Japanese
English
特集 障害受容
切断患者の障害受容
“Acceptance Process”of Amputee.
渡辺 俊之
1
Toshiyuki Watanabe
1
1東海大学医学部精神科
1Department of Psychiatry and Behavioral Science, Tokai University, School of Medicine
キーワード:
切断者
,
欲求
,
障害受容
,
治療関係
,
心理
Keyword:
切断者
,
欲求
,
障害受容
,
治療関係
,
心理
pp.837-841
発行日 1994年10月10日
Published Date 1994/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552107707
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はじめに
切断とは,その名の象徴するとおり自己の身体の一部を切り放すことであり,それまでの慣れ親しんできたボディイメージや自己イメージの喪失を意味する.切断を強いられた患者(以下,切断者)は失われた手足の代わりに義肢を受け入れ,それを身体的かつ心理的にも統合して,新しい自己を築いていかねばならない.切断者がリハビリテーション訓練の途上で体験する心理的葛藤は深刻であり,怒り,羨望,妬み,憤りなどのさまざまな情緒が引き起こされる.彼らの情緒は訓練の途上でリハビリテーション・スタッフの心に投げ込まれ,スタッフは意識的にしろ無意識的にしろ,その対応(反応)を強いられることになる.
さて,障害受容という言葉はリハビリテーション・スタッフが患者心理を経時的にとらえていく際の重要な言葉であるが,その概念に関しては本田1)も指摘しているように明確ではない.
そもそも障害受容とは患者の内面にだけに展開される個人的な体験ではなく,リハビリテーション・スタッフや家族との関係性の中で営まれていくきわめてダイナミックな体験であると筆者は考えている.リハビリテーション・スタッフとの間の暖かい治療関係が基盤となって,彼らは切断に伴う心理的葛藤を解決し,新しい自己の再建に向かって歩んでいけるのである.
本稿では,個人心理学的視点に加え,治療関係の視点からも切断者の障害受容について論じてみたい.
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