medicina 53巻11号 (2016年10月)

特集 主治医として診る高血圧診療

下澤 達雄
  • 文献概要を表示

 『高血圧治療ガイドライン2014(JSH2014)』には高血圧患者の治療において何が必要かがエビデンスに基づいて書かれています.すなわち,初診時にどのような問診,診察,検査を行い,二次性高血圧,白衣性高血圧の診断のために何が必要かが詳細に記載されています.また,リスクの評価方法,リスク・合併症に応じた降圧目標,治療薬の選択についての記載もあります.これらを利用することで,高血圧患者を診る際の最初の数カ月についてはガイドラインに則った診断,治療を行うことができます.

 しかし,高血圧の成因は複雑多岐にわたり,患者の病態生理は常に変化します.高血圧患者の診療とは,患者を年余にわたり経過を観察し,心血管イベントを予防することが重要です.しかしながら,どのような経過観察を行い,病態生理を明らかにし,最適な治療を行うべきかについてはガイドラインには記載されておりません.また,どのような身体所見をとるべきか,どのような検査をどのような頻度で行うことが有用か,といった基本的な事項についても十分なエビデンスがあるとは言えません.それゆえ,外来診療の経時的観察について詳細をガイドラインに記載することは難しいのが現状です.

特集の理解を深めるための24題

  • 文献概要を表示

高血圧は心血管疾患の大きなリスクですが,今回は「心血管イベントを減らすためにどのような継続的努力が必要か」をテーマに,血圧を下げるためにはどのようなstrategyが有用か,また,血管機能検査などをどのように活用していくか,治療効果を高めるためにはどのようにアドヒアランスを改善できるかについてお話を伺いたいと思います.

  • 文献概要を表示

ポイント

●高血圧は日本人の死因において最も重要な危険因子であるが,有病率はいまだに高く,治療も十分でない.

●これまでの疫学調査で,年齢に関係なく血圧が低いほど循環器疾患に罹患しにくいことがわかっている.

●生活習慣(食塩摂取量,体重,食生活,飲酒,身体活動)の改善は,高血圧の予防と管理において重要な役割を果たす.

  • 文献概要を表示

ポイント

●二次性高血圧や高血圧性臓器障害を示唆する所見はないかを考えながら,問診や診察を行う.

●一般検査以外の特殊検査として,個人の心血管リスクの総合評価と二次性高血圧の診断につながる検査を検討する場合は,費用対効果を考慮して行う.

●臓器障害評価の特殊検査として,心エコー,頸動脈エコー,頭部MRI検査などがあり,各臓器において推奨される検査を適宜行う.

  • 文献概要を表示

ポイント

●わが国の高血圧者数は4,300万人と推定され,高血圧治療ガイドライン(JSH2014)は標準的で効率的な高血圧管理のための有力なツールである.

●欧米とは異なり,JSH2014では家庭血圧測定を重視し,診察室血圧と家庭血圧の診断が異なる場合は,家庭血圧を優先する.

●JSH2014と欧米ガイドラインでは糖尿病者,CKD(蛋白尿陽性)の降圧目標に相違があるが,わが国では脳血管疾患の発症率が高いことより,厳格な降圧目標値130/80mmHg未満を採用している.

●JSH2014では積極的適応がない場合,第一選択薬はACE阻害薬またはARB,Ca拮抗薬,サイアザイド系(類似)利尿薬であり,β遮断薬は除外された.

再診診療と血圧測定

  • 文献概要を表示

ポイント

●起床時血圧は毎回確認し,仮面高血圧を見落とさないようにする.

●心電図,蛋白尿などを数回に1度は確認し,臓器障害を見落とさないようにする.

●特に心電図での左室肥大,左房負荷所見は心房細動発症の予知に有用である.

●心房細動時には,自動血圧計では血圧測定しにくいことをあらかじめ患者に伝え,心房細動など不整脈時の血圧測定には触診も併用する.

●抗凝固療法を要する心房細動では,より厳格な降圧調節が必要である.

  • 文献概要を表示

 高血圧患者数は4,000万人を数え,脳血管障害,高血圧性心疾患,腎硬化症などの合併症による致死的疾患において,その90%は本態性高血圧でいまだに成因不明であり,成因の分子生物学的探求や新規降圧薬の開発には高血圧モデル動物が必須である.以下に代表的なものについて紹介する.

