medicina 53巻12号 (2016年11月)

特集 どうする? メンタルな問題—精神症状に対して内科医ができること

宮岡 等
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 一般の身体科外来受診者のなかに,メンタルな問題を有する患者は少なくない.それが主な症状や問題でなく,身体疾患に合併している場合でも,適切に対応することで心身両面の治療が円滑に進むことが多い.一方,精神疾患の経過中に身体疾患を併発した患者の治療も問題となる.救急車が搬送先探しに苦労する,限られた病院でしか治療を受けられないなど,精神疾患患者の身体合併症問題はなかなか解決の方向に進まない.

 本特集は,筆者が身体各科を有する病院(北里大学病院)と比較的規模の大きい精神科外来と病床を有する病院(北里大学東病院)に勤務し,地域連携における紹介・逆紹介に力を入れるなかで,出会うことの多い問題をそのまま取り上げた.基本は「身体科の医師がメンタルな問題に早く気づくにはどうすればよいか」「気づいたら自分で治療するか,精神科医に依頼するか」「依頼する場合どのような説明がよいか」などであるが,何人かの執筆者には特に解決の難しい問題について執筆をお願いすることになった.

特集の理解を深めるための25題

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宮岡 本日は精神症状を有する患者さんに対して,内科をはじめとした身体科の先生がどのようなことに困っているのかを中心に,臨床における問題点などを竹村先生とお話ししていきたいと思います.

 まずお尋ねしたいのですが,身体科の先生が,受診してきた患者さんにメンタルな問題を疑うのは,やはり一通り診察して,身体疾患を否定できた時でしょうか.

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ポイント

●精神症状ではストレス因を過度に重視せず,身体疾患,薬剤,精神科固有の疾患などを考慮する.

●精神症状が処方薬の副作用である可能性を考える.

●精神科への紹介後も,しばらく両科で診たほうがよい.

●生活面への指導なしに向精神薬を処方しない.

診察場面での行動や会話からメンタルな問題を考えた時

話がまとまらない 平山 貴敏 , 清水 研
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ポイント

●話がまとまらない患者に出会った場合,まずはせん妄の可能性を考える.

●背景に重篤な身体疾患がないか,十分に検索することが重要である.

●精神症状を惹起する薬剤との因果関係についても慎重にチェックする.

●身体疾患や薬剤による精神症状が除外されれば,早めに精神科へ紹介すべきである.

ぼーっとしている 親富祖 勝己
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ポイント

●精神緩慢(bradyphrenia)という精神活動の不活発な状態は,中毒性精神障害,症状性精神障害,脳器質性精神障害,機能性精神障害,心因性精神障害,知的能力を含む発達障害などを考慮すべきである.

●症状に対する感情的態度としての「苦悩感」の有無は,鑑別診断において重要である.

せん妄のようにみえる 岸 泰宏
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ポイント

●せん妄症例をみたら,発症に寄与する因子を直接原因・背景因子・促進因子に整理するのが有用である.

●せん妄の直接原因として,特に使用薬剤の評価が大切である.

●促進因子への介入はせん妄予防において重要であるが,発症後にも非薬物療法として行う必要がある.

●せん妄の薬物療法として,抗精神病薬が勧められる.

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ポイント

●問診だけで鑑別できる5つの病態を押さえる.

●治療可能な認知症(treatable dementia)を見逃さない.

●内科医に求められる認知症診療に必要な検査と治療を理解する.

●認知症に対して患者と家族の共通理解を得る.

●専門医に紹介するためのテクニックを身につける.

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ポイント

●幻覚とは,実際に存在しない対象を存在するかのように知覚するものである.

●妄想とは,病的に作られた,誤った訂正不能な確信である.

●幻覚や妄想の原因として身体疾患も少なくないので,注意が必要である.

●精神科医にコンサルトするにあたっては,身体的な精査を事前に行っておく.

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ポイント

●本人および家族から,症状・経過・病歴・生活歴・既往歴・家族歴の詳細を丹念に聴取することが必要である.

