巻頭言
センター設立と「総合リハビリテーション」の展開
佐山 一郎
1
1秋田県立リハビリテーション・精神医療センター
pp.1227
発行日 1997年11月10日
Published Date 1997/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552108518
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昭和43年,秋田県はそれまでの脳卒中死亡率ワーストワンの汚名を返上すべく,秋田脳研を開設した.初代所長の東北大学,中村隆教授は,その設立の主旨を以下のように述べている.「広く脳卒中を対象とし,患者自身あるいは患者に関わる方々から知らされるあらゆる情報の詳細的確な理解と,それに基づく合理的対応を検討する.……私共は病気を対象とするのではなく,病気に悩む方々を対象とし,病理を究め,治療し,更に予防のために当然かかる不幸が発生する社会の分析にまで及び,……不幸な方々絶滅への理想を歩む筈である」(昭和44年3月15日付け「秋田医報」).その後,現在に至るまで秋田脳研の果たした役割は,県民に対する脳卒中診療を通じ,発症直後に移送し,早期に診断し,治療するという,脳卒中診療に関する「秋田方式」を生み,全国に普及させたことでも理解されるであろう.
さて,5年程前から沓沢尚之秋田脳研センター長(当時)が中心となり,高齢化が急速に進む秋田県の現状を踏まえ構想を練り,この春ようやく完成し,開業したのが,秋田県第二の県立医療機関である,秋田県立リハビリテーション・精神医療センター(以下,「秋田リハセン」)である.秋田脳研設立主旨から当然の帰結として,「今後は健やかに美しく長生きするため,脳卒中などによる障害発生の予防にいかに対処するかを目的としたセンター的医療施設が必要である」(沓沢)として,人の能力の2大側面である「身体と精神」の障害に英知を結集できる性格の医療センターが構想され,誕生した.
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