臨床眼科 64巻7号 (2010年7月)

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要約 目的:強度近視眼に生じる単純型黄斑部出血の光干渉断層計(OCT)所見の報告。対象と方法:8例8眼を対象とした。男性5例,女性3例で,年齢は31~64歳(平均44歳)である。全例に-8D以上の近視または26.5mm以上の眼軸長があり,脈絡膜新生血管がない単純型黄斑出血があった。視力はlogMARとして評価した。結果:6か月間の経過観察で,平均視力は0.18から-0.02に有意に改善した(p<0.01)。平均中心網膜厚は当初243μm,6か月後220μmで,有意差がなかった。最終的に全例で出血が消失した。眼底のlacquer crack lesionの形成または伸展が5例にあった。中心窩での視細胞内節外節接合線は7眼で検出され,これらの小数矯正視力はすべて0.9以上であった。結論:強度近視眼に生じた単純型黄斑部出血での視力予後の判定には,光干渉断層計による中心窩での視細胞内節外節接合線の評価が有用である。

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要約 目的:先天色覚異常による,視認条件の悪化に伴う物体色の色誤認の変化の検討。対象と方法:15~39歳の343人を被検者とした。内訳は,1型2色覚51人,2型2色覚116人,1型3色覚51人,2型3色覚82人,正常色覚43人である。中彩度低明度の12色相の色票で作成した,30mm×30mmの正方形(A票)と直径5mmの円形(B票)の2種類に対する色名呼称検査をした。結果:誤答率はいずれの型でもA票よりB票が高く,異常3色覚のB票では2色覚のA票と同等であった。結論:先天色覚異常では,低明度対象に対する誤答率は2色覚・異常3色覚とも小視角の場合に有意に増加する。異常3色覚でも視認条件の悪化で色誤認が増えることには注意が必要である。

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要約 目的:広角眼底カメラを用いた未熟児網膜症の遠隔診療の状況の報告。対象と方法:過去35か月間に福山医療センターの新生児集中治療室で治療した新生児153名を対象とした。いずれも在胎週数35週未満(平均32.7週),または出生体重1,800g未満(平均1,693g),または高濃度酸素を使用していた。センターの小児科医が広角デジタル眼底カメラ(RetCamTM120)で撮影した眼底写真を眼科医に送信する方法と,眼科医の往診とを併用した。結果:眼底写真の送信は計83回で平均間隔12.2日,眼科医の往診は計51回で平均間隔20.4日であった。153名中26名(17%)に未熟児網膜症が発症した。8名に網膜光凝固を行い,網膜症は鎮静化した。結論:広角眼底カメラを用いた未熟児網膜症の遠隔診療は,眼科医の往診回数を減少させ,特に問題なく継続できた。

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要約 目的:網膜有髄神経線維に弱視を伴った3症例の報告。症例:症例は3歳女児,6歳男児,7歳女児であり,矯正視力は健眼ではそれぞれ1.0,1.2,1.2で,患眼では0.01,0.15,0.2であった。屈折は健眼ではそれぞれ-1.0D,+1.0D,-0.5Dで,患眼では-6.0D,-6.0D,-6.25Dであった。網膜有髄神経線維はいずれも乳頭から連続し,最初の2例では上方の血管アーケードに沿い,第3例では黄斑の上下を囲んでいた。いずれも黄斑には及んでいなかった。経過:眼鏡による屈折矯正と遮閉訓練で,症例1では2年後に矯正視力が0.5に,症例2では13か月で0.2に,症例3では10か月で0.3になった。結論:片眼の網膜有髄神経線維に近視と弱視がある若年の3症例に,屈折矯正と弱視訓練で視力の改善が得られた。

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要約 目的:薬物の硝子体内注射の合併症の頻度とその内容の報告。対象と方法:過去5年7か月間に硝子体注射を行った227例371眼を検索した。疾患の内容は,加齢黄斑変性122眼,網膜静脈分枝閉塞症87眼,糖尿病網膜症74眼,網膜中心静脈閉塞症42眼などである。注射をした薬物は,トリアムシノロンアセトニド242眼,ペガプタニブ51眼,ラニビズマブ78眼である。結果:眼圧上昇は359眼中51眼(14%),白内障の進行が185眼中35眼(19%),硝子体出血が371眼中1眼(0.3%)にあった。水晶体損傷,網膜裂孔または剥離,眼内炎はなかった。眼圧上昇または白内障の進行は,1眼を除きトリアムシノロンアセトニドの投与眼であった。結論:硝子体内薬物注射の合併症として,眼圧上昇,白内障の進行を認めたが,1眼を除きトリアムシノロンアセトニド投与眼であった。硝子体注射は比較的安全な治療手段である。

