脳血管障害 True or False
全失語では言語療法の効果はない?
立石 雅子
1
1慶應義塾大学病院リハビリテーション科
pp.1300-1301
発行日 1997年11月10日
Published Date 1997/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552108531
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言語機能の障害の程度がきわめて重篤である全失語に対する訓練は,1か月,3か月など比較的短期間に限定して試み,改善が認められない場合には訓練の適応なしということで言語訓練の対象外とされた時期があった.長期間にわたり,狭義の言語訓練,すなわち言語機能の側面に対する訓練が施行される例は稀であったといってよいであろう.改善が認められなければリハビリテーションにかかる経費について保険会社が支払いを拒否することも多いアメリカなどでの状況を,一部,反映するものではなかったかと推測される.
しかしながら,近年,重度の言語障害を有する全失語の患者に対する訓練が改めて重視されるようになっている.この変化の背景には,言語障害をimpairmentの障害,言語機能レベルの障害としてのみならず,disabilityの障害,すなわちコミュニケーション能力の障害をも含むものとして広く捉えるようになったことが挙げられる.したがって,言語訓練もいわゆる言語機能レベルの改善を目的とする狭義の訓練に留まらず,コミュニケーション能力レベルの障害に対する代替手段の獲得などの訓練にも目が向けられるようになってきている.
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