臨床眼科 64巻8号 (2010年8月)

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要約 目的:重度Zinn小帯脆弱白内障に対し,強膜固定型カプセルエキスパンダー(M-CE)を使用した2例の報告。症例:症例1は85歳男性。偽落屑症候群,水晶体動揺を伴う左眼白内障に対し超音波水晶体乳化吸引術(PEA)を行い眼内レンズ(IOL)を囊内固定後,水晶体囊をM-CEにて毛様溝経由で3か所縫着固定した。症例2は70歳女性。180°Zinn小帯断裂を伴う左眼白内障に対しPEAを行い,2か所M-CEを固定し,IOLを囊内固定した。結果:重篤な合併症なくIOL・水晶体囊の良好な固定を得た。結論:M-CE使用により支えを失った水晶体囊を強膜に固定し,IOLを囊内固定することが可能であった。

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要約 目的:涙囊炎がある乳幼児と成人から検出された原因菌と薬剤感受性の報告。対象と方法:2009年までの5年8か月間に検索した涙囊炎患者119例を対象とした。内訳は生後1~27か月の乳幼児56例66側と,44~94歳の成人63例73側で,平均年齢は乳幼児が7.1か月,成人が73.8歳である。結果:乳幼児から検出された110株では,Staphylococcus epidermidisStreptococcus mitisStreptococcus pneumoniaeHaemophilus influenzaeの順で多く,成人からの111株では,Staphylococcus epidermidisとmethicillin-resistant Staphylococcus aureus(MRSA)を含めた黄色ブドウ球菌が約半数を占めた。高頻度にみられたStaphylococcus epidermidisは,中間感受性を含んだレボフロキサシンへの耐性が,乳幼児では100%,成人では80%にあった。結論:涙囊炎の原因菌は,抗菌点眼薬の長期投与で耐性化している可能性がある。

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要約 目的:結膜乳頭腫の擦過標本にヒトパピローマウイルス(HPV)が検出された症例の報告。症例:58歳男性が2か月前からの次第に増大する瞼結膜の隆起を主訴として受診した。所見:視力,眼圧,眼球については異常がなかった。右眼の下眼瞼に血管が豊富で有茎性の腫瘤があった。腫瘤を摘出し,冷凍凝固を行った。病理組織は結膜乳頭腫であった。Hybrid capture Ⅱ assayで低リスク型HPVに対するrelative light unit値が腫瘍塊と擦過標本でともに陽性であり,高リスク型HPVに対するそれは陰性であった。初診から1年後の現在まで再発はない。結論:本症例ではHPVが結膜乳頭腫の発症に関与している可能性が高く,hybrid capture Ⅱ assayはHVPの診断に有効であった。

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要約 目的:ラタノプロスト点眼をトラボプロスト点眼に切替えたときの眼圧変動の報告。対象と方法:緑内障患者48例85眼を対象とした。内訳は原発開放隅角緑内障25眼と正常眼圧緑内障60眼である。ラタノプロスト点眼を35.3±13.2か月続けたのち,トラボプロスト点眼に切替え,3か月間の眼圧を測定した。治療前の基礎眼圧は18.4±3.4mmHg,切替え前の眼圧は14.7±2.6mmHgであった。結果:トラボプロスト点眼に切替えた1,2,3か月後の平均眼圧は,基礎眼圧と切替え前の眼圧よりも有意に下降した(p<0.0001)。基礎眼圧に対する下降率は,それぞれ,27.2%,28.3%,29.9%であった。切替えから3か月後の眼圧は,66眼(78%)で切替え前と同等または下降し,19眼(22%)で上昇した。結論:ラタノプロストからトラボプロスト点眼への変更で,眼圧は有意に下降し,基礎眼圧よりも30%眼圧が下降する可能性が示唆された。トラボプロスト点眼による眼圧下降効果には個体差がある。

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要約 目的:深層層状角膜移植術後にヘルペス性角膜内皮炎が発症した症例の報告。症例:58歳男性が右眼の眼痛,充血,視力低下で受診した。2年前に右眼の感染性角膜炎に対し深層層状角膜移植,1年前に白内障手術を受け,矯正視力は0.8であった。所見:矯正視力は右0.07で,Descemet膜の皺襞と角膜後面沈着物があり,内皮型拒絶反応が疑われた。前房水をPCR法で処理し,水痘・帯状疱疹ウイルスが検出された。抗ウイルス薬で改善せず,プレドニゾロン点眼を増量した。病像は軽快し,5か月後に0.7の視力を得た。結論:角膜移植後に発症するヘルペス性角膜内皮炎は拒絶反応に類似し,診断が困難である。本症例では早期に診断が確定し,抗ウイルス薬とステロイド内服が奏効した。

