臨床眼科 64巻9号 (2010年9月)

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要約 目的:薬剤耐性菌に対する0.2%ミノサイクリン軟膏の効果と安全性の報告。対象と方法:眼科手術前の結膜囊細菌培養検査でメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)もしくはメチシリン耐性コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(MRCNS)が検出され,ミノサイクリンに感受性があった51例63眼にミノマイシン軟膏を投与した。結果:疼痛で点眼を中止した2例を除く61眼中59眼(95%)で,連続3回の結膜囊細菌培養検査が陰性であった。重篤な副作用はなかった。結論:結膜囊から培養で検出され,ミノサイクリンに感受性があるメチシリン耐性黄色ブドウ球菌もしくはメチシリン耐性コアグラーゼ陰性ブドウ球菌に対するミノマイシン軟膏は有効で安全である。

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要約 目的:原発閉塞隅角症と原発閉塞隅角緑内障での隅角の形状と機能的隅角閉塞の報告。対象と方法:原発閉塞隅角症または原発閉塞隅角緑内障がある143眼を対象とした。平均年齢は74歳である。超音波生体顕微鏡で隅角の4方向を明室と暗室で測定し,隅角の形状と機能的隅角閉塞を評価した。結果:2象限以上に及ぶプラトー虹彩の頻度は,レーザー虹彩切開を行っていない86眼では14%,行ってある68眼では21%であった。水晶体前進の頻度は,それぞれ6%と34%であった。2象限以上の機能的隅角閉塞の頻度は,それぞれ44%と35%であった。結論:原発閉塞隅角症と原発閉塞隅角緑内障では,プラトー虹彩と水晶体前進が,隅角形状の異常と機能的隅角閉塞とに高頻度に関与している。

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要約 目的:ラタノプロストからタフルプロスト点眼に切替えた際の眼圧下降効果と忍容性の報告。対象と方法:ラタノプロスト点眼で加療中の30例30眼を対象とした。内訳は原発開放隅角緑内障26眼と高眼圧症4眼で,男性9例,女性21例であり,平均年齢は72歳である。点眼をタフルプロストに切替え,24~105日,平均72日間の経過を追った。結果:平均眼圧は切替え前17.0±3.4mmHg,切替え4週間後15.7±3.1mmHgであり,有意に下降した(p=0.0362)。切替え前に充血がある9眼では7眼で,点状表層角膜炎がある23眼では12眼で改善した。結論:原発開放隅角緑内障または高眼圧症へのタフルプロスト点眼では,ラタノプロスト点眼と同等またはそれ以上の眼圧下降効果が期待できる。

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要約 目的:閉塞隅角緑内障に対し,隅角癒着解離術を併用した硝子体手術が最終的に奏効した若年者の報告。症例:19歳女性が偶然に発見された高眼圧で受診した。裸眼視力は左右眼とも1.0,矯正視力は1.5であり,眼圧は右34mmHg,左25mmHgであった。両眼とも前房が浅く,隅角は右75%,左50%が閉塞していた。両眼にレーザー虹彩切開術を行い,点眼で眼圧が20mmHgに低下した。3か月後に右眼圧が44mmHgに上昇し,水晶体乳化吸引術,眼内レンズ挿入術,隅角癒着解離術を行った。眼圧は20mmHgに低下したが,隅角は全周が再癒着した。硝子体手術と隅角癒着解離術で隅角は全周が開放し,無点眼で眼圧が12mmHgになった。結論:本症例の閉塞隅角緑内障には水晶体よりも後方の要因が関与していると考えられる。隅角癒着解離術後に再癒着したとき,濾過手術ではなく硝子体手術と隅角癒着解離術をしたことで眼圧下降が得られた。

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要約 目的:20Gと21Gチップを用いた水晶体乳化吸引術の比較。対象と方法:それぞれ同じ術者が水晶体乳化吸引術を行った86眼を対象とした。43眼には3.0mmの角膜切開と20Gのチップ,他の43眼には2.3mmの角膜切開と21Gのチップを用いた。結果:超音波の平均出力は,20G群で24.9±5.9%,21G群で27.3±4.9%で,両群間に有意差があった(p=0.0198)。手術時間,超音波作動時間,術後の角膜内皮減少率については両群間に差はなかった。術中の印象として,21G手術では破砕と吸引の効率が低く,ペダルを強く踏み込むために超音波の出力が大きくなった。結論:20Gと21Gチップを用いた水晶体乳化吸引術では,手術時間,超音波作動時間,術後の角膜内皮減少率につき,両術式の間に大差はなかった。

