の中でそのシワヨセが私たちの労働を強化させ,融通のとれない少人数からなる勤務体制が,生休どころか,少々の病気では休みの取れない現状なのです。

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 私と夫は,私の看護学校卒業を待って,すぐ結婚する計画だった。私もまだ独身の青春を楽しみたいという気持があったし,その上,小学校から看護学校まで合計すれば15年もの長い間私に学校生活を送らせてくれた老いた両親のために,少しは尽くしてやらなければいけないのではなかろうかという気持もあった。

 しかし結婚後の女もできるだけ職をもつべきだという夫の考え方は,私の希望とまったく同じであったし,夫の両親が当時,八重山の琉銀支店に行っておられて,那覇(ナハ)に2人だけでは少し広すぎる住宅があったこと,それに加えて,私の父が「女が仕事をもつと結婚の機会を逃がしがちだから,親にとってはその方が心配だ。いま結婚したいという男がいるならすぐそうしなさい。そのかわり金は何も出してやれないよ」といってくれたことが私を結婚にふみきらせてくれた。

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 早いもので,今春,長男は満6歳になる。そして,私たちの共働きも8年めを迎えようとしている。

 多くの苦労の年月も,過ぎてしまえば,すべてつかの間のことに思われるものだ。今では,幼稚園に通う長男と,夕べに一家団らんの一時を持つ日々を送り,何かホッとした気持である。

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 一口に共働きといいますが,どのようにしてやっているかということになりますと,それは人さまざまで,それぞれが自分の環境の中で工夫し,一つの生活の形態を作り,その中で自分の仕事を生かし,生活を生かしていくように努力しているのだと思います。

 夜勤ゆえのすれ違い

 私も一昨年の春結婚して以来,ずっと共働きを続けております。昨年は一女を出産し,その後も引き続き同じ職場にあって,職業人として家庭人として,自分なりに一生懸命やっているつもりです。決して,両方ともじゅうぶんとはいえませんが,私も,私の家族も私が少しでもよき職業人であり得るよう,そして私は,少しでもよき妻であり母親であり,家族の一員でもあるようにと,精一杯やっているつもりなのです。

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 結婚生活3年間は,私に看護婦さんの仕事が,時に重い器具を持って,廊下をかけずりまわる肉体労働であり,たいせつな人命を預かる以上,30秒ごとに1本の信号を確認しながら電車を走らせなければならぬ,国電の運転士のように,不断の神経の緊張を要求される労働であり,準夜勤,深夜勤が月に12日もあるという,バーのホステス以上の深夜労働であり,駆け足で食堂へ,15分で昼食を終えて再び病棟へ駆け足で戻るという労働のはげしさ,そして生休は絶対にとれぬという無権利状態,私の知る限り,もっともみじめな女子労働であることを,いやというほど,教えられたのである。

 さて,編集子は私に,《共働き》から出てくる悩みや喜びを,具体的に書けと命じた。最近ではどのようなわけか,《共稼ぎ》といわずに《共働き》というらしい。私は,この,二つのコトバの意味の相違が,わからない。あえて,私流に解すれば夫婦がそれぞれ職を持ち,それぞれ,何がしかの銭を稼いでくるにすぎない状態を《共稼ぎ》という。それぞれ職を持ち,それぞれ銭を稼いでくるが,さらにそれ以外の,生活して行くためのあらゆる必要な労働を,5分5分で,わかちあうのが《共働き》ということになる。夫は職場から戻り,丹前などを着こんで,大あぐらをかいて,「飯はまだか」などと怒鳴り,奥さんは,職場で疲れた体をひきずって,台所で苦闘している。これは《共稼ぎ》である。

