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はじめに
気道クリアランス(airway clearance)は,気道分泌物や異物を効率的に除去し,正常な呼吸機能を維持するうえで不可欠な生理的プロセスである.気道クリアランスが障害されると,無気肺の形成や肺炎などの重大な合併症を引き起こす可能性が高まる.気道クリアランス法(airway clearance technique:ACT)は,過剰な分泌物を除去するために用いられるさまざまな戦略を指す.その目的は,貯留した分泌物によって引き起こされる気道閉塞を軽減することで呼吸器感染症を予防し,肺の虚脱部を再拡張することでガス交換を改善することにある1-4).
近年は気管支拡張症,囊胞性線維症(cystic fibrosis:CF),筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis:ALS),デュシェンヌ型筋ジストロフィー(Duchenne muscular dystrophy:DMD),脊髄損傷など,さまざまな病態における排痰の重要性が認識され,国内外のガイドラインでもACT実施が推奨されるようになってきている5-9).ただし,後述するようにACTには非常に多くの手法が存在し,その多様さも相まって,「この手法・デバイスがほかよりも優れている」,「この手法・デバイスとあの手法・デバイスの組み合わせが疾患横断的に有効である」と断言するにはエビデンスが不足しているといわざるを得ない10-13).しかし,このエビデンスの欠如は必ずしもACTの有効性を否定するものではない.ACTに関するエビデンスを構築していくためのさらなる研究の必要性が提唱されている14).
本稿では各ACTの概要を述べたうえで,実臨床においてACTを選択する一助となるような情報を提供していきたい.

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