medicina 53巻10号 (2016年9月)

特集 超高齢時代の内科診療

福原 俊一
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 医療のお客様は患者である.さらに,人は必ず病気になる存在とすれば,すべての国民が医療の対象である.医療は特殊ではあるものの,サービスの一種である.顧客のニーズを無視してサービスを提供するわけにはいかない.では,現在そして近未来の医療へのニーズはいかなるものであろうか? 言い古されているようだが,それは超高齢社会という人類が未だ経験していない未曾有の状況であり,わが国が世界に先駆けてこれを迎えようとしていることから生じる新しいニーズである.どの病院の患者も大半が75歳以上であり,地域住民全体でも現在15%で,この割合は確実に,そして急速に増えていく.

 ニーズの変化は新しいゴールを必要とする.これまでの医療のゴールは「病気をいち早く発見し,これを根治する」という単純なものであった.しかし,超高齢患者の医療のゴールはより複雑である.誰もが人並みの寿命を全うしたいと願っているが,それ以上となると,長生きするよりも認知症や寝たきりにならないことにより高い優先順位を置く患者のほうが多いかもしれない.一言で言えば,「長寿よりもQOL」に価値を置く患者が増えていると言えよう.

特集の理解を深めるための23題

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福原 内科医が扱う患者の半数以上が超高齢者の時代になりました.病院には車いすがあふれている状況です.本日の座談会では,この時代に,内科医および内科診療はどうあるべきかということを話し合えればと思います.

総論

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ポイント

●急速な高齢化・少子化・経済的苦境の時代に突入している.

●高齢者にとって,切実なアウトカムは延命とは限らない.

●疾患の治療だけでなく,身体・認知機能への配慮も重要である.

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ポイント

●高齢者の診療では,総合的に病歴を捉えて,ときには狭義の医学の枠を超えて情報収集する必要がある.

●診療の大枠を考えるために「臨床倫理四分割表」が有用である.

●高齢者の身体,精神,心理機能,社会的側面などを総合的に評価するためのツールとしてCGAが有用である.

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ポイント

●体温が37.5℃を超えていなくても,炎症病態が存在することがある.

●脈拍を診るときに脈のトーンを意識して評価する.大動脈弁閉鎖不全症,収縮期高血圧の存在を疑うことができる.

●心臓の聴診では心音と心雑音を別々に評価する.心雑音に気を取られて,心音の評価を忘れないこと.

●腹部大動脈の拍動を臍部よりも右側に触れたら大動脈瘤の可能性がある.

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ポイント

●貧血の原因は複数の場合がある.

●血清アルブミン値低下は陰性急性期反応であることが多い.

●感染症を疑うときには培養だけでなく塗抹検査も行う.

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ポイント

●超高齢者はmultimorbidity/comorbidity傾向にあり,ポリファーマシーに陥りやすい!

●implicit criteria(暗示的な基準)とexplicit criteria(明示的な基準)を処方整理に活かそう!

●超高齢者への処方では,余命を考慮した処方を考える必要がある─治療的か予防的か,それが問題だ.

●超高齢者診療でも,医学的適応の熟考および価値観の多様性に対する理解は大切である!

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ポイント

●若壮年者同様に高齢者においても血圧上昇は心血管リスクであり,血圧を低下させることでそのリスクは低下する.

●JSH2014では,75歳以上の高齢者の降圧目標を150/90mmHg未満(忍容性があれば積極的に140/90mmHg未満)と設定している.

●80歳以上の超高齢者に対する降圧治療では,主要臓器の静脈還流障害を防ぐことが重要であり,過剰降圧を避けなければならない.

●超高齢者の高血圧治療では,詳細な病態と合併症の把握を怠ってはならず,低血圧や急性腎障害に配慮した段階的な降圧が重要である.

●生活背景までも考慮した「個別医療」が重要である.

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ポイント

●CHADS2スコアの因子のなかで,年齢(75歳以上)が最も高い血栓症発症リスクである.

●腎機能の高度に悪化した例を除いて,高齢心房細動患者ではワルファリンよりも直接作用型経口抗凝固薬のほうが血栓症予防に適している.

●高齢心房細動患者においても,ガイドラインに沿った抗凝固治療を行うことが予後の改善につながる.

