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はじめに
リンパ浮腫とは,局所におけるリンパの流れが異常になることにより起こる体の部分的な浮腫のことである.リンパ浮腫は原発性(体質によるもの)と,続発性(手術や疾患により引き起こされるもの)に分類されるが,その80%以上が続発性である.
女性の続発性リンパ浮腫の主な原因は,乳がんや子宮がんのリンパ郭清術を受けた場合である.フィラリア症などによる続発性リンパ浮腫はまれである.上肢や下肢に出現するリンパ浮腫の重症度は,International Society for Lymphoedemaにより,3段階に分類されている(表1).
リンパ浮腫発生率の報告は,欧米において,かなりばらついている.たとえば,乳がん術後の上肢のリンパ浮腫の発生率は,1940~1970年代で5~50%の報告1)があるが,これは,浮腫の測定方法や,どの重症度のものを診断したのかが統一されていないためである.国際分類に基づいた最近の報告では,乳がん術後10年間の発生率は24~28%である2).一方,子宮がん術後の下肢リンパ浮腫の発生率は,術後10年間で40~50%と報告されている3).わが国の全国的統計は,国際分類に基づいて行なわれたものは少なく,日本乳癌学会および,日本産科婦人科学会での全国統計もないが,厚生労働省研究班の報告4)によると,下肢リンパ浮腫は,婦人科がん(子宮頸がん・子宮体がん・卵巣がん)の術後3年までに28%の発生率であった.
この報告はGradeⅠ~Ⅲをすべて含んでいる.欧米の報告でも術後3年までは25~30%であり,欧米と日本での発生率はあまり差がないようである.
以上のように,「リンパ浮腫」とおおまかにいわれているものには,測定法によりその診断が異なる傾向にあり,注意を要する必要がある.
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