総合リハビリテーション 25巻11号 (1997年11月)

特集 リハビリテーションとpharmacology

今月のハイライト
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 リハビリテーション医療において薬物療法は重要な治療法のひとつであり,薬剤の使用により患者の心身機能が大きく改善した経験をもっ医療関係者は少なくないであろう.障害者は,その障害をもたらした基礎疾患のほかにもさまざまな併存疾患を有していることが多く,使用する薬剤も多岐にわたるが,そのなかでも神経・精神系に作用する薬剤の使用頻度は高いと考えられる.また,神経・精神系に副作用をもたらす可能性のある薬剤は多く,特に高齢者では薬剤の使用に注意しなければならない.今回の特集は,薬物療法の基礎となるpharmacology(薬理学)を取り上げ,リハビリテーション医療と密接な関係にある神経機能・精神機能と薬剤や脳内伝達物質との関連を中心に解説していただいた.難解に感ずるところもあるだろうが,薬物療法の基礎知識を深めて臨床に役立てていただきたい

脳内伝達物質と受容体 谷脇 考恭
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はじめに

 中枢神経系および末梢神経系のいずれにおいても,神経細胞間あるいは神経細胞と効果器(細胞)との間の神経情報伝達はシナプスを介して行われる.高等動物の神経系では神経終末(シナプス前部)より脳内伝達物質(神経伝達物質)が放出され,シナプス後膜(シナプス後部)に存在する受容体に結合することにより,神経情報伝達が行われる.

 神経伝達物質は大別して,1)アセチルコリン,2)アミン系(ドパミン,アドレナリン,ノルアドレナリン,セロトニン,ヒスタミン),3)アミノ酸系(GABA,グルタミン酸),4)プリン系,5)ペプチド系,6)ステロイドホルモン系などがある1)(図1).

 本稿では,まず,神経伝達物質の動態を示し,次に種々の神経伝達物質のなかで,特に神経疾患に関連の深いアセチルコリン,ドパミン,ノルアドレナリン,セロトニン,GABA,グルタミン酸,オピオイド,および,その受容体について,薬理学的性質,脳内の分布,脳機能における役割,神経疾患との関連などを述べる.

老年者における薬物動態 江藤 文夫
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はじめに

 近年,わが国でも老年者の医療において薬物動態に関する知識が重要視されるようになった.その理由は,老年者では若年者より服薬を要することが多く,多剤を服用し,副作用が出現しやすい傾向があるからである.

 先進国では65歳以上人口は既に18%に達しているが,これらの国々では薬の消費量の25~30%をこの年齢層が消費している.老年者では薬物に対する感受性変化が認められることが多く,副作用の頻度は若年者に比し2~7倍と報告され,その機序を説明する分野として,薬の吸収,分布,代謝,排泄に関する薬物動態学と薬の効果,作用機序に関する薬物力学がある1)

薬剤による神経障害 葛原 茂樹
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はじめに

 薬物による神経障害1-3)は,その種類と患者数において驚くほど多いものである(表1).これらの多くは,医師や医療関係者,患者が副作用についての予備知識を持っていれば,発生を未然に防ぐことができるし,たとえ発症しても軽症の間に治療することができる.逆に,その知識がないと適切な治療が行われず,治療に時間がかかったり,重度の後遺症を残し,死の転帰をとることすらある.

 薬物の神経系副作用は,急性症状として出現するものは比較的少なく,多くは慢性進行性の経過をとる.しかも,内臓諸臓器や造血器への副作用と異なり,通常の検査や画像所見には特別の異常を認めないことのほうが多い.したがって,その診断で重要なことは,患者や家族の訴えによく耳を傾け,症状をよく観察して,薬剤との関連について疑いを持つことである.

 本項では,リハビリテーションと関係の深い運動障害や不随意運動を主徴とする薬剤性神経障害のなかで,重要なものについて述べる.

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はじめに

 脳代謝賦活薬は,脳血管障害後の脳循環不全や脳代謝低下によって起こるさまざまな自覚症状,神経・精神症状を改善し,低下している日常生活活動(ADL)を向上させる目的で用いられる.わが国では脳血管障害患者が多く,その後遺症に対する治療薬が強く望まれた経緯もあって,この範疇の薬剤は特に熱心に開発が進められており,現在でも臨床の場で選択できる種類が非常に多い.