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要約 目的:トリアムシノロンアセトニドのテノン囊下注射が奏効した黄斑浮腫を伴う糖尿病乳頭症の症例の報告。症例:64歳男性が3週間前からの急激な左眼視力低下で受診した。19年前に糖尿病と診断され,3年前から内服加療中であり,血糖コントロールは良好であった。所見:矯正視力は右1.2,左0.4であり,左眼に視神経乳頭浮腫と黄斑浮腫があった。蛍光眼底造影で両眼に多数の蛍光点と乳頭からの色素漏出があった。糖尿病乳頭症と診断し,プレドニゾロンを経口投与した。左眼視力は26日後に1.2に改善し,7か月後に0.5に低下した。視神経乳頭浮腫の悪化と黄斑浮腫が原因であると判断した。トリアムシノロンアセトニドのテノン囊下注射の開始から2週間後に視力は1.2に改善し,以後1年間は血糖値の上昇はなく,経過は良好である。結論:糖尿病乳頭症に対するステロイドのテノン囊下注射は,全身状態への影響が少なく,検討に値する治療法である。

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要約 目的:片眼に血管新生緑内障があり,良好な転帰をとったEales病の症例の報告。症例:38歳男性が1か月前からの左眼霧視で受診した。格別な既往歴はなかった。所見:矯正視力は右1.2,左1.5で,眼圧は右10mmHg,左30mmHgであった。左眼の虹彩と隅角に新生血管があり,両眼の眼底周辺部に静脈の白線化があった。全身の検索で異常はなかった。両眼の無血管領域に十分なレーザー光凝固を行い,4か月後に左眼に網膜冷凍凝固を行った。虹彩と隅角の新生血管は消失し,14か月後の現在,左眼は14mmHg以下の眼圧を維持している。結論:Eales病に併発した血管新生緑内障は予後が不良とされているが,本症例では網膜光凝固と凝固術で視力が維持され,眼圧コントロールが得られた。

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要約 目的:増殖糖尿病網膜症に続発した血管新生緑内障に対するベバシズマブ硝子体内投与を併用した濾過手術と25ゲージ硝子体手術の報告。対象と方法:血管新生緑内障を伴う増殖糖尿病網膜症12眼を対象とした。全例に線維柱帯切除術,術中の光凝固,硝子体手術を行った。7眼に術前にベバシズマブを硝子体内に投与し,5眼には行わなかった。結果:両群とも術後1か月から眼圧が有意に下降した(p<0.05)。濾過手術の追加がベバシズマブ不使用群の2眼に必要であった。結果:ベバシズマブ硝子体内投与を併用した濾過手術と25ゲージ硝子体手術が,増殖糖尿病網膜症に続発した血管新生緑内障に有効である可能性がある。

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要約 目的:硝子体手術の既往がある眼への線維柱帯切除術の効果の報告。対象と方法:過去に硝子体手術を受け,初回線維柱帯切除術が行われた28例32眼を対象とした。緑内障は血管新生緑内障19眼,血管新生がない緑内障13眼で,点眼または内服でも追加手術,眼圧21mmHg以上,または失明したものをKaplan-Meier法による死亡と定義し,3年生存率を求めた。結果:線維柱帯切除術後の3年生存率は全体で71.4%,血管新生緑内障眼56.1%,非血管新生眼74.6%で,両群間に有意差はなかった。合併症または追加手術は血管新生緑内障眼で多かった。濾過胞形成と視力転帰は血管新生眼と非血管新生眼とで差がなかった。結論:硝子体手術の既往がある眼への線維柱帯切除術では,術後3年間での眼圧下降効果が約70%で得られた。