家庭血圧データの利用方法 竜崎 崇和
  • 文献概要を表示

ポイント

●家庭血圧(特に夜間血圧)は,診察室血圧よりも心・血管系合併症や予後との相関性が高い.

●1カ月の血圧と脈拍を患者に一覧表でまとめてもらい,その月の絶対値を知ろう.

●患者から提出してもらった血圧表から季節変動を予測する.

●1カ月間の朝の収縮期血圧の最大値と最小値の差が5mmHg大きくなると,標準偏差は約1mmHg大きくなる.

  • 文献概要を表示

ポイント

●ABPMの最も良い適応は,白衣高血圧や血圧の変動が大きい例など,どう評価・治療をすればよいか判断がつかない高血圧の評価である.

●白衣高血圧は一般に無害であるが,長期的には有害であり定期的な再評価が必要である.

●外来血圧と家庭血圧の差が常に大きい症例では,ABPMで定期的にフォローする.

●降圧薬投与のタイミングもABPMをフォローすることにより明確になる.

  • 文献概要を表示

 時計生物学とは継時的に変化する生体リズムを研究する学問で,体内時計の乱れが健康に影響を及ぼすことから,医学分野に取り入れて病気の予防や治療に応用しようとする取り組みがなされている.体内時計とは,時計遺伝子群の転写活性がフィードバックループ機構を介した分子メカニズムによって,約24時間周期の変動で生み出される恒常環境下での概日リズムのことである.この概日リズムは生命活動を維持するための適応機構であり,血圧・心拍数・睡眠・覚醒・体温・摂食行動・ホルモン分泌などさまざまな循環動態や代謝機能において認められる.

 現代社会はシフトワーク,夜更かし,光環境の変化など概日リズムを攪乱させやすい環境にあるため,そのなかでの生活リズムの乱れが高血圧症の発症や進展の要因となっている可能性も懸念される.また,生体機能の概日リズムを考慮した時間薬物治療(chemotherapy)の有効性が示されており,血圧に対しても日内変動を踏まえた時間降圧療法として応用されている.例えば脳・心血管イベントの起きやすい早朝高血圧に対しては朝1回服用から夜〜就寝前服用へと服用方法を変更して血圧変動を是正することでイベントの抑制効果が期待される.

血液,尿検査はどれくらいの頻度で何を診るべきか

代謝異常合併症例 遠藤 翔 , 宮下 和季
  • 文献概要を表示

ポイント

●血糖コントロールの管理目標は,患者個々の病態・治療状況を考慮して,日本糖尿病学会のガイドラインに基づき,HbA1c値を用いて定める.

●脂質管理は,患者のリスクに応じて,日本動脈硬化学会のガイドラインに基づき,LDL-Cの目標値を設定する.

●尿アルブミンは,高血圧のみならず糖尿病性腎症早期発見マーカーとして有用である.

CKD患者 吉賀 正亨 , 中野 麗香
  • 文献概要を表示

ポイント

●CKDは各種検査において腎障害が明らかで,糸球体濾過量(GFR)の低下で定義される.

●蛋白尿の存在が診断,病期分類のうえで重要である.

●糸球体濾過量はクレアチニンまたはシスタチンCを用いた推算糸球体濾過量(eGFR)が有用である.

脳梗塞既往患者 長谷川 浩
  • 文献概要を表示

ポイント

●脳梗塞既往患者は高血圧,糖尿病,脂質異常症などの生活習慣病を合併していることが多い.

●血液,尿検査の頻度は上記の疾患のコントロールに基づき決まっていくことになる.

●判断の参考とすべき診療ガイドラインは多岐にわたり,どのような病態の際にどのガイドラインに従うか判断することが非常に難しい.

  • 文献概要を表示

ポイント

●利尿薬は電解質・糖脂質代謝へ悪影響を及ぼすため,投与開始早期と定期的な血液検査を行う.

●利尿薬投与後に顕著な低K血症が認められる場合には,原発性アルドステロン症の可能性も考える.

●低K血症などの電解質異常の原因検索では,尿中電解質や動脈血液ガス分析が重要である.

●RAS阻害薬投与患者では特に腎機能障害と高K血症の発現に注意し,投与開始早期と定期的な血液検査を行う.