●診断に当たっては,精神疾患だけでなく身体疾患や投与されている薬剤によってもうつ状態を呈することがあるため,鑑別診断が重要である.

●内科医は自身で治療をするケースと,早急に精神科医に紹介するケースを選別することが大切である.

●うつ病と診断した場合,患者や家族にうつ病の特性や経過,治療法をきちんと説明し,患者と医師が共同作業で進めていく.

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ポイント

●自殺予防のためには,隠された自殺念慮に気づく必要がある.

●自殺念慮を尋ねる際には率直に質問し,正直な告白には感謝の意を伝える.

●自殺の是非をめぐって患者と議論するのは有害である.

●自殺念慮の背景にある現実的な困難を同定することが大切である.

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ポイント

●食事量減少・著明なやせをきたす疾患は,摂食障害(神経性やせ症)だけではない.

●精神科的疾患の場合,精神病から神経症まで病態水準には幅がある.

●摂食障害(神経性やせ症)患者は治療に対してアンビバレントであるため,治療意欲を高めることが重要である.

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ポイント

●躁状態には気分の変化と行動の変化があり,内科診療場面では後者で気づかれることが多い.

●躁状態を呈する疾患の多くは双極性障害だが,ほかのさまざまな精神疾患や身体疾患でも躁状態を呈する.

●躁状態を疑った場合はまず身体疾患を除外し,その後,速やかに専門医療機関を受診させる.

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ポイント

●医学的に説明できない身体症状を訴える精神疾患として,身体症状症,解離性障害,転換性障害などがある.

●うつ病や統合失調症の一部でも身体症状を訴えることがある.

●精神疾患の診断に,決め手となる画像検査や血液検査はない.問診によって診断する際には,身体疾患が否定されていることが大切である.

意識がない 日野 耕介
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ポイント

●意識障害と昏迷状態を鑑別する際は,脳波検査が有用である.

●昏迷状態を発端に,身体的に危機的な状態となりうる.

●昏迷状態の症例に対しては,礼節を保った態度で診療に当たる.

●本人や家族には,身体と精神の両面に対しての評価・治療が必要であることを伝える.

●ベンゾジアゼピン系薬剤を投与する場合は,昏迷状態となる直前の精神症状を確認したうえで,安全に配慮しながら投与する.

眠れない 三島 和夫
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ポイント

●「眠れない=不眠症」ではない.睡眠障害を鑑別し,原因に応じた治療を選択する.

●不眠恐怖,就床恐怖が不眠を悪化させる.悪循環を断ち切るため睡眠習慣指導を行う.

●薬物療法の基本原則は,①適正な薬剤選択と用量設定,②安全性の担保,③出口を見据えた治療ビジョンの3点である.

●常用量での睡眠薬が奏功しないときは深追いせず,専門医(睡眠医療,精神科,心療内科)に紹介する.

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ポイント

●内科受診の患者が向精神薬を服用している場合は,患者の気持ちに配慮しながら理由を尋ねる.

●各疾患のガイドラインを参考に,向精神薬の投与量や種類が適切かどうか判断する.

●複数の抗精神病薬や抗うつ薬が処方されている場合や,ベンゾジアゼピン系薬物が長期間処方されている場合は不適切な処方である可能性が高い.

●不適切な処方である可能性があれば,そのことを患者・家族および処方医に伝えて適正化を促す.

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ポイント

●コミュニケーションが成り立ちにくい場合は,まず,そのアセスメントが必要である.

●人は不安に圧倒されると,他人の話や書類の内容などが頭に入らず,混乱することがある.

●診断告知や治療方針は,患者の反応を確認しながら何度かに分けて説明したり,家族同席で実施したりする.

●精神科受診に抵抗を示す場合は無理強いせず,家族の協力を仰いだり,精神科医に相談したりしていく.

患者や家族の話からメンタルな問題を考えた時

アルコール摂取が多い 松下 幸生
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ポイント

●プライマリ・ケア医を受診する男性の8人に1人程度に,何らかのアルコール問題がある.

