総合リハビリテーション 1巻2号 (1973年2月)

特集 片麻痺のリハビリテーションⅡ

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【抄録】 片麻痺のリハビリテーションにおける外科手術の位置づけを試みた.腱の処理を主体とする再建手術は片麻痺に特有の変形拘縮を容易に矯正することができる.さらにその原因となっている筋力・筋トーヌス・痙直性などの不均衡を是正して変形の再発をよく防ぐことができる.しかし抑制のとれた姿勢反射・立直り反射,異常なsynergy movementsを除くことは困難である.筋力回復の悪い遷延弛緩型も再建手術の対象にはなりにくい.上肢機能を再建するためにはコントロールされたすばやい筋の収縮・弛緩,精妙な知覚などをもとりもどす要があり,現在の手術法では成果があがらない.われわれの工夫した再建手術法を紹介し,そのindicationや留意すべき点にふれた.リスク管理については,スクリーニングの基準と術前・術中・術後管理において守るべき老人外科の基本原則をあげておいた.とくに循環障害(末梢も含めて),呼吸障害に留意すべきである.

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【抄録】 片麻痺のリハにおける外科的手術は,①機能の再建,②変形の矯正と拘縮の除去③痙縮の軽減などを目的として行なわれ,①機能回復のポテンシャルを高める,②治療期間を短縮する,③装具や自助具の着用を容易にする,④APLの向上に役立つなどの役割を果たすものである.

 片麻痺にみられる変形や拘縮についてふれるとともに手術適応の決定に関する全身的要因と局所的要因についてふれた.

 手術症例としては,上肢では,①Mann-Wernicke変形,②肩関節亜脱臼,③手指伸展障害に対する選択的腱延長術,④母指対立機能再建術,⑤その他.下肢では,①股関節の内転,屈曲,外旋位拘縮に対する矯正法,縫工筋移植術,②膝関節屈曲拘縮の矯正法とその他の術式に対する考え方,③内反尖足矯正法,④足指変形矯正法について筆者の経験を中心に術式や適応および要点について紹介した.また術前,術後の問題点についても言及した.

片麻痺の下肢の手術 田川 宏
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【抄録】 片麻痺における変形・拘縮は,弛緩性麻痺とは異なり,単なる筋力インバランスによる関節拘縮ではなく,病的姿勢反射,異常な共同運動,伸張反射の亢進など動的要因が大きく関与している.したがって発病初期における処置の適否のみには左右されず,リハビリテーションを阻害する因子として,手術による機能再建の対象となるものが少なくない.下肢においては痙性内反尖足と槌趾がおもな変形で,歩行障害も強く,主要な手術対象となる.下腿三頭筋を弛緩延長する手術,前・後脛骨筋や足趾屈筋腱の移行による背屈外反力の再建,足趾屈筋腱の切腱術などを併合して手術を行なえば,あえて骨手術を行なわなくても満足すべき治療効来が得られる.膝の屈曲拘縮や過伸展傾向,股関節の屈曲内転拘縮なども手術対象となるが,著者らの手術経験は数に乏しく,なお検討すべき余地が大きい.異所性骨化による不良肢位強直は,骨化成熟後,手術的切除を行なうべきである.

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【抄録】 526例(平均年齢60歳,男女比2.8:1)の片麻痺患者の退院3年後の時点での追跡調査の結果は,回収率は98.9%に達し,家事を含めての職業復帰率は28.7%であり,ADLの独立性は63%の例で保たれており,また,3年間の死亡率は19.8%であった.これらに関して年齢階層別の検討を行った.これらの追跡調査の中からえられたいくつかのエピソードのうち,働く場所がないという訴え,生きがいとしての仕事,言語障害者の就職(本人の意欲を支えた妻の愛情),高齢者の就職(夫婦の二人三脚),家族との人間関係,日常生活が訓練の場という考え,地域祉会の好援助例,退院患者の自主的な集いなどについて紹介した.