●左心耳閉鎖デバイスなどの非薬物的抗血栓治療は,抗凝固薬の内服継続が困難な高齢心房細動患者において効果が期待されている.

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ポイント

●高齢化に伴い,高齢心筋梗塞患者に対する適切な対応が求められるが,現時点では主に観察研究の結果から,高齢者であっても血行再建術が有用と考えられている.

●80歳以上の心筋梗塞患者を対象としたランダム化比較試験は少ないが,2016年にAfter Eighty試験が発表された.血行再建術施行群で複合エンドポイントの低下を認めたが,総死亡率は改善しなかった.

●After Eighty試験では登録を検討された患者の1/4が,“short life expectancy”のため除外されている.

●「余命が限られている」と予測された根拠は記載されていないが,患者の「フレイル」が考慮されたものと考えられる.

●高齢患者の治療法を決定する際には,「フレイル」も含め患者の多様性を可能な限り把握し,それぞれの症例に最も適した治療法を選択する必要があると考える.

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ポイント

●今後増加が見込まれる高齢心不全患者の特徴として,左心室機能の保たれた心不全が多いこと,併存疾患が多いこと,心不全治療薬の処方率が低いことなどが挙げられる.

●診断・治療は日本循環器学会の現行の心不全治療ガイドラインに則って行う.

●大動脈弁狭窄症は高齢者に多く,エビデンスが確立されつつある有効な治療法としてTAVIがある.

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ポイント

●スクリーニングの真のアウトカムは対象者の予後である.

●低リスク群,高リスク群に分けた検診戦略が重要である.

●特に本邦でのさらなる研究が待たれる.

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ポイント

●NICE Studyによると,本邦におけるCOPDの潜在的な有病率は約500万人以上である.

●長期にわたる喫煙がある場合や咳嗽,喀痰,労作時呼吸困難が慢性的に認められる場合にはCOPDを疑う.

●気管支拡張薬により,中等度以上のCOPDに対してQOLの改善,急性増悪の抑制,呼吸機能の改善が得られる.

●呼吸機能やQOLの改善,急性増悪や死亡の抑制に対するCOPDスクリーニングの有効性については現段階では不明である.

●喫煙はCOPDの最大のリスクであるため,禁煙が重要である.

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ポイント

●誤嚥性肺炎の予防・治療は,地域や各施設の実情に合わせて多職種で関わることが望ましい.

●誤嚥性肺炎の治療は,急性期病院に限らず,本人や家族の状況に合わせて訪問診療や介護施設で行うこともある.

●経口摂取ができなくなった場合,患者本人や家族の希望,患者の状態・予後などを考慮し,人工的水分・栄養補給法(AHN)の導入について検討する.AHNを導入しない場合は,終末期の緩和ケアについて,どこで,誰が行うのかについて話し合う.

●誤嚥性肺炎の入院や抗菌薬治療は,延命効果と急性期の症状緩和効果はあるものの,長期のQOLを悪化させる恐れもある.治療やケアの方針を決める際は患者・家族と話し合い,納得のいく合意形成を目指す.

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ポイント

●肺がん治療における薬物療法は飛躍的進歩を遂げ,高齢者に対しても分子標的治療薬と免疫チェックポイント阻害薬が標準化されつつある.

●これら新規薬剤は高額であり,高騰する医療費が社会問題化している.

●抗がん剤の適正使用とともに,費用対効果の観点も取り入れていく必要がある.

消化器

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ポイント

●消化器がん検診は胃がん,大腸がん検診について有効性のエビデンスがあり,利益が期待できるが,高齢者では,

 ・早期発見のメリットは壮年期と比べて低く,年齢とともに低下していく.

 ・スクリーニング,精検ともに偶発症のリスクが高い.

 ・受診率が高い一方,偽陽性率が高く,精検受診率が低い.

 ・個人差が大きく,一律な対象となりにくい.

人工的水分・栄養補給とPEG 伊藤 明彦
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ポイント

●人工的水分・栄養補給法(AHN)とは,経口による自然な摂取以外で水分や栄養を補給する方法の総称である.

●経口摂取量が減っている高齢者を診療する場合,医学的観点と倫理的観点の両面からAHNの適応を判断する.

●AHNの投与経路を選択するときの大原則は「腸が機能している場合は腸を使う」であり,最も優れた方法がPEGである.