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要約 目的:滲出型加齢黄斑変性に対するペガプタニブの硝子体内投与から3~8か月間の結果の報告。対象と方法:滲出型加齢黄斑変性20例20眼を対象とした。男性9例,女性11例であり,年齢は42~81歳,平均66歳であった。ペガプタニブ0.3mgを硝子体内に投与し,3~8か月の経過を追った。視力はlogMARで評価し,0.3以上の変化を改善または悪化とした。結果:ペガプタニブの硝子体内投与は,9眼で1回,7眼で2回,4眼で3回行われた。最終視力は,5眼(25%)で改善,15眼(75%)で不変であり,悪化はなかった。黄斑体積の平均値は,術前と比較し1か月後と3か月後で有意に減少した(p<0.05)。合併症はなかった。結論:滲出型加齢黄斑変性に対するペガプタニブの硝子体内投与から3~8か月の期間に,滲出性変化が改善し,全症例で視力が改善または維持された。

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要約 目的:糖尿病網膜症にNd-YAGレーザーによる光凝固を行い,従来の条件とPattern Scan Laser(PASCAL®)とを用いた場合の眼底の組織反応を光干渉断層計で検索した結果の報告。対象と方法:増殖糖尿病網膜症がある5例7眼を対象とし,照射直後,2週間後,4週間後に照射部位をフーリエドメイン光干渉断層計で観察した。結果:照射直後は,従来の照射条件では,照射部位に一致して脈絡膜から内境界膜まで高輝度反射があった。PASCAL®では,高輝度反射が照射直後は網膜色素上皮から網膜外層に限局し,4週間後は網膜色素上皮の周囲のみにあった。結論:PASCAL®による増殖糖尿病網膜症眼への照射は,網膜内層への障害が少なかった。これを用いることで,網膜の神経機能がより良好に維持される可能性がある。

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要約 目的:0.005%ラタノプロストから0.004%トラボプロスト点眼に切替えた後の眼圧の変化と角膜障害の報告。対象と方法:眼圧下降が不十分または角膜障害がある緑内障45例87眼を対象とした。男性21例,女性24例で,年齢は20~90歳(平均67歳)であった。原発開放隅角緑内障44眼,正常眼圧12眼,その他である。平均眼圧は17.3±5.1mmHgであった。結果:平均眼圧は切替えから3か月後と6か月後で有意に下降した(p<0.01)。正常眼圧緑内障では有意の眼圧下降はなかった(p=0.64)。全症例での角膜スコアの平均値は有意に改善した(p<0.01)。結論:ラタノプロスト点眼で十分な眼圧下降が得られないか,角膜障害が生じた緑内障症例では,トラボプロストへの切替えが奏効することがある。

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要約 目的:視覚障害を初発症状としたCreutzfeldt-Jakob病の報告。症例:61歳男性が数週前からの両眼の視力障害で受診した。7年前から糖尿病があり,9か月前に胃癌の内視鏡手術を受けた。輸血歴はなかった。所見:矯正視力は両眼とも0.15で,右眼に軽度の糖尿病網膜症があった。視野検査で左同名半盲があり,網膜電図(ERG)と蛍光眼底造影に異常所見はなかった。その後ミオクローヌスが生じ,21日後に会話困難,36日後に無動性無言となった。頭部の磁気共鳴画像検査(MRI)と単一光子放射断層撮影(SPECT)の所見からCreutzfeldt-Jakob病と診断した。結論:Creutzfeldt-Jakob病では,急激な視力障害と視野異常を初発症状とすることがある。

