作業療法ジャーナル 55巻3号 (2021年3月)

特集 脳腫瘍と作業療法

  • 文献概要を表示

特集にあたって

 脳腫瘍の症状は多彩です.腫瘍の部位により,四肢の麻痺,感覚障害,運動失調,視野障害,高次脳機能障害等が生じ,運動療法や高次脳機能訓練の適用となります.周術期,化学療法や放射線療法の時期,さらには再発や進行により症状が増悪する時期等,一連の経過の中で,機能訓練,ADL訓練,廃用予防,家庭復帰や就労に向けた支援,病状増悪時の心理的支援や家族支援等,各時期に応じた作業療法の効果的な介入が期待されます.

 脳腫瘍の特性を理解したうえで,機能予後と生命予後に応じた適切な目標設定を行い,効果的な作業療法を行うための情報を提供することを目的に,本特集を企画しました.OTだけでなく,脳神経外科医,リハビリテーション科医,ソーシャルワーカー,患者家族会等,脳腫瘍患者にかかわる多くの職種や立場から,脳腫瘍の特性や脳腫瘍患者を理解するために必要なことを書いていただきました.

  • 文献概要を表示

Key Questions

Q1:悪性脳腫瘍で最も多い神経膠腫の治療法は何か?

Q2:術後に悪化,新出する神経症状の予測に有用なのは何か?

Q3:悪性脳腫瘍患者に対するリハビリテーション,作業療法の特殊性は何か?

はじめに

 私が専門とする悪性脳腫瘍は,髄膜腫や神経鞘腫といった良性脳腫瘍の多くが脳実質外に発生するのと対照的に,脳実質内に発生する.しかるに,良性脳腫瘍以上に多彩な神経症状を呈して発症することが多く,また腫瘍摘出に際しては,脳実質に切り込むため術後に神経症状が悪化するリスクが高い.さらに,全摘出すれば後療法なく治療終了となる良性脳腫瘍と異なり,悪性脳腫瘍では,脳実質に浸潤する腫瘍細胞の残存,あるいは播種・転移の可能性に対し放射線療法や化学療法による後療法が必須であり,腫瘍も再発しやすいため,闘病の過程で神経症状が悪化しやすい.したがって,悪性脳腫瘍の患者が良質な生活を維持するにあたりリハビリテーションは必須であり,がん治療の有効性評価には,腫瘍制御,生命予後の観点のみならず患者の生活の質の観点も重要であるという認識が広まった今,リハビリテーションは悪性脳腫瘍治療の一つといえよう.

 本稿では,悪性脳腫瘍の診断と治療について,また悪性脳腫瘍患者に対するリハビリテーション,作業療法の重要性について,神経膠腫に焦点を当てて概説する.

  • 文献概要を表示

Key Questions

Q1:悪性脳腫瘍患者に生じる症状や障害にはどのようなものがあるのか?

Q2:悪性脳腫瘍患者のリハビリテーション治療上の課題とは?

Q3:退院後や終末期はどのようなサポートがあるのか?

はじめに

 脳腫瘍は,脳の細胞や神経・脳を包む膜から発生する原発性脳腫瘍と,肺がんや乳がん等が脳に転移する転移性脳腫瘍に大別される.近年,治療法の進歩により,脳腫瘍患者の生存率は向上している.しかし,患者の多くは神経学的障害があり,身体的,認知的,心理社会的障害を伴うために,日常生活の活動や参加が制限されているという現実がある1,2).これまでの報告では,悪性脳腫瘍患者は入院中のリハで脳卒中や外傷性脳損傷患者と同等の機能改善が得られることが示唆されている3,4).しかし,稀少がんでもある原発性脳腫瘍はそのエビデンスも限られている.

  • 文献概要を表示

Key Questions

Q1:脳腫瘍周術期の作業療法評価とは?

Q2:脳血管障害の作業療法との違いとは?

Q3:患者,家族,医療従事者が共感できる場とは?

はじめに

 脳血管障害の作業療法教育は養成校,そして卒後教育に至るまで充実しており,情報量・教材とも豊富である.一方で脳腫瘍については,「脳血管障害の作業療法と似ている」という認識が一般化しつつあり,卒後教育は各施設や個人の努力に委ねられているのが現状である.