 さらに,最近では,これらの薬剤の研究開発知見や臨床成績が国際的にも評価されるようになり,いくつかのものは欧州や米国でも使用され,海外においても新たな研究開発が進められている状況にある.

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はじめに

 従来の精神医学は,主に,身体的には健常な者を対象として発展してきた.したがって,通常の精神医学で用いられている基準や薬物療法の方法を,そのまま脳卒中や脳外傷の患者にあてはめると,実状とはそぐわないことがある.向精神薬の薬理機序や投与方法を解説した著作は多い.リハビリテーション関係者が目を通す雑誌の最近号(1997年)をみても,脳卒中後のうつ8),うつ病と抑うつ状態1),抗うつ剤の使用法13),脳外傷者の脳病態生理と薬物治療23),抗精神病薬の使い方14)など,わかりやすい総説がすでにある.したがって,本稿ではそれらとの重複を避け,典型的な,あるいは示唆的な自験例を呈示し,日本における実際の臨床場面に即して解説を加えたい.薬物の分類や一般的な投与量は,文献13,14)を参照していただきたい.

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 昭和43年,秋田県はそれまでの脳卒中死亡率ワーストワンの汚名を返上すべく,秋田脳研を開設した.初代所長の東北大学,中村隆教授は,その設立の主旨を以下のように述べている.「広く脳卒中を対象とし,患者自身あるいは患者に関わる方々から知らされるあらゆる情報の詳細的確な理解と,それに基づく合理的対応を検討する.……私共は病気を対象とするのではなく,病気に悩む方々を対象とし,病理を究め,治療し,更に予防のために当然かかる不幸が発生する社会の分析にまで及び,……不幸な方々絶滅への理想を歩む筈である」(昭和44年3月15日付け「秋田医報」).その後,現在に至るまで秋田脳研の果たした役割は,県民に対する脳卒中診療を通じ,発症直後に移送し,早期に診断し,治療するという,脳卒中診療に関する「秋田方式」を生み,全国に普及させたことでも理解されるであろう.

 さて,5年程前から沓沢尚之秋田脳研センター長(当時)が中心となり,高齢化が急速に進む秋田県の現状を踏まえ構想を練り,この春ようやく完成し,開業したのが,秋田県第二の県立医療機関である,秋田県立リハビリテーション・精神医療センター(以下,「秋田リハセン」)である.秋田脳研設立主旨から当然の帰結として,「今後は健やかに美しく長生きするため,脳卒中などによる障害発生の予防にいかに対処するかを目的としたセンター的医療施設が必要である」(沓沢)として,人の能力の2大側面である「身体と精神」の障害に英知を結集できる性格の医療センターが構想され,誕生した.

講座 理学療法の理論

4.筋力強化―その理論と実際 小林 一成
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はじめに

 筋力強化は,昔から温熱療法などの物理療法と並んで,リハビリテーション医療における中心的な治療手段である1-4).筋肉に関する生理学的および組織学的知識が加速度的に増加し,その最大効果を引き出す訓練方法について,理論的に明らかにされてきた.しかし,実際にヒトを対象とした筋力強化訓練方法について考えてみると,唯一絶対の方法はなく,本来は患者の年齢,筋力低下の程度,基礎疾患の有無,目的とする動作などによって個々に決められる必要があるため,経験的な側面もいまだ残されている.これは,動物実験の結果をそのままヒトに適用することの難しさと,もう一方で,実際の臨床研究におけるヒトの多様性および大規模研究の困難さによるものと思われる.

 本稿では,筋力強化に関係する理論について触れ,現在行われている筋力強化方法について述べる.

実践講座 リハビリテーションにおける臨床心理学的アプローチ

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はじめに

 社会的スキル(Social Skills,以下,SS)とは,「社会的に容認しうる適応を前提として,適切な対人的行動をとることが出来ること」19)であり,社会的対人的な場面で,円滑な人間関係を成立させるために必要な社会的対人的技能と考えられる.

 坂野12)は,これまでに示された多様なSSの定義を,1)社会的な受容と適応を前提として適切な対人的行動をとることができること,2)個人が受ける正の強化を最大にし,負の強化を最小にするような対人的行動,3)外顕的な行動に限定せず,その行動に影響を及ぼしている個人の認知や感情を含めて考える,といった3つに分類している.