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要約 目的:C型慢性肝炎に対するインターフェロン療法中に前部虚血性視神経症が両眼に発症した症例の報告。症例:65歳男性が2日前からの右眼視力低下で受診した。数年前からC型肝炎があり,7週間前からリバビリン内服とペグインターフェロンα-2bの皮下注射を受けていた。所見:矯正視力は右0.8,左1.0で,右眼の視神経乳頭に火炎状出血を伴う強い腫脹,左眼に軽度の乳頭浮腫があった。右眼に下方の水平半盲,左眼に比較暗点があった。両眼の前部虚血性視神経症と診断した。インターフェロンとリバビリンを中止し,ステロイドパルス療法とその漸減治療で,10週間後に右眼視力が1.0になり,半盲がやや改善した。左眼視野は正常化した。結論:インターフェロンの全身投与で前部虚血性視神経症が両眼に発症した可能性がある。

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要約 目的:デング熱に罹患した後に視神経症が両眼に発症した症例の報告。症例:30歳女性が両眼の光視症で受診した。3か月前にタイで勤務中にデング熱の重症型であるデング出血熱に罹患した。その5日後から両眼の視力が低下し,人の顔が判別できなかった。所見:矯正視力は右0.6,左0.9であり,両眼の視神経乳頭の鼻側縁が不鮮明で,蛍光眼底造影で同部位に過蛍光があった。視野検査で両眼に中心暗点と盲点の拡大があった。ビタミンB12の内服のみを行い,初診から1か月後に両眼とも視力が1.0に回復した。結論:本症例ではデング出血熱後に視神経症が両眼に発症し,自然寛解したと解釈される。

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要約 目的:軽症の眼瞼けいれんに対するボツリヌス毒素による治療の結果の報告。対象と方法:過去5年間にボツリヌス毒素で治療した眼瞼けいれん28人を対象とした。男性8例,女性20例であり,若倉分類で7例は軽症,21例は重症であった。VFQ-25によるアンケート調査で治療効果を判定した。結果:軽症群では全例で症状が軽快し,5例(71%)で無症状になった。重症群では無症状化はなく,61%で症状が改善,19%で症状が不変であった。VFQ-25では,両群ともに症状が有意に改善した。治療後の総合スコアは,軽症群が84.3,重症群が65.7であった。結論:眼瞼けいれんに対するボツリヌス毒素による治療では,重症者よりも軽症者で効果が高かった。

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要約 目的:上田市で実施した3歳児健康診査での眼科検診の報告。対象と方法:2008年度に該当者1,492名のうち1,337名(89.6%)が受診した。彼らについて眼位,眼球運動,他覚的屈折を視能訓練士が検査した。結果:検査不能の9名を除き,60名(4.5%)で精査が必要と判定された。内訳は屈折異常が44名,斜視の疑いが16名であった。レチノマックス®で測定した2,108眼での等価球面度数は-1.79±1.40Dであり,FR-5000®で測定した386眼では+0.47±0.72Dであった。乱視度数は前者では0.50±0.56D,後者では0.54±0.34Dであった。レチノマックス®では4.3%に+1.0D以上の遠視または2.0D以上の乱視があった。FR-5000®では4.7%に+2.0D以上の遠視または2.0D以上の乱視があった。結論:3歳児健康診査での眼科検診を行うことで,屈折異常または斜視を早期に発見できた。

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要約 目的:著しい網膜の脱色素があり,発症から6年後にacute zonal occult outer retinopathy(AZOOR)と診断された症例の報告。症例:27歳女性が6年前からの右眼の光視症と視野異常で受診した。所見:裸眼視力は左右とも1.5で,右眼の乳頭から鼻側にかけて網膜色素変性に似た大きな病変があり,視野検査で盲点が拡大していた。左眼には異常はなかった。全視野網膜電図(ERG)では右眼に反応低下があり,多局所ERGでは視野欠損がある部位の反応が低下していた。前医への照会で視野異常が6年前にあり,眼底と蛍光眼底造影所見には異常がなかった。AZOORに起因する片眼性の網膜色素異常と診断した。結論:光視症と急性視野欠損で発症し,当初は眼底に異常がなくても,数年後に限局性の網膜色素異常が生じる症例では,AZOORである可能性がある。

