JSES 内視鏡外科 2巻3号 (1997年6月発行)

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特集　肺気腫・肺嚢胞に対する胸腔鏡下手術

〔エディトリアル〕特集によせて白日　高歩 2巻3号 , 1997年6月 , pp.183-184

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　今日，胸腔鏡は種々の呼吸器疾患の診断，治療に応用されている．診断面については，胸腔内病変および肺末梢性病変の多くのものに胸腔鏡による生検組織診断が可能となった．また治療面については，嚢胞性肺疾患，特に自然気胸への応用が確立し，そのほかの疾患についても種々の利用法が開発されている．本号では特集として，「肺気腫・肺嚢胞に対する胸腔鏡下手術」を取り上げ，自然気胸，巨大肺嚢胞，肺気腫などについて，それぞれの分野のエキスパートにup to dateな成績と今後の展望を記述していただいた．

　自然気胸に関して私見を述べると，今日では胸腔鏡が最も高頻度に適用される疾患であることはいうまでもない．本疾患は若年者に偏って発症することから，従来のような腋窩部縦切による開胸手術は美容上も好ましくなく，胸腔鏡手術は現時点でfirst choiceに選択される治療法となりつつある．ただ，筆者らの調査では，初回の気胸発症時より胸腔鏡治療を行う施設と従来通り初回は胸腔ドレナージによる持続吸引を行い，2回目以降に胸腔鏡を応用する施設の差があるようである．

自然気胸に対する胸腔鏡手術の長期成績—術後再発の検討栗原　正利 , 伊坂　泰嗣 , 藤田　敦 , 平山　伸 , 田中　良太 , 大野　陽子 , 武野　良仁 2巻3号 , 1997年6月 , pp.185-190

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　自然気胸の胸腔鏡手術は開胸術より再発が多い．その原因と対策を胸腔鏡手術2,026例を対象に検討した．①1973年から1990年に局所麻酔下に施行した1,340例中再発177例（13.2％），②1991年から1995年に全身麻酔下に施行した686例中再発46例（6.7％），③最近2年間に全身麻酔下に施行した396例中再発16例（4.0％）であった．③では，再発までの期間は3.3±2.3か月であった．原因はブラの見落とし13例，ブラの新生2例，不明1例であり，見落としは好発部位であるS¹背部と上縦隔，S^6b〜S^6cであった．胸腔内を詳細に観察するには分離換気による全身麻酔とflexible型の胸腔鏡が必要である．ブラの新生による再発は胸腔鏡手術に特有で，原因は癒着が起こりにくいためと思われる．再発を減らすためには追加治療として吸収性メッシュとfibrin glueの併用が有効である．

自然気胸に対する胸腔鏡下手術—術中合併症，特に自動縫合器のトラブルを中心に栗本　典昭 , 村山　正毅 , 小浜　祥均 , 榎本　正満 2巻3号 , 1997年6月 , pp.191-196

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　自然気胸に対する胸腔鏡下手術の術中合併症，特に自動縫合器のトラブル，発生後の対策，術中に注意するポイントを中心に報告する．われわれの経験した術中合併症，トラブルは，自然気胸71例中手術器具に関するものを6例に（うち自動縫合器による合併症5例—自動縫合器総使用本数の1.7％，トロッカーによるもの1例），術中低酸素症を高齢者の気腫性肺嚢胞の2例に認めたのみであり，ほかの術中合併症は経験していない．自動縫合器によるトラブルの内訳は，（1）ステイプルラインの継ぎ目からの出血，肺瘻，（2）縫合部離開，（3）fire後に自動縫合器が肺実質から外れない，などであった．自動縫合器のトラブルは生命に関わるものがあり，常に速やかに開胸に移行できる態勢を整えておく必要がある．

気腫性肺嚢胞に対する胸腔鏡手術症例の検討森川　利昭 , 竹内　惠理保 , 大淵　俊朗 , 加藤　紘之 2巻3号 , 1997年6月 , pp.197-202

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　巨大肺嚢胞を含む気腫性肺嚢胞の胸腔鏡手術症例をretrospectiveに検討した．1993年3月から1996年12月までに南一条病院で手術を行った気腫性肺？胞は24例28側で，全例で胸腔鏡下に嚢胞の切除，縫縮を行った．1例で技術的な理由から開胸手術に移行した以外は術中の問題はなかった．2例3側で8日間以上の気漏の遷延がみられ，2例2側で閉鎖術を施行した以外は術後の合併症はなかった．これらはいずれも初期の症例であった．気腫性肺嚢胞の胸腔鏡手術は技術的に難度は高いものの，慎重に行えば基本的には安全な術式であり，患者へのメリットが大きい．胸腔鏡手術の手技上の問題を中心に，症例の呈示とともに報告した．

