臨床雑誌内科 124巻4号 (2019年10月)

特集 2019年の白血病診療―新たな武器を上手に活用するために

特集のねらい

急速に変化する白血病診療 神田 善伸
  • 文献概要を表示

本特集の目的

 今回の特集は白血病である.本誌で4年前にこのテーマを取り上げた際には,次々と新薬が開発されているリンパ腫,骨髄腫領域と比較して,白血病診療の変化は華々しくはないということをEditorialで述べた.歴史的には,慢性骨髄性白血病に対するチロシンキナーゼ阻害薬(tyrosine kinase inhibitor:TKI)であるimatinibが分子標的治療薬の最初の成功者として注目を集めたのだが,その後,固形腫瘍,あるいは造血器腫瘍のなかでもリンパ腫や骨髄腫に主役の座を奪われた感があった.しかし,2018年にinotuzumab ozogamicin,blinatumonab,gilteritinib,さらに2019年にはキメラ抗原受容体T細胞が白血病の治療薬として新たに承認され,現在もいくつかの薬剤が開発中である.免疫に関連する新規治療が多いということも特徴としてあげられる.一方,サイトカイン放出症候群(cytokine release syndrome:CRS)など,これまでにみられなかった有害事象が出現すること,いずれも高額な治療薬であること,必ずしも長期的な予後の改善につながっていないことなどから,どのような患者にどの治療をどのように適用すべきかは今後の課題として残されている.

Overview

  • 文献概要を表示

Summary

▪急性骨髄性白血病では,米国において2017年から立て続けにFLT3阻害薬midostaurin/gilteritinib,IDH1/2阻害薬ivosidenib/enasidenib,リポ化製剤CPX351,SMO阻害薬glasdegib,Bcl-2阻害薬venetoclax,さらにgemtuzumab ozogamicinが承認されるにいたった.

▪本邦ではgilteritinibが2018年に発売となり,ほかの多くも現在治験が進行中である.

▪急性リンパ性白血病では,抗体薬物複合体inotuzumab ozogamicin,二重特異性T細胞誘導抗体blinatumomab,CAR-T細胞療法tisagenlecleucelが本邦で発売となった.

▪慢性骨髄性白血病では,アロステリック阻害薬ABL001(asciminib)が臨床試験にて検討されている.

▪慢性リンパ性白血病ではbenetoclax,BTK阻害薬ibrutinibが治療成績を向上させ,本邦でもibrutinibはすでに使用可能となった.

  • 文献概要を表示

Summary

▪B細胞性急性リンパ性白血病に対する抗CD19 CAR-T細胞療法の成功は,白血病に対する免疫療法の開発における大きな基盤になっている.

▪白血病は抗腫瘍エフェクターT細胞がアクセスしやすく,免疫療法の好適な対象と考えられる.

▪がん免疫療法には主としてワクチン療法,遺伝子改変T細胞療法,二重特異性抗体療法,免疫チェックポイント阻害療法がある.

▪ワクチン療法,T細胞療法,二重特異性抗体療法に免疫チェックポイント阻害療法を併用することにより,有効性の向上が期待できる.

白血病の診断

白血病の初発症状から診断へ 藤田 浩之
  • 文献概要を表示

Summary

▪白血病では,正常造血抑制により貧血症状,出血症状,感染症状が現れる.

▪急性白血病の典型例では,白血球増加・芽球出現・貧血・血小板減少がみられるが,白血球4,000/μL以下の症例は30%程度,芽球出現のない症例は5%程度にみられる.

▪急性骨髄性白血病は,急性リンパ性白血病に比べ初発時Hb値が低く,労作時息切れなどの貧血症状の訴えが多い傾向にある.

▪慢性白血病では,白血球の増加を認める.

▪明らかな出血傾向のある場合や血圧低下,意識障害を伴う発熱などバイタルサインに異常がある場合などは緊急対応が必要であり,直接血液内科医に相談することが望ましい.

▪検査結果から急性白血病を疑った場合,自覚症状に乏しく血小板数が保たれていれば,翌日もしくは数日以内に血液内科医を受診できるよう紹介する.

