FOR STUDENTS
30名の子供と過ごした4日間—開拓地セッツルメントを試みて
田中 千代
1
,
野口 礼子
1
1東京都立第一高等看護学院
pp.56-60
発行日 1964年3月1日
Published Date 1964/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661912182
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帰省客でごった返す車内はむんむんしていた。網棚に子どもたちへの土産を乗せ,隣に4日間の食糧のはいったザック,古雑誌を並べ,まずは席の取れたことを感謝した。「張り切って計画したものの果たして,われわれのプランは受け入れられるだろうか。排他的ではないが,人見知りの強いといわれる僻地の子どもはうちとけてくれるだろうか。大人は……。コトバのハンディキャップもあるし……」次から次へと多くの不安が頭をかすめる半面,春の実態調査の時,あのような歓迎をしてくれたのだから,きっと成功するに違いないという確信と不安の入り混じった気持で,ネオンを後に上野をたった。
めざす開拓地は山形駅より西へバスで50分。終着駅よりさらに山道1時間。標高500m西蔵王の登山口に位置する。「この荷物で……」という心配も県庁の方々のご厚意でジープに便乗し計画どおり午前中に目的地滝山に到着する。現在学生の間で僻地慰問がブームのように行なわれ,中には突然訪問し地元より迷惑がられる趣もみられるが,われわれの場合は,かような点についての問題はまったくなかった。師の知人の紹介で県の開拓課を通じての訪問であったため,地区の人びとのわれわれに対する態度は実に好意的で寝具や食糧などの宿泊態勢も整い食糧の差し入れまである歓迎ぶりであった。
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