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要約 目的:スペクトラルドメイン光干渉断層計(OCT)で計測した網膜神経節細胞複合体厚の再現性の報告。対象と方法:緑内障34眼と,緑内障または黄斑疾患がない10眼を対照とした。同じ日に3回のOCTによる網膜神経節細胞複合体厚を測定した。結果:対照群での網膜神経節細胞複合体厚の標準偏差は平均1.21μm,変動係数は平均1.24%であった。緑内障群では,OCTの自動診断で網膜神経節細胞複合体厚が正常の1%未満とされた12眼ではそれぞれ1.41μmと2.14%,1~5%とされた10眼ではそれぞれ1.53μmと1.98%,5~95%とされた12眼では1.70μmと1.94%であった。結論:スペクトラルドメイン光干渉断層計で計測した緑内障眼での網膜神経節細胞複合体厚は,変動係数が2%前後であり,再現性が良好であった。

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要約 目的:プラズマコーティングされたシリコーンハイドロゲルレンズを種々の眼表面疾患に連続装用したときの有効性と安全性の報告。対象と方法:17種のいずれかの眼表面疾患がある40例51眼を対象とし,視力補正用のコンタクトレンズを1か月間装用させた。28眼にはコンタクトレンズA(仮称),23眼にはB(仮称)を用いた。有効性は細隙灯顕微鏡による他覚的所見,被検者の疼痛軽減度,装用満足度で評価した。安全度は新規の合併症の有無で評価した。結果:疼痛軽減はAでは平均81%,Bでは70%で得られた。装用満足度はそれぞれ7.7と8.2であった。病変の回復または軽快は,それぞれ79%と91%で得られた。新規の合併症の出現はなかった。結論:今回用いた2種類のシリコーンハイドロゲルレンズは,対象とした眼表面疾患におおむね有効かつ安全であった。

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要約 目的:インターフェロンα-2bの点眼で治療した角結膜上皮内新生物の2症例の報告。症例:片眼の結膜腫瘍として72歳と77歳の男性が紹介され受診した。腫瘍を切除し,再発防止の目的でインターフェロンα-2bを1日4回点眼した。それぞれ3か月と4か月の点眼で再発がなかったが,1例では24か月後,他の1例では2か月後に再発した。再発に対する点眼で,腫瘍の進行速度は抑えられたが,縮小しなかった。結論:角結膜上皮内新生物に対するインターフェロンα-2bの点眼で,腫瘍は抑制されたが縮小効果はなかった。

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要約 目的:両側の後頭葉脳梗塞で,両側の同名半盲が生じた症例の報告。症例:70歳男性に右視野欠損が生じ,脳外科で左後頭葉梗塞が発見され,紹介され受診した。5年前から高血圧で加療中であった。所見:視力を含む一般眼科検査では異常がなく,視野検査で黄斑回避を伴う右同名半盲があった。30か月後に急激な両眼の視朦と頭重感があり,右後頭葉梗塞が発見された。内頸動脈の狭窄はなかった。矯正視力は左右眼とも1.0で,固視点を含む縦の帯状部のみを残す左右の同名半盲があった。以後7年間,ほぼ同じ状態を維持しているが,視野には改善がない。結論:左後頭葉梗塞に続発した右後頭葉梗塞で,右側の同名半盲に左側の同名半盲が加わり,固視点を含む縦の帯状部のみが残る視野欠損が生じた。

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要約 目的:黄斑上膜の除去術後の変視症の変化をMチャート®で評価した報告。対象と方法:過去9か月間に黄斑上膜の除去術を行った23例23眼を対象とした。変視症は術後3か月までMチャート®で定量的に評価した。視力はlogMARで判定した。結果:平均視力は術前0.29,術後3か月で0.16で,有意差があった(p<0.05)。変視量の平均は,垂直方向が術前0.75,術後3か月で0.41,水平方向が術前0.92,術後3か月で0.49と,いずれも有意に改善した(p<0.05)。垂直方向の変視量には,術前値と術後3か月値に相関があった(相関係数0.66,p<0.05)。水平方向の変視量には,術前値と術後3か月値に相関があった(相関係数0.45,p<0.05)。結論:黄斑上膜の除去術では,変視症が術後3か月で改善し,その術前値と術後3か月値に有意な相関があった。黄斑上膜の手術は変視症が増強する前に実施することが望ましい。