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要約 目的:ストレートチップを装着して先端が左右に動くトーショナル水晶体乳化吸引術の有効性と問題点の報告。対象と方法:核硬度が2~3.5に相当する白内障84眼に手術を行った。33眼にはストレートチップを装着し,核の分割と破砕を試みた。51眼ではストレートチップとKelmanチップで,トーショナルと縦振動の組合わせによる総エネルギー量と超音波発振時間を測定した。結果:核硬度3まではストレートチップによる破砕吸引が可能であった。ストレートチップのトーショナルモードに超音波による核破砕を加えると,破砕力はKelmanチップより劣るが,従来の縦振動より優れていた。結論:ストレートチップによるトーショナル水晶体乳化吸引術白内障は可能かつ有効であった。

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要約 目的:手術を行った片眼の先天眼瞼下垂での斜視と視機能の報告。対象:過去5年間に手術を行った片眼先天眼瞼下垂42例を対象とした。男児23例,女児19例,年齢は0~15歳(平均5.5±3.5歳)であった。結果:術前の視力には,健眼と下垂眼とで有意差があった。下垂眼の19%に弱視があり,不同視弱視が多かった。57%に斜視があり,下斜筋過動と外斜視が多かった。乱視については健眼と下垂眼とで有意差がなかった。結論:片眼眼瞼下垂では弱視が発症する可能性が大きく,早期治療が望まれる。屈折異常があれば,術前でも屈折矯正を行うべきである。

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要約 目的:有水晶体眼での単一裂孔と多発裂孔による網膜剝離眼の特性の報告。対象と方法:裂孔原性網膜剝離98例98眼を対象とした。男性58例,女性40例であり,50歳以上で,白内障と硝子体同時手術を行い,硝子体切除腔容積が測定できた症例とした。結果:単一裂孔は52眼,複数の裂孔は46眼にあった。眼軸長が23mm以下の12眼では11眼が単一裂孔であり,27mm以上の8眼では5眼が多発裂孔,23~27mmの中間群では78眼中38眼が単一裂孔で40眼が多発裂孔であった。角膜曲率半径と硝子体切除腔容積は,単一裂孔群よりも多発裂孔群で有意に大きかった。中間群では単一裂孔群と多発裂孔群とでは,眼軸長に有意差がなかった。結論:有水晶体の網膜剝離眼では,眼軸長と眼球の大きさや形状が裂孔の数に関係する。

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要約 目的:裂孔原性網膜剝離に対して行った25ゲージ硝子体手術の結果の報告。対象と方法:過去22か月間に初回手術として25ゲージ硝子体手術を行った裂孔原性網膜剝離77例77眼を対象とした。男性44例,女性33例で,平均年齢は58歳である。手術は6名の術者で行い,6か月間以上の経過を追った。結果:初回手術で73眼(95%),最終的に77眼すべてで網膜復位が得られた。小数視力は術前の0.61が術後0.99に改善した(p<0.05)。術後に感染性眼内炎が1眼(1.3%)に生じたが,他に重篤な合併症はなかった。結論:裂孔原性網膜剝離に対して当科で行った25ゲージ硝子体手術で,全例に網膜復位が得られた。

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要約 目的:強度近視眼に発症した脈絡膜新生血管の治療後に黄斑分離症が生じた症例の報告。症例:61歳男性が数週間前からの左眼視力低下で受診した。幼少時から近視があり,10年前に黄斑出血が右眼にあり,矯正視力は0.1,左眼の矯正視力は1.0であった。所見:右眼に-15D,左眼に-16Dの近視があり,矯正視力は右0.1,左0.3であった。左眼黄斑部に網膜下出血があり,黄斑下方に脈絡膜新生血管と網膜分離があった。左眼にベバシズマブを硝子体内に注入した。1か月後に新生血管は縮小し網膜浮腫は軽減したが,黄斑に網膜分離が生じた。3か月後に新生血管は線維化し,矯正視力は0.7に改善した。9か月後の現在,黄斑の網膜分離は拡大し,視力は0.6を維持している。結論:ベバシズマブによる脈絡膜新生血管の治療後に黄斑に網膜分離が生じた原因として,網膜色素上皮の機能低下,硝子体皮質の収縮または牽引の可能性がある。