 脳腫瘍に対する作業療法実践を知る手がかりとして,これまでの日本作業療法学会の演題内容を渉猟してみると,実に興味深いことがわかった.2006〜2017年(平成18〜29年)の期間で「がん関連演題」は288演題あり,がん種類別で最も多かったのは乳がん(28%),次いで脳腫瘍(12%)であった1).また,第52回日本作業療法学会(名古屋,2018)では,脳腫瘍に特化したセミナーが開催され,約150名の参加があったことは記憶に新しい.さらに2017年には「専門作業療法士(がん)」(日本作業療法士協会)が新設され,そのカリキュラムの中に「原発性脳腫瘍・転移性脳腫瘍と作業療法」が90分の講義として位置づけられている.

 以上のことから,日本のOTは少なからず脳腫瘍の臨床に従事しており,その関心は高まっている.本稿では当院の脳腫瘍周術期における作業療法の実践を解説するとともに,われわれOTの役割について考察する.

小児脳腫瘍の作業療法 田畑 阿美
  • 文献概要を表示

Key Questions

Q1:小児脳腫瘍の特徴とは?

Q2:小児脳腫瘍の作業療法評価で必要なことは?

Q3:脳腫瘍の子どもと家族の支援で作業療法士に求められることは?

はじめに

 本邦における小児脳腫瘍の発生数は年間300人程度1)で,脳腫瘍全体の7.4%と稀少がんに位置づけられる(脳腫瘍全国集計調査報告).その一方で,小児がんの中では小児血液腫瘍に次いで多く発症し,小児がん全体では約16%を占める2).診断,治療技術の進歩に伴い,小児がんの70%以上の患者が長期生存を望める時代となった現在3),生命予後だけではなく,生活の質(quality of life:QOL)を考慮した治療や支援が必要である.

 本稿では,小児脳腫瘍の治療や晩期合併症等,小児脳腫瘍の医学的特徴を述べたうえで,評価,介入等,作業療法でのかかわりについて事例紹介を交えて述べる.

  • 文献概要を表示

Key Questions

Q1:一般的な脳損傷者に対する支援との違いは?

Q2:復職に影響する要因は?

Q3:就労支援のポイントとOTの役割とは?

 脳腫瘍患者に対する就労支援をどのように行えばよいのか,OTとして何をすべきか,という問いへの答えは十分示されていない.本稿では,原発性悪性脳腫瘍のうち最も頻度の高い神経膠腫を念頭に置き,脳腫瘍患者の就労支援について述べるとともに,退院後の支援や症状増悪時の療養支援についても触れ,OTの役割を考えるきっかけを提供したい.

終末期の症状と緩和ケア 草場 正彦
  • 文献概要を表示

Key Questions

Q1:脳腫瘍患者が終末期に呈する症状は?

Q2:脳腫瘍患者と介護者のニーズは?

Q3:脳腫瘍患者と介護者に対する緩和ケアと意思決定支援とは?

はじめに

 脳腫瘍患者は腫瘍の部位に応じたさまざまな症状を呈する.終末期になると,さらに多くの症状を呈し,患者や介護者の苦痛が大きくなることが多い.また,意識障害や認知機能障害が出現すると,患者自身が症状を訴えることが難しくなる.より適切な緩和ケアを実践するためには,患者の呈する症状や患者や介護者のニーズを事前に知ることがとても重要である.

 本稿では,①脳腫瘍患者の終末期の症状,②患者と介護者のニーズ,③緩和ケア,④意思決定支援(advanced care planning:ACP)について先行研究を基に述べ,今後の課題について言及する.

  • 文献概要を表示

 疾病や障害に伴って発生する生活課題は多岐にわたる.中でも身体機能に加え高次脳機能障害も呈する脳腫瘍は,患者や家族の生活をしづらく変化させてしまうことがあるが,それらの一部は社会資源を利用することで多少緩和できることもある.ここでは脳腫瘍患者が利用できる社会資源に加え,就労や療養先についても触れていく.