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看護婦と結婚するまで

 私がこの原稿を書こうとしているとき,東京都下の療養所に勤務していたY看護婦さんがなくなられたという話を聞いた。彼女は結核で自宅療養をつづけるご主人と4つになる男の子をかかえ,生活の重荷を一身に背負って働いていたが,過労がかさなり自分じしんも結核におかされ,ご主人と子どもの身を必死に案じながら息をひきとっていったという。「彼女が化学療法の副作用で肝臓をこわし,2度もオウダンにたおれたにもかかわらず,わが身にむちうって出勤させていたのは,休職による給与減額で生活保障がなくなるということと,ひとりでも休めばみんなにしわよせがいく職場の実態……ではなかったのか」と彼女の最後をみとった人たちはこう訴えている。

 その数日後,NHKのテレビ対談では,幸田文さんが,「父の看護を通じて,看護する立場の者ほど健康の大切さが痛感されました」と話したところ,テレビドクターの近藤宏二氏が「まさしく看護する者が健康を大切にする。その証拠に看護婦には健康な人が多い」と答えていたのが,何ともそらぞらしく聞こえてしかたがなかった。この例にまつまでもなく,看護婦を妻とした夫は,そうでない人が決して実感として理解できないであろう,いろいろな経験をもっている。そしてそれらをどういう姿勢でうけとめるかが,いわば幸と不幸のわかれ道になるのではないだろうか。

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 病院のナースの共働きについて総婦長の立場でどう考えているか,現状と将来の見通しについて書くようにとのことですが,常日ごろ問題になっていることながら改めて考えてみると非常に複雑で矛盾が多くてむずかしいことだと今さらのように感じています。

 先日ある新聞の紙上相談の中にこんなことが出ていました。それは一般的に共かせぎをマイナスと認めるのが男女60%から70%をこえていて,その理由は家庭が暗くなる,女の側では気持の調和がみだれる。男の側では劣等感が生まれる。こどものためによくないなどのことが言われているということでした。これは私たちナースにも共通して考えられることだと思いますが,夜勤がからんでむしろもっと深刻かもしれません。

働く女性の妊娠問題 池田 孝江
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産前・産後の休暇は母体の権利

 私たち女性には新しい生命を生みだす《妊娠》という《母性》をもっている。それは,夫と妻との個人的な《母性》でなく,人類を発展させる社会的なすばらしい母性である。

 また母性は,社会発展の基礎である《労働》と結びつき,働く女性の母性の保護を完全に社会的なものにしたときに,じゅうぶんに発揮される。しかし,日本では《労働》と《母性》は逆に矛盾となっている。

共働きと育児 平井 信義
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 《共働き》—まずこのことばの持つ意味から考えてみましょう。このことばが《共稼ぎ》に対することばとして用いられるようになったのは,数年前の小児保健学会で合屋氏(九大小児科)が講演された時からだと思います。その時,私は,適切なことばを作られたと感心したものです。その時以来,私は私なりの意味を加えて,《共働き》ということばを用いるようになりました。

 それには,こういう意味があるのです。すなわち《共稼ぎ》は,主として経済的理由により,職業に対する自覚も薄く,むしろ働かなければ生計が保てないので働いている主婦のことを頭においているわけです。もし,生計が夫の給料だけで維持されるならば,家庭にあって家事や育児に専念したいと思っている婦人といってもよいのでしょう。その中には,家事や育児に生きがいを見いだしている婦人もありましょうし,従来のしきたりに従っているだけの婦人もありましょう。

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「ハト ポッポ,マメガホシイカソラ ヤルゾ……」

 眠る前に浩一がうたっている「ハトポッポ」は,何度きいても第一小節の「ハトポッポ」を省略した,おかしなうたである。それにしても,人間の子どもは2歳前になると,ずいぶん記憶力が養われるものらしい。

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 既婚ナースが急増している昨今,病院の中の託児所づくりは,大きな問題としてクローズアップされてきている。幼い子どもを肉親に託して,職場でうれいなく働けるナースは,まだめぐまれている。大部分のナースは,アパート住まいに加えて,夫婦共働きのため,子どもの保育に頭を痛めているのが実情のようである。

