特集 ナースと共働き
共働き夫婦の記録—妻をとおして知った看護
石田 茂治
pp.24-27
発行日 1964年3月1日
Published Date 1964/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661912173
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結婚生活3年間は,私に看護婦さんの仕事が,時に重い器具を持って,廊下をかけずりまわる肉体労働であり,たいせつな人命を預かる以上,30秒ごとに1本の信号を確認しながら電車を走らせなければならぬ,国電の運転士のように,不断の神経の緊張を要求される労働であり,準夜勤,深夜勤が月に12日もあるという,バーのホステス以上の深夜労働であり,駆け足で食堂へ,15分で昼食を終えて再び病棟へ駆け足で戻るという労働のはげしさ,そして生休は絶対にとれぬという無権利状態,私の知る限り,もっともみじめな女子労働であることを,いやというほど,教えられたのである。
さて,編集子は私に,《共働き》から出てくる悩みや喜びを,具体的に書けと命じた。最近ではどのようなわけか,《共稼ぎ》といわずに《共働き》というらしい。私は,この,二つのコトバの意味の相違が,わからない。あえて,私流に解すれば夫婦がそれぞれ職を持ち,それぞれ,何がしかの銭を稼いでくるにすぎない状態を《共稼ぎ》という。それぞれ職を持ち,それぞれ銭を稼いでくるが,さらにそれ以外の,生活して行くためのあらゆる必要な労働を,5分5分で,わかちあうのが《共働き》ということになる。夫は職場から戻り,丹前などを着こんで,大あぐらをかいて,「飯はまだか」などと怒鳴り,奥さんは,職場で疲れた体をひきずって,台所で苦闘している。これは《共稼ぎ》である。
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