Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
はじめに
社会的スキル(Social Skills,以下,SS)とは,「社会的に容認しうる適応を前提として,適切な対人的行動をとることが出来ること」19)であり,社会的対人的な場面で,円滑な人間関係を成立させるために必要な社会的対人的技能と考えられる.
坂野12)は,これまでに示された多様なSSの定義を,1)社会的な受容と適応を前提として適切な対人的行動をとることができること,2)個人が受ける正の強化を最大にし,負の強化を最小にするような対人的行動,3)外顕的な行動に限定せず,その行動に影響を及ぼしている個人の認知や感情を含めて考える,といった3つに分類している.
一般に,SSは以下の構成要素からなる.1)社会的刺激を受け取る(受信),2)適切な状況判断に基づいて刺激の意味を処理する(処理),3)社会的に認められる形で,あるいは個人的に満足のいく形で表現する(送信)7),であるが,坂野は,4)バランスのとれた社会的相互作用をさらに付け加えている(表1).
社会的スキル訓練(Social Skills Training,以下,SST)とは,不適切な対人的社会的行動を変容するためのさまざまなプログラムの総称である.
何等かの対人的な問題行動を示す,あるいは対人関係上の障害を主な症状としている個人に介入するとき,SSTの理論的背景として「スキル欠損仮説」11)がある.この仮説では,対人場面での不安反応や不適応行動,あるいは社会的な不適応は,対人場面における行動のレパートリーの問題と考える.すなわち個人が問題を示すのは,十分に対人関係の機会を持つことの経験が乏しい結果であり,適切な行動を未だに学習していない,あるいは不適切な行動を誤って身につけてしまったと考える.そこで,積極的に個人に欠損していると考えられる適切なスキルを学習する,もしくはすでに行動レパートリーとして備わっている適切なスキルを効果的に表出する方法を学習することによって,適切なスキルの使用が可能となる.その結果,不安が減少し,適応した態度や行動がとれるようになると考えるのである.
Copyright © 1997, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.