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【抄録】 片麻痺リハビリテーションにおいて,予後の予測についての研究が必要である.従来痴呆,便失禁等の個々の症状について論じられて来たが,本来病変の拡がりとその修復の可能性がその基礎であり,これによって躯幹の平衡,健側での起立等の基本的な機能が得られ,かつ学習能力があるか否かにより左右される.左側片麻痺に夜間せん妄を中心とする特有の意識障害を有する例が,予後が不良であるという経験を「劣位半球症候群」として一括したが,個々の症状より,病巣の拡がりを示すこのような症候群として予後を観察すべきである.治療所要期間について,PERT/CPMを応用すると各病期の治療所要期間の計算が容易となる.平行棒訓練は全員の平均で16.34±10.11日であり,50日以上を要した例はいずれも歩行実用とならない例であった.全訓練期間は,76.45±59.23日であった.

巻頭言

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 従来,リハビリテーションといえば一般に私なども含めてそれはすなわちリハビリテーション医学として受けとめてきたと思う.それは1つには,この分野の重要性に注目したのが医学畑の人々であったことを大きな理由としてあげてよいだろう.しかし,リハビリテーションが医学のみでその理想を達成できるのだろうか.

 リハビリテーション医学を構成する諸学は,生理学,解剖学,神経学,整形外科学などの医学に加えるに,理学療法学,作業療法学,補装具学,看護学,言語治療学,臨床心理学,ソーシャルワーク学など運動治療と機能回復に関する学問である.前者群をリハビリテーション医学の基礎的側面とするならば,後者群はリハビリテーション医学の臨床的側面とでもいえよう.そしてこの臨床的側面を構成している諸学は,これまでパラメディカルとして扱われている分野でもある.

総説

片麻痺の上肢(1) 福井 圀彦
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【抄録】 片麻痺下肢は健側との協力動作が多く,装具使用により回復を上回るADLを期待できる場合が少なくないが,上肢は左右別の動作や,巧緻性を要求されるのでそのようなわけにはゆかない.上肢の回復は病巣部位,拡がり,副行路形成などにより宿命的に決まってしまうものである.したがって,主要なポイントは,関節の障害,ROMの制限,肩手症候群,その他の変形などの予防,治療に置かれることが多くなるが,見逃がされやすい二次的末梢神経障害にたいする配慮も大切である.

 共同運動から脱し得る上肢については分離を促進するとともに逆共同パターンの組合せが効果的である.上肢機能判定基準としてはBrunnstromのstageに知覚障害,振戦,失調,ROMなどを考慮し,左右の基準に差をつけるべきである.フェノールブロックで機能改善を意図する場合には,ブロックによる筋力低下の分布を予測すべきであり,観血的再建術についても痙性,筋力のバランスなどに今後の課題が残されている.

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Ⅲ.経済効率か福祉か

 アメリカで総合的なリハビリテーション行政の大綱が確立した1954年に,ときの大統領アイゼンハワーはリハビリテーションの効用について次のような注目すべき発言をしている.‘現在われわれが非生産的な障害者を保護するために費す財政支出は彼らを自活させ納税者とするために必要と推定される金額の3倍に達している.リハビリテーションを受けた人々は全体としては彼らの更生のために使われた費用の幾層倍もを国家への納税として返済しているのである’(議会宛特別教書).‘(国家によるリハビリテーションの実施は)第1に全世界に向ってわがアメリカではひとりひとりの人間の尊厳と価値がいかに高く評価されているかを改めて強調するものであり,第2にそれはきわめて重要な人道的投資でありながら合衆国ならびに各州政府財政に莫大な金額を節約させてくれるものでもある’(上院での演説).これがリハビリテーションの‘経済性’であって,整理すると3通りになる.第1は役に立たない障害者を労働者(広義の)に変え資本主義経済のために新たな労働力を創りだすということ,第2はその結果彼らが支払う税金はリハビリテーションの費用を相殺しなおその上に莫大な収益を国や地方財政にもたらすということ,第3はリハビリテーションを引受けた政権が‘人道的’な政権として人々の信望と支持を期待できるということである.ただしこの第3点は一般にはリハビリテーションの経済性のなかには入れられていない.権力の‘妥協’の内容それ自体であるからそれも当然といえるが,しかし損をしないで必要な妥協ができるということはやはり経済的であり,権力はこの意味でもできるだけ有効にリハビリテーションを活用しようとする.わが国にさいきん簇出する‘観光施設’などはその戯画的な一例であろう.