細胞表面マーカー解析 増田 亜希子
  • 文献概要を表示

Summary

▪フローサイトメトリー(FCM)は,白血病の診断や経過観察の際に必須の検査である.

▪骨髄系,B細胞系,T細胞系のそれぞれに特異的な抗原の発現パターンを解析することにより,急性白血病の診断・病型分類が可能である.

▪正常細胞では通常発現しない抗原の組み合わせ・パターンはaberrant expressionと呼ばれ,腫瘍性を強く示唆する所見である.微小残存病変(MRD)の評価にも活用される.

染色体検査・遺伝子検査 山口 博樹
  • 文献概要を表示

Summary

▪急性骨髄性白血病(AML)は,さまざまな染色体異常・遺伝子変異がその発症に関与していると考えられるheterogeneousな疾患である.

▪AMLにおいて,染色体異常や遺伝子変異は診断・予後予測に用いられるだけでなく,微小残存病変マーカーや新規分子標的治療薬でのコンパニオン診断薬などに臨床応用されつつある.

白血病の治療:新規治療薬の役割を含めて

急性骨髄性白血病 石川 裕一
  • 文献概要を表示

Summary

▪急性骨髄性白血病(AML)は依然として難治性悪性腫瘍の一つであり,染色体異常,遺伝子異常をはじめとする発症病態の解明が進められ,それらに基づく病型分類,予後および寛解後療法の層別化が行われてきた.

▪その一方で,急性前骨髄球性白血病以外のAMLの治療に関しては,長年にわたりアントラサイクリン系薬,cytarabineなどの従来の抗悪性腫瘍薬による治療が標準的治療とされてきた.

▪ここ数年,AMLを対象とした複数の新規治療薬が米国で登場し,わが国でもFLT3阻害薬が承認され,ようやくAMLにおける分子異常に基づく治療の臨床応用が始まった.

▪新薬によるAML全体の予後の改善が期待され,従来の治療法も含めた新たな治療戦略の確立が期待されている.

急性前骨髄球性白血病 木口 亨
  • 文献概要を表示

Summary

▪急性前骨髄球性白血病(APL)は,APL以外の急性骨髄性白血病とは生物学的に,そして臨床上きわめて異なった性質を有するのが特徴である.かつてFrench-American-British(FAB)ではAML-M3に分類されていたが,2016年WHO分類ではAPL with PML-RARAと定義されている.

▪寛解導入療法については,標準リスク群(治療前WBC 10,000/μL未満)にはtretinoin(ATRA)+亜ヒ酸(ATO)が最新の話題である.高リスク群については分化症候群(DS)のこともあり,今後の課題である.

▪地固め療法についてはATOの有用性が示されており,高リスク群(WBC>10,000/μL)にはアントラサイクリン系薬やcytarabine(Ara-C)といった抗がん薬が必要である.

▪維持療法はATRAをベースに,高リスク群にはtamibarotene(Am80)投与が有効である.一方,ATOが導入された後については,維持療法が必要か否かのエビデンスはない.

▪再発症例は,ATOを用いて分子学的寛解(CRm)が得られた場合に自家移植が推奨される.

  • 文献概要を表示

Summary

▪再発難治性のB細胞性急性リンパ性白血病(ALL)に対して,従来の多剤併用化学療法とはまったく異なった機序で作用する新規薬剤(blinatumomab,inotuzumab ozogamycin,tisagenlecleucel)が近年,相次いで本邦で保険承認された.

▪これらの新規薬剤の登場により,従来の多剤併用化学療法では十分な効果が得られなかった患者の治療成績の改善が期待されている一方で,新規薬剤に特徴的な副作用の発現に留意する必要がある.

▪本稿ではそれら新規薬剤の有効性および安全性に関する情報を概説し,同種造血幹細胞移植(Allo-HSCT)との位置づけについても考察する.

  • 文献概要を表示

Summary

▪RQ-PCR法を用いたBCR-ABL1融合遺伝子測定による微小残存病変(MRD)の評価は,治療効果判定と予後予測に重要である.

