特集 主治医として診る高血圧診療
臓器障害の評価
関連トピックス 原発性アルドステロン症と遺伝子修飾—DNAメチル化によるアルドステロン合成酵素遺伝子の転写調節
出村 昌史
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1金沢大学医薬保健研究域医学系環境生体分子応答学
pp.1778
発行日 2016年10月10日
Published Date 2016/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402224417
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代表的な遺伝子修飾の1つであるDNAメチル化は,DNA配列は変わらないがDNAの機能を変化させうる.通常,CpG(5'-シトシン-グアニン-3')配列のシトシンにメチル基が付加される(5-メチルシトシン:5mC).アルドステロン合成酵素遺伝子(CYP11B2)のプロモーター周囲にCpGが散在し,転写活性に重要である転写因子結合部位(Ad1やAd5)にもCpGが存在する.CYP11B2転写は,サイクリックAMP(cAMP),カリウム(K),アンジオテンシンⅡ(AⅡ)により活性化される.このとき,プロモーターに刺激性転写因子(Ad1にはcAMP応答性転写因子,Ad5にはK/AⅡ誘導性転写因子)が結合し,転写を活性化する(図1).
アルドステロン産生腫瘍(APA)では,これらCpGが低メチル化状態(非メチル化状態である細胞が多い)であり,遺伝子発現が高い傾向にあった(図1).Ad1やAd5の5mCにより,前述の刺激性転写因子とプロモーターの結合が抑制され,さらに5mCと特異的に結合する抑制性蛋白MECP2(methyl CpG binding protein 2)とプロモーターの結合が促進された.また,人工的にメチル化したCYP11B2プロモーターDNAは転写活性を失った.以上より,5mCがそのプロモーター活性を抑制すると考えられた.
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