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【抄録】 リハビリテーションは医療と福祉両分野に大きなディマンドをもちながら,いくつかの行き詰りの要素をはらんでいる.その重大な問題として保険医療の中におけるリハビリテーションの限界と社会福祉行政の中におけるリハビリテーション医療の処遇があげられる.わが国の医療スタッフは長年にわたる保険医療にすっかり洗脳されてしまって,保険診療の中だけでリハビリテーション医療の処方権を行使しようとする.一方社会福祉行政面では訓練と称するアプローチの中に医療行為が含まれ,祉会福祉事業の中で医師は援護の実施機開の長というきわめて不可解な権限下に処方権を奪われ,相談所では判定という名の医療行為が堂々と医療法を無視して行なわれている.これらの矛盾を解くカギは医師の社会教育,社会福祉の概念,法律の整理統合,リハビリテーション費用負担区分の明確化,地方自治体を中心とした地域医療システムの開発,そして国の援助にある.

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【抄録】 従来用いられてきた手関節駆動フレキサーヒンジスプリントの問題点を指摘し,新たに手掌部に電動モーターを組み込んだスプリントを試作した.またこれから得たヒントを利用して,これまであまり手をつけられなかった手根部切断,手関節離断患者用の簡易電動義手を開発した.これらのスプリントならびに電動義手の制御方式は筋膨隆を利用したリミットスウィッチで行なわれる.

 現在広く使用されているケーブルコントロール能動義手の制御方式の欠陥,特に一定動作時におけるハーネスのたるみ現象について考察,油圧ポンプおよびハーネスシリンダーを使用した新しい方法について述べた.

講座

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Ⅴ.電気検査法

 神経が損傷をうけ障害が起こった場合に,徒手筋力テストや知覚検査をたんねんに行なえば,損傷部位・範囲・程度などはある程度推定することができるが,麻痺に陥っている筋の支配神経の損傷の程度が,単に機能的なものにすぎないのか,神経線維の連続性をも断たれてしまったものか判断するためには,電気検査を要することが少なくない.また神経修復術(剥離・縫合・移植など)後,経過観察中に,臨床的に筋収縮が認められないにもかかわらず,神経再支配の所見が電気検査によって確認されることもしばしば経験するところである.

 さらに,現在麻痺に陥っている筋,萎縮が認められる筋が,神経原性疾患によるものか,筋原性疾患によるものかの判定,神経原性のものであれば,上位運動ニューロン性か,前角細胞か,下位運動ニューロン性かの判定にも,電気検査が威力を発揮することが少なくない.

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Ⅰ.はじめに

 近年医学の進歩,および社会経済の発達にともない,先天性疾患,慢性疾患,老人病,重症後遺などの著しい増加に対して,医学的“リ”のニードはますますその比重を増して来ている.医学的“リ”の主なる役割は病障害者の後遺症,随伴症をできる限り防止または軽減し,時を逸さず障害の回復,および残存能力を可能な限り引き出すことであり,“リ”サービスの全過程の出発点ともいえる重要な一過程を示している.医学的“リ”施設はこれらを集約して組織的に行なう場所であり,施設を量・質ともに充足することりより,サービスの流れが歪みなく是正され,病障害者を迅速に“リ”させうるといっても過言ではない.

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はじめに

 リハビリテーションの総合的定義としてしばしば用いられる定義に,全米リハビリテーション協議会が採択したものがある.すなわち“リハビリテーションとは障害をもつようになった者の肉体的,心理的,社会的,職業的,経済的有用性を可能な最大限度まで回復させることである”と.これは障害者を全人格的にとらえた見方であり,障害者の肉体的,心理的,社会的,職業的,経済的な側面のどれか1つにでも問題があれば,その障害者は真にリハビリテートしたといえないことを意味している.

 リハビリテーションはあらゆる諸科学の総体として位置づけられる.それゆえ1人の障害者をとりまいてリハビリテーションのための種々の専門技術が存在するわけである.そしてその実践形態としては,医学的リハビリテーション,職業的リハビリテーション,社会的リハビリテーション,教育的リハビリテーション,心理的リハビリテーションがあげられる.これらの実践技術は,障害者のニードに応じて駆使され,おのおのの側面がお互いに障害者のニードと問題を上手にパスし,カバーしあい,ゴールへと障害者を運ぶところにリハビリテーションのプロセスが存在するのである.