●降圧薬内服中の血液・尿検査所見では,降圧薬の影響を考慮する.

  • 文献概要を表示

その高血圧にレニン-アンジオテンシン系(RAS)はどのくらい関与しているか

 血圧や生活習慣病に密接に影響するRASは基礎研究より臓器障害に深く関与することが知られているが,実際の高血圧臨床において,目の前の患者にRASがどれほど関与しているかの判断は難しい.RAS阻害薬を投与し,レスポンスの早い降圧効果や臓器障害の長期的な抑制効果が認められた際にはRASの関与を実感するかもしれない.また,動脈硬化や心肥大など,高血圧性臓器障害が比較的強い患者ではRASの亢進が疑われる.さらに,微小血管の内皮細胞におけるインスリン抵抗性の存在は,内皮細胞の一酸化窒素(NO)誘導性の血管拡張機能を低下させるが,その作用にRASの活性化によるインスリン受容体のリン酸化の関与が示唆される1).インスリン抵抗性があり脈波伝播速度が高い患者ではRASが亢進している可能性が高いと考えられる.

 RAS阻害薬既服薬者では,血中RASの測定は休薬して検討することも実際には難しいことに加え,二次性高血圧症のスクリーニングを除くと本態性高血圧患者における血中RASレベルをRAS活性化の指標とするのは難しいと考えられる.

臓器障害の評価 【心血管系】

BNP,NT-proBNP 桒原 孝成 , 向山 政志
  • 文献概要を表示

ポイント

●BNP,NT-proBNPは急性期,慢性期ともに,確立された心不全診断,予後予測のマーカーである.

●BNP,NT-proBNPガイド下治療において,最適な目標値は個々に設定すべきである.

●LCZ696を含む中性エンドペプチダーゼ(NEP)阻害効果を有する薬剤投与時には,BNP値とNT-proBNP値の動きは乖離する.

  • 文献概要を表示

 高血圧患者の予後は,血圧レベルのみでなく,臓器障害や心血管疾患の有無に左右される.通常,臓器障害や心血管疾患の評価は,複数の検査により行われるが,近年,高血圧患者の心血管リスクを,包括的に評価するためのバイオマーカーの研究が展開されてきた.高血圧バイオマーカーの候補のなかには複数の循環調節ペプチドが含まれ,それらの血中濃度を測定して,心血管リスクが高い症例を同定する試みがなされている.

 アドレノメデュリン(AM)は,降圧作用や心血管保護作用を有する循環調節ペプチドであり,ヒトのAMは52個のアミノ酸より構成される(図1).AMの血中濃度は,高血圧や高血圧と関連した心血管疾患の重症度に応じて上昇し,それらの疾患患者の予後予測因子であることが判明した.すなわち,高血圧バイオマーカーとしてのAMの有用性が報告されている.AMは,前駆体ペプチド(proAM)よりプロセッシングを受けて産生され,proAMのN-末端側のペプチドmid-regional proAM(MR-proAM)は循環血液中で安定である.MR-proAMは心不全や心筋梗塞患者の優れた予後予測因子であることが報告されており,バイオマーカーとしての有用性が示唆されている.一方で筆者らは,一般住民を対象にした研究により,血中AM濃度が高血圧発症のマーカーとなる可能性を報告した.

  • 文献概要を表示

ポイント

●高血圧性臓器障害のなかで最も血圧の影響を受けるのは左室肥大である.

●心電図検査による左室肥大の検出力は,再現性・特異度は高いが,感度が低い.

●心エコーは心臓の形態や機能の評価に優れており,左室肥大の検出感度も高い.

●高血圧症による早期〜長期の合併症に対して,心電図や心エコーは重要な役割を果たす.

血管内皮機能(FMD),眼底 東 幸仁
  • 文献概要を表示

ポイント

●血管内皮機能測定は,高血圧における動脈硬化の病態評価,治療効果の評価,予後予測に有用である.

●現在,血流依存性血管拡張反応による評価(FMD)を中心に,さまざまな血管内皮機能測定法が臨床応用されている.

●眼底検査は,非侵襲的に直接血管を観察できる唯一の検査法である.