▪チロシンキナーゼ阻害薬(TKI)の登場以来,治療成績が向上している.

▪第三世代TKIであるponatinibと化学療法の併用で,早期のMRD陰性を獲得できることが報告されているが,長期投与による有害事象が懸念され,その至適投与方法の確立が必要である.

▪第一寛解期に適切なドナーが存在すれば,同種造血幹細胞移植の適応となる.

▪早期にMRD陰性をもたらした症例は,造血幹細胞移植を回避できる可能性が議論されている.

▪再発・難治症例への効果が期待される新規抗体薬の位置づけの確定には,今後のさらなるデータ集積が必要である.

慢性骨髄性白血病 木村 晋也
  • 文献概要を表示

Summary

▪ABLチロシンキナーゼ阻害薬(TKI)のimatinibによって,慢性骨髄性白血病(CML)の予後は劇的に改善された.

▪imatinib耐性や不耐容を克服するために,第二世代ABL TKIs(nilotinib,dasatinib,bosutinib)が開発された.

▪第二世代ABL TKIsもT315I変異には無効であり,T315Iにも有効な第三世代TKIの ponatinibが開発された.

▪一部の症例ではABL TKIを長期に中止でき,治癒も望めることが明らかとなった.

▪さらに多くの新規薬剤が開発中である.

  • 文献概要を表示

Summary

▪慢性リンパ性白血病の治療は,病気のマネジメントだけを目指す治療から治癒を目指す治療まで大きく変化している.

▪治療方法の選択は,患者の年齢,フィットネスとTP53の状態で決定する.

▪BTK阻害薬ibrutinibの初回治療からの使用のエビデンスが増えてきている.

▪造血幹細胞移植は,現在でも唯一の根治が目指せる治療で,再発難治で高リスク患者においては考慮される治療法である.

▪微小残存病変(MRD)陰性が治療目標とする臨床試験が実施されている.

成人T細胞白血病/リンパ腫 藤 重夫
  • 文献概要を表示

Summary

▪ATLと診断するには,T細胞リンパ腫の診断に加えてHTLV-1ウイルスのclonalityの存在を証明する必要がある.

▪ATLにはくすぶり型,慢性型,急性型,リンパ腫型の4病型があり,その病型により治療方針が決まる.

▪アグレッシブATLとされる急性型,リンパ腫型,予後不良因子を有する慢性型においては,多剤併用化学療法の後,移植適応例では同種移植をup-frontで行うことが勧められる.

▪くすぶり型および予後不良因子を有さない慢性型に関しては,現在は無治療経過観察が選択される.

▪希少疾患ではあるが現在新規治療薬の開発が進んでおり,近い将来,治療方針が変わってくる可能性がある.

▪診断時には,治験や臨床試験の有無を専門家にコンサルトすることが望ましい.

同種造血幹細胞移植 仲宗根 秀樹
  • 文献概要を表示

Summary

▪幹細胞,代替ドナー,サポーティブケアの発展により,現在では年間3,000件以上の同種造血幹細胞移植が実施されている.

▪同種免疫による抗腫瘍効果が魅力の治療であるが,一方で,急性もしくは慢性移植片対宿主病という新たな病態をつくり出してしまう可能性がある.

▪免疫不全のなかで種々の感染症のリスクがあり,晩期においては生活の質(QOL)を非常に落としかねない合併症にも気をつけていかねばならない.

▪総合的な多職種にわたるアプローチと管理が必要となる治療でもある.

白血病治療の合併症

発熱性好中球減少症 森本 将矢 , 森 信好
  • 文献概要を表示

Summary

▪発熱性好中球減少症の診療において,重症度によるリスク分類が重要である.

▪白血病治療では,高リスク群の発熱性好中球減少症を合併しやすいため,真菌感染症に注意する必要がある.

▪好中球減少患者の抗菌薬治療期間の決定には,臨機応変な対応を要する.

貧血,血小板減少症 樋口 敬和
  • 文献概要を表示

Summary

▪急性白血病患者の多くは発症時にすでに貧血,血小板減少症を伴っているが,その後の治療期間中において,化学療法による骨髄抑制のために赤血球・血小板輸血はほぼ必須である.