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要約 目的:両眼の瞼結膜に発症したMALT(mucosa-associated lymphoid tissue)リンパ腫の症例の報告。症例:32歳女性に5か月前から両眼に異物感があり,結膜腫瘍として受診した。所見:視力,眼圧,眼球には異常がなく,両眼の上下瞼結膜に紅鮭色の腫瘍が多発していた。生検と免疫染色でB細胞型のMALTリンパ腫の診断が確定した。瞼結膜以外への転移はなかった。鉛義眼を装着して1回2Gy,総計24Gyの放射線照射を行い,瞼結膜腫瘍はほぼ消失した。照射による合併症はなかった。結論:両眼の上下瞼結膜に原発したMALTリンパ腫に放射線治療を行い,腫瘍は縮小した。

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要約 目的:視力と視野障害で初発し,18か月後に頭蓋内悪性リンパ腫が発症した症例の報告。症例:68歳男性が8か月前からの両眼の霧視と光視症で受診した。4か月前の矯正視力は右0.5,左0.3であり,ステロイド薬の全身投与により一時的な改善がみられたもののその後は抵抗性となった。所見:矯正視力は右0.06,左1.0で,右眼に中心暗点,左眼に視野狭窄があった。網膜電図でa・b波が減弱し,蛍光眼底造影で網膜血管からのびまん性漏出があった。その10か月後に意識障害と片麻痺が生じ,頭蓋内悪性リンパ腫と診断された。さらに5か月後の最終診察時の視力は右0.1,左0.2で,光干渉断層計(OCT)で網膜外層の菲薄化があった。結論:臨床所見と経過から,本症例は悪性リンパ腫に関連した網膜症であると推定される。

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要約 目的:緑内障に対する2%カルテオロール塩酸塩点眼液を持続性2%カルテオロール塩酸塩点眼液に切替えた後の患者の満足度の報告。対象と方法:2%カルテオロール塩酸塩点眼液による治療を持続性2%カルテオロール塩酸塩点眼液に切替えた緑内障患者36例36眼を対象にし,アンケート調査を行った。男性25例,女性11例で,平均年齢は61.3±12.6歳であった。原発開放隅角緑内障21例,続発緑内障8例,正常眼圧緑内障6例,発達緑内障1例である。結果:変更前後で眼圧には有意差がなかった。コンプライアンズは変更前の72%が89%に上昇し,59%の患者が持続性点眼液の使用を希望し,その90%が点眼回数の減少をその理由に挙げた。結論:緑内障に対する治療として,2%カルテオロール塩酸塩点眼液を持続性2%カルテオロール塩酸塩点眼液に切替えることにより,利便性とコンプライアンスの向上が期待できる。

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要約 目的:球結膜と瞼結膜に限局したアミロイドーシスの症例の報告。症例:75歳女性が3年前に右眼の眼瞼下垂を契機として,右眼の球結膜と上瞼結膜の腫瘤が発見された。生検でアミロイドーシスと診断され,瞼結膜の腫瘤切除で眼瞼下垂は治癒した。その後球結膜の腫瘤が増大し再受診した。所見:矯正視力は右0.7,左0.9であり,右眼の球結膜に角膜全周にわたり黄色の硬い腫瘤があった。球結膜と瞼結膜の腫瘤を2回に分けて切除し,羊膜を用いる結膜囊形成を行った。ステロイドとシクロスポリンを点眼した。以後1年後の現在まで眼表面は安定し,他臓器の関与はなく,経過は良好である。切除組織は病理学的検索で瞼結膜と球結膜に限局したアミロイドーシスであった。結論:球結膜と瞼結膜に限局したアミロイドーシスに対し,腫瘤切除と術後の消炎治療が奏効した。