●アルコール問題のスクリーニングにはAUDITがよく用いられる.

●AUDITで14点以下のアルコール依存症に至らないレベルであれば,簡易な介入で効果が期待できる.

●飲酒に関する注意やアルコールの害を強調するのではなく,誉めて励ますと効果が得られやすい.

●依存症で精神科受診も拒否しているケースでは最低限の目標を「通院継続」として,紹介するタイミングを探る.

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ポイント

●違法薬物を使っている疑いの根拠を家族から聴取し,患者には責めずに確認する.

●薬物のうち,興奮系では幻覚妄想や精神運動興奮,抑制系では意識障害が問題となる.

●乱用レベルか,依存症レベルか,中毒性精神病レベルかを鑑別し,緊急度を判断する.

●精神病状態であれば精神科へつなぎ,自傷他害の恐れが切迫していれば警察に通報する.

●乱用・依存の問題が主である場合や患者が受診を拒む場合は,家族に精神保健福祉センターや保健所への相談を勧める.

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ポイント

●依存傾向の患者には受療行動に特徴がみられる.

●ベンゾジアゼピン系薬物の処方は,高力価は避け,短期間使用,頓服とする.

●「睡眠12箇条」などのような非薬物療法的指導も行う.

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ポイント

●複数の医療機関を受診する原因は,患者側と医師側両方にあり,その背景には医師や医療機関への不満・不信感が少なからず存在する.

●複数の医療機関受診を防止するには,治療初期に良好な患者-医師関係を構築することが重要であり,それにはある程度の医療面接技術が必要となる.

●薬剤の重複への対応には,ゲートキーパーとして調剤薬局薬剤師の役割が大きい.

●同時多発的で浮動性の身体愁訴を訴え続ける患者の場合,精神疾患の可能性を考慮し,専門医への紹介を検討する必要がある.

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ポイント

●ありふれた相談内容だと思っても,精神疾患が潜んでいる可能性を考慮する必要がある.ただし,身体疾患,薬剤が原因の可能性もあるため,その鑑別が求められる.

●患者や家族は羞恥心を抱きながら打ち明けていることが多いため,安易に受け流さず,困難さに共感を示したい.

●精神疾患が疑われるが精神科医療機関へつなぐことが難しい場合には,精神保健福祉センターなどの相談窓口を紹介し,解決,回復への道が確保されるようにしたい.

精神症状に対応するための知識・考え方

薬物相互作用 鈴木 映二
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ポイント

●睡眠薬,抗不安薬は代謝物の活性にも注意が必要である.

●抗うつ薬は肝代謝酵素を阻害する.

●抗精神病薬はα受容体遮断作用をもっている.

精神科治療薬の依存と副作用 仙波 純一
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ポイント

●精神科治療薬のなかで依存性をもつものは抗不安薬と睡眠薬である.

●抗不安薬,睡眠薬,抗うつ薬を突然に中止すると離脱症状や中止後症候群が出現することがあるので,これらの薬物の中止の際は,ごく緩徐な減量が必要である.

●離脱症状は患者のもともとの症状の増悪と区別しづらく,鑑別に注意が必要である.

●安易な薬物の開始や増量,多剤併用などは,中止を困難にさせる大きな要因である.

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ポイント

●精神症状出現の際には,身体疾患治療薬の副作用も鑑別に挙げることが重要である.

●治療方針の原則は原因薬剤の減量・中止だが,原疾患の治療が優先される場合は精神科に診療依頼すべきである.

●精神症状を呈する代表的な薬剤として,ステロイド,バレニクリン,インターフェロンαなどが挙げられる.

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ポイント

●新薬の有効性と安全性だけを強調する,実態と合わない精神薬理用語による分類がある.

●うつ病自然寛解率や不眠症治療薬のプラセボ効果を知らないと,薬効を過大評価してしまう.

●治験の心理検査で出た瑣末な結果を,さも重大なことのように見せかけるパンフレットがある.

