JIM 24巻12号 (2014年12月)

特集 総合診療医のための結核診療Update

今月のQuestion & Keyword Index
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より早く,より的確に内容をとらえるために,QuestionとKeywordによるIndexをご利用ください.それぞれ各論文の要点を示す質問とキーワードで構成されています.

Question

Q1 老人の結核が増えているのは,老人が合併症などの理由で結核に罹患しやすくなったからか? 1078

Q2 結核に感染したら他人に結核をうつす可能性がありますか? 1082

Q3 結核になりやすいのは,どのような人ですか? 1082

Q5 結核の診断に必要な検査にはどのようなものがあるか? 1086

Q6 ガフキー陽性と報告を受けた時に,まず主治医はどうするべきか? 1092

Q7 肺結核を見落とさないためには? 1098

Q8 結核性胸膜炎を疑うのはどういった場合か? 1104

Q9 結核性髄膜炎の典型的な髄液所見は? 1108

Q10 粟粒結核とは? 1112

Q11 喉頭結核や気管結核の頻度は? 1116

Q12 生物学的製剤を用いる患者へのLTBI治療の適否は? 1118

Q13 BCGの接種時期と効果は? 1121

Q14 慢性咳嗽を有する外国人の患者を診察するうえで,最も注意すべきことは何でしょうか? 1124

Q15 在宅で結核患者の診療を行う際,家族や介護者に注意してもらう点は何ですか? 1128

Q16 結核の院内感染予防のために最も重要なことは何ですか? 1132

One more JIM
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Q1:どんな時に結核患者を保健所に届ければいいでしょうか?

A1:基本的には結核菌検出の有無や臨床的な確定診断にかかわらず,「結核治療の対象である(診断的治療を含む)」と臨床医が判断した時点で,結核患者の発生届を最寄の保健所に提出してください.もしその後,結核ではないことがわかった場合には,その旨,保健所に報告すれば発生届も取り消されますし,結核の統計にも数値としてあがってはきません.ここでの「結核」は,感染性の肺結核以外にも,感染性でないと思われる肺結核や肺外結核などもすべて含まれ,また,結核予防のための抗結核薬の内服(いわゆる以前の予防内服)も,その理由のいかんにかからわず届出の対象になります.

【結核へのアプローチ】

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 結核は古くからある疾患であり,昔から多くの医学研究がなされてきた分野ではある.しかし世界はおろかわが国においても,いまだ制圧までには遠い道のりであるのが現状である.加えてここ数十年前より,HIVの蔓延に伴うアジア・アフリカ諸国での結核蔓延,世界的な薬剤耐性結核ないし多剤耐性結核(少なくともイソニアジドとリファンピシンの両剤に耐性の結核)の広がりなどがあり,はたしてわれわれが結核を制圧しうるのかどうかすら不透明な状況にあるといっても過言ではないものと思われる.

 本稿では,主に結核の現状,特にわが国での状況に重点を置いて概説し,感染や発病に関する基礎知識に関しては本特集の他の著者に譲ることとする.

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結核の感染

 結核の感染はほぼすべて空気感染であって,結核菌を含む飛沫核を肺胞まで吸入することによる.感染性の患者が咳をすると,菌を含む飛沫が飛び散り,その飛沫の水分が蒸発して径5μm以下の飛沫核になる.飛沫核は小さいのでなかなか落下せず,長時間空中に浮遊して感染源になりやすい.結核菌は細長い桿菌で,長さは2〜4μmであり,一つの飛沫核に含まれる菌数はせいぜい3個くらいまでである.

 感染源になりやすいのは喀痰検査で抗酸菌塗抹陽性,かつ咳をしている患者であって1),さらにその結果できた飛沫核が限定された空間に浮遊している状況において感染が起きやすい.なお,咳を誘発するような医療処置(痰の吸引,気管挿管,気管支鏡検査なども含む)も大きな要因になりうる.このような状況がそろわなければ,感染が起きる可能性は低い.

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Case

大腿骨頚部骨折で整形外科病棟に入院中に肺結核を発病した1例

患者:79歳,女性.

既往歴:高血圧,骨粗鬆症.