肺気腫に対する胸腔鏡下volume reduction surgery—レーザーablationとの比較黒川　良望 , 貝羽　義浩 , 三井　一浩 , 赤羽　勉 , 中川　昭彦 , 明神　崇仁 , 阿保　昌樹 , 里見　進 2巻3号 , 1997年6月 , pp.203-210

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　30例の胸腔鏡下片側肺容量減少術と10例の胸腔鏡下一期両側肺容量減少術を比較検討した．レーザーablation単独による肺容量減少術は効果が小さく，target areaの肺部切除によって十分な呼吸機能改善効果は得られる．またレーザーablationの胸腔鏡下肺容量減少術における役割は，肺気量減少効果ではなく，残存するブラ・ブレブの術後再膨張や破裂の予防にあるものと思われた．また，胸腔鏡下肺容量減少術は一期両側手術が可能で，効果も片側手術に比し大きいことが示唆された．

肺気腫に対する胸腔鏡下volume reduction surgery—胸骨正中切開volume reduction surgeryとの比較岩崎　昭憲 , 桑原　元尚 , 吉永　康照 , 岡林　寛 , 白石　武史 , 松添　大助 , 川原　克信 , 白日　高歩 2巻3号 , 1997年6月 , pp.211-216

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　肺気腫に対する外科治療法のなかで，おもに胸腔鏡によるvolume reduction法（VRS）と胸骨正中切開によるVRSを比較した．術後1秒量の改善では，両側胸腔鏡VRSは約60.5％，胸骨正中切開VRSは54.9％とほぼ同程度の改善が得られた．切除組織量の比較では，両側胸腔鏡と胸骨正中切開法はほぼ同程度の切除が行われていた．また，片側胸腔鏡VRSは両側胸腔鏡VRSに比べ十分な改善が得られなかった．出血量や術後疼痛は胸骨正中切開法が多く，患者に対する負担が大きかった．合併症で両手法間に有意な差は認められず，両側胸腔鏡VRSは胸骨正中切開VRSと比較しても十分な効果が得られ，効果的な方法である．

特集　ハーモニック・スカルペルの基礎と臨床

〔エディトリアル〕手術とハーモニック・スカルペル出月　康夫 2巻3号 , 1997年6月 , pp.219

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　手術は“切る”，“はさむ”，“剥離する”，“結紮する”，“縫合する”，“止血する”の6つの基本的な手技から成り立っている．

　どんなに難しく複雑そうにみえる手術も結局，基本的にはこれらの基本手技の組み合わせで行われる．それは従来の開胸，開腹手術であろうと，また最近の胸腔鏡や腹腔鏡を使う内視鏡下手術でも変わらない．

腹腔鏡下手術用超音波駆動メスの開発 Joseph　F. Amaral 2巻3号 , 1997年6月 , pp.220-227

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　ブタの胆嚢切除モデルを用いて腹腔鏡下手術用の超音波駆動メスを開発した．さまざまなブレードについて実験を行った結果，フック・スパチュラ型ブレードは，凝固と切開のバランスが最もよくとれたメスであると考えられる．この装置の利点として，煙が出ないこと，組織損傷がきわめて少ないこと，術者にも患者にも危険がないこと，切開が容易になること，などが挙げられる．この装置は，腹腔鏡下手術に際してまず考慮すべきエネルギー形態になり得るものと考えられる．

—超音波手術装置—ハーモニック・スカルペル^＊の特徴と基本原理川畑　佳樹 2巻3号 , 1997年6月 , pp.228-233

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　ハーモニック・スカルペル^＊は超音波振動のエネルギーを利用した手術装置で，従来の超音波メスとは異なり，組織の破砕・吸引ではなく凝固・切開を行うことを目的とした器械である．電気メスやレーザーと比較して低温で凝固作用が発生し，側方の熱損傷が非常に少ない．また，組織の炭化に伴う煙の発生がなく，患者に通電することもないというこれらの特徴は，内視鏡下手術のみならず開腹・開胸手術においても非常に有効である．本稿では，これらの特徴と利点がどのような原理で得られるかについて，器械的な観点から述べた．