ABI,PWV/CAVI,中心血圧・AI 粟飯原 賢一
  • 文献概要を表示

ポイント

●ABIは「足関節レベルの収縮期血圧/上腕動脈の収縮期血圧」の比で表される指標であり,主として下肢の閉塞性動脈病変の検出が目的とされる.

●動脈脈動の末梢へと伝播する脈波速度がPWVであり,加齢とともに動脈中膜の弾性が失われるとPWV値は上昇する.

●中心血圧は心血管イベントリスクの予知に有用で,橈骨動脈脈波のAugmentation Index(AI)は,中心血圧の推定と動脈弾性の評価に有用である.

●非侵襲的な血管機能評価によって生活習慣病患者のリスク評価を定期的に行い,治療介入効果と予後の相関に関して検証を行う必要がある.

臓器障害の評価

脳血管障害の評価 松村 潔
  • 文献概要を表示

ポイント

●高血圧による臓器障害としての脳病変の画像評価は,一律に実施すべきものではないが,特に高齢者では機会があれば実施しておきたい.

●画像診断としては,CT,MRI,MRアンギオグラフィー(MRA),頸部血管エコーが有用であるが,目的により使い分ける必要がある.

●頭蓋外頸動脈の評価には頸部エコー検査が,頭蓋内病変の精査にはMRI,MRA検査による情報が多い.

  • 文献概要を表示

ポイント

●二次性高血圧では,血圧上昇の原因に対する特異的治療により有効な降圧が得られる場合が多い.

●二次性高血圧の可能性は,すべての高血圧患者において念頭に置くべきである.

●初診時のみならず,高血圧治療中においても二次性高血圧の有無の(再)評価が必要である.

●若年発症あるいは急激発症の高血圧,治療抵抗性高血圧では二次性高血圧を疑う.

  • 文献概要を表示

 ミネラロコルチコイド受容体(mineralocorticoid receptor:MR)は主にアルドステロンをリガンドとする核内受容体であり,腎臓や腸管などの上皮性組織におけるNa輸送を調節する一方,神経細胞,血管平滑筋細胞などの非上皮性組織にも存在することが知られている.本稿ではMRと高血圧の関係について,腎臓の遠位ネフロンで行われている調節に関する最新の知見を概説する.

  • 文献概要を表示

 代表的な遺伝子修飾の1つであるDNAメチル化は,DNA配列は変わらないがDNAの機能を変化させうる.通常,CpG(5'-シトシン-グアニン-3')配列のシトシンにメチル基が付加される(5-メチルシトシン:5mC).アルドステロン合成酵素遺伝子(CYP11B2)のプロモーター周囲にCpGが散在し,転写活性に重要である転写因子結合部位(Ad1やAd5)にもCpGが存在する.CYP11B2転写は,サイクリックAMP(cAMP),カリウム(K),アンジオテンシンⅡ(AⅡ)により活性化される.このとき,プロモーターに刺激性転写因子(Ad1にはcAMP応答性転写因子,Ad5にはK/AⅡ誘導性転写因子)が結合し,転写を活性化する(図1).

 アルドステロン産生腫瘍(APA)では,これらCpGが低メチル化状態(非メチル化状態である細胞が多い)であり,遺伝子発現が高い傾向にあった(図1).Ad1やAd5の5mCにより,前述の刺激性転写因子とプロモーターの結合が抑制され,さらに5mCと特異的に結合する抑制性蛋白MECP2(methyl CpG binding protein 2)とプロモーターの結合が促進された.また,人工的にメチル化したCYP11B2プロモーターDNAは転写活性を失った.以上より,5mCがそのプロモーター活性を抑制すると考えられた.

薬物療法

降圧薬選択の基本 相馬 友和 , 清元 秀泰
  • 文献概要を表示

ポイント

●特殊な病態,適応や禁忌がない場合,降圧薬の心血管病変抑制効果は,降圧薬の種類よりも降圧度で規定される.

●初期治療薬はCa拮抗薬,ARB,ACE阻害薬,サイアザイド系利尿薬の4種類から選択する.

●単剤治療で降圧目標を達成できることは少なく,むしろ併用療法が効果的である.

●併存疾患により積極的に使用すべき薬剤,使用すべきでない薬剤がある.

●過度のレニン-アンジオテンシン系阻害は臓器障害を進行させることがあるため,注意を要する.