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要約 目的:角膜中央部に生じたデルモイドの症例の報告。症例:生後3か月の男児が出生時からの右眼の角膜混濁で受診した。在胎39週,生下時体重は2,998gであった。口蓋裂,口唇裂,心室中隔欠損があった。所見:右眼の角膜中央部に7mm×8.5mmの淡桃色の混濁した隆起があり,耳側の角膜輪部と連続していた。右眼の下眼瞼にコロボーマがあった。角膜移植を行い,中央部は全層移植,周辺部は表層移植とした。摘出組織は毛囊と皮脂腺を含むデルモイドと病理診断された。以後移植角膜は透明性を維持しているが,3歳3か月での視力は0.01である。結論:角膜デルモイドが角膜中央部に発症することがあり,先天性の角膜中央部混濁での鑑別診断の対象となる。

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要約 目的:眼内レンズの毛様溝縫着後に逆瞳孔ブロック(reverse pupillary block)が生じ,レーザー虹彩切開術を行った3症例の報告。症例:眼内レンズ縫着術の既往がある3例が視力低下で再受診した。所見:深前房と虹彩中間周辺部の後方偏位があり,瞳孔は眼内レンズに圧着され,隅角に色素沈着があった。いずれも逆瞳孔ブロックと診断した。レーザー虹彩切開術を行い,深前房と虹彩の後方偏位はなくなり,瞳孔ブロックは解除された。結論:眼内レンズの毛様溝縫着後に逆瞳孔ブロックが生じることがある。今回の症例群ではレーザー虹彩切開術がブロックの解除に有用であった。

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要約 目的:2.4mm耳側角膜切開による白内障手術前後での角膜乱視の変化の報告。対象と方法:2.4mm耳側角膜切開による白内障手術を行った33例39眼を対象とした。倒乱視,直乱視,斜乱視の3群に分け,乱視量と乱視軸の変化を術後8週まで測定した。結果:角膜の乱視量と乱視軸には手術前後で有意差がなく,倒乱視,直乱視,斜乱視の3群間に有意差がなかった。結論:2.4mm耳側角膜切開による白内障手術では,術後8週までは角膜乱視の量と乱視軸に有意な変化がなかった。

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要約 目的:眼内レンズの毛様溝縫着術後に,瞳孔捕獲を繰り返した症例の報告。症例:59歳男性が左眼の特発性水晶体脱臼で紹介され受診した。硝子体切除ののち水晶体乳化吸引術を行い,眼内レンズを毛様溝に縫着した。術後4日目に瞳孔捕獲が生じ,散瞳で治癒した。縮瞳薬の点眼を行っていたが,その翌日に瞳孔捕獲が再発し,眼圧が上昇した。6時に小さな周辺虹彩切除を置き,眼内レンズを整復した。以後9か月間に3回の瞳孔捕獲が生じた。11時に大きな周辺虹彩切除術を行い,以後8か月後の現在まで再発はない。結論:眼内レンズの毛様溝縫着術後に瞳孔捕獲を繰り返した症例に大きな虹彩切除術が奏効した。

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要約 目的:社団法人日本眼科医会の「目の電話相談」事業での相談事例の解析を行い,今後の展望につき考察する。対象と方法:1988~2009年に電話相談を行った14,460件の事例のプロフィールを対象とし,性別,年代分布,都道府県別分布,相談内容などにつき解析を行った。結果:女性の相談が約60%,年代は30歳未満が約20%で最多,都道府県では東京が約30%で最多,相談内容は白内障,網脈絡膜疾患,緑内障がこの順に多かった。相談件数は開設以来ほぼ一定数で推移している。結論:眼科医療に関する情報提供,相談を中立的立場で行う「目の電話相談」事業は,今後も有益な事業である。

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要約 背景:Joubert症候群にはさまざまな眼科的異常が生じるが,小眼球と眼窩囊胞の合併は報告されていない。目的:両側の小眼球と眼窩囊胞を併発したJoubert症候群の症例の報告。症例:出生直後の女児がJoubert症候群としての精査のため受診した。在胎36週での自然分娩で,出生時体重は2,102gであった。呼吸異常,筋緊張低下,両側の腎肥大,磁気共鳴画像検査(MRI)で脳幹が臼歯のように見えるmolar tooth sign(MTS)があった。所見:両眼に小眼球と小角膜,眼振,第1次硝子体過形成遺残,網脈絡膜異形成,網膜変性,黄斑と視神経の低形成,乳頭コロボーマがあり,左眼に偽眼瞼下垂と上外斜視があった。MRIと超音波検査で両側に眼窩囊胞があった。結論:本症例はJoubert症候群に眼窩病変が合併する可能性があることを示す。眼窩囊胞は小眼球と乳頭コロボーマに関連して生じたと考えられる。