内視鏡下手術における使用法のコツ

内視鏡下食道癌切除術におけるハーモニック・スカルペルの有用性川原　克信 , 山下　裕一 , 白日　高歩 2巻3号 , 1997年6月 , pp.234-238

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　内視鏡下胸部食道癌切除術におけるハーモニック・スカルペルの有用性について検討した．胃管作成，経食道裂孔—後縦隔郭清および胸膜の切開，食道周囲の剥離，縦隔リンパ節郭清に際し，shears型を用いて凝固・止血を行った．ハーモニック・スカルペル使用5例の胸腔内操作時間は125.0±28.7分，出血量は134.8±70.2mlで，未使用8例の各々106.4±42.9分，250±107.8mlに比べて手術時間は長くなる傾向を示したが，出血量は有意に減少した（p＜0.05）．ハーモニック・スカルペルは，周囲の組織を熱損傷することなく，安全で確実な止血と良好な視野が確保できた．

55.5kHz超音波凝固切開装置の安全性に関する基礎実験と腹腔鏡下胃手術への応用金平　永二 , 大村　健二 , 宮永　太門 , 森　明弘 , 木下　敬弘 , 渡辺　洋宇 2巻3号 , 1997年6月 , pp.239-244

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　超音波凝固切開装置のうち，鋏型のもの（LCS）を用いて動物実験を行い，安全性を検討した．振動子の先端はcavitationが発生することにより，またシャープエッジは機械的切開効果を有することにより，いずれも組織破壊的に作用するので注意を要する．これに対し振動子側面には，20秒以内で組織が接触しても重大な損傷は発生せず，比較的安全であることがわかった．臨床においては，48例の腹腔鏡下胃および周辺手術にLCSを用い，有効性を検討した．振動子の危険部位を隣接組織から離して使用するために，器械のハンドピースを上下逆に保持すべき場合もあった．胃周囲の血管はすべてLCSにより凝固切離が可能で，クリップ法に比べ手術時間の短縮がみられた．後出血などの合併症も経験していない．

腹腔鏡下結腸・直腸手術宗像　康博 , 林　賢 2巻3号 , 1997年6月 , pp.245-248

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　ハーモニック・スカルペルのLCSにより，腹腔鏡下横行結腸切除術や腹腔鏡下低位前方切除術が容易になった．大網，側方靱帯，中直腸動脈の切離は，クリップを使用することなくLCSで可能である．腹腔鏡下結腸・直腸手術における剥離，止血，切離といった基本操作は，ほとんどLCSのブラントモードで可能であり，レベル3とレベル5を適宜使い分ける．この手技に慣れるまでは，主幹動脈の剥離には超音波メスの使用を強く勧める．現在のLCSにはまだいくつかの欠点があり，それらが解消されればLCSの経済的優位性も確立される．

腹腔鏡下脾臓摘出術におけるハーモニック・スカルペル使用法のコツ橋爪　誠 , 森田　真 , 御江　慎一郎 , 津川　康治 , 富川　盛雅 , 太田　正之 , 田上　和夫 , 杉町　圭蔵 2巻3号 , 1997年6月 , pp.249-253

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　腹腔鏡下脾臓摘出術は，従来の開腹下脾臓摘出術の適応疾患すべてが手術適応となり，保険診療も認められ，いまや標準術式となっている．脾摘術においては，ハーモニック・スカルペルは，脾門部の血管処理を除くすべての剥離操作，すなわち脾結腸間膜，脾腎ヒダ，横隔脾ヒダ，胃脾間膜の剥離および切離や小血管の止血，切離に使用可能である．特に門脈圧亢進症や出血傾向のある症例では，残す側にクリップをかけることで確実な止血操作が可能である．一方，脾動静脈および門脈圧亢進症がある場合の胃脾間膜の切離は，自動吻合器が有用である．脾臓の摘出は，モルセレーターを用いると皮切を延長することなく摘出可能である．

胸腔鏡下手術におけるハーモニック・スカルペルの使用経験加勢田　靜 , 青木　輝浩 , 北野　光秀 , 山本　修三 2巻3号 , 1997年6月 , pp.254-258

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　最近開発されたハーモニック・スカルペルは，電気エネルギーを超音波振動に変換し，先端のアクティブブレードで凝固と切離を行うことができる．このハーモニック・スカルペルは，煙が発生しない，組織の熱損傷が電気メスに比べ少ないなどの利点を有しており，狭い空間で手術操作を行う胸腔鏡手術には適している．われわれは，このハーモニック・スカルペルを胸腔鏡下肺切除やリンパ節郭清に使用したので，その経験を報告する．

