総合リハビリテーション 1巻1号 (1973年1月)

特集 片麻痺のリハビリテーションⅠ

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【抄録】片麻痺のリハビリテーションにおける種々の問題点の中で,われわれが今までに検討を加えたいくつかの項目について概括的に紹介した.まず,評価上の問題点として,片麻痺の心電図異常所見,胃潰瘍の合併とその性状,歩行阻害因子としての深部知覚障害・小脳性運動失調・大便失禁・水平性認識の歪み・垂直性認識の歪み,肩関節の亜脱臼に対するアームスングの適応の有無,股および肩関節における異所性化骨の合併,偏側性骨萎縮とカルシウリム代謝などについて述べた.また,治療面では経皮的神経フェノールブロックと外科手術(足部再建手術)の有用性について述べた.

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【抄録】片麻痺の歩行訓練に際し,評価,計測を行なう必要がある項目として,一般内科学的,神経学的,整形外科学的な障害の分析に加えて,①運動学習能力の評価(痴呆,失認,失行,失語などに関するもの),②運動許容能力の評価(運動負荷に対する循環器系の応答の解析,運動消費エネルギーの測定など),③いわゆる下肢機能の評価(痙性の程度,共同運動パターンとしての下肢粗大力および耐久力の測定,深部知覚の定量的測定など),④歩行能力の評価(総合的な歩行解析システムによる立位バランス,歩行時のバランス,杖歩行時の重心軌跡の測定,各種異常歩行パターンの定性的または定動的な測定)などをあげたいと思う.この歩行能力の評価に関して著者らが手はじめとして行なった①立位バランス,歩行時のバランスのある一面の定量化,②異常歩行パターンの定性的または定量的な測定,について以下その概要を述べる.また歩行能力に関して標準化されたデータを提供することができる“臨床人間工学検査室”の必要性を強調したい.

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【抄録】 脳卒中片麻痺患者が使用する装具を大別すると,長下肢装具(long leg brace),短下肢装具(short leg brace),膝ブレース(knee brace)および足用装具(靴の補正)であるが,装具は永久的に使うものでなくとも,患者が回復の過程においてある一時期に使用することによって,変形の予防が可能であったり結果的には入院期間の短縮を可能ならしめることがある.したがって最も適切な時期に適切な処方が患者には必要なわけで,リハビリテーション医療に従事するスタッフにとって装具の知識は必要姓が大である.ただし装具を使う際には常に患者の筋力の回復を観察することが必要で,必要以上の補助を装具によって与えると筋の萎縮を助長したり,せっかく回復途上にある筋の自然回復を妨げることにもなる.下肢の3関節(股関節,膝関節および足関節)は常に連繋を持っているので1関節のアラインメントの変化は他の2関節に影響を及ぼすことを常に念頭におき装具は処方されるべきである.

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【抄録】 片麻痺の運動療法のやり方には神経生理学的アプローチをふくめて,多くのテクニックの組合せがある.しかしいずれも大同小異で,その間に差があるものでない.ここに示すものは著者が九州労災病院と長尾病院において永年追加または修正して来た1つのやり方で,急性期,移行期,慢性期の3時期に分けて,やや具体的に実際の面を主体にして述べた.急性期では二次的障害の防止に重点がおかれ,スプリント装着,他動運動,体位変換が行なわれる.移行期では臥位から起坐への訓練が行なわれ,残存機能を積極的に引き出す.慢性期では坐位から立ち,歩るくといった訓練と仕上げとしてのADL訓練が行なわれる.上肢の予後は多分に傷害(脳卒中等)の程度に左右される運命的のもので,われわれが回復を左右する段階でないが,下肢の方はある程度やり方では予後が左右される.片麻痺患者の独立性を支配するものが下肢にあることは1つの救いである.

巻頭言

創刊に際して 土屋 弘吉
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 わが国においてリハビリテーション医学が脚光を浴びてからすでに十数年を経過したが,その間の進歩の跡を顧みるとまさに瞠目に値するものがある.すなわちリハビリテーション医学会が発足し,PT,OT制度が確立され,それらの養成校が設けられ,全国に多数の専門病院が設立されるとともに,総合病院でもリハビリテーション部門を併設することが一般的傾向となってきた.