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要約 目的:ベバシズマブ硝子体注入による中心性漿液性脈絡網膜症の治療成績の報告。対象と方法:中心性漿液性脈絡網膜症が再発し,3か月以上治癒しない7例7眼を対象とした。男性5例,女性2例で,年齢は30~61歳(平均44歳)である。ベバシズマブ1.25mgを硝子体に注入し,平均14.5か月の経過を追った。結果:硝子体注入後3か月以内に4例で漿液性網膜剝離が消失し,光干渉断層計で確認できた。他の3眼にはベバシズマブを追加投与し,2例で初回投与から4か月以内,1例で12か月以内に網膜剝離が消失した。全7例での網膜剝離消失までの期間は平均3.8か月であった。全例で12か月後の視力は改善または維持された。フルオレセインとインドシアニングリーン蛍光造影による過蛍光点と蛍光漏出は治療後に減少した。結論:中心性漿液性脈絡網膜症の再発に対するベバシズマブの硝子体注入は有効であった。

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要約 目的:網膜細動脈瘤破裂で生じた黄斑下血腫に硝子体手術を行った3症例の報告。症例:網膜細動脈瘤破裂による黄斑下血腫が3症例3眼に生じた。年齢は70,76,85歳で,血腫はすべて内境界膜下,網膜内,網膜下にあった。視力は0.01~0.07であった。結果:広範囲の内境界膜剝離とガスタンポナーデを行い,伏臥位とした。術中または術後に網膜細動脈瘤に対しレーザー光凝固を加えた。術中に黄斑円孔が1例にあったが,術後閉鎖した。術後に再出血はなく,6か月後の視力は0.6~0.7に改善した。結論:網膜細動脈瘤破裂で生じた黄斑下血腫に,広範囲の内境界膜剝離とガスタンポナーデ,細動脈瘤への光凝固が奏効した。

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要約 目的:黄斑浮腫を伴う網膜静脈分枝閉塞症にベバシズマブ硝子体投与を行った結果の報告。対象と方法:黄斑浮腫を伴う網膜静脈分枝閉塞症23例23眼を対象とした。年齢は40~81歳(平均64歳)である。6か月以上の経過を観察し,視力と光干渉断層計による中心窩網膜厚を測定した。結果:視力と中心窩網膜厚は投与の1週間後から有意に改善した。12か月後まで改善が持続した6眼(26%)には浮腫の再発がなかった。浮腫が軽減した後,視細胞内節外節接合部が連続している症例では最終時視力が良好であった。結論:黄斑浮腫を伴う網膜静脈分枝閉塞症にベバシズマブ硝子体投与で,視力と中心窩網膜厚が有意に改善した。

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要約 目的:原発性高カイロミクロン血症に伴うⅠ型高脂血症による小児網膜脂血症の報告。症例:6歳女児が肝脾腫を契機として代謝性疾患が疑われ,眼科を受診した。成長と発達に異常はなく,両親の近親婚はなかった。所見:矯正視力は両眼とも1.2で,網膜の動静脈が淡紅色を呈し,網膜脂血症と診断した。Goldmann視野と網膜電図に異常はなかった。血清トリグリセリドが高値であり,総コレステロールは正常値,リポ蛋白電気泳動でカイロミクロンの上昇があり,超低比重リポ蛋白の上昇はなかった。以上からⅠ型高脂血症と診断した。以後3年にわたり脂肪の摂取を制限しているが,眼底所見に変化はない。結論:Ⅰ型高脂血症の本症例では,小児期から食事療法を行っても網膜脂血症が改善しなかった。