●専門医レベルの知識がないと優良誤認してしまうため,多くの内科医にとって,向精神薬に関する製薬企業パンフレットは有害無益である.

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ポイント

●公認心理師法の成立により,心理士が医療現場で活躍することが期待されている.

●公認心理師法では,公認心理師は主治医の指示を受けなければならないと規定しており,医師はこの指示により心理士を活用することになる.

●主治医は医療の型である「診察・診断・治療」の全体を俯瞰する立場にある.

●心理士を活用する際にも,医師の患者に対する主体的な関心が不可欠である.

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ポイント

●「身体症状に精神的問題が関与する」という病態は,従来「心身症」と呼ばれてきた.

●「病気」や「症状」に対する「考え方」や「感じ方」は,患者個々によって,まちまちである.

●診断については,まず感覚の評価に注意し,身体所見がどの程度主訴を説明しうるかを測る.

●告知については,身体症状を否定しない,曖昧な診断名を安易に言わないといったことなどが重要である.

●身体的な問題に対し,特に侵襲的な処置をする場合には,他の身体的・精神的な可能性に言及する.

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ポイント

●精神症状と身体症状の関連を把握する.

●身体治療を拒否あるいは過剰に希求する態度の背景には,身体健康への不確実感がある.

●留意すべき身体リスクとして,心循環系リスク(心電図異常や深部血栓・肺塞栓症)や代謝障害,慢性イレウス(薬剤副作用や生活習慣の問題)などがある.

●「おくすり手帳」を活用して,処方の重複や相互作用に注意する.

●情報共有や受療支援は,多職種連携・協働を検討する.

精神科医の選び方 宮岡 等
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ポイント

●薬物療法だけでなく,生活面へのアドバイスも行っているか.

●初診時に同系統の薬剤が2剤以上処方されていないか.

●処方薬の副作用をきちんと患者に説明しているか.

●薬物相互作用の視点から,患者の服用薬に注意を払っているか.

●内科医からの問い合わせに快く対応するか.

連載 Webで読影! 画像診断トレーニング・8

確実に診断したい脳MRI 石田 尚利
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次の3症例について,どのような病態が推定できますか? また,診断は何でしょうか?

症例1 60代女性.6日前より発熱を認め,2日前より頭痛が出現した.意味不明な言動があり,家族に連れられて受診.血液検査で異常はなく,髄液検査にて細胞数2,090/μL,単核球優位(99%)であり,入院となった.頭部MRIを施行した.

症例2 50代女性.数日前より右後頸部痛を認め,内科外来を受診.痛みは拍動性で強く,めまいを伴う.意識障害はなく,麻痺は認めない.頭部CTでは明らかな異常を認めなかった.受診翌日に頭部MRIを施行した.

症例3 40代女性.半年前より時々めまいと左耳鳴を認めていたが,自然軽快するため様子をみていた.昨日より浮動性めまいと急な聞こえにくさが出現したため,救急外来を受診.頭部CTでは特に異常を認めず,頭部MRIも施行した.

連載 いま知りたい 胃炎の診かた・1【新連載】

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胃炎とは?

その原因と病態

 最近,ようやく胃炎に対する考え方が整理された.胃炎は臨床経過により急性胃炎と慢性胃炎に分けられる.一般に「胃炎」とは慢性胃炎を意味し,以前は,①胃X線や内視鏡で萎縮や過形成,あるいはびらんなどの所見から診断する形態学的胃炎,②胃痛や胃もたれなどの自覚症状から診断する症候性胃炎,③胃生検や切除胃の組織所見から診断する組織学的胃炎,さらには,診断や治療を行うための保険病名としての慢性胃炎が混同して用いられていた(図1)1)