 ナースに限らず,女性が職場と家事・育児の両方を立てることは,非常にむずかしく,深刻な問題である。長い間,家庭にあって家事・育児に専念してきた女の歴史が,太平洋戦争を契機に突然かきかえられたため,急激に職場に進出した彼女らじしん,古い慣習からの頭の切りかえが必要になってきている。

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 38年11月11日と12日の2日間,神奈川県藤沢市片瀬の国立片瀬保養所向洋荘において,日本精神科看護協会主催第1回精神科看護研修会がひらかれました。今回は全国の各県支部長と中央幹事(精神科の看護長や婦長たち)幹部クラスの方が76名出席しまして盛大な会議を持つことができました。

 晩秋の大気は澄んで青い海原と真白き富士の嶺を展望の視野に収めた会場の雰囲気は,私たちの真剣な発表と討論の場を,どんなにか柔らげてくれたことでありましょう。第1日のシンポジュームは,精神科看護行政について,溝師は行政の立場からを,厚生省看護課長永野貞先生が,臨床の立場からを私,山下が担当して,そのあと討論にはいりましたが,話す人も聞く人も共通の課題に熱心にとり組みまして,まことに意義深い研修の場でありました。

集団の中の個人・2 早坂 泰次郎
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■孤独に耐えること

 どうしてそれが希望なのかということは,きょうお話しの中心になるわけです。さっき申し上げたように,人間と人間の関係というものは本来その中には分離,あるいは断絶がある。人間はけっして他の人には成りえない。自分の一生というものは1回きりだ。パスカルなんかも言ってるように「私の一生の前も後も,はるかな無限の中に消え去ってる」わけですね。無限の中の,ほんの偶然的な瞬間的な数十年じゃないか。そのことから人間の分離,断絶ということが出てくるわけです。したがって,そのままの形では分離とか断絶とかいうものを越えることができない。

 それじゃ,どうしたらいいんだということになりますが,理屈を申し上げるよりは,ここでもいくつかの実例で申し上げたほうがわかっていただきやすいと思いますので,申し上げてみたいと思います。私について,さっきのご紹介に,あちこちで看護婦さんがたの教育などに関係しているというお話しがありました。確かにそれはそうなんですが同時に私は個人としてもたいへん看護婦さんのごやっかいになっております。今まで過去2回にわたって長期入院の経験があります。学校も4年ぐらいそれで遅れているわけですが,最初のときにはちょうど20のときでした。これは戦争ちゅうです。

レハビリテーションの実際・6

機能訓練 片岡 喜久雄
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関節可動範囲の測定

 四肢の機能障害のときには障害された四肢の関節がどの程度に動くかを判定する必要がある。これには肩,肘,腕,指,股,膝,足,趾の各関節について屈伸,回内,回外で関節の動く範囲を関節可動測定器を用いて正確に検査するものであって,この関節可動範囲の測定と前に述べた筋力テストとによって患者の障害の程度が評価されるわけである。

やさしい統計学・5

統計材料の集め方 西 真楠
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調査統計と業務統計

 統計材料の性質から,統計を大きく調査統計と業務統計にわけることができます。調査統計とは,統計調査を目的として新たにえた記録を統計材料とした統計であり業務統計とは,統計調査以外の本来の業務を遂行するための必要からとった記録を転用して統計材料とした統計であります。いいかえれば,統計材料にする記録が統計調査を第一目的としてとられているかどうかということであり,前者を第一義統計,後者を第二義統計と呼ぶこともあります。たとえば国勢調査は人口統計を作るための調査ですから,これから作った人口は調査統計ですが,年々の死亡数は,本来は国民の身分登録制度である戸籍を整備するための死亡届書を利用して作った統計ですから業務統計ということになります。もっとあなたに身近な例をあげてみましょう。もしあなたが診療カルテを利用してあなたの勤めている病院や診療所で月になん人の患者さんを扱ったか,そのうち新患はなん人だったか,傷病の種類は……などの統計を作ったり,医薬品の納入伝票と月末の医薬品の在庫量の報告から,科別薬品名別の消費量の統計を作ったとすれば,これは本来,診療を正しく行なうための記録を統計材料に利用して作った統計ですから業務統計といえましょう。

