一頁講座
人間把握とESTEM
池辺 陽
1
1東京大学生産技術研究所
キーワード:
空間
,
エナージ
,
環道具
,
環境
Keyword:
空間
,
エナージ
,
環道具
,
環境
pp.233
発行日 1973年2月10日
Published Date 1973/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552102877
- 有料閲覧
- 文献概要
人間生活を図のようにあらわすことができる.周囲の環境に対して,空間とエナジーと道具に人間が関連することによって成立している.それぞれの頭文字をとって1つに並べると「ESTEM」となる.発音もシステムと似て「エステム」と呼ぶことができる.
人間の生活はこの5つの条件のどの部分が変わっても,全体がそれに対応して変化する.この関係は,Mが1人の人間であっても,あるいは家族という住宅のような規模であっても,また都市という規模であっても,同様であるということができよう.人間はこれまでの歴史を通じてこの5つの条件と闘い,またそれぞれの段階に応じて生活を形成してきた.経験的にその行為が行なわれた段階では,この5つの要素の組み合わせは常に密接であったと同時に,また別な意味ではそれほど自由度の高いものではなかった.身障者という現代の課題を考えてみても,少し歴史をさかのぼれば,人間自体の生存の範囲はある意味で非常に小さかったともいうことができる.ESTEMのパターンは,非常に限られた狭い世界での成立でしかなかった.だが同時にそれはお互いに密接にからみ合ったものであったということができよう.現代に入って,多くの学問や技術の発達はこの5つの要素をそれぞれ発展させたと同時に,またお互いの食い違いを大きくしていった.
Copyright © 1973, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.