現病歴:自宅で転倒後,歩行困難となったため救急搬送された.左大腿骨頸部外側骨折と判明し,整形外科に入院,翌日,骨接合術(ガンマー釘)が施行された.術後経過は順調でリハビリを徐々に行っていたが,入院3週目頃から微熱が出現した.胸部CTを施行したところ,右肺に多発する結節影と一部に空洞形成を認めた.喀痰抗酸菌塗沫陽性,結核菌PCR陽性であり,活動性肺結核と診断,結核指定医療機関に転院となった.入院時の胸部単純X線では異常を認めていなかった.感染防止対策室は,職員,入院患者の接触者健診を開始した.

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Case

不明熱が続き,精査で胃液からガフキー(Gaffky)4号が検出された1例

患者:77歳,男性.

家族歴:家族内で結核発症者は認めず.

現病歴:200X年にぶどう膜炎を指摘され,プレドニゾロン(PSL)内服前に肋膜既往より行ったQuantiFERON検査(QFT)が陽性,かつ前医での胸部CTは異常なかったため,呼吸器内科よりイソニアジド(INH)の予防内服を勧められるも処方されず.200X+3年に胆石胆囊炎の加療後Clostridium difficileによる腸炎を発症.バンコマイシン(VCM)内服で改善するも再発し,VCM漸減療法で症状改善後も発熱を繰り返し,精査を勧めたが本人拒否.尿路感染症疑いにて加療後も発熱が持続するため,本人を説得して胸部CT(図1)を施行.左肺に新たな浸潤影を認め,胃液検査を施行.ガフキー4号と判明し,遺伝子検査で結核と診断され,結核指定病院へ転院となる.

【結核診療のピットフォール】

見落としやすい肺結核 根井 雄一郎
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Case

体重減少で受診したガフキー9号の1例

患者:43歳,男性,建設作業員.

既往歴:糖尿病なし,結核既往なし.

家族歴:特記すべきものなし.

現病歴:1カ月前から乾性咳嗽,食思不振,体重減少(-4kg/週),全身倦怠感が続いていた.来院前日から38℃台の発熱で近医を受診し,精査目的で紹介となった.脈拍 72回/分,体温37.2℃,呼吸数18回/分,SpO2 97%.病歴から肺結核を疑い,胸部単純X線写真を撮影したところ,左上肺野(肺尖部)に空洞影と斑状影を認めた.喀痰抗酸菌塗抹検査でガフキー(Gaffky)9号を検出.結核菌PCRで結核菌DNA陽性.

結核性胸膜炎 倉原 優
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Case

胸水の精査目的で紹介受診した1例

患者:61歳,男性.

既往歴:幼少期に結核に罹患.

現病歴:発熱で近医を受診した際,右胸水を指摘された.胸水穿刺や胸部CT検査などで精査されたが,胸水の一般細菌・抗酸菌の塗抹検査および培養検査は陰性で,胸水はリンパ球比率やADA(J1)が上昇している以外に有意な所見は得られなかった.結核の既往歴を反映してQuantiFERONは陽性であったが,喀痰や胃液の抗酸菌の塗抹検査は陰性だった.当院に紹介後,局所麻酔下で胸腔鏡検査を行ったところ,壁側胸膜の生検検体の培養検査で結核菌が検出されたため,結核性胸膜炎と診断された.

 6カ月の抗結核薬の内服によって軽快した.

結核性髄膜炎 森野 英里子
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Case

粟粒結核に合併した結核性髄膜炎の1例

患者:47歳,男性.

現病歴:3カ月前から咳と痰,1カ月前から倦怠感があり,最近,発熱と頭痛が出現,独歩で受診した.胸部単純X線写真で全肺野にほぼ均一に広がる小粒状影を認め,喀痰抗酸菌塗抹陽性,結核PCR陽性となり,粟粒結核の診断で入院となった.入院後,集中力の低下,理解力の低下,ふらつきの訴えがあり,すぐに髄液検査を行ったところ,細胞数260/μl(好中球250.7/μl,リンパ球9.3/μl),蛋白109mg/dl,糖11mg/dlで,結核性髄膜炎の合併を認めた.治療として抗結核薬4剤に加えてデキサメサゾンの併用を開始した.翌日,左不全麻痺が出現,右CPA領域の脳梗塞を発症し,脳梗塞の治療も並行して行った.

