看護管理 28巻3号 (2018年3月)

特集 「最期は家で」の希望をかなえる 在宅看取りの意思を支えるために,病院ができること

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現在,国民の6割が終末期の療養場所として自宅を希望しながらも,病院で最期を迎える人が8割を占めている。本格的な多死社会に移行しつつある中で,「最期は家で」の希望をかなえるために病院看護部がすべきこととは何か。また支障となっていることは何か。

「住み慣れた場所への退院と在宅看取り」を推進していくためには,「誰と組むか」が重要との声も聴く。つまり医療者間のパートナーシップ,信頼に基づく連携が前提となる。

本特集では,在宅看取りの推進における病院側の課題を整理するとともに,地域・在宅に携わる医療者からの事例の共有や提言を基に,地域全体で「最期は家で」の希望をかなえ,在宅看取りを推進する方法を考察する。

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患者が希望する場で人生最期の時間を過ごすことを可能にするために,病院側にできることは何だろうか。意思決定支援や地域との連携などの現状の課題を提示するとともに,遺族を対象に行った調査研究の結果も共有しながら,課題解決に向けた,病院の看護職および看護部による支援の在り方を展望する。

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「最期は家で」という希望をかなえるために,病院看護部が取り組むべきこととは何だろうか。また,その希望の実現を阻むものとは何か。

緩和ケア認定看護師の横江由理子氏は,人生最終段階を迎えた患者への苦痛緩和,意思決定支援に,病院の多職種チームのリーダーとして取り組んできた。そして現在,在宅に場を移し,医師や地域の専門職と連携して在宅ホスピス・ケアを実践する。

患者を擁護し,意思決定を支える「アドボケート・ナース」を指向し続けてきたという横江氏に,在宅で自分らしい最期を迎えるための看護師による支援について,在宅移行支援の第一人者である宇都宮宏子氏が聞いた。

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筆者は医師としてのキャリアを重ねる中で,一貫して,患者に寄り添う地域医療を探求してきた。2008年,栃木県下野市に在宅療養支援診療所を開業し,以来,地域の医療介護福祉専門職と協働して,住民が「最期まで私らしく」生きることを支える。

本稿では,筆者が主宰する勉強会「つるカフェ」などを通じた地域の医療介護福祉専門職の“本音”の関係性を構築する取り組みを紹介する。また,そうした関係性を基盤に,本人の希望に寄り添い在宅看取りをチームで支えた事例を報告する。

事例と提言:地域・在宅の立場から

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「看護小規模多機能型居宅介護」(看多機)では,介護報酬制度に基づき,通い・泊まり・訪問の3種類を,利用者の状態に応じて介護と看護(医療)の両面から一体的・柔軟に提供できる。筆者は看多機の管理者として,人生の最期まで利用者が望む日常生活を営むことを支援している。本稿では,地域・在宅での看取りにおいて看多機が担える役割と,現時点での制度上の課題を示す。また,看多機の機能を活用して,退院後に口から食べることを再獲得し自宅での平穏な看取りが実現した事例を紹介する。

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葵の空訪問看護ステーションは,大規模な急性期病院が近隣に複数存在する東京都豊島区に開設された。緩和ケア認定看護師が3名在籍し,高い専門性に基づく在宅看護を提供している。

本稿では,退院後も揺れ動く患者・家族への意思決定支援を継続した事例を紹介する。事例を通じて,退院前から「最期まで在宅」と意気込むのではなく,試験的に在宅療養に移行する中で最期の場所を選択していく柔軟なプロセスを提案する。

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「西東京市在宅療養連携支援センターにしのわ」は,国の「在宅医療・介護連携推進事業」の1つとして,西東京市に設置された相談窓口である。在宅療養を支える医療・介護関係者間の連携課題の分析を通して,病院と在宅ケアチームのスムーズな連携につながるよう後方支援の役割を担っている。

本稿では,地域病院において地域医療連携に携わった経験と,現在にしのわ職員として地域に出向している立場から,在宅看取りの促進や意思決定支援のあり方,病院と地域の多職種間連携における課題について述べる。

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筆者はがん専門病院の地域医療連携室に退院調整看護師として勤務し,院内外の多職種と連携しながら在宅療養への移行を支援している。本稿では筆者が経験した「医療依存度の高いがん患者が自宅で人生最期の3日間を過ごした事例」を振り返るとともに,事例から学んだ在宅看取りの希望をかなえるために,病院や看護師が担うべき役割を提言する。