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要約 背景:パクリタキセルはアルカロイド系の抗癌薬で,点滴静注で投与され,2~3週間の休薬期間を置く。トラスツズマブは遺伝子組み換えによる分子標的治療薬である。症例:56歳女性が2か月前からの両眼の視力障害で受診した。5年前に乳癌に対する左乳房切除術を受け,2年前に転移に対しトラスツズマブ,8か月前からパクリタキセルが投与されていた。所見:矯正視力は右0.7,左1.0であり,両眼に変視症と固視点周囲の比較暗点があった。スペクトラルドメイン光干渉断層計で両眼に嚢胞様黄斑浮腫があった。フルオレセイン蛍光眼底造影では色素漏出はなかった。1か月後に矯正視力は右0.3,左0.4に低下した。パクリタキセルを中止し,その1か月後に視力は右0.9,左1.0に改善し,8か月後に黄斑浮腫は消失した。結論:アルカロイド系の抗癌薬の投与中に,蛍光眼底造影で色素漏出がない黄斑浮腫が生じることがある。

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要約 背景:家族性滲出性硝子体網膜症(FEVR)に対する硝子体手術では,周辺部の無血管部の硝子体の処理が一般に困難である。目的:網膜光凝固後に黄斑上膜が剥離したFEVRの症例の報告。症例:27歳男性が左眼の視力低下で受診した。矯正視力は右1.0,左0.4で,両眼に周辺部眼底の網膜血管の直線化,多分岐,広範囲の無血管野形成があり,その境界線に沿って線維血管増殖膜があった。左眼にはさらに硝子体出血と黄斑上膜があった。母親と妹に類似した眼底所見があり,FEVRと診断した。網膜の無血管野にレーザー光凝固を行い,その1か月後に左眼視力が0.7に改善し,黄斑上膜が剥離していた。結論:黄斑上膜を伴う活動性が高いFEVRでは,無血管領域を光凝固で処理する方法が治療の選択肢の1つになる。

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要約 目的:外眼筋に浸潤し,治療が困難であったmucosa-associated lymphoid tissue(MALT)リンパ腫の症例の報告。症例:60歳男性が3か月前からの右眼下眼瞼付近の腫瘤と複視で受診した。所見:矯正視力は右0.7,左1.0で,硬結のある腫瘤が右眼の下眼瞼にあり,右眼の下転障碍があった。コンピュータ断層撮影で33mm×35mm×30mmの充実性腫瘤があった。眼窩腫瘍摘出の術中所見として,腫瘍は球後の視神経近くに及び,外眼筋,下直筋,下斜筋を巻き込んでいた。全摘を諦め可能な範囲を摘出した。プレドニゾロンを術後3週間投与した。摘出組織は病理学的にMALTリンパ腫と診断された。全身転移はなく,術後6か月後の現在,複視は軽減し1.0の矯正視力を得ている。結論:MALTリンパ腫は緩慢な経過をとることが多いが,本症例では急速な経過をとり,外眼筋を含む広い範囲に浸潤していた。

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要約 背景:乾癬の発症には腫瘍壊死因子α(TNFα)が関係する。インフリキシマブは抗TNFαモノクローナル抗体である。目的:乾癬性汎ぶどう膜炎の症例にインフリキシマブを使用した報告。症例:現在71歳の女性が15年前に両眼の前部ぶどう膜炎で受診した。その2年前から膿疱性乾癬の皮膚と関節症状があり,ステロイドとシクロスポリンで加療中であった。白内障手術を5年前に左眼に,1年前に右眼に行い,視力は右0.4,左0.6になった。10カ前から汎ぶどう膜炎が認められ,両眼とも視力が0.1まで低下したため7か月前からインフリキシマブ3mg/kgの静注を開始した。初回治療の翌日に皮膚と関節症状が軽快し,その後視力も改善した。現在まで経過は良好である。結論:インフリキシマブの静注で,乾癬による皮膚,関節,汎ぶどう膜炎の症状が少なくとも7か月間改善した。

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要約 目的:原田病に似た眼所見を呈した悪性リンパ腫の症例の報告。症例:57歳男性が両眼の視力低下で紹介され受診した。4週間前に原田病の診断でステロイドパルス治療を受けたが奏効しなかった。16か月前に脳腫瘍で摘出手術を受けていた。所見:矯正視力は右0.06,左0.2で,蛍光眼底造影により網膜色素上皮からの造影剤漏出と貯留があった。光干渉断層計で漿液性網膜剥離の所見があった。トリアムシノロン後部テノン嚢下注射とシクロスポリン投与で視力が改善したが,眼内炎は遷延した。初診から2週間後に脳腫瘍が悪性リンパ腫であったことが判明した。その3週間後に尿路感染症から全身状態が悪化し,肝脾腫など悪性リンパ腫の腫瘍崩壊を示す所見が生じ,初診から7週間後に不帰の転帰をとった。結論:本症例は悪性リンパ腫により原田病に類似した所見を呈したと解釈される。