  • 文献概要を表示

ポイント

●一般には緩徐な降圧が望ましいが,Ⅱ度高血圧や多重危険因子を有する高リスク症例では数週間(1〜3カ月)以内に降圧目標達成をめざす.

●高齢者,特に後期高齢者では,降圧薬は少量から投与を開始し,1〜3カ月の間隔で増量・併用し,最終的に数カ月で降圧目標を達成するように緩徐に降圧する.

●夏季に血圧が過剰に低下する症例では,降圧薬の一時減量あるいは中止を考慮してよい.その際には血圧値よりも重要臓器の虚血症状・所見の出現に留意する.

服薬アドヒアランスの評価 宮原 富士子
  • 文献概要を表示

ポイント

●患者自身の治療への積極的な参加(アドヒアランス)が治療成功の鍵である.

●アドヒアランスの評価には,医薬品の適正使用サイクルの考え方が有用である.

●おくすり手帳や血圧手帳を積極的に活用し,患者アドヒアランスの向上を図る.

●介護サービスを利用している患者においては,適切な服薬が行えるよう,ケアプランを確認する必要がある.

●かかりつけ薬剤師,健康サポート薬局という新しい制度,地域包括ケアの考え方を高血圧治療における疾病の重症化防止に活用することにより,地域全体の質の向上につながる.

生活習慣指導

減塩指導,運動療法 中村 敏子
  • 文献概要を表示

ポイント

●生活習慣の修正は,血圧管理の第1歩である.

●減塩は有効な血圧低下をもたらすが,その効果には個人差も大きい.

●減塩は,実行と継続が難しい.

●運動療法は,有酸素運動(ウォーキングなど)が推奨される.

●生活習慣の修正は,複合的に行うことが効果的である.

健診データの活用,特定健診 神保 りか
  • 文献概要を表示

ポイント

●健診は高血圧診断および生活習慣病の把握に重要な機会である.

●平成20年度より40歳以上75歳未満の者を対象に,特定健康診査(メタボ健診)・特定保健指導が行われている.

●特定保健指導は体重や血圧など生活習慣病関連データの改善に一定の効果を上げている.

●CAVI,FMDなどの血管機能評価検査が,人間ドックなどの項目に含まれることがあるが,その有用性は確立されておらず,他の検査結果なども総合的に判断し,動脈硬化の評価を行う.

ライフステージごとの診療の留意点

  • 文献概要を表示

ポイント

●中年期からの降圧治療は認知症発症を抑制するが,高齢期からの降圧治療が認知症発症,進展を抑制するかどうかは明らかではない.

●ARBは,降圧度とは独立して認知症発症を抑制する可能性がある.

●フレイルの進展予防のためには適度な降圧を心がけるべきであり,RAS阻害薬は身体機能低下を抑制する可能性がある.

●降圧治療による予後改善におけるフレイルの影響は,糖尿病の有無など対象によって変化する.

在宅診療の留意点 三寺 隆之 , 島田 潔
  • 文献概要を表示

ポイント

●在宅医療は臨床領域が確立されていないためエビデンスの集積が難しい.

●患者の大部分は複合疾患のため多剤併用となるケースが多く,有害事象の減少や服薬遵守率向上のため,適宜処方内容の見直しが求められる.

●定期的な認知機能評価を行い,患者の服薬管理能力を十分に評価する必要がある.

●多職種の連携によりアドヒアランスの向上が期待できる.

  • 文献概要を表示

 加齢とともに血圧は上昇傾向を示し,老化が高血圧の危険因子であることは広く知られた事実である.老化に伴い血管内皮機能障害や慢性炎症が生じ,血管リモデリングが進行することが高血圧の進展に重要であるが,その一連のプロセスのなかで,細胞レベルでの老化が中心的役割を担うことがわかってきた.

妊娠関連高血圧 三戸 麻子
  • 文献概要を表示

ポイント

●高血圧合併妊娠はハイリスク妊娠であり,妊娠高血圧症候群発症や早産,低出生体重児などのリスクが高い.そのため,妊娠前からの血圧管理が大切である.

●アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬,アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB),直接的レニン阻害薬(DRI)の妊娠中の使用は禁忌である.

●ACE阻害薬のエナラプリルは母乳中にほとんど分泌されないことが確認されているため,授乳期間中も使用可能である.