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要約 目的:網膜細動脈瘤による黄斑浮腫が遷延し,脈絡膜新生血管(CNV)が生じた症例の報告。症例:78歳女性が9か月前からの緩慢な右眼視力低下で受診した。軽度の高血圧と糖尿病があった。所見:矯正視力は右0.2,左0.9で,右眼網膜の下耳側動脈に白色の瘤があり,黄斑に及ぶ硬性白斑と浮腫があった。黄斑浮腫は光干渉断層計でも確認された。滲出型網膜細動脈瘤と診断し,血管瘤を光凝固した。4か月後に再度の光凝固を行い,その1か月後に黄斑下に出血が生じ,視力は0.02に低下した。初診から7か月後に灰白色病巣が生じ蛍光眼底造影で2乳頭径大のCNVがあった。抗血管内皮増殖因子抗体を硝子体内に投与した。その7か月後,CNVと網膜細動脈瘤は線維化したが黄斑浮腫は残存し,視力は0.02である。結論:網膜細動脈瘤で治療に抵抗する黄斑浮腫があるときには,CNVが関与している可能性がある。

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要約 目的:網膜細動脈瘤破裂に対するベバシズマブ硝子体内注射の効果の報告。対象と方法:網膜細動脈瘤破裂が生じた6例6眼を対象とした。年齢は59~89歳(平均75歳)である。4眼にはベバシズマブ硝子体内注射を行い,2眼にはさらに硝子体内ガス注入を行った。網膜光凝固は行わなかった。結果:黄斑部の漿液性網膜剝離は全例で3か月以内に消失した。6例中5例で視力が向上し,網膜細動脈瘤は検眼鏡的に萎縮化した。出血が黄斑に及んでいた4眼中1眼では黄斑萎縮が生じ,視力が向上しなかった。結論:網膜細動脈瘤破裂では,光凝固を施行しなくても,ベバシズマブ硝子体内注射で黄斑部の漿液性網膜剝離が早期に消失した。

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要約 目的:不妊治療中に網膜動静脈枝の閉塞が生じた症例の報告。症例:32歳女性が4か月前からの右眼視野欠損の発作で受診した。7か月前からエストロゲンとプロゲステロン内服による不妊治療を受けていた。所見:裸眼視力は左右眼とも1.5で,右眼の上耳側静脈の領域に出血と血管の白鞘化があり,それに相当する視野欠損があった。左眼には異常がなかった。蛍光眼底造影で右眼の上耳側動静脈に循環遅延があり,網膜動静脈枝の閉塞と診断した。高血圧,糖尿病,脂質異常症はなく,血液の一般検査所見は正常であった。初診の2週間後と10週間後に硝子体出血が生じ,新生血管と無灌流部に光凝固を行った。初診から11か月後の現在まで経過は良好である。結論:本症例では不妊症に対するホルモン療法が網膜動静脈枝の閉塞の原因になった可能性がある。

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要約 目的:出血性網膜剝離が併発した周辺部滲出性出血性脈絡膜網膜症(peripheral exudative hemorrhagic chorioretinopathy:PEHCR)の症例の報告。症例:72歳男性が2週間前に突発した右眼視力低下で受診した。高血圧と心房粗動があり,降圧薬とワルファリンを服用中であった。所見:視力は右光覚弁,左1.0で,右眼に前房出血と硝子体出血があった。超音波検査で網膜剝離と網膜下出血の所見があった。硝子体手術を行い,術中所見として,胞状の出血性網膜剝離が全周にあり,上耳側の網膜下に脈絡膜新生血管に由来すると思われる線維血管組織があった。網膜は復位し,0.03の視力を得た。結論:本症例はPEHCRによる出血性網膜剝離と考えられた。高齢者での原因不明の硝子体出血では本症の可能性がある。