 一般に,SSは以下の構成要素からなる.1)社会的刺激を受け取る(受信),2)適切な状況判断に基づいて刺激の意味を処理する(処理),3)社会的に認められる形で,あるいは個人的に満足のいく形で表現する(送信)7),であるが,坂野は,4)バランスのとれた社会的相互作用をさらに付け加えている(表1).

 社会的スキル訓練(Social Skills Training,以下,SST)とは,不適切な対人的社会的行動を変容するためのさまざまなプログラムの総称である.

 何等かの対人的な問題行動を示す,あるいは対人関係上の障害を主な症状としている個人に介入するとき,SSTの理論的背景として「スキル欠損仮説」11)がある.この仮説では,対人場面での不安反応や不適応行動,あるいは社会的な不適応は,対人場面における行動のレパートリーの問題と考える.すなわち個人が問題を示すのは,十分に対人関係の機会を持つことの経験が乏しい結果であり,適切な行動を未だに学習していない,あるいは不適切な行動を誤って身につけてしまったと考える.そこで,積極的に個人に欠損していると考えられる適切なスキルを学習する,もしくはすでに行動レパートリーとして備わっている適切なスキルを効果的に表出する方法を学習することによって,適切なスキルの使用が可能となる.その結果,不安が減少し,適応した態度や行動がとれるようになると考えるのである.

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はじめに

 Wernicke失語は,著しい聴覚理解障害,および流暢で錯語の多い発話を特徴とする症候群である.その予後については,聴覚的理解の回復には限界があるといわれている1)ものの,ばらつきが大きく,未だ不明の点が多い.Kirshner2)は聴覚的理解と視覚的理解のいずれの障害が優位かによって,Kertesz3),上田ら4)は,発症時の「新造語(Jargon)」の量によって,予後が左右されることを報告している.また,前川ら5)は新造語の発話分析から回復良好例(症例G)で新造語の減少とともに,意味性錯語が多くなったと報告している.

 しかしながら,錯語,錯読,錯書の全てにわたって種類と出現頻度を記録し,その後の帰結との関係を報告した文献は見当たらない.今回,Wernicke失語で発症し,障害の程度や回復に差のみられた2症例を対象として,その錯語,錯読,錯書の相違を詳細に検討し,帰結との関連について考察したので報告する.

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はじめに

 福祉における情報化は,「福祉情報を十分に流通・活用して地域福祉システムを整備し,ニーズ保有者や住民の生活支援を図る総体の取り組み」である1)とされ,その重要性が福祉やリハビリテーションに携わる多くの関係者に指摘されているにもかかわらず,導入が遅れているといわれている2)

 視覚障害に関係した情報資源の流通も,その例に漏れない.視覚に障害を有する人も,彼らに何らかの援助を与えようとする人も,情報の不足によって問題解決がスムーズにいかないことを痛感している,情報不足の主な原因は,視覚障害者が社会的少数者であることと,個別で専門的なニーズに対応できる人材の散在であり,それぞれが十 1分な情報流通のメディアを持てなかったことから生じている3)

 こうした状況を改善する手段として,インターネットのような高度情報ネットワークの持つ技術.が関係者の話題を集めている.保健・医療・福祉の分野において,インターネットを活用するための検討が進められているが4-7),インターネットを視覚障害者の日常生活を支援するために検討する全国レベルの試みはなされていない.

 そこで本研究では,インターネットの電子メールを用いてディスカッションを行うための情報システムを構築し,その効果を検討することを目的とする.具体的には,構築したシステムを,実際に視覚障害に関する諸問題の解決を目的とする全国組織の活動を促進するために適用し,利用実験を行った.本論文ではこの実験の結果について報告する.

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はじめに

 一般に,臥位から立位へ姿勢を変化させると,重力の影響によって胸腔内から大量の血液が下肢に移行する.その結果,静脈環流が減少し,一回拍出量,ひいては心拍出量の減少が起こり,血圧の低下を招く.血圧が一定レベルより低下すると十分な脳血流量を確保することが困難となる.血圧は心拍出量(一回拍出量×心拍数)と末梢血管抵抗によって決定される.