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要約 背景:遺伝性血管神経性浮腫ではC1抑制因子が欠如している。C1抑制因子には遺伝子多型があり,加齢黄斑変性との関連が報告されている。目的:遺伝性血管神経性浮腫に加齢黄斑変性が発症した症例の報告。症例:69歳男性が9か月前からの右眼視力低下で受診した。過去に発作時の採血などから,遺伝性血管神経性浮腫と診断されている。所見:矯正視力は右0.9,左1.0であり,右眼に網膜下の線維血管膜増殖があった。7か月後に右眼視力が0.4に低下し,加齢黄斑変性と診断した。光線力学療法などで14か月後に視力が1.0に改善した。左眼には黄斑外にドルーゼンがある以外には病的所見はなかった。結論:本症例では,C1抑制因子の欠損が加齢黄斑変性の発症に関与した可能性がある。

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要約 目的:網膜中心静脈閉塞症に対するベバシズマブの硝子体内投与の報告。対象と方法:黄斑浮腫を伴う網膜中心静脈閉塞症14例14眼を対象とした。男性9例,女性5例で,年齢は62~88歳(平均74歳)である。logMAR視力は平均1.00±0.75であった。ベバシズマブ1.25mgを硝子体内に注射し,6か月以上の経過を追った。結果:最終視力は平均0.57±0.50で,治療前よりも有意に改善した(p<0.05)。中心窩網膜厚の平均値は,治療前758±179μm,治療後296±236μmで,有意に減少した(p<0.01)。12眼には複数回の治療が行われた。治療前の中心窩網膜厚が700μm以上の8眼では平均4.9回,これ以下の4眼では平均2.7回で,有意差があった(p<0.05)。結論:黄斑浮腫を伴う網膜中心静脈閉塞症へのベバシズマブの硝子体内投与で視力の向上が得られた。難治または再発例には複数回の投与が必要であった。

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要約 目的:クロルプロマジンの副作用として網膜機能障害が疑われた症例の報告。症例:50歳女性が両眼の霧視で受診した。21年前から重篤なうつ病に対し,1日量50mgのクロルプロマジンを含む10種類の薬を内服している。2年前に両眼に白内障と黄斑浮腫に対する硝子体同時手術を受けた。所見:矯正視力は右0.07,左0.6で,両眼に傍中心暗点と中心感度の低下があった。蛍光眼底造影で広範な網膜色素上皮の萎縮があり,光干渉断層計で網膜外層の菲薄化と視細胞の内節外節境界の欠損が右眼に,黄斑浮腫が左眼にあった。右眼の網膜電図はほぼ消失し,左眼の振幅が著しく低下していた。結論:この症例の汎網膜機能障害は,クロルプロマジンの長期服薬によって生じた可能性がある。

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要約 目的:20年前に外傷による水晶体落下があり,眼内炎が発症し,自然寛解した症例の報告。症例:73歳男性が17日前からの左眼の眼痛で受診した。発症から4日目の視力は右1.5,左指数弁で,眼圧は右15mmHg,左43mmHgで,左眼に眼内炎があったという。20年前に外傷による水晶体落下があり,手術は行われなかった。所見:眼内炎と硝子体混濁は軽度であり,硝子体内に膨化した水晶体があり,眼圧は正常化していた。消炎薬の点眼などで保存的に治療した。4か月後に水晶体嚢のみを残して実質は消失し,矯正視力は0.4に改善した。結論:20年前に硝子体内に落下した水晶体が自然破嚢し,水晶体起因性眼内炎が発症したが,水晶体蛋白が徐々に流出して炎症が軽快し,自然治癒に至ったと解釈される症例である。

