講座
アイソトープによる治療
藤田 順一
pp.50-55
発行日 1956年3月15日
Published Date 1956/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661910086
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アイソトープ,正しくは放射性同位元素(Radioisotopes, radioactiveisotopes)が医学の世界に応用せられるようになつたのは,丁度,中世の暗黒時代の医学がルネッサンスの頃に,顕微鏡の発見によつて,新しい正しい,発展を示したのと比較出来るといわれている。実際にアイソトープの臨床医学への応用は,原子力の平和的利用はみんなそうであるが,まだ緒についたばかりですでに,その有利な点は計り知れないものがある。ジヤーナリズムにも政治の面にも原子力の問題が始終採り上げられている今日,好むと好まざるとに拘わらず,我々の住んでいる世界は原子時代であり,この方面を忘れては生活が成り立たない時が来るであろう。さて診断の面では顕微鏡が液体病理学から細胞病理学へと薪生面を開き病理学と云う学問を確立させたように,幾多の仮説がアイソトープの力によつて証明されつつあり,既に正しい臨床診断には欠くことのできないものとなつた。治療の面ではなお,その初期ではあるが,だんだんと放射能の重要性が認識されて応用面が開けて来たので,我が国で実際に使用していることを中心としてこの点を少しくお話しよう。
もう御存知であろうとは患うが,やはり,アイソトープとは何かと云う前置がないと,お話が徹底しないから必要な事だけを述べよう。物質を細かく分けてゆくと,この世の中は100種近くの元素からなつていることが分る。その元素は原子の集りである。
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