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要約 目的:視神経乳頭部の腫瘍として発症し,全身検索で胃癌の転移であることが判明した症例の報告。症例:63歳男性が急激な右眼視力低下で受診した。2か月前から右眼の下方視野障害があり,乳頭血管炎と診断されていた。所見:矯正視力は右0(光覚なし),左1.2で,右眼に乳頭の著しい腫脹があった。磁気共鳴画像検査(MRI)などで眼窩と頭蓋内に異常所見はなかった。診断的治療としてプレドニゾロンを投与したが乳頭の腫脹はさらに拡大した。2か月後のMRIで乳頭周囲の脈絡膜の肥厚と乳頭後方の視神経に拡張があった。コンピュータ断層撮影(CT)で胃壁の局所的肥厚とリンパ腺肥大があり,生検で低分化型の胃癌と診断した。全身に化学療法,眼部に放射線照射を行い,胃腫瘍は退縮し,乳頭腫脹は縮小した。治療開始から10か月後の現在,病変の再発または転移はなく,視力の回復はない。結論:無症状の胃癌が視神経乳頭部に転移することを示す稀有な症例である。

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要約 目的:緑内障点眼薬を使用中に皮膚炎が生じた症例の報告。症例:31歳男性が開放隅角緑内障で紹介され受診した。10歳の頃からアトピー性皮膚炎があった。所見:矯正視力は右1.2,左0.7で,眼圧は右14mmHg,左32mmHgであった。外眼部を含め全身皮膚に異常はなかった。左眼に乳頭陥凹があり,視野欠損があった。左眼に0.5%マレイン酸チモロール,両眼にラタノプロストの点眼を開始した。その2か月後から両眼の眼瞼に疼痛を伴う紅斑とびらんが生じた。接触性皮膚炎を疑い点眼を中止した。マレイン酸チモロールとラタノプロストの皮膚貼布試験が陽性であった。塩化ベンザルコニウムの貼布試験は陰性であった。結論:本症例ではアトピー性皮膚炎があったことと,緑内障点眼薬を長期使用したことで接触性皮膚炎が生じた可能性が高い。

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要約 目的:左右眼間に病変の差があるVogt・小柳・原田病2症例の報告。症例:症例はそれぞれ40歳と62歳の女性で,初診時の矯正視力はぞれぞれ右1.2と左0.1,右1.2と左0.5であった。後極部に漿液性網膜剝離があり,蛍光眼底造影と合わせてVogt・小柳・原田病と診断し,メチルプレドニゾロンを初回量500mgから漸減投与した。眼底病変は速やかに軽快したが,症例1での20か月後の左眼視力は0.7で,中心窩網膜厚が減少していた。症例2での18か月後の左眼視力は0.7で,網膜電図に軽度の反応低下があった。結論:片眼のみに病変が強いVogt・小柳・原田病では,視力改善が不十分である可能性がある。

連載 今月の話題

ぶどう膜炎の治療update 蕪城 俊克
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 2007年にBehçet病による難治性網膜ぶどう膜炎に対して抗TNF-αモノクローナル抗体製剤であるインフリキシマブ(レミケード®)が認可され,高い有効性が示されている。今後,モノクローナル抗体製剤はぶどう膜炎治療で重要な位置を占めるようになる可能性がある。

連載 公開講座・炎症性眼疾患の診療・29

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はじめに

 好中球が局所にとどまらず,皮下組織へびまん性に浸潤した化膿性炎症を蜂巣炎という。したがって蜂巣炎は全身の疎性結合組織でみられる。部位としては顔面や四肢,組織学的には皮下脂肪組織が好発部位である。顕微鏡で標本をみると,好中球が組織内にびまん性に浸潤し,細胞間質が融解・壊死している。融解しつつある間質があたかも蜂の巣の仕切りに,そして浸潤する好中球が蜂の幼虫にも見えることから蜂巣炎(蜂窩織炎)とよばれる。

 眼窩蜂巣炎は眼窩軟部組織における急性化膿性炎症である。眼窩内は静脈系の血流が豊富で,しかも組織が比較的疎であることから抵抗が少なく,炎症は急速に拡大して重症化しやすい。ときに膿瘍を形成し,重症例では失明や死亡の危険がある。また,眼窩炎症性疾患や眼窩腫瘍との鑑別が困難な例もあり,迅速な治療を進めるためには早急かつ正確な診断が重要である1~3)。かつては眼窩蜂窩織炎ともよばれたが,現在は眼窩蜂巣炎の呼称で統一されている。