粟粒結核 大島 信治
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Case

無症状のため見逃された粟粒結核の1例

患者:76歳,男性.

現病歴:前立腺癌ホルモン療法のため,前医かかりつけ.定期健診にて撮影された胸部CT(図1a)にて粒状影が認められるも,無症状のため経過観察.4カ月後,咳嗽および労作時呼吸困難感が出現したため,再度,胸部画像検査施行.全肺野に陰影が存在しており,精査加療目的に当院へ紹介受診となった.

診断:胸部CT(図1b)において,両側肺野および葉間胸膜上,気管支血管束上に粒状影を認めることから粟粒結核を疑い,喀痰,尿など各種検体より抗酸菌検査施行.喀痰抗酸菌塗抹検査では3連痰陰性であったものの,後に培養にて陽性.培養陽性検体にてコード形成(+),キャピリアTB (+)から最終的に結核と診断.

喉頭・気管結核 久 育男
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Case

症例:42歳,男性.

現病歴:嗄声により近医耳鼻咽喉科を受診,局所処置を受けていたが改善せず,発症2カ月頃,前医総合病院耳鼻咽喉科を紹介受診した.その際,喉頭の腫瘤性病変を指摘され,局所麻酔下に生検を受けた.喉頭結核が疑われたため,10日後に当科紹介受診となった.

診断:初診時,左仮声帯を中心に潰瘍を伴う腫瘤性病変を認めた.声帯運動は正常であった.胸部単純X線写真で右肺に空洞形成を認め,喀痰塗抹はガフキー2号,病理組織像でびらんと壊死を伴い,周囲にLanghans巨細胞,類上皮細胞を認めた.Ziehl-Neelsen染色では結核菌は認めなかった.

経過:喉頭結核,肺結核の診断のもと,専門病院に転院し,加療を受けた.治療開始約1カ月で腫瘤は縮小し,粘膜は正常化した.

潜在性結核感染症対策 加藤 誠也
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 潜在性結核感染症(latent tuberculosis infection:LTBI)は,明らかな臨床的な所見はないが,結核に感染していること自体が潜在性の疾患という概念である.日本では2007(平成19)年6月から結核の届出基準に取り入れられ,感染者で発病を防ぐための治療を必要とする者は,免疫抑制状態や生物学的製剤などの免疫抑制作用をもつ薬剤を使用するものも含めて,その対象となった.以下,日本結核病学会予防委員会・治療委員会が2013年3月に策定した「潜在性結核感染症治療指針」1)に基づいて解説する.

【結核予防の最新知識】

BCGの効果とそのエビデンス 大藤 貴
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 BCG(Bacille Calmette-Guérin)は,フランスのCalmetteとGuérinが,ウシ型結核菌の弱毒化に成功し,開発した生ワクチンである.1924年に志賀潔がパスツール研究所より菌を日本に輸入し,現在も改良された菌が結核の予防接種として投与されている.本稿ではBCGの接種時期と方法,効果について述べる.

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Case

ネパール出身の日本語学校留学生

患者:22歳,男性.出生国はネパール.2カ月前に来日し,日本語学校に入学.

既往歴:特になし.

現病歴:2年前に咳嗽のため診療所を受診し,肺結核と診断され,標準的抗結核療法が実施されたが,2カ月で自己中断.薬剤感受性試験は実施されず.来日の1カ月前から再び咳嗽を自覚していた.2カ月前に入国後,日中は日本語学校に通い,夜間はインド料理店でアルバイトをしていた.咳嗽は徐々に強くなったが,多忙かつ日本語が不自由なため医療機関を受診しなかった.保健所が実施する日本語学校就学生健診にて胸部単純X線写真で異常を指摘され,日本語学校教師に付き添われて来院した.広範な粒状影と空洞,浸潤影を認め,活動性肺結核(学会分類bⅡ3)が疑われ,喀痰抗酸菌塗抹3+,結核菌群PCR陽性と判明した.イソニアジド(INH)耐性.接触者に有症状者はいなかったが,2カ月後に実施された接触者健診にて,同じクラスの学生20名中16名がIGRA(J3参照)陽性であり,うち3名が発病していた.