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要約 目的:眼球内で中等度以上に進行した脈絡膜悪性黒色腫に対する治療法の選択と評価。症例:症例は脈絡膜悪性黒色腫5眼5症例で,男性4例,女性1例,年齢は53,56,65,76,90歳である。腫瘍はいずれも径10mm以上であった。初回治療として眼球摘出は行わず,3例は無治療,1例に硝子体手術,1例に重粒子線照射を行った。5~17か月の経過を追った。結果:無治療とした3例中2例は緑内障発作による眼痛で眼球摘出を行い,1例は他病死した。硝子体手術を受けた1例では眼球は保存されたが,術直後に肺高血圧症が生じ,救命救急治療を受けた。炭素イオンの重粒子線照射を受けた1例は,5か月後の現在まで眼球保存に成功している。結論:眼球内で中等度以上に進行した脈絡膜悪性黒色腫は,現時点では眼球保存でも眼球摘出でも生存率に差がない。各治療法についての情報を患者に提供し,それぞれの治療法の特質の理解を得る必要がある。

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要約 目的:非結核性抗酸菌の治療薬リファブチンの内服中に発症したぶどう膜炎2症例の報告。症例:いずれも女性で,64歳と81歳である。1例は25年前に多発性骨髄腫があり,5年前に非結核性抗酸菌による肺炎が発症し,肺アスペルギルス症が続発し,2か月前からリファブチンなどの投与を受けていた。他の1例は60年前に結核に罹患した。4年前にMycobacteriumによる呼吸器感染があり,3か月前からの再発に対しリファブチンなどで加療中であった。所見:両症例とも,前房蓄膿を伴うぶどう膜炎が右眼にあった。リファブチンの投与を中止し,1例には硝子体手術を行った。それぞれ2日後と10日後に眼内炎は鎮静化した。結論:これら2症例での汎ぶどう膜炎はリファブチン内服が原因であったと推定され,投薬中止で治癒が得られた。

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要約 目的:熱発または網脈絡膜炎を契機として猫ひっかき病と診断された2症例の報告。症例:いずれも男児で,それぞれ1歳4か月と8歳であった。1例には祖母宅に2匹,他の1例には自宅に3匹の飼い猫がいた。1例では1か月前から続くリンパ節腫脹と熱発があり,両眼底に境界明瞭な白色の隆起性病変が多発していた。Bartonella henselae抗体価が上昇し,猫ひっかき病と診断された。他の1例では左頸部リンパ節の腫脹が続き,B. henselae抗体価の上昇があり,小児科で猫ひっかき病と診断された。その後,左眼底に白色の隆起性病変が発見された。結論:リンパ節腫脹があり,眼底に境界明瞭な白色の隆起性病変がある症例では,猫ひっかき病の可能性がある。

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要約 目的:両眼に脈絡膜新生血管が発症した原田病の症例の報告。症例:79歳男性が白内障手術を希望して受診した。32か月前に両眼の視力低下があり,原因不明のぶどう膜炎とされ,1年前に遷延型の原田病と診断された。所見:矯正視力は右0.1,左0.15で,両眼に夕焼け状眼底があった。白内障手術を行い,右0.7,左1.2の視力を得た。その後,右眼に限局性の網膜剝離,左眼に虹彩毛様体炎が生じ,ステロイドで軽快した。術後6か月で視力が低下し,脈絡膜新生血管が両眼に発症した。右眼はトリアムシノロンアセトニドのテノン囊下注入で視力は1.0に改善し,左眼は2回の光線力学療法が奏効した後に再発し,ベバシズマブの硝子体内注入に反応しなかった。結論:脈絡膜新生血管が遷延型の原田病に発症し,1眼では光線力学療法が奏効したが,他眼ではベバシズマブの硝子体内注入が無効であった。

連載 今月の話題

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 超音波生体顕微鏡により原発閉塞隅角(緑内障)眼に微小な毛様体脈絡膜剝離を伴う症例が含まれることが発見された。原発閉塞隅角緑内障眼における毛様体脈絡膜剝離は浅前房化による隅角閉塞と関連し,悪性緑内障の原因にもなりうることから治療選択にも重要な意味を持つ。

連載 公開講座・炎症性眼疾患の診療・30

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はじめに

 甲状腺ホルモンは細胞代謝亢進作用を有するホルモンであり,脊椎動物のほとんどにみられる。トリヨードサイロニン(T3)とサイロキシン(T4)が代表的であり,生理活性はT3のほうが強いが血中に存在するのは大部分がT4である。