 本来,調査統計の利点として掲げた点が統計調査に最も大切であることはいうまでもありません。

社会病理と精神衛生・7

ある男の子の自殺 高木 隆郎
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1.母の自殺

 M君の父Sは和歌山県の某市に住む日給360円の沖仲仕だった。結婚前から酒ぐせが悪く,正確にいえばアルコール嗜癖者だった。仕事に出た折りは,真面目で,正直ものであったが,劣等感が,強く,素面ではまともに他人と話ができないほど気が弱かったが,それだけに毎日々々酩酊をもとめ,いったん酒に酔うと妻子をなぐったり,そうかと思うとM君に頬ずりするほどの愛情表現をしたり,ときには妻に手をついてあやまったり,感情は赤裸々で,衝動的となり一切の抑制を失った。3日に一度ぐらいは,仕事にも出ず朝から焼酎をのみ,また働きに出た日も,家にいれる金は日当のごく一部であった。

 M君の母K子はいわば私生児で,近所に実母はいたがこの人はK子を産んだ後,正式の結婚をして世帯をもったもので,K子との関係を喜ばず,K子がときどき生活に困って訪れても冷たかった。自分の平和は乱されたくなかったのである。しかし,K子にしてみれば,この産みの親が唯一の身寄りであった。というのはK子が6歳のときこの母が嫁いだので,その後は,祖父のところで比較的厳しく育てられたのだが,この祖父もK子が17歳になったと気病死し,飲食店に住みこみなどして娘になり,23歳のときSと結婚したのである。

看護英語あ・ら・かると

NURSING EDUCATION 赤松 隆
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 ◇私たちの看護教育は,最近の医学の進歩とともに新しい内容と刻々に置き変わっています。この『看護学雑誌』でも,教育制度に関しては,専問の方々が,新しい意見をどしどし発表され,さらに,外国,特に米国の看護教育についても,その紹介,比較なども数多くなされています。ここでは,その繰り返しでなく,じつさいにMichigan州Detroit市およびその周辺における看護教育制度の実際について眺め,私たちとのちがいを比べて見ましょう。

 下の図をごらんください。これはStudent Nurse募集のための一般案内書です。この地方ではProgramが4種類にわかれています。

Medical Topics

やせ薬の副作用,他 I
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 世の中が平和となりご婦人方の美容に対する関心ははなはだ強いとみえて,最近いわゆるやせ薬による副作用が目だってきている。症状のひどい場合にもなかなか診断がつかず,また軽い場合には単なるノイローゼと考えられる場合も多いと思う。やせ薬の大部分はそのおもな成分として甲状腺末をふくみ,甲状腺ホルモンの代謝亢進作用によりやせるわけであるが,過剰な投与によっては甲状腺機能亢進症と同じような症状を示す。すなわち動悸,発汗,手のふるえ,不眠,下痢などであるが一般に甲状腺腫はない。眼球の突出もないがいわゆる目がギラギラしているという印象を与える。基礎代謝率は当然亢進しており症状のつよいときはかなり高く⊕50%〜⊕60%に及ぶ。PBI(蛋白結合沃度)も甲状腺ホルモンを投与しているのだから当然高くなる。

 しかしバセドウ氏病ともっともことなる検査所見は放射性ヨード摂取率が逆にはなはだ低くなることである。これは外から甲状腺ホルモンを供給するため過剰のホルモンが脳下垂体に働いて甲状腺刺激ホルモンの分泌をおさえ,それに伴って甲状腺のI131摂取率は低くなる。バセドウ氏病のときはこの機能がおかされているためI131摂取率は高い。このような検査によって鑑別はできるがなかなかむずかしいこともある。やせ薬をのんでいるということをはずかしがって,なかなか発表されない方も多い。