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Case

キノロン前投与により診断の遅れた肺結核の1例

患者:85歳,男性.

既往歴:アルツハイマー病,肺気腫,誤嚥性肺炎.

ADL:全介助.

現病歴:自宅で妻と二人暮らし,アルツハイマー病でADLは全介助.半年前にも肺炎で入院歴あり.今回,誤嚥性肺炎の診断で入院.入院前,前医よりガレノキサシンが処方されていた.入院時には抗酸菌塗抹検査は陰性であったが,数日後にPCRで結核菌群が陽性となった.塗抹検査を再検したところ3回目にガフキー1号が検出され,結核専門病院へ転院となった.後日,培養検査の陽性が判明した.嚥下は不可能であり,経鼻胃管での投薬,栄養管理を行っていた.在宅加療となるため胃瘻造設し,治療開始より2カ月後に退院.妻のみでは介護負担が多く,訪問介護,訪問看護を導入し,訪問診療医がイソニアジド(INH),リファンピシン(RFP),エタンブトール(EB)を継続処方している.

院内感染・施設内感染対策 角 勇樹
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 結核に対する知識が医療従事者と患者に不足し,鑑別診断に挙がってこない事態も予想される.咳や痰が出る人に対しては常に結核の可能性を想定すべきである.医療従事者に対する教育,設備整備など組織的な体制整備も必要である.

Editorial

妖怪のせいなのね 松村 真司
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 ポケットモンスター,略してポケモンが不動の地位を占めていた子ども向け人気キャラクターの座を,近年新たに登場した妖怪ものアニメが脅かしていることが話題である.確かに,今年の地元小学校の運動会では,競技の合間にBGMとともに子どもたちが「ようかいたいそう」を踊っていた.デパートに行けば,かつて長蛇の列ができていた赤いボール型ではないほうのマシンに子どもたちの長蛇の列ができている.関連グッズは発売と同時に売り切れ,問い合わせも多いのだろう,売り場には「次回の入荷は未定」と書かれた紙が貼られている.試しに当院の待合室にマンガを置いてみたところ,子どもたちはみな読みかけの本を握りしめて診察室に入って来る.本号が発行されるころには劇場映画も封切られるそうなので,少なくとも当分この人気は続くと思われる.

 ヒットの理由は多々あるのだろうが,その一つが,現代の子どもたちの日常を研究し,周囲で起こる出来事をストーリーの中心にしている点である,といわれている.論理では解決しない現象が,人知の及ばない妖怪という実体により引き起こされ,それが,時計,というありふれた道具を用いて可視化され制御可能になる,というストーリーは確かに魅力的である.車内検札に来た時に限ってさっきまであったポケットに切符がない,保存していない時に限ってパソコンがフリーズし作ったファイルが消えてしまう.そんな日常の出来事がすべて妖怪のせいなら,私もお友達になっておきたいものである.

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病歴

患者:21歳,男性.自衛隊員.

主訴:呼吸苦.

現病歴:半年前(1回目のイベント):受診当日の午前中,10kgの銃や装具を身に着けて普段通りの走行訓練を行っていた.最初は先頭を走っていたが,500m過ぎたところでペースが徐々に落ち最後尾となった.1km付近で停止し,多量の血痰(本人の申告)を認め救急搬送となった.来院時SpO2 74%室内気→90%(15lリザーバー),呼吸数42/分,血圧140/80mmHg,脈拍90/分・整,GCS:E4V4M6,体温36.4℃.胸部X線・CTでは肺胞出血を示唆する所見(図1,2)を認めた.循環器内科医施行の心エコーでは有意な所見なし.気管挿管・人工呼吸管理とし,集中治療可能な高次機能病院にドクターヘリで搬送した.搬送先での気管支鏡所見は肺胞出血に矛盾せず.搬送直後に血圧60mmHg台,心エコーで重度の壁運動低下を認め,カテコラミンを使用したが,翌日には心機能の著明な改善あり,カテコラミンから離脱した.入院5日目に退院となった.その際には「運動誘発性肺胞出血」の診断となり,当院外来で経過観察しており,その後は通常の訓練もしていたが問題はなかった.