 甲状腺眼症は甲状腺疾患に関係して産生された自己抗体が,類似した受容体の存在する眼窩脂肪や外眼筋などの球後組織を標的として惹起する炎症性疾患と考えられている。そのため甲状腺疾患の発症に前後して,両眼性あるいは片眼性の眼瞼後退や眼球突出などの特徴的な眼症状を示す。

 甲状腺眼症をきたす代表的な疾患は甲状腺機能亢進症である。ヒトの甲状腺機能亢進症を日本ではBasedow病と呼ぶのが一般的であるが,英語圏ではGraves diseaseとも呼ばれる。Basedow病ではMerseburgの3主徴として甲状腺腫,頻脈,眼球突出が知られており,約半数の患者に眼球突出がみられる。また未治療のBasedow病では,軽度のものも含めると80%以上に甲状腺眼症がみられるとの報告もある1)。甲状腺機能亢進症は甲状腺ホルモン作用が過剰になるヒトの代表的代謝内分泌疾患であるが,家ネコにも頻繁にみられる。家ネコの場合は,家具や家電製品の防火物質として広く使われているポリ臭化ジフェニルエーテルが,内分泌攪乱物質として関連している可能性が指摘されている。

 また,臨床的には典型的な甲状腺眼症を示すが甲状腺機能が正常なeuthyroid Graves disease(euthyroid ophthalmopathy)の存在2)や,甲状腺機能が低下する橋本病でも眼球突出や眼瞼後退が生じることが知られている3)。つまり甲状腺機能が亢進していなくても甲状腺眼症は生じ得る。さらには自己抗体陰性の甲状腺乳頭癌でもeuthyroid ophthalmopathyを生じたという報告もあり4),甲状腺眼症と自己抗体の関係はすべてが明らかにされているわけではない。

連載 視野のみかた・6

視野と眼底の対応 松本 長太
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はじめに

 視野異常は,外界の情報が眼球から視中枢へ伝達するどの部位が障害されても起こりうる。特に,外界の光情報を最初に電気信号に変換する網膜や,その神経線維の通り道である視神経乳頭近傍の病変は,眼底検査にて直視下で観察可能であり,さらに各種眼底3次元解析装置で短時間に非侵襲的に定量評価できる。視野検査で得られた異常所見の原因病巣はどこにあるのか,あるいは眼底検査で観察された異常所見は機能的にどのような影響を及ぼしているのかを考えるうえで,視野と眼底の対応関係を正しく評価することは臨床上きわめて重要である。今回は,この眼底所見と視野異常の対応関係についてさまざまな側面から考えてみたい。

連載 眼科医にもわかる生理活性物質と眼疾患の基本・9

MCP-1 中澤 徹
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 ケモカインは細胞遊走を主要な作用とするサイトカインの一群である。現在45種類にのぼるケモカインが同定されている。ケモカインにはよく似た4つのシステイン残基が存在し,CXC,CC,C,CX3Cの4つのサブファミリーに分類される。単球走化性タンパク1(monocyte chemotactic protein-1:MCP-1)はCCケモカイン(CCL)に属している。MCP-1(CCL2)は1989年に単球走化性因子として精製,クローニングされた。さらにその後の研究で,その受容体CCR2を介して実に多彩な機能を示すことが判明した。MCP-1は単球・マクロファージといった免疫担当細胞からだけでなく,血管内皮細胞,線維芽細胞,尿細管上皮細胞,平滑筋細胞など多くの細胞から分泌される。一方その受容体CCR2は,単球・マクロファージ,樹状細胞,T細胞に発現がみられる。そのことからMCP-1は炎症に伴い局所で分泌され,その領域に主に単球・マクロファージを引き寄せると考えられている。そのため,慢性炎症性疾患に対する治療のターゲットとして開発が進んでいる。本稿では,MCP-1の基礎知識から役割,最新の眼疾患の病態へのかかわりまでを広く解説する。

連載 つけよう! 神経眼科力・6

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大角度の外斜視でも手術で整容面だけでなく両眼視も回復する!