連載 今月の話題

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 わが国は世界有数の近視国であり,強度近視は緑内障に次いで第2位の失明原因である。以前は有効な治療法がなかった近視性眼底病変に対しても,近年,抗血管新生療法などの新しい治療法が可能となり,また,光干渉断層計を用いた画像診断技術の進歩に伴い,近視性牽引黄斑症などの新たな病態が解明され,本症に対する硝子体手術がさかんに行われるようになった。同時に,全ゲノムスクリーニングという新しい遺伝子解析技術の進歩により,強度近視の原因遺伝子の全貌が解明されようとしている。強度近視診療は新たな時代に入っており,近い将来,近視性眼底病変の管理は「治療から予防へ」と向かうであろうと期待される。

連載 公開講座・炎症性眼疾患の診療・28

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はじめに

 アレルギー性結膜疾患は「Ⅰ型アレルギー反応が関与している結膜炎で,何らかの自他覚症状を伴うものと」と定義され,増殖変化の有無,アトピー性皮膚炎の合併の有無,異物などによる機械的刺激の有無により,「アレルギー性結膜炎」「アトピー性角結膜炎」「春季カタル」「巨大乳頭結膜炎」の4つに大別される(表1)。アレルギー性結膜炎はさらに季節性,通年性に細分されるため,全体では5疾患に分類される1)

 アレルギー性結膜炎は,外来診療で最も多くみられる疾患の1つであり,とくに近年花粉症やアトピー性皮膚炎の増加とともに増えてきている。2006年に出されたアレルギー性結膜疾患診療ガイドラインでは,アレルギー性結膜炎は結膜に増殖性変化のみられないアレルギー性結膜疾患と定義される2)。症状が季節性のものを季節性アレルギー性結膜炎(seasonal allergic conjunctivitis:SAC)といい,そのなかでも花粉によって引き起こされるものは花粉性結膜炎とも呼ばれる。それに対し,季節あるいは気候の変化によって増悪・寛解があるものの,症状の発現が通年性のものを通年性アレルギー性結膜炎(perennial allergic conjunctivitis:PAC)と呼ぶ。他臓器のアレルギー疾患のなかではアレルギー性鼻炎との併発が多く,アレルギー性結膜炎患者の約70~80%に合併しているといわれる。

 一方,アトピー性角結膜炎(atopic keratoconjunctivitis:AKC)は顔面にアトピー性皮膚炎を伴う患者に起こる慢性のアレルギー性結膜疾患であり,春季カタル(vernal keratoconjunctivitis:VKC)は結膜に増殖性変化がみられるアレルギー性結膜疾患である。また,巨大乳頭結膜炎(giant papillary conjunctivitis:GPC)は機械的刺激による上眼瞼結膜に増殖性変化を伴う結膜炎と定義される。

連載 視野のみかた・4

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はじめに

 今日,視野検査の主流がコンピュータ制御による自動視野計となり,Goldmann視野計でしばしば問題となった視野検査に対する検者の技量の影響は最小限に抑えられるようになった。しかし,視野検査はあくまで自覚検査であり,患者側の立場からは「光が見えたらボタンを押す」という単純作業であることに変わりはない。Goldmann視野計の場合は,検者が測定中に常に患者の固視や応答状況を把握していたため,何らかの問題が発生した場合はすぐに検査にフィードバックすることができた。しかし自動視野計では,どのような測定状況でも何らかの結果は出てしまい,診断医はこの結果だけでは測定時の状況を十分に把握することができない。そのため,自動視野計では,これら被検者側の不安定要因に対応すべく多くの工夫が組み入れられてきた。

 視野測定の信頼性を担保する手法には,大きく分けて検査中に直ちに患者へフィードバックされるものと,測定結果に付随した信頼性の指標として診断者へフィードバックされるものがある。さらに,検者のみが把握できる検査時の患者の状態も,視野の測定結果を評価するうえでしばしば重要となる。視野検査において,患者が行わなければならないことは,①中心の固視標を見続けることと,②ドーム内に光が見えたらボタンを押すこと,の2点である。自動視野計において,この2つの課題の評価がどのように行われているかみていきたい。

連載 眼科医にもわかる生理活性物質と眼疾患の基本・7

SDF-1 中尾 新太郎
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 ストロマ細胞由来因子1(stromal cell-derived factor-1:SDF-1)は,ケモカイン(システイン残基の位置が保存された分子量約1万のサイトカイン群)の1つであり,細胞の遊走に深く関与する。最近,さまざまな眼科疾患への関与が報告され,SDF-1をターゲットとした治療が期待される。しかし,SDF-1は網膜保護にも関与することが示唆されており,それぞれの眼疾患におけるSDF-1に関する病態理解が重要である。

連載 つけよう! 神経眼科力・4

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どのような症例に眼窩部画像をオーダーするか?