連載 視野のみかた・5

視野による原因疾患の診断 松本 長太
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はじめに

 自動視野計の導入により,視野測定そのものの自動化は大幅に進歩した。そして,数値で得られる測定結果の解釈にもさまざまな統計学的手法が導入された。一方,Goldmann視野計で得られた動的視野の利点として,その視野障害のパターンから原疾患をある程度推測できる点が挙げられる。神経眼科疾患ではコンピュータ断層撮影(CT),磁気共鳴画像(MRI)がない時代には,最も重要な確定診断材料でもあった。

 しかしながら,自動視野計による静的視野測定では,視野異常の有無はより明確に判定可能であるが,その障害パターンから原疾患を類推することは動的視野に劣ることが多い。ここでは,自動視野計における静的視野による原疾患の推定について考えてみたい。

連載 眼科医にもわかる生理活性物質と眼疾患の基本・8

LIF 嘉山 真紀
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 白血病阻害因子(leukemia inhibitory factor:LIF)は,マウス胚性幹(embryonic stem:ES)細胞の未分化能維持,多能性保持に必須のサイトカインとして使用されて以来,そのメカニズムの詳細な検討がなされた1,2)。本稿ではLIFの基礎知識およびその役割をまとめた。

連載 つけよう! 神経眼科力・5

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頭部画像検査にはどのようなものがあるのか?

 頭部画像検査は,形態画像を主とするものと機能画像を主とするものに大きく分けられる。前者には,通常のX線写真やX線コンピュータ断層撮影(computed tomography:CT),核磁気共鳴画像(magnetic resonance imaging:MRI)が挙げられ,後者では核医学領域の単一光子放射型CT(single photon emission CT:SPECT)と陽電子断層法(positron emission tomography:PET)が挙げられる。しかし,最近の技術の進歩により両者の区分は明瞭でなくなりつつある。特にMRIにおいては,脳の賦活化を評価するfunctional MRIや脳の生化学的解析が可能なMRスペクトロスコピー,神経線維そのものの描出が可能な拡散テンソール画像や3-DACなど幅広く臨床に活用されている。これらの点からも,われわれ眼科医が複視の患者をみてオーダーしたい頭部画像検査は,撮影禁忌例を除きMRIが最も守備範囲も広く,有効な非侵襲的頭部検査と考える。

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要約 目的:両眼に発症した緑内障眼での中心角膜厚が眼圧と視野に及ぼす影響の報告。対象と方法:広義の原発開放隅角緑内障と診断され,未治療の30例60眼を対象とした。男性7例,女性23例で,年齢は26~77歳(平均50歳)であった。中心角膜厚,24時間眼圧,Humphrey視野障害指数を測定し,左右眼を比較した。結果:中心角膜厚が厚い側と薄い側とで,視野障害指数に有意差はなかった(p>0.1)。左右眼の中心角膜厚の差と,個々の眼圧値には有意な正の相関があったが(r=0.4,p<0.03),視野障害指数には有意な相関がなかった。結論:緑内障眼での中心角膜厚は,眼圧値とは関連するが,視野障害との関連は少ない。

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要約 目的:磁気共鳴画像検査(MRI)が治療方針の決定に有用であった特発性視神経炎の小児例の報告。症例:9歳女児が6日前からの左眼視力低下,1日前からの右眼視力低下で受診した。矯正視力は右0.05,左0.04で,両眼に視神経乳頭の腫脹と視野狭窄があった。MRIで両側の視神経が視交叉直前までびまん性に腫大していた。第6病日からメチルプレドニゾロンのパルス療法を3クール行い,視野とMRI所見が改善した。視力は第34病日で右0.3,左0.4になり,2か月後に両眼とも1.0に改善した。結論:本症例の特発性視神経炎では,ステロイドのパルス治療により,視野とMRI所見がまず改善し,これに遅れて視力の回復が得られた。治療方針の決定にMRIが有力な指針になった。

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 症例は5歳,男児。外斜視を主訴に近医を受診した。眼底検査で左眼眼底に硬性白斑,網膜血管異常が偶発的に発見され,精査目的で当科を紹介され受診した。視力は右1.2(矯正不能),左1.0(矯正不能),前眼部,中間透光体に異常はなかった。右眼眼底に異常は認められず,左眼眼底周辺部に黄白色の滲出性病変と,血管拡張,毛細血管瘤がみられた。以上からCoats病と診断した。現在,定期的に経過観察しているが,病変部の拡大はない。