 抗重力姿勢による血圧低下に対しては以下の調節機構3,12)が働く,すなわち,血圧が低下すると圧受容器の活動が抑制され,迷走神経のインパルスが減少する.そして,交感神経心臓枝および血管収縮線維のインパルスが増大する.この結果,心拍数が増加して一回拍出量の不足を補うとともに,血管が収縮して末梢血管抵抗を増大させる.これら一連の反応によって血圧は速やかに回復し,立位姿勢を継続することが可能となる.そして,こうした補償作用はその背後にある自律神経系によって調節される.

 自律神経活動の無侵襲的な尺度として,心拍ごとの変動,いわゆる心拍数変動(Heart Rate Variability;HRV)が利用されている1,2,4,11,14),すなわち,HRVに含まれる0.15Hz以上の成分(高周波数成分)は呼吸周期と関連をもち,副交感神経の活動を反映する.一方,0.15Hz以下の成分(低周波数成分)は圧反射の活動と関連し,交感・副交感両神経が介在するといわれている.

 一方,身体諸器官の機能が加齢に伴って低下することは周知のところである.このことは,血液循環を調節する自律神経系についても推察される.そこで,本研究では,HRVを手がかりに加齢に伴う自律神経機能の変化を分析することを目的とした.

一頁講座 リハビリテーション関連用語

行動療法 山上 敏子
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 行動療法は,「学習」をキーワードにした複数の理論的な基盤と,多数の技法をもった心理療法である.1959年に,多くの,行動の変容に関しての理論や技術や評価の仕方の臨床応用に,体系的な心理的治療法としての概念を与えられて,出発した治療法である.その後,臨床の種々の要請に応じていく過程で,理論や技術を追加し修正しながら発展して,現在にみるような大きな治療法になった.数年前からアメリカの行動療法学会の機関紙である「Behavior Therapy」の表紙には,表題の下に,「行動科学と認知科学の臨床の諸問題への応用」とサブタイトルが記述されている.最近では認知行動療法という名称が行動療法と同義語として用いられていることもある.

 現在,行動療法の理論は,新行動SR仲介理論,応用行動分析理論,社会学習理論,認知理論に大別され,それぞれが多くの治療技法をもっている.これらの理論モデルはお互いに対立するものではなく,ある理論は不安の学習に関して優れていたり,他の理論は思考行動の学習をよく説明したりなど,相補っているところが多い.実際の治療では,これらを,そのときの目的に応じて使い分けたり,同時に用いていることが多い.

脳血管障害 True or False

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 言語機能の障害の程度がきわめて重篤である全失語に対する訓練は,1か月,3か月など比較的短期間に限定して試み,改善が認められない場合には訓練の適応なしということで言語訓練の対象外とされた時期があった.長期間にわたり,狭義の言語訓練,すなわち言語機能の側面に対する訓練が施行される例は稀であったといってよいであろう.改善が認められなければリハビリテーションにかかる経費について保険会社が支払いを拒否することも多いアメリカなどでの状況を,一部,反映するものではなかったかと推測される.

 しかしながら,近年,重度の言語障害を有する全失語の患者に対する訓練が改めて重視されるようになっている.この変化の背景には,言語障害をimpairmentの障害,言語機能レベルの障害としてのみならず,disabilityの障害,すなわちコミュニケーション能力の障害をも含むものとして広く捉えるようになったことが挙げられる.したがって,言語訓練もいわゆる言語機能レベルの改善を目的とする狭義の訓練に留まらず,コミュニケーション能力レベルの障害に対する代替手段の獲得などの訓練にも目が向けられるようになってきている.

Sweet Spot 文学に見るリハビリテーション

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 『老年』は,大正3年,芥川が22歳の時に発表した彼の処女作である.この作品は,「一生を放蕩と遊芸に使い果たした敗残の老人」(三好行雄)を描いた作品とされているが,この作品は,痴呆性老人を描いた作品としても読むことができるのではないかと思われる.

 この作品の主人公は,房という一昨年還暦を迎えた男である.房は,「15の年から茶屋酒の味をおぼえて,25の前厄には,金瓶大黒の若太夫と心中沙汰になったこともある」ほどだが,まもなく親ゆずりの身上をすってしまい,三度の食事にも事欠くことになった.そのため彼は,わずかな縁つづきから,浅草の玉川軒という料理屋に引きとられて,今ではそこの楽隠居の身に収まっていたのである.