腹腔鏡下副腎・腎摘除術におけるハーモニック・スカルペルの利点東原　英二 2巻3号 , 1997年6月 , pp.259-265

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　腹腔鏡下副腎摘除術は，その開始時より広く受け入れられているが，手術時間を短縮し合併症を減らすのに高度な技術を要する．ハーモニック・スカルペルは煙を出さず，組織の侵襲が少なく，術者と患者双方にとって安全であり，剥離を容易にする器具である．腎・副腎摘除術の手技を習得する段階にある医師にとって，ハーモニック・スカルペルは手術を容易にする器具である．

婦人科領域，特に腹腔鏡下子宮全摘術におけるハーモニック・スカルペルの応用堤　治 2巻3号 , 1997年6月 , pp.266-271

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　ハーモニック・スカルペルは，腹腔鏡下の切開，切断，止血などの手術操作に安全に応用され，婦人科腹腔鏡下手術において有用性が高い．ハーモニック・スカルペルが適用されるおもな疾患と術式は，子宮筋腫に対する子宮全摘，筋腫核出，卵巣嚢腫に対する付属器切除，嚢腫核出，子宮外妊娠に対する卵管切除，卵管線状切開など多岐にわたる．子宮全摘術においては，子宮円靱帯，卵管，卵巣固有靱帯，仙骨子宮靱帯の切断，膀胱子宮窩，ダグラス窩腹膜切開に用いる．出血も少量で止血はボール型で対応できる．ハーモニック・スカルペルは，より安全かつ容易に侵襲の少ない婦人科腹腔鏡下手術を可能にすると考える．

乳癌に対する内視鏡下手術山形　基夫 , 岩井　重富 2巻3号 , 1997年6月 , pp.272-277

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　近年，乳房温存療法が普及し，縮小手術による治療が確立しつつある．そこでわれわれは，内視鏡下乳腺手術を開発した．本術式は吊り上げ法を用いた内視鏡補助下乳腺部分切除術と気腋窩（8mmHgCO₂）下に行う内視鏡下腋窩リンパ節郭清術により構成され，術中はすべてハーモニック・スカルペルを使用し結紮は不要であった．ハーモニック・スカルペルと気腋窩の安全性については，豚による実験で確認した．現在まで11例の患者に本法を施行しているが合併症はなく，平均手術時間158分，出血量32〜250g，郭清リンパ節個数5〜22個であり，乳腺部分切除に伴うLevel　Ⅱまでの郭清では十分な視野が得られ，有用な方法と考えられた．

脊椎内視鏡手術に対する超音波切開凝固システムの臨床応用出沢　明 , 三木　浩 , 山川　達郎 2巻3号 , 1997年6月 , pp.278-283

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　脊椎内視鏡手術にハーモニック・スカルペルを用いることにより，電気メスでみられる煙を吸って視野を確保する必要がなく，また従来のCUSA®と異なり切開が可能となった．そのメカニズムは，50〜100μmの振幅で毎秒55,500回ブレードを振動させることによるコアギュラムの生成にある．したがって，コラーゲンに富んだ神経の損傷はないので脊髄神経根周囲の手術に有用と考える．

開腹・開胸手術における使用法のコツ

ハーモニック・スカルペルと開腹・開胸手術内藤　剛 , 椎葉　健一 , 伊勢　秀雄 , 小針　雅男 , 武田　和憲 , 松野　正紀 2巻3号 , 1997年6月 , pp.284-287

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　ハーモニック・スカルペルは，内視鏡下手術の発展に伴い使用される機会が増えているが，その特徴は優れた止血効果とより小さな組織損傷である．特にlaparosonic coagulating　shears（LCS）は，血管を結紮処理することなく切離可能であり，その有用性は従来の開胸・開腹手術においても認められつつある．特に直腸手術などの狭く深い術野での血管処理や組織剥離を伴った手術，膵組織の切離などの際には非常に有用であると考えられる．ただし開腹手術においてさらに普及するためには，いくつかの問題点があることも事実であり，今後の改良が望まれる．

手術テクニック

腹腔鏡下手術における良好な視野の作り方—特に器械による圧迫法について田辺　博 , 山内　希美 , 可知　宏隆 2巻3号 , 1997年6月 , pp.288-290

