特集 ナースと共働き
共働き夫婦の記録—職場と生活のたたかいの記録
大山 正夫
1
1日本医労協調査部
pp.27-29
発行日 1964年3月1日
Published Date 1964/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661912174
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看護婦と結婚するまで
私がこの原稿を書こうとしているとき,東京都下の療養所に勤務していたY看護婦さんがなくなられたという話を聞いた。彼女は結核で自宅療養をつづけるご主人と4つになる男の子をかかえ,生活の重荷を一身に背負って働いていたが,過労がかさなり自分じしんも結核におかされ,ご主人と子どもの身を必死に案じながら息をひきとっていったという。「彼女が化学療法の副作用で肝臓をこわし,2度もオウダンにたおれたにもかかわらず,わが身にむちうって出勤させていたのは,休職による給与減額で生活保障がなくなるということと,ひとりでも休めばみんなにしわよせがいく職場の実態……ではなかったのか」と彼女の最後をみとった人たちはこう訴えている。
その数日後,NHKのテレビ対談では,幸田文さんが,「父の看護を通じて,看護する立場の者ほど健康の大切さが痛感されました」と話したところ,テレビドクターの近藤宏二氏が「まさしく看護する者が健康を大切にする。その証拠に看護婦には健康な人が多い」と答えていたのが,何ともそらぞらしく聞こえてしかたがなかった。この例にまつまでもなく,看護婦を妻とした夫は,そうでない人が決して実感として理解できないであろう,いろいろな経験をもっている。そしてそれらをどういう姿勢でうけとめるかが,いわば幸と不幸のわかれ道になるのではないだろうか。
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