 眼球打撲(外傷)が原因で生じた複視をみた場合は,必ず眼窩部画像をオーダーしなければならない。特にコンピュータ断層撮影(computed tomography:CT)検査は眼窩底骨折の診断に欠かすことのできない検査である。その他,動眼,滑車,外転神経の単独麻痺または複合麻痺で説明がつかない眼球運動障害をみた時,外眼筋病変を疑い眼窩部画像をオーダーする。さらに,複視に加えて眼球突出や充血,眼圧上昇などの眼窩静脈還流障害を示す場合もやはり眼窩部病変を疑い眼窩部画像をオーダーする。

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要約 目的:視神経炎と軟部好酸球肉芽腫症の併発が疑われた症例の報告。症例:気管支喘息のある68歳女性が右眼の視力低下で受診した。13年前に右眼瞼腫脹を契機として右外直筋腫脹が発見された。5年前に右眼視力が0.01に低下し,眼窩内腫瘍が疑われ,ステロイドのパルス療法で視力が改善した。所見:矯正視力は右0.02,左1.2であり,右眼に相対的瞳孔求心路障害があった。末梢血に好酸球増加があった。磁気共鳴画像検査(MRI)で,右視神経を取り巻く房状の結節があり,木村病に伴う視神経周囲炎が疑われた。ステロイドのパルス療法で右視力は0.4に改善した。3か月後に視力が0.1に低下し,以後の経過は6か月間ほぼ不変である。結論:本症例は,視神経障害が過去に再発したこと,アレルギー疾患の併発,外眼筋の炎症などから,木村病に併発した視神経周囲炎である可能性が高い。

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要約 背景:ヒトの視覚は生後3か月~8歳までの期間に感受性があり,発達するとされている。目的:右眼の弱視が左眼の外傷後に改善した症例の報告。症例:11歳男児の左眼に釣り針が刺さり,眼球破裂で受診した。手術後の矯正視力は,右0.7,左0.4であった。20歳になり,左眼の外斜視と複視で再受診した。矯正視力は右0.8,左0.3で,35Δの外斜視があった。プリズムによる眼位矯正下で立体視はなかった。左眼の外直筋を後転し眼位はほぼ正位,矯正視力は右0.9,左0.4になった。弱い立体視があった。結論:視覚の感受性があるとされる時期を過ぎても弱視が改善した。斜視手術後の立体視は,外傷前からあったと推定された。

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 症例は40歳,男性。糖尿病網膜症の精査・加療目的で当科を紹介された。初診時視力は右(0.7),左(0.8),眼圧は右18mmHg,左16mmHgであった。両眼に軽度の白内障があったが,その他の中間透光体に異常はなかった。眼底は,両眼に出血斑と新生血管がみられ,左眼には視神経乳頭を中心として網膜新生血管網を形成していた。動脈硬化所見も著明で,動脈は一部白線化していた。フルオレセイン蛍光眼底造影検査では,両眼の鼻側領域を中心に周辺網膜全域に無灌流領域が散在し,左眼視神経乳頭周囲の新生血管網には旺盛な蛍光漏出がみられた。速やかに両眼の汎網膜光凝固を施行し,網膜症の活動性は徐々に鎮静化した。汎網膜光凝固後1年経過した現在,両眼とも視力は(1.2),眼圧は15mmHgで血管新生緑内障も発症していない。

 撮影はKOWA社製の眼底カメラVx-10iを用い,造影初期から画角50°で行った。眼底所見からも明らかな乳頭新生血管がみられたため,初期から乳頭周辺を中心に多数の毛細血管瘤や網膜無灌流領域を撮影した。蛍光漏出が眼底全体にまわり飽和する前に撮影できるよう心がけた結果,網膜新生血管網や網膜無灌流領域を鮮明に撮影することができた。

べらどんな

緑のスイス GEN
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 2年前に学会でスイスに行ったとき,空港からタクシーに乗っていて思いがけない発見をした。