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福島県立医科大学会津医療センター附属病院では,2013年の病院開設と同時に外来に「患者支援センター」を設置して専門性の高い看護師など多職種を配置し,2つの医療圏から受診する患者の在宅療養を,地域と広く連携しながら支えてきた。本稿ではセンターに所属する在宅看護専門看護師の立場から,本人の希望による在宅看取りをかなえるために,病院,特に外来に求められる役割と機能を述べる。

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国立長寿医療研究センターでは,2009年から在宅医療支援病棟を開設し,在宅療養中の地域住民が必要に応じて入院可能な病床を用意し,地域医療を支えてきた。2016年には,地域包括ケアへの新たな取り組みとして,退院直後の不安定な時期を過ごす患者・家族を,地域の医療チームと連携して支援するアウトリーチ活動「トランジショナル・ケア」を開始した。本稿では,病院による移行期支援の取り組みを,トランジショナル・ケア看護師の立場から紹介する。

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がんを経験した人と,家族・友人のために,病院外での新たな相談支援を提供する英国のマギーズキャンサーケアリングセンター(以下,マギーズ)。チャリティによって運営されていることも特色の1つだ。寄付をはじめとする資金調達を担う専門家としてファンドレイザーが各センターで活動している。

単なる資金調達に留まらず,組織を成長させ,社会から共感や参画を得るためのプロセスをつくるファンドレイジングという活動の意義を,2017年に英国のマギーズを訪れた経験から,2回にわたり紹介する。後編では,ファンドレイジングの種類と,マギーズにおけるファンドレイザーの役割の特徴を具体的に解説する。

巻頭 大学院で学ぶ看護管理学 現場の実践から新たな「知」を生むために・14

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大学院および分野の特徴や魅力について,教員からご紹介いただきます。

分野の紹介

 大阪府立大学(以下,本学)における看護教育は,1978年の大阪府立看護短期大学の開学に端を発します。その後1994年に羽曳野市に大阪府立看護大学看護学部が開学し,その後2005年に大阪府立大学として大阪府立大学,大阪府立看護大学,大阪女子大学の3大学が統合しました。

 本学大学院看護学研究科(以下,本研究科)は1998年に発足し,2004年より人・環境支援看護学領域の一分野として看護管理学分野の大学院教育がスタートいたしました。2017年3月までに,博士前期課程,後期課程修了者がそれぞれ21名と8名おります。2006年には独自のバーチャル研究所である看護経営システム研究所を,経営学分野の先生方とともに設立され,組織・経営学の専門家とともに研究・教育活動を行っています。

連載 看護の可視化 量と質の両面から適切な評価を考える・3

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本連載では,看護管理者として私自身が取り組んできた「看護の可視化」の実際について,事例と解説を通してひとつずつ紹介していきたいと思います。

第2回では,看護師の配置が患者の安全を守る重要な鍵であることを概観しました。第3回では,看護師の配置状況をどのように測り,評価するかを考えてみたいと思います。

連載 プログラムデザインで変わるファシリテーション あなたのスキルを現場に活かそう・6

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第6回では,例を設定して実際にプログラムデザインを進めていきます。この中で,「プログラムデザインマンダラ」を使う手順や,その際の筆者の頭の中を公開していきたいと思います。

連載 コーチングと組織の関係性システムから考えるコミュニケーション 1人ひとりがイキイキ活きるチーム創り・3

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 本連載は,1対1の「パーソナル・コーチング」と,組織の関係性に働きかける「システム・コーチング®」の2つのスキルや考え方を基盤に,医療現場のコミュニケーションを考えていきます。第3回は,「システム・コーチング®」が生み出した「関係性システム」という概念について,スタッフ同士の関係性に焦点を当てて解説します。

