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はじめに
一般に,臥位から立位へ姿勢を変化させると,重力の影響によって胸腔内から大量の血液が下肢に移行する.その結果,静脈環流が減少し,一回拍出量,ひいては心拍出量の減少が起こり,血圧の低下を招く.血圧が一定レベルより低下すると十分な脳血流量を確保することが困難となる.血圧は心拍出量(一回拍出量×心拍数)と末梢血管抵抗によって決定される.
抗重力姿勢による血圧低下に対しては以下の調節機構3,12)が働く,すなわち,血圧が低下すると圧受容器の活動が抑制され,迷走神経のインパルスが減少する.そして,交感神経心臓枝および血管収縮線維のインパルスが増大する.この結果,心拍数が増加して一回拍出量の不足を補うとともに,血管が収縮して末梢血管抵抗を増大させる.これら一連の反応によって血圧は速やかに回復し,立位姿勢を継続することが可能となる.そして,こうした補償作用はその背後にある自律神経系によって調節される.
自律神経活動の無侵襲的な尺度として,心拍ごとの変動,いわゆる心拍数変動(Heart Rate Variability;HRV)が利用されている1,2,4,11,14),すなわち,HRVに含まれる0.15Hz以上の成分(高周波数成分)は呼吸周期と関連をもち,副交感神経の活動を反映する.一方,0.15Hz以下の成分(低周波数成分)は圧反射の活動と関連し,交感・副交感両神経が介在するといわれている.
一方,身体諸器官の機能が加齢に伴って低下することは周知のところである.このことは,血液循環を調節する自律神経系についても推察される.そこで,本研究では,HRVを手がかりに加齢に伴う自律神経機能の変化を分析することを目的とした.
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