 しかしながら元来の日本のリハビリテーションは,医学的リハビリテーションか,それとも社会的リハビリテーション(この場合職業,教育,心理的リハビリテーションを含めて)かというように,リハビリテーションを二元的にとらえて発展してきた.しかしその結果として,最近ではおのおのの分野でお互いに行きづまりを感じ,従来のあり方に反省がなされる現状となってきた.そこでこの二元性を早期に打破し,いわゆるメディカルとソーシャルの側面が一連のプロセスとして機能することが今後の日本のリハビリテーションの課題であると考える.

 これはリハビリテーションに携わる職員の嘆きからもわかるように,現在の日本の社会環境,制度の中にリハビリテーションの育つ素地があまりにも少ないことである.それゆえ,これ以上1人の障害者を取り巻いて各専門家が縦割に,小刻みに関与するのは止めなくてはならない.リハビリテーションを成功させるには,リハビリテーションに従事する専門家の職業意識の同一性と危機への連帯感を一層強化し,広く地域住民そして国民を巻き込む姿勢を打ち出さなくてはならない.これからは慈善的な処遇とか,施設収容主義,そして隔離主義から障害者を守り,民主主義の基盤の上に立って,社会の中の障害者を育成,援助することを目指すことが重要である.

 以上のような課題を頭におき,医学的リハビリテーションと社会的リハビリテーションが結びつく努力の一歩として,この講座では障害者が活用しうる社会制度や社会資源を数回にわたり具体的にわかりやすく紹介する.これはソーシャルワーカーばかりでなく,他の分野の専門家にも大いに活用していただきたい.また同時に,具体的な事例を時には引用しながら社会制度の不備な点や疑問にもふれて,障害者の社会復帰上の問題点を指摘していきたい.

一頁講座

人間把握とESTEM 池辺 陽
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 人間生活を図のようにあらわすことができる.周囲の環境に対して,空間とエナジーと道具に人間が関連することによって成立している.それぞれの頭文字をとって1つに並べると「ESTEM」となる.発音もシステムと似て「エステム」と呼ぶことができる.

 人間の生活はこの5つの条件のどの部分が変わっても,全体がそれに対応して変化する.この関係は,Mが1人の人間であっても,あるいは家族という住宅のような規模であっても,また都市という規模であっても,同様であるということができよう.人間はこれまでの歴史を通じてこの5つの条件と闘い,またそれぞれの段階に応じて生活を形成してきた.経験的にその行為が行なわれた段階では,この5つの要素の組み合わせは常に密接であったと同時に,また別な意味ではそれほど自由度の高いものではなかった.身障者という現代の課題を考えてみても,少し歴史をさかのぼれば,人間自体の生存の範囲はある意味で非常に小さかったともいうことができる.ESTEMのパターンは,非常に限られた狭い世界での成立でしかなかった.だが同時にそれはお互いに密接にからみ合ったものであったということができよう.現代に入って,多くの学問や技術の発達はこの5つの要素をそれぞれ発展させたと同時に,またお互いの食い違いを大きくしていった.

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 明治35年生れ,昭和5年に千葉医科大学を卒業後,昭和9年に東大高木教授の門下に入る.間もなく日支戦争,太平洋戦争に応召され,陸軍船舶衛生隊に入り,終戦をむかえたときの生存者は105名中わずか35名だった.それから広島県での活躍がはじまる.郷里の村に国から費用を出させ,一部自費を投じて病院を建て,ほとんど無報酬で働き,薬のない折から薬草を栽培し,栄養指導のため山羊や鯉を飼うことまで指導,日本ではじめて国保の7割給付をはじめた.さらに高木教授の指示により広島県内の肢体不自由児の巡回検診を行ない実態をしらべた上で「若草園」を立てるべく奔走.昭和28年に設立,さらに他の施設も含めて本格的なものを作るため西条に移転を計画した.このときの県知事に対する猛烈な陳情は,知事公舎への朝がけ,知事室での坐り込みなどで有名である.また他の県に先がけて義肢装具の講習会を毎年行なったり,Towerの導入でも知られている.その果敢な行動力から,渾名は「森の石松」,「田舎さむらい」,「野武士」など面影をうまくとらえたものがある.高木教授の考えに共鳴し,それをまっしぐらに実現された点,門下の5指のうちに入ると言われている.今後の御健闘を祈る次第である.

