シネマ解題 映画は楽しい考える糧[90]
「野性の少年」
浅井 篤
1
1東北大学大学院医学系研究科社会医学講座医療倫理学分野
pp.1164
発行日 2014年12月15日
Published Date 2014/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414200124
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「野性の少年」の真の幸福を考えると…
有名な「アヴェロンの野生児」を題材にした作品.18世紀末フランス,ある日森の中で野生状態の少年が発見されました.年齢は11,12歳くらい.3,4歳で殺すつもりで首を切って棄てられたらしいことが判明します.はじめは聾唖施設に収容されますが,周りの子らからは虐められ,愚かな職員はこの子を見世物にして客からお金をせしめる始末.知的障害があると決めつける意見もありましたが,イタール博士は適切な教育をすれば社会復帰できるかもしれないと考え自宅に引き取り,優しい家政婦のゲラン婦人と共に個人教授を開始するのでした.
本作品では,フランソワ・トリュフォーが自ら演じる医学博士が試行錯誤を繰り返しながら,種々の新しい教育的な試みをヴィクトールと名付けられた野生児に行っていく様子が淡々と描かれます.ヴィクトールは脱走したり癇癪を起したりしながら,少しずつ言語を理解し,人間社会の決まりごとを認識し,人間らしくなっていきました.きっと,教育学的観点から見ると大きな成果の物語であり,学ぶべき教訓が多々あるのでしょう.
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