 かつて内視鏡所見から診断する胃炎は自覚症状をきたすと考えられ,これが多くの防御因子増強薬やH2受容体拮抗薬の胃炎に対する臨床治験に進んだ.また,内視鏡的胃炎や組織学的胃炎の原因,胃痛や胃もたれなどの自覚症状が起こる原因が明らかでなかったため,胃炎に対する臨床研究は,胃炎の内視鏡分類を除き,長く停滞していた感がある.その後,non-ulcer dyspepsia[現在は機能性ディスペプシア(functional dyspepsia:FD)]の概念が確立され,その成因も解明されつつある(図2)1).さらには組織学的胃炎の主因がHelicobacter pyloriH. pylori)であることも明らかになった.また,内視鏡で診断される胃炎は,慢性的な自覚症状を引き起こすものではないことがわかり,胃炎に対する考え方は明確になった.

連載 診断力を上げる 循環器Physical Examinationのコツ・20

肺高血圧症(PH)患者の診かた 山崎 直仁
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症例

40代女性.無職.

病歴 20代で全身性エリテマトーデス(SLE)を発症し,膠原病内科でステロイド治療が開始された.30代で肺高血圧症(PH)を指摘,SLEによる肺高血圧症と診断された.免疫抑制剤により治療されたが肺高血圧は改善せず,エポプロステノール製剤の持続静注,エンドセリン受容体拮抗薬,ホスホジエステラーゼ(PDE)5阻害薬が順次追加された.最近になり労作時の呼吸困難感が増悪したために入院となった.

連載 目でみるトレーニング

連載 Inpatient Clinical Reasoning 米国Hospitalistの事件簿・4

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 連載第4回目の今回は,少し趣向を変えてみたい.実は今回のケース,私は患者に直接は関わっていない.入院数日後に報告を受け,基本的にはただアドバイスしただけである.回診で診察はしたものの,じっくりと病歴聴取などを行ったわけでは,ない.ただ,外来担当医と入院担当医のカルテ記載から,学べることが多いと感じたため,今回紹介する次第である.

 患者に関わった2人の医師が,何をどのように考えたのか,どう考えるべきだったのか,両者のカルテ記載を通してDiagnostician(診断医)としてのコメントを加えてみたい.なお,個人的な批判の意図はまったくない.この連載のベースが,そもそも私の失敗談の提示であるからして….

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睡眠時間は健康に関係する

 睡眠は,日中の活動によるエネルギー消耗や心身疲労からの回復過程を担っており,私たちが日中に最適な状態を維持するために必須の機能である.このため,睡眠の量的不足や質的低下で,脳機能や精神機能の障害,全身の臓器の機能不全,慢性的な健康の問題,死亡率の上昇などが引き起こされることがわかってきた1).睡眠時間と心身の健康や疾患との関連を疫学的に調べた研究においては,短すぎる睡眠時間(以下「短睡眠時間」と呼ぶ)と同様に長すぎる睡眠時間(以下「長睡眠時間」と呼ぶ)が心身の問題や疾患の危険因子になることが報告されている2).短睡眠時間に関しては実験的研究が行われ,生物学的機序が明らかになってきているが,長睡眠時間が健康に影響するメカニズムは明らかになっていない.

 ここでは睡眠時間と健康リスクについて最近の報告を紹介し,長睡眠時間と健康リスクについて考える.

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 『内科診断学』の第3版が出版された.第2版の第1刷から約8年後の,待ちに待った改訂である.

 この本は評者が診療している東京医科大学病院総合診療科の外来で,最も頻繁に読まれている参考資料の一つであり,その外来の一角にある本棚(200冊くらいの本が並んでいる)に置かれている旧版は,大勢の研修医やスタッフに8年間使われ続けて,文字通りぼろぼろになっている.昔話になるが,私が研修医だった頃に症候や病態から診断を考える際の参考書は,洋書の〈The Spiral Manual Series〉の『Problem-Oriented Medical Diagnosis』という小さな本だった.それを読みながら,日本の診療に沿った本が欲しいと何度も思った.

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 医師が診断に難渋するのには,いろいろな訳がある.診断に占める病歴の価値は,昔と比べてまったく低下していないが,医師は一般に聞き上手ではない.問診・病歴聴取・医療面接への経済的誘導はなく,傾聴や共感に関する教育の歴史が浅かったためでもある.

