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「PEGは誤嚥性肺炎の治療ではない」.この言葉は経皮内視鏡的胃瘻造設術(Percutaneous endoscopic gastrostomy,以下PEG)の発案者であるPonskyが,1993年に初来日した時の講演で語ったものである.この時点ですでにこのような認識があったにもかかわらず,1999年にFinucane1)が米国の医師会雑誌において,PEGが誤嚥性肺炎のみならず褥瘡をはじめ患者のいずれのQOL改善ももたらさなかったと発表し,国内外でセンセーションを巻き起こしたことは記憶に新しい.このことは,「PEGは誤嚥性肺炎の治療ではない」にもかかわらず,繰り返す誤嚥性肺炎に困り果てた結果,PEGに一縷の望みを託して造設に踏み切るということがいかに多く行われているかを物語っているものと言えよう2).
それでも「誤嚥性肺炎にPEG」という選択がなされる理由として,経鼻胃管に対するPEGの優位性が挙げられる3,4).経鼻胃管は,咽頭・喉頭・食道・噴門部といった胃食道逆流を防ぐための生理的な関門をすべて半開状態にして留置される.したがってPEGは経鼻胃管のもつ欠点を裏返しにした長所をもつということができるが,それ以上のものではないということである.すなわち,胃食道逆流に起因する誤嚥性肺炎の予防という点では,もともと噴門閉鎖不全があって(高度の食道裂孔ヘルニアなど)胃食道逆流がある症例においてPEGはまったく無力である4).そのような「胃食道逆流症例」に対しては,後述のアプローチが必要である.もちろん,胃瘻による栄養管理とリハビリテーションによって全身状態が改善することが,とりも直さず誤嚥性肺炎の予防になる.
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