▪輸血はトリガー値に基づいて行うが,トリガー値は絶対的なものではなく,患者の状態,合併症,血液製剤の供給状況なども考慮して設定する.

▪慢性骨髄性白血病診断時に軽度の貧血を認めることが多く,チロシンキナーゼ阻害薬による治療開始後に貧血や血小板減少症をきたすことも多い.

▪慢性リンパ性白血病では,病期の進行とともに貧血や血小板減少症が進行するが,自己免疫機序による溶血性貧血や血小板減少症を合併することもある.

白血病患者の妊孕性温存対策 蘆澤 正弘
  • 文献概要を表示

Summary

▪挙児希望のある症例においては,再発後の治療や早発閉経の可能性を見据えて,可能な限りで治療開始前に妊孕性温存について処置を検討する.

▪アルキル化薬を用いた化学療法や放射線照射の影響は強く,永続的な不妊になる可能性がある.

▪初発時の急性骨髄性白血病(AML)や急性リンパ性白血病(ALL)の標準的治療では,永続的不妊になることはまれである.

▪女性患者の場合,胚や未授精卵の凍結保存が推奨される.採卵が不可能な症例において造血幹細胞移植が行われる場合は,卵巣遮蔽全身放射線照射併用の前処置を行うことも選択肢の一つである.

▪男性患者の場合,治療開始後において確立された妊孕性温存の方法がないため,可能な限り治療前の精子凍結保存を検討する.

高齢者白血病治療の問題点 大田 雅嗣
  • 文献概要を表示

Summary

▪高齢者では「多病」が特徴的で,血液腫瘍疾患の存在が明らかになった際には背景にある種々の病態の存在を考慮しながら適切な治療を行うことが肝要である.

▪高齢者特有の脆弱性,筋力低下,転倒,認知機能の低下,うつ状態の発現などが「老年症候群」に影響を与えてQOLの低下につながることを念頭に置き,どのような症例で治療が適応となるか,また治療法をどのように選択するかを検討する必要がある.

▪適切な治療により,高齢化社会における健康寿命の延長につながることを期待したい.

cytokine release syndrome 海野 健斗
  • 文献概要を表示

Summary

▪既存の化学療法とはまったく作用機序の異なる,T細胞を用いた免疫療法が実臨床に応用され,高い有効性が報告されている.

▪サイトカイン放出症候群(CRS)は,免疫療法に伴って発症する特有の有害事象である.症状は軽症から重症まで幅広いが,適切な対処を行わないと致死的となる.

▪軽症例では対症療法で対応可能であるが,重症例ではサイトカインをブロックする抗IL-6受容体抗体が有用である.

▪今後,免疫療法が拡大していくうえで,CRSの病態や適切な対処方法の理解が非常に重要である.

一般内科でみる「既往疾患」としての白血病

小児白血病患者の晩期合併症 井上 雅美
  • 文献概要を表示

Summary

▪低身長,不妊の原因となる内分泌機能障害を筆頭に,心・血管系,メタボリックシンドローム,骨・歯への影響など,多種多様な晩期合併症が報告されている.

▪かつて中枢神経系予防法として行われていた頭蓋照射は,看過できない認知機能への影響などが明らかにされたため,現在では行われていない.このような治療プロトコルの変遷を反映して,晩期合併症は一律ではない.

▪サバイバーが進学,就職,恋愛,結婚というイベントにうまく対応し社会人として自立するためには,ソーシャルワーカーなど多職種が長期フォローアップに関わることが望まれる.

  • 文献概要を表示

Summary

▪造血幹細胞移植の成績向上とともに,退院後の生活におけるQOL,長期の健康維持に目が向けられている.

▪移植後晩期の生命予後に関わる重篤な合併症としては,感染症,肺合併症,二次がんなどが報告されている.

▪「造血細胞移植患者手帳」は移植施設と非移植施設・かかりつけ医との間の情報共有を目的に作成され,患者の感染症リスク,慢性GVHD・免疫抑制薬の有無のほか,推奨されるワクチン接種スケジュールが掲載されている.