 成人の最も多い眼位異常は外斜視である。小角度であれば両眼視も良好で間欠性外斜視のことが多いが,大斜視角の外斜視では両眼視が不良で恒常性外斜視が大部分である。そのため,眼科医から術後の複視発症の危険性などを指摘され,手術治療を諦めざるをえない患者も多いと考えられる。

 しかし,長期間斜視が持続していても視力が良好であれば,大角度の斜視であっても手術によって両眼視が回復するという報告1)がある。筆者らの教室でも近見眼位で80プリズム以上外斜している大角度の恒常性外斜視25例の術前後の両眼視機能を検討した2)。その結果,大型弱視鏡では術前両眼視のなかった44%の患者が術後20%に減少し,立体視は術前20%しかなかったものが52%に増加した(図1)。また,Titmus stereo testでも立体視のみられなかった患者が72%から24%に減少するなど劇的に立体視機能の改善がみられ(図2),極端な外斜視であっても術後に複視をきたすことなく整容面,両眼視機能面とも著明に改善できることが証明された。

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要約 目的:急性原発閉塞隅角症と同緑内障の両眼と片眼発症例の比較。対象と方法:過去25年余に当科を受診した急性閉塞隅角症と同緑内障の63例75眼を検索した。男性16眼,女性59眼で,年齢は44~85歳(平均67歳)であった。12例が両眼発症,51例が片眼発症であった。結果:両眼発症は男性5例(42%),片眼発症は男性6例(12%)であり,両眼発症には男女差がなく,片眼発症は女性が有意に多かった。発症年齢,屈折,眼軸長,中心前房深度,水晶体厚については,両眼群と片眼群とで有意差がなかった。結論:急性原発閉塞隅角症と同緑内障では,発作眼と非発作眼は同様な眼球構造を持ち,両眼発症が63例中12眼(19%)にあった。非発作眼に急性発作が起こる可能性が高いと推定される。両眼発症が男性に多いことから,片眼発作例でも男性には僚眼に急性発作が起こる可能性が高い。

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要約 目的:白内障手術中の駆逐性出血に待機硝子体手術を行った症例の報告。症例:82歳男性が白内障手術の合併症で受診した。3年前に左眼の白内障手術が他院で行われ,1.0の視力が得られた。1日前に右眼の水晶体乳化吸引術中に後囊が破損し,囊外摘出術が行われた。脱出硝子体を切除し,眼内レンズを挿入した。その翌日に前房出血と硝子体出血があり,当科に紹介された。所見と経過:右眼視力は光覚弁,眼圧は15mmHgで,網膜全剝離と脈絡膜出血があった。16日後に硝子体手術,輪状締結術,シリコーンオイル置換術を行い,網膜は復位した。眼圧上昇と網膜再剝離に対し2回の硝子体手術を行った。発症から17か月後の現在,網膜は復位し0.09の視力を得ている。結論:駆逐性出血に対し溶血期になってから硝子体手術を行い,積極的な排血と網膜復位術で視機能を温存できた。

べらどんな

魚の調節
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 魚は水の中で遠近視の調節をしているという。ただし硬骨魚だけで,サメのような軟骨魚は別である。

 魚には毛様体がないので,ヒトとは違った方法で調節が行われる。乳頭から網膜の表面に沿って皺がある。脈絡膜由来で血管が豊富にあり,その先端が水晶体に付着している。これにある平滑筋が収縮すると水晶体が後方に移動する。この皺はいわばmusculus retractor lentisの役割を演じていることになる。

近視の原因
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 たまたま深夜テレビで中国のニュースがあり,四川省の大地震で活躍した団体を表彰していた。代表者が北京に呼ばれ,日本なら政府に相当する中央委員会のメンバーから表彰状を渡される。ここでちょっとした発見をした。

 国家主席や首相など約10人のうち8人が眼鏡をしている。だれもが黒い縁の近視めがねである。ほとんどが-3D前後と鑑定した。

今月の表紙

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 症例は33歳,女性。以前から左眼のアトピー性白内障を指摘され近医で経過観察していたが,進行してきたため加療目的で当院当科を紹介された。矯正視力は(0.6)であり,前囊下ならびに後囊下白内障を認めており,超音波乳化吸引術および眼内レンズ挿入術を施行した。眼底に異常所見はみられず,また年齢も若く近見時に眼鏡は装用したくないということから,患者と十分に相談したうえで多焦点眼内レンズを選択し,正視ねらいで挿入した。術後は裸眼で遠方1.0,近方0.9と,遠近ともに良好な視力が得られている。