●加齢に伴って誤嚥性肺炎を繰り返す場合や,食事自体を認識できない末期の認知症患者,まったく意思疎通ができない寝たきりの患者に対して,PEGは終末期の延命治療ではないかとの指摘がある.

C型肝炎の治療 柴田 実
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ポイント

●近年,直接型抗ウイルス薬(DAA)が開発され,C型肝炎の95〜100%が治癒するようになった.

●DAAは副作用が少ないため,インターフェロンの適応外であった高齢者も治療適応となった.

●認知症がなく元気なお年寄りであれば,DAAでC型肝炎治療を行える.

●高齢者にDAAを投与する際は心機能,腎機能,併用禁忌薬,併用注意薬に注意する.

感染症

高齢者の感染症診断のこつ 杤谷 健太郎
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ポイント

●高齢者では急性の意識障害の原因が感染症であることが多い.

●高齢者は体温が上がりにくいため,37℃台の微熱,あるいは平熱でも感染症を念頭に置く.

●肺炎,尿路感染は頻度が高いため,常に鑑別上位に考える.

●尿路感染と診断する際は,本当にほかの診断でないか懐疑的になるべきである.

侮れない高齢者の風邪 山本 舜悟
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ポイント

●高齢者は風邪をひく頻度が低い.高齢者が「風邪をひいた」と言って来院したら,「それは本当に風邪なのか?」という目で診る.

●高齢者がウイルス性気道感染症にかかると,若年者に比べて重症になりやすく回復も遅れやすい.

●基本的に高齢者には,NSAIDsと抗ヒスタミン薬を処方しないようにする.

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ポイント

●局所のみならず常に全身像を捉え,各臓器別システムの総合内科的問題を早期に認識する.

●高齢者の感染症診療において,レジオネラ肺炎やリステリア髄膜炎は最終的に除外されるまで鑑別から外さないようにする.

●介入として予防が重要であり,感染症リスクの高い環境では環境培養を行ったり,感染症が疑われる患者に対して早期の治療を検討する.

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ポイント

●高齢者を対象とした肺炎球菌ワクチンには23価肺炎球菌莢膜ポリサッカライドワクチン(PPSV23)と13価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV13)の2種類があり,侵襲性肺炎球菌感染症(IPD)の予防に重要である.

●PPSV23は対象年齢が限定された定期接種であり,PCV13は任意接種のみである.IPDの高リスク者には任意接種であっても接種を検討する.

●高齢者に対するインフルエンザワクチンは,毎年の接種が推奨される.

●1967年以前に出生した者は破傷風トキソイドの定期接種歴がない.破傷風の予防には3回接種による基礎免疫の獲得,また10年ごとの追加接種が必要である.

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ポイント

●DPP-4阻害薬は腎機能低下例にも比較的安全に投与可能であり,消化器系副作用や体重への影響が少なく,単独投与では低血糖リスクが低いことが特徴である.

●DPP-4阻害薬に関する臨床研究では,心血管疾患や老年症候群を予防するというエビデンスはまだ不十分であり,大規模臨床試験などのさらなるデータの集積が待たれる.

●DPP-4阻害薬は,SU薬やインスリン併用時の低血糖が大血管障害発症に関与している可能性は否定できないが,単独投与では低血糖を起こしにくいため,むしろ初期治療には安全であり,今後は高齢者糖尿病治療の第一選択になりうると考えられる.

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ポイント

●糖尿病は成年期〜高齢期を通して認知症のリスクである.

●糖尿病では認知症がなくても認知機能が少し低下する.食事の準備,内服管理などのIADLの支障をきたし,セルフケアの障害につながる.

●慢性高血糖では認知症・認知障害のリスクが高まる.

●血糖管理を正常化するトライアルでは,認知機能改善効果は認められなかった.一方,重症低血糖は認知症のリスクである.また認知症では,低血糖のリスクが増加する.

●成年期から認知症の予防を考えた糖尿病治療を行う.高齢者糖尿病では,低血糖に十分な配慮を行い,高血糖を是正すべきである.

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ポイント

●メトホルミンの使用は心血管疾患,サルコペニア,フレイル,死亡を減らす報告がある.

●メトホルミンの使用はSU薬やインスリンの減量により,低血糖のリスクを減らすことができる.