 しかしながら,わが国のリハビリテーションおよびその周辺の状況は必ずしも楽観を許さないものがある.各大学のリハビリテーション教育は年々充実してきたとはいえ,講座が設けられた大学はいまだ一校もない.PT,OT養成校は全国に数校あるにすぎず,卒業生は到底需要の急増に追いつけない.リハビリテーション医療の保険点数はきわめて低く,病院経営の上からは大きなマイナスとなっている.医学的リハビリテーションにおいて一定のゴールに達しても,障害者に対する社会の受入れ態勢はまことに不充分である.

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 リハビリテーション医学では,その対象として“疾病そのもの”よりも“疾病をもった人間”という捉え方が特に要求される.考えてみると,医学の理念は本来そこにあったはずだが,医学における疾患学の目ざましい進歩の歪みは“疾病をもっている一個の人間”を見失う欠陥をもたらした.今さら医の倫理などが口やかましく論ぜられるに至ったのはこのためである.

 リハビリテーション医学の根底には,“疾患をもった人間をどうするか”,“疾病による欠陥をもった人間をどうするか”という考え方があり,単に医学のみの視野にとどまらず,同時に社会学的視野と哲学とが特に要求されるのはこのためである.

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【抄録】リハビリテーションの目的は障害者が人間らしい生活をいとなめるようにしてやることであり,それが‘更生’なのであるが,人権思想の普及の結果,行政が自己の任務としてリハビリを引受けるようになるとこの‘更生’が労働力政策や財政政策として経済的効果をもちうることが重視され,このことが‘公共の福祉’への貢献としてリハビリの目的の中心に据えられるにいたった.そのため経済効率がリハビリを規制し本来の目的である福祉(人道性)は背後におしのけられるようになる.その一例がわが‘身体障害者福祉法’であって,この法律は事実上は働いて独力で生活費を稼ぎ進んでは納税者ともなれる者とそうでない者とを選別する役割を果しているが,その結果は軽障者の多くは苛酷な自活を強いられ重障者は親兄弟や親類縁者におしつけるかたちで遺棄されることになる.‘福祉法’が福祉に逆行する事態をもたらしているのである.

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【抄録】①目的:指趾での振動覚を20-1000Hzの各周波数領域で感覚閾値の定量的測定による正常人基本振動覚閾値曲線の理論解析および脊髄障害型の臨床的検索.②方法:整形外科的神経疾患における異常振動覚閾値曲線分類に理論解析法として伝達函数理論を応用し,臨床病像各要素と照合した.③結果:1. 正常老若年曲線の差は絶対値の変動のみ.2. 指系およびぼ趾系の特性の差の推定.3. 閾値曲線作成による病状判定の可能性を見出した.④結論:この判定法が神経疾患における障害程度の診断の一示標となり得るのではないかと考えられ今後症例を追加し症例毎の経時的測定および他の定量的診断法との併用により的確な病像把握を可能としたい.なお本法のみによる障害レベルの診断は困難を伴うことがあるが障害程度の判定は可能であろう.

講座

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【抄録】 日常,運動系の障害を伴う人々に接することの多いわれわれは,症例に対して正確な知識をもって判断を下さなければならない.本稿では,末梢神経の構造,損傷の程度とそれに伴う組織学的変化,神経線維の再生と知覚,運動機能恢復との関係,さらに,末梢神経損傷後の機能恢復に関する研究,臨床面への応用などについて,なるべく平易に解説を試みた.また,日常,末梢神経損傷時使用されている電気検査法の原理,意味づけなどについても簡単にふれた.

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【抄録】医学的‘リ’施設の建築計画と設計については,いまだに定性的,定量的に把握されていないが,ここでは現時点における中間報告ともいうべきものを,筆者の設計の経験,または調査,観察に基づいて,4回にわたり解説を行ないたい.(1)では地域計画の立場より‘リ’サービスのあり方,および地域の中で確立すべき施設体系について問題点を述べ,それにより医学的‘リ’施設の位置づけを明らかにし,かつ群として他の‘リ’施設と有機的に連繋を保つ重要性を指摘する.(2)で本題の医学的‘リ’施設の範疇およびその分類を明らかにし,それにそってアメリカの資料を援用しながら実態を説明した.次に計画にまず必要とする規模および機能の設定について概説する.(3)では‘リ’部門の全体計画,およびその主なる部門である理学療法,作業療法について計画と設計上注目すべき諸項目にふれる.(4)ではその他の部門と病棟について解説を行ない,最後に参考資料の一覧表を付して全稿を終わる.