 今回,昇級試験のマラソンで1,500m走ったところで同様の喀血,呼吸苦があり,救急搬送となった.

既往歴:生後2カ月で喘息の指摘;自然軽快.

生活歴:喫煙:10本/日×2年,飲酒:なし.

内服歴:なし.

家族歴:兄・弟:気管支喘息.

アレルギー:なし.

Dr.山中のダイナマイト・レクチャー・2

問題3・問題4 山中 克郎 , 寺西 智史
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問題3 以下の患者で可能性の高い疾患を3つ挙げよ.

 23歳女性.8週間以上続く咳のため来院した.

Dr.徳田と学ぶ 病歴と診察によるエビデンス内科診断・4

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徳田:皆さん,こんにちは.この連載では臨床疫学的アプローチを用いた診断プロセスを学んでいきます.症例に基づきながら,レジデントの皆さんとの対話形式で進めていきます.今回は呼吸困難を取り上げます.呼吸困難は臨床現場で遭遇する頻度が高く,重篤度と緊急度の高い疾患が原因となっていることが多いので,とても重要な主訴です.また,呼吸困難は,入院する可能性の高い主訴の一つでもあります.

 呼吸困難とは,「呼吸がつらい」「呼吸が荒くなっている」「呼吸に負担がかかっている」などを自覚することです.呼吸不全,心不全,換気不全などのほか,貧血などの血液疾患や,代償性呼吸性アルカローシスをきたす代謝性アシドーシスなども呼吸困難の原因となります.臓器別に原因を挙げると表1のようになります.

みるトレ

Case 77 岩崎 靖
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Case 77

患者:72歳,男性.

病歴:高血圧と脂質異常症で近医にて加療中である.2日前の午後,散歩中に急に右上下肢に力が入りにくくなった.呂律がまわりにくいことも自覚し,歩行もできなかったが,ベンチに座って安静にしていたところ10分ほどで次第に症状は軽快した.その後は特に自覚症状はないが,念のために神経内科を受診した.

身体所見:血圧142/88mmHg,心拍数72回/分・整.一般内科所見,心電図所見に異常はなかった.意識は清明で,構音障害はなく,脳神経に異常はなかった.筋力低下や巧緻運動障害は明らかでなく,表在感覚,深部感覚に異常は認めなかった.腱反射の左右差も認めなかった.不随意運動や筋強剛は明らかでなかった.初診時の問診表(図1),頭部MRI像(図2),頭部MRA像(図3)を示す.

Case 78 忽那 賢志
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Case 78

患者:60代,男性.

主訴:発熱,咳嗽,呼吸苦.

病歴:COPDにて近医通院中であった.昨日より悪寒戦慄を伴う39℃台の発熱と咳嗽・喀痰を認めていた.近医にてセフカペンピボキシルを処方され経過観察となっていたが,本日になって症状が増悪したため当院に紹介受診となった.

既往歴:10年前よりCOPDのため近医通院中.

身体所見:血圧92/64mmHg,脈拍124回/分,呼吸数24回/分,SpO2 87%(室内気),体温38.9℃.胸部聴診上,右中肺野に吸気終末時のcracklesを聴取した.

検査所見:胸部X線にて右中肺野に浸潤影を認める.

喀痰のグラム染色所見を図1に示す.

Case 79 岩崎 靖
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Case 79

患者:72歳,男性.

現病歴:数年前から不眠と便秘があり,近医にて睡眠導入剤,緩下剤を処方されているが,ほかに特記すべき既往や治療中の疾患はない.1年半ほど前より左手のふるえを指摘されていた.最近,左下肢にもふるえが出現し,歩きにくさも自覚したため受診した.

神経学的所見:意識は清明だが,顔貌は仮面様で,座位では身体が左に傾いていた(図1).構音障害はないが,小声で単調な話し方だった.四肢筋力や深部反射は正常で,病的反射は認めなかった.安静時に左上下肢の振戦を認め,左上下肢に中等度,右上下肢に軽度の筋強剛を認めた.歩行は小刻みで,軽度のすくみ足を認めた.

