特集 主治医として診る高血圧診療
臓器障害の評価
【心血管系】
関連トピックス 高血圧バイオマーカーとしての循環調節ペプチド
加藤 丈司
1
1宮崎大学フロンティア科学実験総合センター生理活性物質探索病態解析分野
pp.1755
発行日 2016年10月10日
Published Date 2016/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402224409
- 有料閲覧
- 文献概要
- 参考文献
高血圧患者の予後は,血圧レベルのみでなく,臓器障害や心血管疾患の有無に左右される.通常,臓器障害や心血管疾患の評価は,複数の検査により行われるが,近年,高血圧患者の心血管リスクを,包括的に評価するためのバイオマーカーの研究が展開されてきた.高血圧バイオマーカーの候補のなかには複数の循環調節ペプチドが含まれ,それらの血中濃度を測定して,心血管リスクが高い症例を同定する試みがなされている.
アドレノメデュリン(AM)は,降圧作用や心血管保護作用を有する循環調節ペプチドであり,ヒトのAMは52個のアミノ酸より構成される(図1).AMの血中濃度は,高血圧や高血圧と関連した心血管疾患の重症度に応じて上昇し,それらの疾患患者の予後予測因子であることが判明した.すなわち,高血圧バイオマーカーとしてのAMの有用性が報告されている.AMは,前駆体ペプチド(proAM)よりプロセッシングを受けて産生され,proAMのN-末端側のペプチドmid-regional proAM(MR-proAM)は循環血液中で安定である.MR-proAMは心不全や心筋梗塞患者の優れた予後予測因子であることが報告されており,バイオマーカーとしての有用性が示唆されている.一方で筆者らは,一般住民を対象にした研究により,血中AM濃度が高血圧発症のマーカーとなる可能性を報告した.
Copyright © 2016, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.