統計

医療関係者 西 真楠
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 医師,歯科医師,薬剤師の状況は厚生省が毎年年末現在でおこなっている医師,歯科医師,薬剤師調査で知ることができ,また,保健婦.助産婦,看護婦,准看護婦の状況は,同じく厚生省が毎年年末現在で調べている厚生報告例によって知ることができる。これらによって昭和37年末の医療関係者の状況をみると第1図のとおりであり,およそ医師1人と看護婦,准看護婦2人とで人口1000人を担当している勘定になります。次に医療に従事する医師を診療科名でみると,第2図のごとく単科専門のものは約半数で,残る半数は2科以上の診療を行なっている。また,内科的診療科のもの約43%,外科的診療科のもの約34%,内科的外科的診療科のもの約22%であった。第3図は人口10万対の医師数の都道府県別比較であるが,概して大都市を含む都府県に高率のようである。

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はじめに

 起立性調節障害(O.D.と略称する)は,一種の自律神経系の失調によっておこると考えられ,立ちくらみ,疲れやすい,食欲がないなどの多種多彩な症状をもった疾病であって,成長期におげる自律神経系の不安定性,身体の成長と循環系の成長のアンバランスがその病因といわれる。直接の発症機転は起立時,末梢血管の血管運動神経失調をおこし,その収縮反射が不十分となるため血液が身体下部にたまり,全身の血液分布に変動を来たし,脳の血流量が減少して脳貧血などの症状を招来するとされている。要するに本症は成長期における自律神経系の不安定状態の一種であって,病的と正常の中間のはっきりした境界のないぼんやりした部分であると考えられる。そのため診断の基準も定め難く,患者の訴えが有力な決め手となる疾患である。

 昭和33年,東大小児科の大国氏が本症についてはじめて報告してから,本邦小児科領域において,にわかにその関心がたかまり,O.D.研究班が結成され,これの数多い業績にもとついて第1表に示すような診断の基準が定められた。これはO.D.患者に比較的多くみられる症状を大症状および小症状とにわけ,第1表にあるような組み合わせによって診断を下すのである。この場合客観的検査として起立試験も必要となる。

想園

ある感動 国井 栄子
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 黒のセーターに真珠のネックレスの二木シヅヱ先生のファイトと自信にみちた講演は完全に数百人の会員を魅了した。ファイトと自信。現在の私たち(看護婦)の忘れかけていたものを,完全によみがえさせる3時間有余であった。

 看護協会岡山県支部の研究会は11月17日津山市の教育会館において開催された。午後からのプログラムに教育係は,特別講演をどなたにお願いしようかと考えた。教育係の中の1人が「二木シヅヱさんて人はどう?」と提案した。私達教育係は一致してその提案に賛成した。毎日新聞に掲載されている《ある根性》という欄に看護婦として大きくクローズアップされた二木シヅヱ先生である。その記事の中に,病院管理研究所のある職員が「日本の看護婦のなかで看護とは何かをほんとうにわきまえているのは,10人くらいではないか」とこれまた驚くべき感想をもらした。その《10人》の中の1人がこの二木シヅヱ先生だということが書かれていた。今でこそ看護の月刊雑誌に執筆され活躍されている先生であるが,私たちがお願いした時は,ただ新聞記事にかかれた先生のみを知っているだけで,この計画には多少の不安もあった。しかし私達教育係の計画に間違いのなかったことは,3時間有余の講演内容によってはっきり知らされた。

ナースの学問的良心 渡辺 一江
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 人間は,自分の勉強した努力の集約として,自分の専門的学問に対する自信と,プライドを持っている。私のように,まだ人生の過半しか過ぎないものは,その学問の浅さ故にそれほどの確信や,プライドはないにしても,いちおう習いおぼえ考えあげたものに対して,私なりの学問的究明はなされている。そして何かが起こった時,私が真にナースの良心的行動の基礎とするものは,この学問にたよる以外にない。