 患者も話し上手ではない.心身共に病んでいる患者の訴えは拙い.何と言っても,医療の素人である.そもそも人間は前向きに生きているのであり,後向きに病歴を振り返るのは苦手である.場合によっては,意識が障害されている.

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 病理解剖は,患者さんの生前に我々臨床医が把握しきれなかった情報を提供してくれる,つまり我々に勉強をさせてくれる大切な機会であります.しかしながら,近年は以前に比べ剖検数が減少しています.この背景には超音波,CT,MRI,核医学など画像診断法が進歩し,多くの情報を非侵襲的に得ることができるようになった医療の発展があります.以前であれば剖検をするまでわからなかった点が,今ではこれら非侵襲的画像診断法を用いることで診断できるようになっていることは少なくありません.しかしながら,これら画像診断法を用いてもわからないから仕方ない,と思いこんでいることに病理解剖は今でも大いなる示唆を与えてくれます.私の専門である心不全領域を例に挙げると,最近になって,病態に不明な点が多いとされる左室駆出率が保持された心不全(HFpEF)においてTTRアミロイドの沈着が病態に寄与している可能性が剖検結果から示されています.現代の画像診断法をもってしても組織レベルの情報は十分に得ることができておらず,剖検の重要性を改めて認識した次第です.ただし,単に剖検を行えば新しい知見が得られるのではなく,臨床医,病理医が幅広い知識をもってCPCに参加し,問題意識を共有したうえでフォーカスを絞って議論することで,はじめて病態の理解をさらに深めることができるものと思います.

 本書は日常診療で遭遇することの多い症候ごとに複数の症例を提示し“紙上CPC”を展開するユニークな構成となっています.症例毎に臨床経過,受け持ち医の立場からみた疑問点をあげ,剖検結果をもとに病理医がこれに対する回答を出し,かつその根拠が科学的に解説されています.つまり,理想的なCPCの運営例がここに示されています.また各症例に関連するself-assessment questionを設け,読者が能動的に勉強できる工夫もなされています.

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 長年にわたり,医療というものは医学だけで対処できるほど生やさしいものではない!と思ってきました.ことCOPDに関しては,その医療を総動員しても対応することが難しい,とても厄介な疾患であると感じています.ところがどっこい!医学だけでもここまでできるのだよ,と教えてくれたのは本書です.

 この本を豊かな名著ならしめているものは,著者である倉原先生の不断の努力の結晶である広い知識と,物事の本質に迫る深い洞察力,さらには患者さんを助けたいという高い志にあることは間違いありません.

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 著者の郡健二郎先生は泌尿器科学を専門とされておられ,そのご業績に対して紫綬褒章をはじめ,数々の賞を受賞されておられるが,その中に平成16年に受賞された,「尿路結石症の病態解明と予防法への応用研究」と題する論文に対する日本医師会医学賞がある.私はそのとき,日本医学会の会長として医学賞の選考に携わったが,この医学賞は日本医学会に加盟している基礎・社会・臨床の全ての分野の研究者から申請を受け,その中の3名だけに受賞が限られるので,泌尿器系の先生が受賞されるのは珍しいことであった.そのため郡先生のことは私の記憶に強く残っていた.その郡先生が上記の題で200ページ近い本をご自身で執筆されたことは私にとって大きな驚きであった.

 この本は「研究の楽しさ,美しさ」「科研費の制度を知る」「申請書の書き方」「見栄えをよくするポイント」の4章に分かれているが,特に第3章の「申請書の書き方」では実際の申請書の執筆形式に沿う形で,それぞれの項目において基本的に注意すべき点(基本編)と,実際にどのように書くか(実践編)について詳細に記載されており,科研費を申請される方にとって極めて有用かつ実用的な内容となっている.

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medicina
53巻12号 (2016年11月)
電子版ISSN:1882-1189 印刷版ISSN:0025-7699 医学書院

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