▪二次がんのリスクは移植後5年目以降も上昇し,とくに慢性GVHDを有した症例における食道がん,口腔がん発症リスクが高いため,それぞれのスクリーニングが重要である.

▪晩期の合併症は多診療領域にわたるものであり,他科・非移植施設との連携が患者の予後改善のためには重要・必須である.

  • 文献概要を表示

Summary

▪次世代シークエンサーによるゲノム解析技術の飛躍的な進歩によって,血液腫瘍の分野でもシークエンス解析を用いたゲノム医療が臨床の場に導入されつつある.

▪シークエンス解析はこれまでの検査と比較して情報量が多いため,その結果を適切に解釈するためには,解析技術に対する正しい理解が必要である.

  • 文献概要を表示

Summary

▪遺伝子解析技術の進歩により,Ph ALLと類似した遺伝子発現パターンを呈するB前駆細胞型ALLの一群が同定された.

▪Ph-like ALLではIKZF1の遺伝子異常に加え,ABL1関連遺伝子やJAK関連遺伝子異常など,キナーゼ遺伝子の変異を高率に伴うことが示されている.

▪Ph-like ALLは男児に多く,初診時白血球数が多く,また寛解導入療法後のMRD陽性例を多く認める.

▪当初は予後不良と考えられていたが,MRDによる治療層別化により,その他のB前駆細胞型ALLと同等の成績が得られている.

▪チロシンキナーゼ阻害薬やJAK阻害薬による治療効果が期待され,今後前向き臨床試験での検証が望まれる.

  • 文献概要を表示

 神田 本号は「2019年の白血病診療」という特集です.リンパ腫や骨髄腫に対する新薬が次々と出てくるなかで,白血病はしばらく新しい話題がありませんでしたが,昨年くらいから次々と白血病に対する新薬が出てきて,今まさに治療が変わりつつある状況かと思います.

 本日の座談会では,最初に白血病診療の今後の変化を予測したいと思います.次に,今後高齢化が進んでいくわが国で,高齢者白血病に対してどのように対応していくかを考えたいと思います.新規治療薬が出てきたことによって高齢者も安全に治療しやすくなった一方で,さまざまな新たな問題も出てくるのではないかと思います.最後に,血液内科での働き方改革について考えてみたいと思います.

Book Review

臨床呼吸器感染症学 宮下 修行
  • 文献概要を表示

 長崎大学第二内科学教室は,呼吸器学領域,感染症学領域,微生物学領域の教授を多数輩出してきた名門教室である.特筆すべきは,本教室から世界へ発信された論文の「質の高さ」と「数」である.基礎的研究を中心とし,その結果から臨床仮説を立てるトランスレーショナル・リサーチが数多く展開され,strong powerの成績が報告されている.また,多施設共同研究を主導し,実臨床に直結する成績も数多く発表されている.これまで報告してきた論文だけで,数十冊もの本になるが,外部から評価される優れた本は,自己完結でなく客観的な意見も取り入れる必要がある.1編の論文を完成させるのに100編以上の主要論文を網羅する.本書の大きな特徴の一つは,これまでの基礎研究で固められた土台の上に,無数の客観的なエビデンスがちりばめられた点にあり,内容にきわめて説得力がある.また,自身のデータに基づいているため,わかりやすく解説されている.

糖尿病最新の治療2019-2021 春日 雅人
  • 文献概要を表示

 わが国における糖尿病腎症による新規透析導入患者数は増加の一途をたどっていたが,2009年ごろから頭打ちとなり現在にいたっている.しかしながら,毎年1万6,000人以上の糖尿病患者が現在でも透析導入を余儀なくされている事実は,わが国における糖尿病診療において改善すべき点が多々あったことを示唆している.現在,わが国における糖尿病患者数は約1,000万人と推定されており,一方,日本糖尿病学会が認定する糖尿病専門医は6,000名弱である.したがって,多くの糖尿病患者は糖尿病を専門としない医師によって加療されていると考えられる.糖尿病の治療も,この10年間にDPP-4阻害薬,GLP-1受容体作動薬,SGLT2阻害薬が次々と上市され,血糖自己測定を補完する機器としてflash glucose monitoring(FGM)の使用が保険収載されるなど大きく様変わりしている.糖尿病を専門としない医師が,多忙な診療の合間にこれらの進歩について勉強し実際の診療に活かしていくには大きな努力が必要であろう.このためにも,最新の正確な情報を効率よく常時入手できることが肝要であり,このことは糖尿病医療のわが国における均霑化という観点からも重要である.