  • 文献概要を表示

Barker仮説(DOHAD仮説)と生活習慣病

 Barkerらは英国で生まれた2,500 g以下の低出生体重児では成人後,心血管系疾患による死亡率が高いという疫学研究結果を1986年に報告した1).また,第二次世界大戦中1945〜1946年のオランダ飢饉の際に妊婦から生まれた子の追跡調査では,成人期での肥満,インスリン分泌低下,高血圧,心疾患リスクの上昇,早期閉経,卵巣機能低下などが認められている.このように出生時体重(ひいては胎児環境)が発達後成人期の疾患リスクと関連をもつという考え方はBarker仮説,DOHAD(developmental origin of health and disease)仮説と呼ばれ,2003年にHanson MとGluckman Pらによって提唱された2)

  • 文献概要を表示

ポイント

●SPRINT試験において非糖尿病患者に対する厳格降圧は,心血管死を抑制した.

●ACCORD-BP試験における糖尿病患者への厳格降圧は,心血管死を抑制しなかった.

●Look AHEAD研究では,肥満糖尿病患者への減量・運動介入は心血管死を抑制しなかった.

●果物・野菜を多くして甘味・脂質を抑えたDASH食は有意な降圧効果を示す.

連載 Webで読影! 画像診断トレーニング・7

耳鼻咽喉科との隣接領域 石田 尚利
  • 文献概要を表示

次の3症例について,どのような病態が推定できますか? また,診断は何でしょうか?

症例1 30代男性.4日前に咽頭痛で近医を受診し,急性咽頭炎の診断で内服薬を処方された.症状は改善せず,飲み込みにくさやのどの閉塞感を自覚したため,当院を受診.診察では左口蓋扁桃の著明な腫脹を認めた.頸部CTを施行した.

症例2 50代男性.食事中に右頬部の痛みが出現し,徐々に右顎の腫れが出現.近くに耳鼻科はなく,当院内科を受診.以前も同様の症状があったが自然軽快したとのこと.ある病態の有無を確認するため,頸部CTを施行した.

症例3 20代女性.数日前から前頸部に腫れと痛みを認め,発熱も出現したため,救急外来を受診.体温38.2℃,左頸部の発赤,腫脹がある.WBC 28,500/μL,CRP 18.90mg/dL.病変の広がりを評価するため,頸部CTを施行した.

連載 診断力を上げる 循環器Physical Examinationのコツ・19

  • 文献概要を表示

症例

30代男性.会社員.

病歴 出生・発育は問題なく,体育の授業も問題なくできていた.20代半ばより,労作時倦怠感が出現し,心不全の診断で他院に入院.拡張型心筋症(DCM)と診断され,投薬が開始された.最近になり労作時の息切れが増悪し,当院へ紹介入院となった.

連載 目でみるトレーニング

連載 Inpatient Clinical Reasoning 米国Hospitalistの事件簿・3

野球とベースボール 石山 貴章
  • 文献概要を表示

「終わった終わった.今後入院加療かどうかは,家族と患者の判断次第だな…」

 患者を退院させた後,私はひとりごちた.これが決して終わりではなかったことなど,その時点では知る由もなく….

連載 あたらしいリウマチ・膠原病診療の話・15

  • 文献概要を表示

 作家の橋本治氏が,脚の痛みを主訴に某大学病院を受診されたとき,「まず『脚の痛み』ということで初診案内から整形外科の受診を指示され,下肢の点状出血を見た整形外科医から同院の血液内科を受診するように指示され,血液内科医から総合内科の受診を指示され,総合内科からリウマチ・膠原病科を受診するように指示され……ようやく血管炎(顕微鏡的多発血管炎)の診断に辿り着いた」という実体験を書いておられる*1.膠原病の診断は,「疑う」ところにまずハードルがあることを示唆するエピソードである.

  • 文献概要を表示

 「皮膚科はいろいろな皮疹をたくさん経験することが大切です」.私が学生のときに,ある皮膚科の先生に言われた言葉です.当時,皮膚科のカラーアトラスを読んで皮疹の特徴を覚えたのですが,カラーアトラスには詳細な記載がないので,また別の教科書で,その疾患の診断や治療法を勉強したものでした.皮疹の種類があまりにも多すぎて,臨床を知らない私にとっては,その疾患の頻度などもわからず,必死に覚えただけで,結局忘れてしまうことがほとんどだったと記憶しています.