 今なぜ,私がこんなことを考えざるを得なくなったのかというと,あまりにも悲しい出来事が,私のいる病院で行なわれているからである。それは今まで,総合病院として地域の人たちに利用され,いざという時の心の支えにもなっている。この病院が,全面的に廃止され,特殊な子どもだけをみる,病院にされようとしている。もちろんこれは厚生省の方針である。このことに対して私たちナースが中心になって,地域の人たちが非常に困ること,職員が全員どこかに行かなくてはならないということで反対している。

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 朝の光が障子いっぱいに当たるとき,新聞の印刷のにおいがうれしい。この人手不足に今日のつとめを持たぬ風来坊には何ともうれしい朝寝の一ときである。毎朝運ばれてくる新聞や雑誌の中に一部の地方新聞がある。朝日や毎日に比べ紙質も印刷も数段と劣るこのA紙は記事もささやかなものである。ゆったりとした気分で新聞を広げ,さらにゆったりと求人欄を見る。ここには種々雑多な求人広告が見られます。

 —都会の職場があなたを待ってます—。運転手,ウェイトレス,女店員,そして急募看護婦,優遇いたしますなど。

特別レポート

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 私たちの生活において,睡眠は1/3を占めております。睡眠が健康と密接な関連を持ち,睡眠時間が人生の1/3を占めることを考えると,その効果をいかに最大にするかを再認識する必要を感じます。

 それで私たちはささやかではありますが,睡眠に欠かせない寝具のひとつ《枕》をあげて研究してみました。

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 なつかしい摩天楼を背にして,5万2000トンの巨体U・S・Lの一客としてロンドンに向け,静かな大西洋を渡ったのは,去年8月だった。2年間のアメリカ生活を過ごした私に,太陽をまぶしいほどに浴びて光った,自由の女神が,「どう,何か自分のものにしましたか?」と微笑みかけているようだった。

アサームの旅・3

那覇—香港航路 大嶺 千枝子
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 船には強いつもりの私が,第1日から病院の処置台でゲーゲーとへどをやり出したからたまらない。ドクターがspecialという薬を手にcabinで見るも哀れな姿で看護衣のまま横になる。とにかく胃部といわず胸部といわず不快感はなはだしい。心のわだかまりを味の素にしてローリングとピッチングが交互にリズムをつけて内臓物を攪拌するので,とにかくたまらない。

 那覇を出てちょうど1日が過ぎた時刻だろう。《オミネサン,ダイジョブ,タブルーネ》といってdolesserが夕食に誘ってくれた。船はオランダの国籍で香港に本社があり,南米航路として17か年も沖縄に寄港しているらしく,現在は4隻が定期船としてインド洋,南アフリカまわりの航路にあって,まったく知らぬが仏の親戚であった。captain,engineer,officerその他重要な部門はオランダ人が働き,中国人のそれぞれの責任者とで構成されていて,私たち5人(日本1,沖縄4)を入れて150余人の総員であり,captainはその名称から受けるイメージそのままの男性で,定期的な大掃除の検査やlife-boat,消火訓練外以にはあまり見ることもなかった。

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 帰省客でごった返す車内はむんむんしていた。網棚に子どもたちへの土産を乗せ,隣に4日間の食糧のはいったザック,古雑誌を並べ,まずは席の取れたことを感謝した。「張り切って計画したものの果たして,われわれのプランは受け入れられるだろうか。排他的ではないが,人見知りの強いといわれる僻地の子どもはうちとけてくれるだろうか。大人は……。コトバのハンディキャップもあるし……」次から次へと多くの不安が頭をかすめる半面,春の実態調査の時,あのような歓迎をしてくれたのだから,きっと成功するに違いないという確信と不安の入り混じった気持で,ネオンを後に上野をたった。

 めざす開拓地は山形駅より西へバスで50分。終着駅よりさらに山道1時間。標高500m西蔵王の登山口に位置する。「この荷物で……」という心配も県庁の方々のご厚意でジープに便乗し計画どおり午前中に目的地滝山に到着する。現在学生の間で僻地慰問がブームのように行なわれ,中には突然訪問し地元より迷惑がられる趣もみられるが,われわれの場合は,かような点についての問題はまったくなかった。師の知人の紹介で県の開拓課を通じての訪問であったため,地区の人びとのわれわれに対する態度は実に好意的で寝具や食糧などの宿泊態勢も整い食糧の差し入れまである歓迎ぶりであった。