MIBG心筋シンチグラフィ(図2)を示す.

メンタルクリニック便り・30

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前回は,アスペルガー症候群のためにマルチタスクや臨機応変な対応を求められる職場に転職後,適応障害を起こした男性をご紹介しました.収集癖があり,集団行動や運動が苦手,得意・不得意の落差が大きく,場の空気を読めないといった特徴が揃っていましたし,AQ(自閉症スペクトラム指数)でもカットオフ値を超えていたので,診断にさほど苦労しなかったケースです.しかし,こうした例はむしろ珍しく,「ひょっとしたら発達障害かも?」と疑わないと診断できない,いえ疑って検査してもはっきりと断定できないケースのほうが多いです.

血液内科学が得意科目になるシリーズ・9

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 日常診療で白血球増加に遭遇して,緊張しない先生はいないと思います.

 今回は,見逃してはならない危険性の高い白血球増加と,日常診療で遭遇する頻度の高い白血球増加について,迅速かつ的確な診断を行うための思考プロセスを考えてみましょう.

誰も教えてくれなかった不定愁訴の診かた・14

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 今回は,一般内科外来などのプライマリ・ケア領域における,不定愁訴への初期対応について取り上げたいと思います.

レジデントCase Conference

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◆成人患者の皮疹にはさまざまな鑑別があり,典型的でないことも多く注意が必要である.

シネマ解題 映画は楽しい考える糧[90]

「野性の少年」 浅井 篤
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「野性の少年」の真の幸福を考えると…

 有名な「アヴェロンの野生児」を題材にした作品.18世紀末フランス,ある日森の中で野生状態の少年が発見されました.年齢は11,12歳くらい.3,4歳で殺すつもりで首を切って棄てられたらしいことが判明します.はじめは聾唖施設に収容されますが,周りの子らからは虐められ,愚かな職員はこの子を見世物にして客からお金をせしめる始末.知的障害があると決めつける意見もありましたが,イタール博士は適切な教育をすれば社会復帰できるかもしれないと考え自宅に引き取り,優しい家政婦のゲラン婦人と共に個人教授を開始するのでした.

 本作品では,フランソワ・トリュフォーが自ら演じる医学博士が試行錯誤を繰り返しながら,種々の新しい教育的な試みをヴィクトールと名付けられた野生児に行っていく様子が淡々と描かれます.ヴィクトールは脱走したり癇癪を起したりしながら,少しずつ言語を理解し,人間社会の決まりごとを認識し,人間らしくなっていきました.きっと,教育学的観点から見ると大きな成果の物語であり,学ぶべき教訓が多々あるのでしょう.

掲示板

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日程 2015年2月21日(土)〜22日(日)

会場 東京大学本郷キャンパス 医学教育研究棟第1〜8セミナー室および鉄門記念講堂,他

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 総合診療誌『JIM』をご愛読いただき,誠にありがとうございます.読者ならびに執筆者の皆様の日ごろからのご支援に深く感謝申し上げます.

 『JIM』は来年,誌名を『総合診療』に変更いたします.医療の専門分化が進み日常診療に総合的な視点が求められるなか,25年前に『JIM』は誕生しました.『JIM』創刊時の1991年当時に比べると,今日,医療技術,とりわけ情報技術は急速に発展を遂げる一方で,未曾有の高齢社会はまさに現実のものとなり,その健康問題への対応にはより総合的な視点が求められています.新たな専門医育成の準備も始まり,「総合診療」という分野への社会的な期待も益々高まるとともに,在宅医療の拡大など診療の場も多様化するなかで,各診療現場では,患者の生活面も含めたより広い視野と深い洞察,そして質の確保が求められる時代にもなりました.私たちは,そこに寄与するような真に役立つ総合的な臨床情報の提供という創刊時の志を引き継ぎ,発展させるためにも,よりわかりやすい誌名が必要だと判断いたしました.

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基本情報

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JIM
24巻12号 (2014年12月)
電子版ISSN:1882-1197 印刷版ISSN:0917-138X 医学書院

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