 ジェネラリスト,つまり皮膚科の“非専門医”にとっての「これだけ知っておけばよい」99疾患がセレクトされていることが,本書のお薦めポイントの一つです.99疾患あれば,ジェネラリストが遭遇する日常の皮膚疾患は十分網羅されていると思います.逆に本書に掲載がなければ,専門医へコンサルトしてよいでしょう.

  • 文献概要を表示

 この本が書店に並べられて最初にタイトルを見かけた時,ある種の衝撃を受けた.というのは,タイトルは『医師の感情』であるが,副題が“「平静の心」がゆれるとき”となっていたからだ.「平静の心」とはオスラー先生が遺した有名な言葉であり,医師にとって最も重要な資質のことであったからだ.医師にとって最も重要な資質である“「平静の心」がゆれるとき”とはどういうときなのか,これは非常に重要なテーマについて取り組んだ本であると直観的にわかった.

 この本を実際に手に取ってみると訳本であった.原題は“What Doctors Feel”である.なるほど,この本はあの良書“How Doctors Think”(邦題『医者は現場でどう考えるか』,石風社,2011年)が扱っていた医師の思考プロセスの中で,特に感情について現役の医師が考察したものである.“How doctors think”は誤診の起こるメカニズムについて医師の思考プロセスにおけるバイアスの影響について詳細に解説していた.一方,この本は,無意識に起きている感情的バイアスについて著者自身が体験した生々しい実例を示しながら解説したものである.リアルストーリーであり,説得力がある.

  • 文献概要を表示

 桜が咲き始めた春の頃,本書はついに僕の手元に届いた.手に取ると同時に目に飛び込んできた「目指せ!『外来偏差値』65!!」のキャッチコピーになぜだか少し胸が躍る.100症例200問か,ならば毎日3症例6問ずつ解いて1カ月と少しで終わらせることができる.あの日,確かに僕はそう思ったんだ.

 鉛筆で解いて右上のチェックボックスに○×を付けて後で集計する.滑り出しはすこぶる好調で○が並んだ.「も,もしかして高偏差値をたたき出せるのでは!?」……傲慢な思いが脳裏をかすめる.しかし考えが甘かったことにすぐに気付く.片頭痛によるアロディニア,低髄液圧症候群の治療法,月経前症候群(PMS:premenstrual syndrome),PPI(proton pump inhibitor)以外のmicroscopic colitis……どうやら知識の整理ができていないようだ.これまでにも見逃しがあったに違いない.生命には直結しないもののQOLを下げ続け得るような疾患については,ぜひともしっかり整理しておきたいのだ.だって,よくわからずにずっと対症療法し続けるなんてとても悲しい.今日ここでしっかり勉強して,明日はきっと見逃さない.そう僕は誓った.

  • 文献概要を表示

 評者が初めて医学部生向けに臨床研究について講義した際,参考にしたのは学生時代に受けた講義であった.一方,大学院教育はまったく受けていなかったが,ありがたいことにNIH(National Institutes of Health)で臨床研究に参加して,臨床研究に必要な事項を学ぶことができた.(研究デザインをしたうえで)研究倫理委員会への申請,研究参加した患者を含む一般へのアウトリーチ活動,そして統計学の重要性といった事柄である.

 当方の大学院生には,〈患者・家族のニーズを踏まえ,日々の臨床疑問の解決と病因・病態を解明し,病因・病態に即した診断・治療・予防法の開発をめざすことが基本方針〉であり,〈臨床研究のしっかりしたお作法,すなわち研究デザインやデータ解析などを身につけることが重要〉と説明し,参考図書を紹介してきた.ところが,研究デザインやデータ解析に関する図書は,臨床的観点が乏しい,あるいは数式が多すぎて取っ付きの悪いものになりがちである.さりとて,あまりに簡略化したものは食い足りず,良い臨床研究の教科書はないものかと,探し続けていた.

--------------------

バックナンバーのご案内

購読申し込み書

次号予告

奥付

基本情報

00257699.53.11.jpg
medicina
53巻11号 (2016年10月)
電子版ISSN:1882-1189 印刷版ISSN:0025-7699 医学書院

文献閲覧数ランキング(
3月11日~3月17日
)