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 この単行本は1968年Academic Press社より発行され,編者はH.B. Fallsである.FallsはミズリーのSouthwest Missouri State Collegeで体育を教えており,運動学,エネルギー代謝をしらべるための実験室の主任でもある.この書物の執筆者は生理学,体育学,航空医学,心臓病学などの研究に従事している人たちで,医者ではない.医者としてわれわれは運動とか体力とかを常に考えており,また患者に接する上にも運動の生理学を研究することはきわめて大切なことである.医者あるいは医学者が書いている運動の生理学に関する良い本は多いと思われるが,医者以外の研究者の考え方にも参考になることが多いと考え本書をとりあげてみた.

 470ページの中冊子である本書は大きく3つの部門に分かれている.第1の部門は基礎生理学的な事項の解説であり,骨格筋,神経系と筋収縮,筋力,筋疲労をはじめとして呼吸系,循環系,そして消化器系や腎臓などと運動との関連性に議論がおよんでいる.ホルモン系と運動との相関にまでおよんでいる.副腎皮質ホルモンや下垂体前葉ホルモンは筋肉の収縮運動後に血清中に増量して来ることなども知られている.訓練と17-KS尿中排泄量との関係の研究も行なわれている.第2の部門は13の項目に分かれており,栄養と運動.体温調節,運動意欲の昂揚などが述べられている.Dopingと称して人間の競争意識をかり立てて運動を遂行させ人工的に不自然にhyperactiveな状態にもたらすために興奮剤など特殊な薬物を使用することについても触れている.これは今期オリンピックなどでも問題になった.つづいて寿命,健康と運動との関係が述べられている.一般に信じられているほどの科学性は乏しいとはいえ,運動を行なっていると寿命が長くなるということがmass surveyの証拠をもとに示されている.しかも慢性の呼吸器疾患などは安静で運動をしないとかかりやすいという事実もあることであり,高血圧,閉塞性動脈疾患,糖尿病,喘息などについての好影響も認められている.われわれが現在運動療法の対象としてとりあげることができるのはまさにこれらの疾患に対してである.糖尿病にいたってはインシュリン療法が全盛になる前には運動療法が唯一の方法であったらしい.したがってやはり肥満症や糖尿病にも良き療法として見直されるべきであるというわけである.続いて高い所におけるガス張力の変化が運動能力におよぼす影響が述べられ,身体活動と消費エネルギーの事が解説されている.熱量測定法Calorimetryについては簡単な図解とともにわかりやすく書かれており,将来リハビリテーション医学の研究分野として行なうべきもっとも基礎的な事項の1つと思われる.理学療法士や作業療法士がこのような研究分野に医師やその他の研究者とともに入って行くことは考えるに難くないので参考になるであろう.第3の部門はスポーツについてのややくわしい論述で代表的なものとしてrunningとswimmingという2つをあげてその訓練の方法,量,などについて生理学的観点から議論の展開を試みている.

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日本の印象

 荻島 今日お迎えしましたDr. Fishmanは,アメリカにいま3つあります学校―ニューヨーク大学,カリフォルニア大学,それからノースウェスタン大学の中でNYU義肢装具の学部長です.リハビリテーションにおいては,義肢装具を専攻する人もリハビリテーションチームの重要な一員でありますから,そういうことで,いろいろうかがってみたいと思います.

 最初に,日本の施設について,その印象をおうかがいします.

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代表発起人あいさつ

横浜市大 土屋弘吉

 ちょっとごあいさつ申し上げたいと思います.私,第9回のリハビリテーション医学会の会長をおおせつかりまして,5月25日,26口と2日間総会をやったわけですが,皆さんのご協力によりまして,盛会裡に会を終わらすことができまして,たいへん喜んでおる次第でございます.

 その学会のときに`“リハビリテーションにおける医師の役割”というシンポジウムをいたしまして,私がそれを司会したわけですけれども,そのシンポジウムで,日本のリハビリテーション医というものは,これからリハビリテーションの中に両足を突っ込んでやっていく意思でなければならない,いままでは内科とか,整形外科とか二股をかけた先生たちが主力であったけれども,これからは両足をリハに乗っけた先生でなくてはならない,そういうようなことが,あのシンポジウムで会員の皆さんから,なんといいますか,アグレマンをいただいたというふうな感じを持っておるわけです.