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はじめに

　腹腔鏡下胆嚢摘出術に端を発した腹腔鏡下手術も，その後急速な発展を遂げ，いまやさまざまな分野に応用がなされている．腹腔鏡下手術を的確に行うためには，良好な視野を確保することが絶対条件となる．そこでこの稿では，腹腔鏡下手術において良好な視野を確保する工夫について述べる．

New Instruments

イソップ2000ボイスコントロール大上　正裕 2巻3号 , 1997年6月 , pp.291

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　イソップ（AESOP：Automated Endoscopic Sys-tem for Optimal Positioning）は，腹腔鏡下胆嚢摘出術をはじめとする内視鏡下手術に際し，手術スタッフの作業の軽減化と安定した視野の確保，手術操作を行いながらの術者の意志による視野の移動，あるいは遠隔操作による視野の移動を可能にする目的で米国コンピュータモーション社により開発されたサージカルロボットである．コンピュータ制御されたロボットアームは，6か所の可動部分（6次自由動）を各々動かし，術者の指示にしたがって目的の視野をテレビモニターへ映し出すように設計されている．ハンドコントロール，フットコントロールによる操作に加え，画期的なボイスコントロールシステムを新たに導入し，術者の声によるコントロールが実現した．一人一人の特徴ある音声を認識させるため，術者は予め使用に際して必要な言語を自身の声で専用カードに認識させ，手術においてそのカードをコントローラに挿入し術者の音声を正確に認識させる．それにより，使用する術者の音声に100％反応することができる．

　【ユーザー側から】通常の開腹手術では手術視野の展開が最も重要な要素と言えよう．内視鏡下手術では，この手術視野を術者自身ではなく助手に映し出してもらうことが大きな特徴であり，時にこれが大きなストレスとなる．

Conventional Instruments

標本回収に用いる器具北野　正剛 2巻3号 , 1997年6月 , pp.292

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1．エンドパウチⅡ

特徴

●片手操作でワンタッチ開口，閉鎖

●任意の閉鎖，開口

症例報告

胸腔鏡下に摘出した臓側胸膜由来localized fibrous tumorの1例藤野　昇三 , 手塚　則明 , 紺谷　桂一 , 寺本　晃治 , 澤井　聡 , 井上　修平 , 森　渥視 2巻3号 , 1997年6月 , pp.293-297

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　胸部写真の経過から有茎性腫瘍と診断し，胸腔鏡下に摘出した臓側胸膜由来のlocal-ized fibrous tumorの1例を経験した．症例は74歳，女性．検診胸部写真で左肺に超鶏卵大の腫瘤陰影が突然出現したとして当科紹介となった．異常なしとされた過去の胸部写真で縦隔に腫瘤陰影が認められ，紹介時にはこの陰影が消失し肺野の陰影が出現していた．CT所見も含めて有茎性腫瘍と診断し，胸腔鏡下腫瘍摘出術を施行した．腫瘍は上葉の臓側胸膜から発生していた．エンドGIAを用いて切除しエンドキャッチを用いて摘出した．創は3か所（0.5cm,1.5cm，5.0cm）．病理診断の結果localized fibrous tumor of the pleuraと診断された．

手術手技

副腎腫瘍に対する側臥位・側方アプローチによる経腹的腹腔鏡下手術中村　広繁 , 石黒　清介 , 谷口　雄司 , 田中　宜之 , 森　透 , 水澤　清昭 2巻3号 , 1997年6月 , pp.298-302

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　副腎腫瘍に対する内視鏡下手術の到達法には，経腹的前方，側方アプローチおよび後腹膜的側方，後方アプローチとあるがいずれも一長一短があり，施設により手法は異なる．今回われわれは良好な視野が得られ，腸管の副損傷の危険性も少ない経腹的側臥位・側方アプローチにより，3例の副腎腫瘍の手術を行った．特に最近の2例では，アルゴン・ビーム　コアギュレーター^®，ハーモニック・スカルペル^®，Ultrasonic Surgical Unit^®を使用しながら手術を行うことで手術手技はより容易となった．3例の平均手術時間は190分，平均出血量は63mlであった．本法は副腎腫瘍に対する安全で確実な推奨されるべきアプローチ法と考えられる．

基本情報

JSES 内視鏡外科
2巻3号
(1997年6月発行)

電子版ISSN：印刷版ISSN：1341-7266 日本内視鏡外科学会

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