連載 Focus On
災害時に起こる感染症とその対応
賀来 満夫
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1東北医科薬科大学医学部感染症学教室
キーワード:
災害感染症
,
災害時における感染症対応
,
ネットワーク
Keyword:
災害感染症
,
災害時における感染症対応
,
ネットワーク
pp.2183-2190
発行日 2019年10月1日
Published Date 2019/10/1
DOI https://doi.org/10.15106/j_naika124_2183
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地震や台風,豪雨などの災害発生時には,水道・電気・ガスなどのライフラインの途絶や,清潔な水の不足による飲料水の不足,不十分な手洗い,さらにトイレやごみ置き場などの衛生環境の悪化,食料の不足による栄養状態の悪化など,さまざまな要因が重なり,感染症発生のリスクが大きくなることが知られている.
災害発生時,とくに発災直後から1週間以内の急性期には,外傷などに伴う皮膚・創部感染症が多くみられ,発災後1週間以降の亜急性期・慢性期には感冒や気管支炎,肺炎,時期によってはインフルエンザなどの呼吸器感染症,さらに感染性胃腸炎,時期によってはノロウイルス感染症や感染性食中毒などの消化器感染症が発生してくる.
災害時には,通常の診療や対応がほとんど実践できない特殊な状況となる.そのため,災害時の感染症対応としては可能な限り現状を把握し,できることから確実に,かつ総合的に実践していくことが重要である.ポイントとしては,① 感染症に関する情報の共有化,② リスクアセスメントとニーズアセスメント,③ 感染症のサーベイランス体制の構築,④ 現場でのリスク軽減を目的とした感染症対策の支援,⑤ 啓発・リスクコミュニケーション活動の実践,などがあげられる.
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