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 先日,ある文学好きな女性と話していたとき,たまたま川端さんの文学の話になった。1月号の『文芸』に500枚の長編「ある人の生のなかに」を,川端さんが発表していたからである。それから川端さんのいろいろな作品のことが話題になった。私も大分よんでいるが,その人も負けず劣らずよんでいて,話ははすんだ。おもしろいことを彼女はいった。「川端さんはおよそ私小説を書かない作家だけど,作品に書く女の好みは私小説的ね。あたしが女だから特に感じるのかも知れないけれど川端さんは美しくない女性には,ひどく冷酷なようで,こわいみたい。そりやあ,だれだって,男は美人の方が好きでしょうけれど,それにしても,川端さんは,特別にその好みが激しいようね」—そういったが彼女は決して不美人の方ではないのである。

 女の美しさを描き出すという点では,川端さんは高く評価されて来ている。川端さんの作品に出てくる女性は,それぞれ一度よんだら忘れられないような女性たちである。それに反して,川端さんの描く男性たちは,あまり魅力がない。「雪国」の島村にしても,駒子があれほど惚れる値打ちのある男性かどうかは,ひどく疑問である。まったく,川端さんは女の作家である。

看護婦さんへの手紙

求めに応じる喜び 松下 正寿
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 私はおかげさまで到って健康ですから,今までのところ看護婦のご厄介になりませんでした。しかしときどき病院に見舞いに行って,病人が看護婦さんからやさしく世話してもらっているのを見て,うらやましくなることもあります。

 そのようなゼイタクなことを言っている私も,早晩ご厄介になるでしょう。アッというまに天国へつれて行かれれば別ですが,ふつうの死にかたをするなら,必ずご厄介になります。その時はずいぶんご迷惑をかけるでしょうがよろしくお願いします。

ポイント

ゆきすぎ 二木 シヅヱ
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 お風呂ぎらいな甥と姪をもつおばさんである私は,家庭の雑務とP.T.A.の役員をひきうけてはしりまわっている妹にかわって,1日1時間健康な子どもたちのお風呂係をすることになった。3年生の姪はピアニスト,6年生の甥は科学者と,大きい夢をもって勉強している。子どもたちのお風呂ぎらいの理由は,入浴に要する時間とその後の心地よき居眠りが,勉強と遊びの邪魔になるという。進学児童のなんとすさまじい日常生活なのだろう。痛々しい世の中だ。

 ある日,甥とお風呂にはいりながら,いろいろな子どもの考え方を教わっていた時,《早く大人になりたい》という感想をもらしたことがあった。その理由として《大人はわがまま勝手だ》という例をたくさんあげていた。よくよく聞いてみると,問題の半分はたしかにわがまま勝手ではあるが,あとの半分は説明不足よりくる相互の理解力の不足から来ていることに気がついた。

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 沖繩看護協会長が東京にこられたと聞いて,早速にお忙しいなか,ひとときを割いていただいた。

 その日はどんより灰色の雲がたれこめた陰気な日。あらわれた与儀会長はピチッと浅黒くひきしまった,黒い南の瞳をもった人だった。暖かい南国の空気がサッと吹きこんだ感じ。

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幾つかの夢あり吾子のクリスマス木枯しの又一しきり一人編む

 《評》 生活感情が何となくにじみ出ていてよい句だと思いました。

付録

看護手順
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I.必要物品

 尿コップ,オブエクトグラス,白金耳,指のう(潤滑油),穿刺針(注射器),ブジー,カテーテル,血圧計,聴診器,検温器,トラウベ聴診器,懐中電灯,かけ布

基本情報

03869830.28.3.jpg
看護学雑誌
28巻3号 (1964年3月)
電子版ISSN:1345-2746 印刷版ISSN:0386-9830 医学書院

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