一頁講座

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 これまで,身障者や老人は,むしろ病人として,健康な人とまったく別に考えられていたといえよう.したがって,一般の住宅や建築物,あるいは道路や交通機関,その他諸々の社会施設のほとんどは,これらの人々の生活圏ではなかった.しかしながら,最近になって,わが国でもようやく,身障者や老人も,できるだけ社会の一員として,健常人と生活をともにできるのが望ましいとの考え方に変わりつつある.

 さて,施設内の設備や家具などが設計,開発されるには,大きくわけると2通りの方法がある.

 ①closed system

 ②open systemである.

 Closed systemによるものとは,ある特定の施設の建設にあたって,それにともなって,その施設のみを目的として,内部設備や家具を計画し,注文による生産で,納入,取付けがされるもので,このケースは,これまでごく一般的な方法とされてきたものである.つまりオーダーメードである.

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 東京帝国大学(現東大)在学中から‘東京帝国大学セッツルメント’で現在流にいう“ボランティア”として活躍.この時期に‘社会事業の実践と理念’を身につけたといわれる.卒業後も主事としてセッツルメント活動の発展に尽力.その後東京深川の市民会館職員等を経て厚生省に入り,昭和24年に社会局更生課長に就任,‘身体障害者福祉法’の制定と実施に専念し,わが国近代的身体障害者福祉の生みの親の1人といわれる.

 昭和26年,イギリスに長期留学し,リハビリテーションの理論と実際を学ぶ.この時のレポートが国連内部で評価され,要請があって国連事務局のリハビリテーション管理係長として35年から2年半国際的立場で活躍.

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 わが国でもリハビリテーション医学が治療医学および社会医学の架橋的役目を果たし,あらゆる疾病および障害の早期からのアプローチが必要であるということの認識が,リハビリテーションという医学に興味を持たれた方々の間には遅まきながら浸透してきている傾向にあることは喜ばしいことである.

 医学の進歩とその専門化が活発になればなるほどその間隙で見捨てられる患者も多く,そのgapを埋める役目をある程度リハビリテーションの分野が果たしたといっても過言ではないし,今後もその傾向は強まるであろう.

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はじめに

 今回,第9回日本リハ医学会総会が横浜で開催されるに当たって,土屋会長が学会以外にも当地のリハ施設等を紹介し,会員と現場の人達との交流を持ちたいという企画を考えられました.

 そこで白羽の矢が立てられたのが,アガペ授産所でした.小川所長には特に会員と,職業更生の専門家である所長との間でいろいろと意見の交換をしたいという無理なお願いをいたしました.幸いにも小川所長がご快諾下さり,アガペあげてご協力いただけることになりました.

 そこで,当日の模様をできるだけ忠実に収録して皆様にお伝えしようと考え,司会を担当した大川が記事にまとめました.

 幸いにも当日は40名近い参加者があり,熱心な討論も行なわれました.皆様のご協力に厚く御礼申し上げたいと思います.

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文献抄録

編集後記 上田 敏
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 ようやく「総合リハビリテーション」誌の第1号をお届けできることになった.このような雑誌の必要性は数年前から感じられていたし,一部関係者の間では2年ぐらい前から真剣に検討されていたが,それが今回ようやく結実したわけである.発刊が本決りになったのは昨年(昭47)の5月で,それからさっそく具体的な企図や編集の体制作りに入った.そして6ヵ月の準備をへて第1号の誕生となったわけである.これまで国内はもちろん外国にも類を見ない雑誌のことでもあり,準備の過程でもその性格については色々な論議が交わされたし,今後も一層の論議が必要であると思う.非常に幅の広いリハビリテーションの領域を真に総合的にとらえ,片寄らずに反映することは至難のわざであることははじめから覚悟の上であり,真の総合性は多くの人々の協力と批判と,種々の試みをつみ上げていくなかで次第に達成されるものだと考えている.どうか,本誌の性格について性急に結論を出してしまわず,建設的な批判や提言をお寄せ下さるよう,そして何よりも執筆活動を通じて本誌をもり育てて下さるようにお願いしたい.本誌が広い領域のリハビリテーション関係者の交流の場となり,自由なフォーラムとなること,そしてそれを通じてわが国のリハビリテーションの質的な深化と一層の発展に貢献できることを祈りたい.

基本情報

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総合リハビリテーション
1巻1号 (1973年1月)
電子版ISSN:1882-1340 印刷版ISSN:0386-9822 医学書院

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