連載 キャリア形成に悩むあなたのためのリレーエッセイ わたしの師長時代・11

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戸惑いの中で看護師長としてのキャリアがスタート

 私が看護師長に昇任するきっかけは,突然やってきた。名古屋市立大学病院は2006年に法人化され,運営母体は公立大学法人である。1993年に看護師長になった当時は名古屋市の1機関で看護職員も公務員だった。そのため看護師長は名古屋市が実施する係長選考試験を突破する必要があり,私は経験10年を経た時点で,軽い気持ちで受験してみたところ,予想外に「合格」となり,そこから私の看護師長時代はスタートした。管理者になることを想定していなかった私は,看護師長に昇格したことに相当な戸惑いを抱えた。患者へ良質な看護を届けることに熱中していた私が,突然「管理する」ことになり,何を,どうやって……。しかも,毎日難問難題が容赦なく降りかかり,悪戦苦闘した。

 しかし,その間の経験と看護管理の学習は私を強くした。直接患者へのケアを自分が実践することは少なくなったが,スタッフを通して看護を届けていることに気づき,逆に看護師長としての面白さにはまってしまった。

連載 ID×課題解決 インストラクショナルデザインを活用した教育プログラム開発・3

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この連載では,インストラクショナルデザイン(ID:Instructional Design)を活用した教育プログラムを作成し現場の課題解決を行った取り組みを,実践事例を交えて紹介していきます。

第3回は,プログラムに必要な3つのテスト(前提・事前・事後テスト)と,入口(学習者分析)の状態から出口(学習目標)に到達するまでの間に何を習得すべきかを分析する「課題分析」について解説します。

連載 人生の終わりの日々のケアを訪ねて・3

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自然で穏やかな死,の続きです。グループホームで暮らしていた健康自慢の五郎さんは,92歳の春ごろから足が急に弱り,飲食量が減って痩せていき,熱が出たときは点滴をし,反応が乏しくなり,尿量が減り……あちらの世界に移っていく気配が濃くなりました。

 6月,グループホームのスタッフは「そろそろその時が近い」という判断で,訪問診療を頻回に依頼しました。「医師の診察から24時間以内なら検死扱いにならないので,落ち着いた日中に訪問診療を」と家族と相談していたのです。

連載 今さら聞けないビジネスフレームワーク・3

重要成功要因とKPI 石井 富美
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 第1回,第2回ではSWOT分析とクロスSWOT分析を取り上げました。これらを行って導き出された戦略によって,やるべきことが明確になり,さらに,やらなくてもよいことや,やるべきではないことも明確になります。

 本来,事業計画とはやってみたいことを書くのではなく,やるべきこと,成果を出すことを明確に示し,その実行に向けて戦略と戦術を記していくものです。戦略同士の関連や優先順位,手順を示した具体的な事業計画を立てるためにも,SWOT分析で十分な環境分析を行い,たくさんの要素を書き出すことと,それを基にさまざまな要素を組み合わせたクロスSWOT分析を行い,ストーリーをつなげていくプロセスが重要になります。

連載 おとなが読む絵本——ケアする人,ケアされる人のために・141

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 絵本作家が文学講演をすると言われると,どんなことを話すのだろうと戸惑いを感じる人が少なくないだろう。私はまったく違和感を抱かないどころか,むしろ興味津々なのだが。

 東京の近郊にある埼玉県の三郷市は,子どもも大人も心の豊かな暮らしをするまちにしようと,5年前に「日本一の読書のまち三郷宣言」をして,毎年年間を通して,学校と地域でさまざまな読書普及の活動をしている。その1つとして,今年は1月下旬に読書ウイークを設け,初日に文学講演会を開いた。その講師に招いたのが,どうぶつ絵本作家のあべ弘士さんだった。

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組織変革の荒波を乗り越えるための「かじ取り」の方法をひもとく

重要なのは前向きな態度と心構え

 看護管理者が組織変革を起こすために,今ある従来の方法を否定せずに,それ以上の成果を求めてチャレンジするには,柔軟な思考と時間とエネルギーが必要です。だからこそ,管理者の前向きな態度と心構えが重要になります。一方で,変革を起こすことは,組織内のメンバーにとっては負担になり,抵抗勢力もあるなど,葛藤が起こることも否めません。

 組織変革には,これらを乗り越えるために管理者がどのようにかじ取りをしていくのかという課題がつきものです。本書は,組織変革をどのように進めていけばよいのかを,読者に柔らかく語りかけるように分かりやすくひもといています。

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目次

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今月の新刊紹介

バックナンバーのご案内

次号予告・編集後記 小齋 石塚

基本情報

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看護管理
28巻3号 (2018年3月)
電子版ISSN:1345-8590 印刷版ISSN:0917-1355 医学書院

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