Lesson!胸部画像の読みかた 藤田 次郎
  • 文献概要を表示

 喜舎場朝雄先生が編集された「Lesson! 胸部画像の読みかた」を通読させていただいた.本書がユニークなのは,第1章および第2章で胸部画像診断のエキスパート2名に胸部単純X線像,および胸部CT像の読影手法の解説をしていただいた後に,症例を中心とした実践的な各論を設けている点にある.私はエキスパート2名の先生方とは旧知の仲であり,とくに佐藤 功先生とは17年間,香川県で一緒に仕事をさせていただいた.また,上甲 剛先生の執筆された論文を通して長年にわたって勉強させていただいたし,私の編集した本にもご執筆いただいている.この両名のベテランの先生方の解説はコンパクトにまとまっており,若手研修医にもぜひマスターしていただきたい.

連載 Focus On

  • 文献概要を表示

 地震や台風,豪雨などの災害発生時には,水道・電気・ガスなどのライフラインの途絶や,清潔な水の不足による飲料水の不足,不十分な手洗い,さらにトイレやごみ置き場などの衛生環境の悪化,食料の不足による栄養状態の悪化など,さまざまな要因が重なり,感染症発生のリスクが大きくなることが知られている.

 災害発生時,とくに発災直後から1週間以内の急性期には,外傷などに伴う皮膚・創部感染症が多くみられ,発災後1週間以降の亜急性期・慢性期には感冒や気管支炎,肺炎,時期によってはインフルエンザなどの呼吸器感染症,さらに感染性胃腸炎,時期によってはノロウイルス感染症や感染性食中毒などの消化器感染症が発生してくる.

 災害時には,通常の診療や対応がほとんど実践できない特殊な状況となる.そのため,災害時の感染症対応としては可能な限り現状を把握し,できることから確実に,かつ総合的に実践していくことが重要である.ポイントとしては,① 感染症に関する情報の共有化,② リスクアセスメントとニーズアセスメント,③ 感染症のサーベイランス体制の構築,④ 現場でのリスク軽減を目的とした感染症対策の支援,⑤ 啓発・リスクコミュニケーション活動の実践,などがあげられる.

連載 悩むケースに立ち向かう! 臨床推論のススメ方 ~全国GIMカンファレンスより~

  • 文献概要を表示

連載のねらい

 GIMカンファレンスは,臨床推論の技術を向上させることを目的とした内科全般の症例を扱う検討会であり,全国各地で組織され開催されています.本連載では,全国のGIMカンファレンスにおいて検討された症例をご紹介いただき,診断過程を時系列に沿って解説いただきます.

連載 プライマリーケア医のがんの診かた ~かかりつけ患者さんのがんと共にたたかうために~

  • 文献概要を表示

 前回(第14回)は,がん治療に伴って生じる痛みについて解説しました.今回は,がん自体が直接の原因となる痛み(がん疼痛)を取り上げます.

 近年,緩和ケアを受けるがん患者さんの療養の場が多様化してきました.とくに政策の後押しもあり在宅医療が普及し,訪問診療で疼痛緩和を行う患者さんも増えていますし,外来で緩和ケアを受けている患者さんも多いです.そのため,地域医療に取り組む内科医でがんを専門としていない医師でも麻薬に関わる機会は少なくないと考えられます.本稿では,がん疼痛の薬物療法(とくにオピオイド)を中心に解説していきたいと思います.

基本情報

24329452.124.04.cover.jpg
臨床雑誌内科
124巻4号 (2019年10月)
電子版ISSN:2432-9452 印刷版ISSN:0022-1961 南江堂

文献閲覧数ランキング(
6月22日~6月28日
)