 ガソリンスタンドには,日本と同じように「リットルいくら」という表示がでている。当時の1スイスフランはほぼ100円なので換算は楽である。レギュラーが180円相当というのはまあまあとして,驚いたのがディーゼル油すなわち軽油が220円なのである。

ブルーベリー GEN
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 6年前から診ている網膜色素変性の患者さんがいる。その方から「ブルーベリーは目に良いそうですが」と訊かれ,返事に困った。この話には70年前からの裏があることを,秋田の本荘市の早川真人先生から教わっていたからである。

 1940年の春は,イギリスがドイツに降伏するかどうかの瀬戸際にあった。その前年の9月に始まった第二次世界大戦では,ポーランドがまず征服され,フランスも降伏した。ドイツは次にイギリスへの空襲を強化した。これが有名なBattle of Britainである。

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 山口大学眼科学教室前教授の西田輝夫先生と山口大学眼科の教室員の先生方が執筆された『ケースで学ぶ 日常みる角膜疾患』が医学書院より発刊された。西田先生は世界的な業績を挙げた角膜研究者に贈られるカストロビエフォ賞を受賞された日本を代表する角膜研究家であり,フィブロネクチン点眼による再発性角膜上皮びらんの治療,サブスタンスPとIGF(インスリン様増殖因子)の部分ペプチドの点眼による遷延性角膜上皮欠損の治療などの研究でLancet誌に論文を数本発表されるなど,輝かしい業績を残されてきた。その西田先生がこれまでの長い診療経験において蓄積された多くの症例から,日常みる角膜疾患を抽出しまとめ上げられたのが本書である。

 その内容は,角膜疾患および関連事項を大きく「角膜上皮」「感染・免疫」「角膜変性・内皮」「形状異常・外傷」「腫瘍・全身」「角膜移植」「検査」の7つに分け,それぞれの代表的な疾患や討論点などの小項目を全体で80項目掲げ,詳細な解説が述べられている。各項目においてはまず典型的な症例が提示され,いずれの項目の症例も初診時所見から最終的な転帰までが詳細に記述されており,教室員の先生方が精魂込めて症例をまとめられた様子がうかがえる。そして症例の提示に引き続き,各疾患の説明が,疾患の定義,疾患概念,自覚症状,他覚所見,診断・鑑別診断,治療・予後の順に述べられており,本書の最も読み応えのある部分となっている。

やさしい目で きびしい目で・127

野田 実香
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 「目は口ほどにものを言う」という。本当なのか?

 このことは世界中で共通のものであろうか? 驚いたことに,日本人は相手の目の形を,アメリカ人は相手の口の形を重視して判断することが科学的に証明されている1)。メールなどで用いる絵文字を見ると,日本では(^_^)とか(;_;)のように目の表情であらわすのに対して,アメリカでは:-)とか:-( のように口の表情であらわすという2)。どうやらわが国では,目は口に迫る役割を果たしているようである。

ことば・ことば・ことば

悪い空気
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 今年になってから急にインフルエンザの話を耳にしなくなりました。町に出ても電車に乗っても,だれもマスクをしていないのです。政府が苦労して手配したワクチンも,この調子ではどうやら無駄になりそうです。

 Influenzaはその形が示すようにイタリア語からきています。18世紀ですからゲーテやモーツァルトの時代では,この言葉は「流行病」の意味で使われていました。「猩紅熱のインフルエンザ」もあったそうです。

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あとがき 中澤 満
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 今月号では東京医科歯科大学の大野京子先生にお願いして「強度近視の病態解明と治療法の進歩」について大変わかりやすく執筆していただきました。新しい治療法が次々と考案され治療可能となる疾患が増えるに伴い,今度は現在まだ治療法のない疾患が先端領域では注目されることになります。その代表的なものが近視です。近視は日本では罹患者が多く,まさに「国民病」ともいえるもので,網膜剥離や緑内障の危険因子となりますので,もし近視の予防が可能となれば他疾患の発症率も抑制できるという一石二鳥の効果が期待できます。注目すべき疾患といえるでしょう。

基本情報

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臨床眼科
64巻7号 (2010年7月)
電子版ISSN:1882-1308 印刷版ISSN:0370-5579 医学書院

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