Sweet Spot 映画に見るリハビリテーション

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 ひところ,障害者映画といえば,生きることの素晴らしさや人間の強さを歌い上げる,いわば人生讃歌,人間讃歌物として成立していた.

 学校の先生なんかが,朝会でお前達もがんばれと言うときの素材といったらいいか,反ニビル栄養ドリンク剤のような役割が与えられていた.私なんかも中2のとき,パティ・デュークがヘレン・ケラーを演じた「奇跡の人」(62年・米)を先生の奢りで連れていかれたクチだ.もう少し若い人たちなら,さしずめ「典子は,今」(81年)だろう.

スコープ

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 Why did I go to Australia?

 オーストラリアは自然にあふれた南半球にあるコアラの国で,治安が良く,日本人なら誰もが行ってみたい観光地であるが,2年前にInternational Federation of Physical Medicine & Rehabilitation(IFPMR)で訪れた時には,まさか自分が留学するとは思っていなかった.オーストラリアを選んだ理由は,私自身も明確な答えを持ち合わせていない.3年後に迫ったオリンピックでブレイク間違いなしの国であるし,Applyした私の手紙に一番先に返事をくれたというのが答えだろうか.要するに歓迎してくれ,重宝がられる所で勉強できたほうが楽しいと思ったからである.

学会印象記

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 まだ残暑の厳しい1997年8月31日~9月2日,第34回日本リハビリテーション医学会学術集会が,国立京都国際会館で開催された.会場の国立京都国際会館は,京都市の北,宝ケ池に位置し,京都らしい落ちついた雰囲気で,非常に設備の整った会場であった.今年は国際リハビリテーション医学会第8回世界大会(IRMAⅧ)と同時開催ということに加えて,会期が夏期にずれ込んだこともあり,いつもとはやや趣を異にした感があった.

 初日は開会式の後,すぐに13会場に分かれての一般演題の発表が行われ,活発な討議が展開された.今回の学術集会のテーマは,「人間の機能の科学としてのリハビリテーション医学」であり,特別企画の内容は,精神・神経,physical fitnessに重点がおかれているとのことであった.

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 1.在宅人工呼吸療法(HMV)2症例の経験

  綾部協立病院内科 門 祐輔

 症例1は66歳,女性の筋萎縮性側索硬化症,症例2は81歳,女性の原発性肺胞低換気で,いずれも気管切開の下でHMVを施行した.症例1は終日,症例2は夜間のみHMVとしている.それぞれの在宅期間は約1年2か月,約3か月である.この間,回路からの空気のもれ,痰づまりなど種々のトラブルが生じたが,緊急の往診,家族の対応などで対処できている.地域のネットワークを作り,患者・家族を支えてきた.在宅導入時,診療報酬のみでは対応できない出費が必要であった(呼吸回路,フィルター,AMBUバッグなど).HMVは,確かに患者のQOLを向上させるが,安全性の確保,ネットワーク作りが不可欠であり,公費負担についてさらに改善が必要である.

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 旧版から19年を経て新版が出版された.この間,養護学校の義務教育が完全実施され,障害児の多様な個別の「特別な教育ニーズ」が広く認識されるようになり,通級による指導の制度などが始まっている.

 第1章は「肢体不自由児教育成立の背景」である.整形外科学の発達とともに「療育」が発展してきたことが述べられている.富国強兵政策の下で,小学校令(1885年公布)により,明治末期までに就学率は98%に達していたが,大正期の新教育思想の勃興期を反映して特殊教育全般への関心が高まっていった.しかし,関東大震災により肢体不自由の教育機関は設立されるに至らなかった.

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文献抄録

編集後記
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 ・薬の使い方についてはいろいろな観点から研究がされていますが,最近は社会医学的,医療経済学的なものが多いようです.pharmacologyに裏付けされた薬の使い方も,医療の現場までくると必ずしも適正には行われていないという批判が,医療費の増大,健保赤字の増大を前にして,各方面から起こっています.今朝('97/10/20)の新聞には,早期胃癌患者で術後化学療法をやった人とやらなかった人の5年生存率に有意な差がなかったという厚生省委託研究班の報告が載っています.

基本情報

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総合リハビリテーション
25巻11号 (1997年11月)
電子版ISSN:1882-1340 印刷版ISSN:0386-9822 医学書院

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