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はじめに
片麻痺の麻痺側の上肢機能はADL上どの程度使用できるかにより,廃用手,補助手,実用手に分類しており,ゴール設定にもこれを利用している.多くの場合は,運動障害の程度によりどの機能をもった手になるかがほぼ予測できるが,感覚障害や高次脳機能障害等が加わっていると機能予後は悪くなる.感覚についていえば深部感覚が障害されていると実用手になりがたいことが知られている1,2).そこで運動障害だけで上肢機能のゴール設定をすると,症例によっては利き手交換の時期が遅れたり計画性のない訓練を長期にわたって施行したりという事態を招く恐れがある.
ところでここで問題となるのは,中枢性疾患の感覚障害の評価と上肢機能との関連性について具体的に示したものがほとんどなく,片麻痺の機能ステージのように臨床上日常的に利用すべきものが指定されていないことである.ある患者について,なんらかの方法での運動覚検査結果が5/10だったとする.これは10回検査を施行して正答が5回の意味であるが,この結果から運動覚の障害が軽度といえるのか重度といえるのか解釈はさまざまである.運動覚が脱失していても答えが偶然半数合うような検査もしようと思えば可能である.たとえそうではなくても,同じ検者が同じ手技で検査を繰り返せば,その患者の感覚障害について回復傾向があるかどうかはわかるが,異なる人が違う方法で運動覚検査をして,その結果を比較することが妥当かどうかはわからない.またこの患者の運動障害が既に改善していたとして,実用手にするための機能訓練を施行していくことに合理性があるかどうかの判断基準もない.
本稿ではこれらの問題点も含めて,麻痺側上肢の感覚障害の経過,上肢機能,感覚の再教育の現状について述べることとする.
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