 撮影にはTOPCON社散瞳眼底カメラTRC-50LXを使用し,画角50°で撮影した。被検者が幼少児であったので,十分散瞳し,負担を軽くするため光量をできるだけ抑えて眩しさの軽減を試みた。病変部を撮影するために,頭位を保持する者,被検者の固視を促す者,撮影する者の3人がかりで撮影した。

べらどんな

DHA
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 ドコサヘキサエン酸,略称DHAが話題になっている。DHAはdocosahexaenoic acidのことで,二重結合が6か所にある不飽和脂肪酸である。分子式はC22H32O2,分子量は328であり,それほど大きくない。人体では合成できない必須脂肪酸である。

 Docosaは,do+ecosaに分解される。ギリシャ語の数詞で前半は2,後半は20を意味するので,22になる。

眼科の名著
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 眼科にはすばらしい本が何冊もある。有名なのがRyanの“Retina”三冊本である。1989年に初版が出版され,その後はほぼ5年ごとに改版された。300人近くいる執筆者の約3割を改訂のたびに入れ替え,本の鮮度を保っている。

 本のなかには,名著として賞賛されながら,そのまま絶版になったものが多い。なによりの代表がHoganらによる“Histology of the Human Eye”『眼組織学』ではと思う。電子顕微鏡を駆使し,角膜上皮の表面にはネコの舌のようにザラザラした微絨毛microvilliがあることや,ブルッフ膜が5層構成であることも書かれている。わかりやすい模式図を活用しているのもこの本の別の魅力である。

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 雑誌『JIM』に連載されていたときから注目していた記事が,連載時より格段にバージョンアップして,1冊の本にまとめられた。タイトルは「白衣のポケットの中」,副題が「医師のプロフェッショナリズムを考える」である。そして,本書のコンセプトは,裏表紙にある次のフレーズに凝縮されている。

やさしい目で きびしい目で・128

目標を持って歩みたい 嘉村 由美
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 人は何歳頃から,目標を持って過ごしてきているのでしょうか。幼い頃を思い返すと,ピアノの発表会や幼稚園の運動会が,人生で最初の目標だったかもしれません。学生時代には,受験に合格することであったり,クラブ活動の大会でよい成績をあげることであったり,知らないうちに目標が定められていたように思います。

 さて,医師国家試験に合格した後はどうだったでしょうか。私は細かい作業が好きでしたので,眼科手術に興味を持って入局しました。「手術が上手になりたい!」これが最初の目標でした。先輩たちのご指導でそれなりの手術ができるようになりました。

ことば・ことば・ことば

泰山鳴動
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 ラテン語をすこし知っていると楽しいし,便利でもあります。レシピrecipeやa. m., p. m. のように,ラテン語でありながら英語のような顔をした単語がずいぶん使われています。

 イギリスにはバーバリーやダンヒルなど,男性専門のブランドがあります。アクアスキュータム(Aquascutum)もそのひとつですが,ずっとその意味を知らずにいました。

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あとがき 鈴木 康之
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 本号は第63回日本臨床眼科学会講演集の第6回となります。みなさん,臨床に従事しながらサイエンティフィックな視点を常に持ち,このようにきちんと学会で発表し,そして原著論文としてまとめ発表をされる姿勢に敬意を表します。今回も多くの学会原著を掲載していますが,特に浅野泰彦・他の強膜固定型カプセルエキスパンダーの報告は,われわれがどうしても避けられないZinn小帯脆弱例に対する白内障手術を大きく助けるものとして,今後の発展を是非期待したいと思います。また,田中秀典・他の報告にある硝子体腔容積の測定法は,とてもユニークで興味深い視点であると思います。さらに木村元貴・他の逆瞳孔ブロック症例の報告も臨床的に非常に役に立つものと思います。

 一方,自分の不勉強をさらけ出すようで非常に情けないのですが,連載中の「眼科医にもわかる生理活性物質と眼疾患の基本」で取り上げられたLIFや「つけよう! 神経眼科力」のSPGR,FIESTA-Cなどという言葉は,私は今回初めて知りました。このように雑誌を通読することで専門馬鹿にならず,幅広い新しい医学知識を入手できることを改めて実感した次第です。みなさんも是非お楽しみください。

基本情報

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臨床眼科
64巻8号 (2010年8月)
電子版ISSN:1882-1308 印刷版ISSN:0370-5579 医学書院

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