 撮影には,TOPCON社製SL-D7(Nikon D300搭載)を使用した。撮影光路がプリズムヘッドでケラレないように注意しながら,被検眼のほぼ正面から拡散照明し,眼内レンズが鏡面反射を起こす位置に被検眼を固視誘導して,同心円状の多焦点眼内レンズのデザインがわかるように撮影した。

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 本書は,著者が長年たずさわってこられた角膜疾患診療について症例を中心にまとめられており,一般臨床医にもわかりやすい内容となっている。

 著者は生化学者としてそのキャリアを始められ,その後研究の素材としての眼球に魅せられて眼科臨床へと歩んでこられた方で,われわれ一般の眼科医とは違う異色の経歴を持っておられる。基礎研究者としての確固たる地盤をもとにして,著者が角膜研究の世界のトップを走ってこられたことは,読者の皆さんもよくご存知であろう。ただ,基礎研究者は物事の本質を究めようとするあまり,常に原理から入ろうとする性癖があり,実地臨床からは少しかけ離れてしまう危険性がある。

やさしい目で きびしい目で・129

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 私は幼少時から,近所の祖母の診察室をのぞきに行くのが大好きで楽しみでした。お医者さまは神様のようで,掌(て)を合わせ,「先生さん,ありがとさん」と腰を屈める患者を前にした,祖母の自然に湧き出る慈悲と情と熱い心の目は,救世主のように思えました。その姿はいまだ脳裏から離れることはありません。

 今,こうして自分も眼科医となり,患者さんに「来てよかった」と思っていただけるように,限られた短い診察時間のなかで日々努力しています。そして,思い描いた青写真は現実の風景になり,「先生ありがとうございました」と深々と腰を屈められると,「ああ,眼科医になってよかったな」と自己満足の中にもうれしい瞬間を味わい,同時にとても爽快な気持ちと,このすばらしい時間を持たせてもらっている家族に感謝の念を抱きます。

ことば・ことば・ことば

蠅の網膜変性
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 遺伝学でもっとも有名な植物はエンドウマメ,動物はショウジョウバエです。

 エンドウマメはもちろんメンデル(Gregor Johann Mendel, 1822-1884)のお蔭です。1866年に書かれた論文が1900年に再発見され,二十世紀になってから遺伝学が大発展するきっかけになりました。

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あとがき 根木 昭
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 今年度の日本臨床眼科学会は神戸大学眼科学教室と兵庫県眼科医会の共催で開催させていただくことになりました。期間は11月11日から4日間で,会場はポートピアホテル,神戸国際会議場,神戸国際展示場です。

 今回のテーマは“無限の未来へ”としました。眼科診療の進歩は目覚ましいものがあります。白内障手術や硝子体手術は,先人の発案を基に多くの術者,技術者による改良が加えられ,精緻で洗練された手技に進化しました。一方で加齢黄斑変性にみられるように,基礎的な研究から合理的な治療薬が開発され,治療方針や診療形態が一変することも経験しました。光干渉断層計などの検査機器も診断と病態解明に大きな革新をもたらしました。iPS細胞の発明により,再生医療という夢の治療も現実味を帯びてきました。このような新時代への胎動が感じられる時期にふさわしいテーマとしてこの言葉を選びました。ロゴもこのテーマに沿ってウロボロスを基にデザインしました。ヘビは脱皮を繰り返し成長することから再生,不老不死の象徴とされています。ヘビが自分の尾をくわえたものをウロボロスと呼び,始めも終わりもない永遠を意味するそうですが,これを2つ並べて無限を表すようになったといわれます。神戸の龍踊のイメージを取り入れ,無限の未来を見つめる意味を込めました。

基本情報

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臨床眼科
64巻9号 (2010年9月)
電子版ISSN:1882-1308 印刷版ISSN:0370-5579 医学書院

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