●メトホルミンは腎機能,消化器症状,水分摂取,体重などをモニターして慎重に使用し,体調不良の場合は中止する.

●高齢者に対しては,定期的に腎機能をeGFRで評価してメトホルミンを使用し,eGFR<30 mL/分/1.73 m2であれば禁忌である.

●高齢者へのメトホルミン使用は腎機能の正確な評価とシックデイ対策が十分になされるならば可能であり,さまざまな利益をもたらすこと期待される.

新しいトピックス

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ポイント

●超高齢社会においては,将来の要介護状態などの有害事象と関連するフレイルを早期に発見・予防することが重要である.

●フレイルの定義はさまざまだが,国内ではJ-CHS基準などが頻用されている.

●フレイルの進行をいかに予防するか,そしてAdvance Care Planningについても患者とともに考えていく必要がある.

Choosing Wiselyとは? 林 恒存
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ポイント

●Choosing Wiselyとは,米国で始まった医療行為の無駄や害について医師と患者での対話を促進し,患者が良質で安全なケアを選択することを目指す世界的なキャンペーンである.

●各医学専門学会がエビデンスに基づいて,それぞれの分野における見直すべき診療行為の推奨リストを発表している.

●患者ごとのケアに選択の幅のある高齢者診療においては特に有意義な概念であり,さらなる日本でのキャンペーンの拡大が望まれる.

高齢者のがん診療の質 東 尚弘
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ポイント

●高齢者の医療は個別性が高いが,活用可能なデータを用いて冷静に考えていくことが必要である.

●NCCNのガイドラインは高齢者のがん診療を考えるうえで有用であるが,診療の評価に活用するためにはさらに工夫が必要であろう.

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ポイント

●Advance Care Planning(ACP)は,終末期患者の医療の質を向上させ,家族のストレスを軽減する.

●終末期医療への関心の高まりとともに,1990年代から米国で発展してきたACPの概念を受け入れる土壌が日本にもできつつある.

●医療者は,終末期を見据えたときの患者のQOLを考慮に入れて,患者本人と家族のディスカッションを上手にファシリテートすることが重要である.

●本稿ではACPの日本語訳として,「先を見据えた終末期ケア意思共有」を提案したい.

連載 Webで読影! 画像診断トレーニング・6

診断に寄与する溝と左右差 石田 尚利
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次の3症例について,どのような病態が推定できますか? また,診断は何でしょうか?

症例1 80代男性.内科の定期受診で来院時に意識消失し転倒.目撃者によると左側頭部を床に強打した模様.転倒後は意識レベルJCS Ⅰ-2,血圧133/94mmHg,脈拍54回/分.頭蓋内精査のため頭部CTを施行した.

症例2 90代女性.1カ月前より歩行がしづらく,徐々に立ち上がりと左半身の動きが緩慢になり,在宅医から紹介受診.下肢優位の左片麻痺を認めるが,Babinski反射は両側で陰性.過去に脳腫瘍を指摘されたことがある.頭部CTを施行した.

症例3 60代男性.朝から傾眠傾向で問いかけに対して反応が悪く,昼過ぎに右半身の麻痺に気づいた家人が救急要請.来院時,意識レベルはJCS Ⅰ-1,右半身の完全麻痺を認めたため,頭部CTを施行した(発症からおよそ3時間).

連載 あたらしいリウマチ・膠原病診療の話・14

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1.痛みを因数分解しよう!

 問診票の主訴の欄(今日はどのようなことにお困りでご来院ですか?)に「全身が痛い」と書いてあった場合,あなたはどのように感じるだろうか.主訴から鑑別診断が挙がらず,その後の問診・身体診察の流れをイメージしづらい場合,内科医は問診票の記載に“不安を掻き立てられる”(少なくとも筆者の場合)ように思うので,以下のように簡略化したい.

 全身の痛み=若者はパルボかDGI,高齢者はPMRか菌血症(occult bacteremia)

 「パルボ」はパルボウイルスB19感染症,「DGI」は播種性淋菌感染症(disseminated gonococcus infection),そして「PMR」はリウマチ性多発筋痛症(polymyalgia rheumatica)を指す.

連載 診断力を上げる 循環器Physical Examinationのコツ・18

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症例

30代男性.農業に従事.