海外だより

米国ボストン大学にて 鈴木 明子
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 ボストン大学の国際学生協会の集まりで,パキスタンから来ている学生に,答えを想定した上でたずねてみた.「20年後の世界でどの国が一番強くなっているのでしょうね.」彼はすかさず「強いというのはどういう意味ですか.経済力か,軍事力か,政治力か,人口か,そのほかあるでしょう.それに20年というのは長すぎますよ.1952年に今日の日本の成長を何人が予想していましたか.今は4年か5年先しか考えられないくらいに,世界が急スピードで変っているのですよ.」彼の言葉は当たっている.8年前にニューヨークの市立病院に勤務した時のアメリカと今回とでは,まるで違った国家に留学したかと思うような変化を見せつけられている.

 同級生のキャロルが夏休み中に先天性股関節脱臼のために両側の手術を受けた.医師から,「6週間で退院できるし,この手術は絶対必要である」といわれて,ついに決心したものだ.しかし片方を手術した後傷口がふさがらず,そのために予定していたもう一方の手術は延期された.傷口がふさがるのを待たず,アパートへ営業用の救急車で送られてきた.ADLのためにベッドから離れられず,起き上ることもできないので,Visiting Nurseが毎日1時間位来て,ガーゼの交換,トイレの始末,食事を作るなどの世話をした.担当医も時折顔を出した.そうしているうちに傷口がふさがったので再入院し,同時にもう一方の手術を終えた.この後も傷口がすっかりふさがらないうちに,ガーゼ,アンテバイオテックの薬を貰って退院してきた.この時から私と同じ所に住むようになったので,ベッドに寝ていた3週間をいろいろと世話をすることになった.できるだけADLに必要なものをベッドの回りにおいて,食事を作る,トイレの始末,買物,洗濯,お金に関することが主な手助けとなった.3週間後に主治医が来て,4点歩行の仕方を教え,その後の2週間は私の責任で歩行練習をした.

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 武智・明石両氏の共著になる「義足」が,版を新たにして出版された.第1版が出版されてから4年を経過したとのことである.第1版が果した役割はここにのべるまでもないが,日本において系統的にしかも実際に即して書かれた義足の最初の本であったといえよう.したがってこの本によって医師,製作者,PTの多くが目を開かれたに違いない.

 さて,その後の4年間に義肢装具に関する関心は高まり,各地での義肢装具研究会が開かれ,多くの人々が集まるようになった.また,学会においてもかなりの演題が発表され,工学者等とのチーム・ワークもとれるようになってきた.しかし,リハ医学会の義肢装具委員会の活発な活動の大半が,現状の問題の整理に費されているのも事実であり,義足1つをとっても早急に解決しなければならないことが山積している.

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 このたび,武智,明石両先生の力作「義手」が世におくられるにいたったことは,まことにご同慶にたえません.両先生は,すでに「義足」,「装具」について名著を出版され好評を得ておられますが,そのしめくくりとして,いちばん難物の「義手」にいて,多年にわたる業績の結晶として本書を世に問われたものと拝します.

 本書の成り立ちは,人間の手の意義にはじまり,義手の歴史におよび,上肢切断および各種義手の各コンポーネント,装着訓練,綜合判定,処方におよび,さらに補足として日本における義手の問題点,最近流行の術直後義肢装着法,種々の検査表,用語一覧表で英,独,日を対比して記載され,心にくいばかりに,かゆいところに手の届いた執筆ぶりを示しておられます.

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文献抄録

編集後記 横山 巌
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 リハビリテーションは,本来comprehensiveな概念であるが,それをあえてこの雑誌に“総合”の語を冠した理由は,その総合性を特に強調したものと考えてよいと思う.リハビリテーションに関連のある各領域の情報が今後とも幅広く収載されることであろう.

 この第2号においても医学以外の領域の方々に数多く御協力をいただいたことを心から感謝する.リハビリテーション行政は未だchaosの中にあるといってよかろうが,これに関する鈴木正里先生と今田拓先生の論説は,われわれにリハの本質とリハ医療のあるべき姿についての再考察の機会をあたえられた.リハは十分payするものであるとの声は,リハの先進国であるアメリカでよく聞かれるが,リハがpayするものであろうとなかろうと,その本来有している人道的立場が忘れられては大変なことである.

基本情報

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総合リハビリテーション
1巻2号 (1973年2月)
電子版ISSN:1882-1340 印刷版ISSN:0386-9822 医学書院

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