病歴 肥大型心筋症(HCM)の診断にて当院フォロー中.これまでに失神の既往なし.今回仕事中に突然collapseし,その場に居合わせた人によりbystander CPRが開始された.15分後に救急隊が到着した時には心室細動(Vf)であり,除細動により自己心拍が再開した.当院へ緊急搬送され入院となった.

連載 目でみるトレーニング

連載 Inpatient Clinical Reasoning 米国Hospitalistの事件簿・2

Learn From Sherlock Holmes 石山 貴章
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 「これも陰性,あれも陰性.また陰性か.出す検査出す検査,すべて陰性で返ってくる….じゃあ,一体何なんだ…」

 モニター上の検査結果を見つめ,思考が止まりつつある自分を,私は自覚していた.さあ,どうする…?

RECOMMENDATION

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はじめに

 糖尿病診療の目標は,患者の生活の質と寿命を護ることにあります.ですから,血糖値やHbA1cといった目の前の数値を下げることだけに固執せず,患者の未来の幸せを考え,人生設計を立ててともに歩んでいくことが血糖コントロールの醍醐味と考えます.また,近年糖尿病の合併症は多種多様化し,網膜症,腎症,神経障害といった細小血管合併症のみならず,心血管イベント,認知症,がんといった新たな合併症にも留意した血糖管理が求められています.

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 「医学」を意味する“Medicine”には,「内科」という意味もあります.将来専攻する基本領域にかかわらず,すべての医師には,“Medical Diagnosis”すなわち「内科診断学」の学習が勧められます.医学生や初期研修医にとっては,内科診断学は医療面接や診察法を行う基礎となる学問であり,各論的な症候学と合わせて,最も重要な臨床医学の学ぶべき領域となります.

 さらには,新しい内科専門研修を専攻する医師には,将来のサブスペシャリティー診療科の種類にかかわらず,総合(一般)内科的な知識の習得と経験が求められており,内科診断学は研修目標のコアとなるでしょう.また,総合診療専門研修を専攻する医師にとっても,病院総合や家庭医療のいずれを選択するにせよ,多くの内科系疾患の初期診断過程にかかわることから,内科診断学を学ぶことが必須です.

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 内科系外来診療の場面において,糖尿病は最も頻度の高い慢性疾患の一つであり,治療によって予後を大幅に変えることが可能な疾患としても特別重要な位置にあると言える.家庭医療の世界では“糖尿病は慢性疾患ケア支援に関する全てがあり,慢性疾患を学ぶには糖尿病を学べ”と言われるほどである.そして,現代日本は超高齢社会となり,糖尿病に加えて多数の併存疾患をもつ高齢患者も多く,治療はより複雑になる傾向がある.したがって,糖尿病専門医だけで日本の糖尿病患者をカバーするのは不可能であり,慢性疾患に取り組むあらゆる医師,特に家庭医の糖尿病診療の質の向上が必須である.

 そして,多面的アプローチを必要とする糖尿病診療では,患者-医師関係の中だけで診療が完結するのはもはや困難であり,看護師や管理栄養士,各種セラピストなどによるチーム医療,専門職連携実践(interprofessional work:IPW)が必要である.

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 『戦略としての医療面接術』のタイトル通り,医療面接の著作です.しかしながら,従来の「医療面接」をテーマに扱った書籍とは異なり,著者自身の実際の経験に基づき深く洞察されており,通読してなるほど,そういう切り口もあったか,と深く感心しました.われわれが普段の臨床で応対する「患者・その家族」─その個性や社会環境などの背景要素の多様性に注目しています.

 「うまくいかない医療面接」を経験した際,医師としては,「あの患者・患者家族は変だから…」と自分を含め他の医療スタッフに説明付けようとしがちですが,うまくいかなかった医療面接は,われわれが医療面接上必ず確認しておかなければならなかった手順や態度を怠ったことが原因であったかもしれない.この著作はそれを実臨床で陥りがちな,さまざまなシチュエーションを提示することで,抽象論に終始することなく具体的に提示してくれています.通読後,今まで自分が経験してきた医療面接の失敗例を思い返しても,本書にて指摘されている「やってはいけないこと」がいくつも当てはまり,内省した次第です.

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基本情報

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medicina
53巻10号 (2016年9月)
電子版ISSN:1882-1189 印刷版ISSN:0025-7699 医学書院

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