  • 文献概要を表示

 原発性脳腫瘍の診断を受けた患者は,自分のために急きょ結成される医療チームに支えられつつも,短期間での大きな意思決定を余儀なくされます.日本では原発性脳腫瘍は希少がん(原発性脳腫瘍の中で最も患者数の多い神経膠腫でさえ,年間10万人当たり6例未満)であり,発症率の多いその他のがんに比べ,薬剤開発がはるかに遅れています.2021年(令和3年)1月現在,神経膠腫の中でも悪性度の高い,初発の膠芽腫(glioblastoma:GBM)に対して臨床ガイドラインで推奨レベルが最も高い(エビデンスレベルがA)薬剤はテモゾロミドのみ1)で,脳腫瘍全体に対して承認されている薬剤も数剤のみです.また,治療は可能なかぎり開頭手術により腫瘍を摘出をすることとなっています.がんにより,命の危機に瀕することは,誰にとっても恐怖といえますが,脳腫瘍患者には開頭手術もまた大きな不安要素として加わります.

  • 文献概要を表示

 1997年夏,次女が悪性脳腫瘍と診断され,余命を告げられた.主治医はいとも簡単に「治療方法はありません.余命は半年.残りの時間を楽しく過ごすことしかありません」と言った.冷たい言葉だとその瞬間は強く反発したが,後にこの「家族で楽しい時間を過ごす場〜こどもホスピス」の開設活動に奔走することになるとは,何という運命だろう.

 医師の言葉通りに,娘の意識がなくなる前日まで,家族で一緒に小旅行を楽しんだ.帰宅すると容体が悪化し,入院後に呼吸が止まり,人工呼吸器をつけたが,やがて脳死状態になった.そこから呼吸器を外すまでの時間,外す日を決める決断に,医療関係者がしっかりかかわってくださったおかげで,親として,子どもに代わる代諾ができた.寄り添いの気持ちが,自分自身の悲しみからの立ち直りを早めたように思う.これこそが緩和ケアだったと感謝の気持ちにつながった.わが国では「小児慢性特定疾病医療費助成制度」を利用できるが,小児がん等,重篤な病気・病態の子どもと家族には利用できる支援制度が少なく,子どもと家族は,病院と自宅の空間での介護生活で,社会から切り離されていく.

わたしの大切な作業・第35回

  • 文献概要を表示

 人生で一番長く続けている作業は、読むことと書くこと。作業というよりは趣味で、現在は仕事にもなっている。

 物心ついたころから文字の羅列に興味を持っていた。新聞、薬の説明書、読めない漢字は飛ばして、わかる文字を目で追った。特に理由はない。そこに山があれば登る人がいるように、文字が並んでいると読まずにいられなかった。

  • 文献概要を表示

 これからの時代を担うOTは,「対象者の満足をマーケティング思考で追求する」ことが必要であると感じています.私がそう感じるようになったのは,22年の臨床経験で形成された私の作業療法の価値観と,経営大学院で学んだマーケティングとの親和性の高さによるものです.

 まず,私の臨床経験を振り返ります.私は1998年(平成10年)にOTの養成校を卒業し,自宅から車で約1時間の距離にある老人保健施設(現在の介護老人保健施設)に入職しました.当時としてはめずらしくない1人職場でしたが,最も苦悩したのは「OTと一緒に働いたことがある職員がいない」ということでした.私はそこで,今ではほとんど見聞きすることがなくなったアイデンティティ・クライシスを自覚します.

  • 文献概要を表示

前編は見逃していませんか? 澤田辰徳先生,竹林 崇先生をお迎えした鼎談の後半をお届けします.今回は,治療の「量」から始まって,お二人が若い世代のOTにかける思いを語ってくださいました.中村先生はそれをどう受け止めるか.学びの大切さ,発信の大切さ,今回の対談から作業療法の未来に思いを馳せていただければと思います.(編集室)

あなたにとって作業療法とは何ですか?・第75回

  • 文献概要を表示

 「礎(いしずえ)」とは,物事の基礎となる大切なもの,最も基本的な土台.高校3年生のころ,将来の進路について考えていたとき,「作業療法」という言葉に出会った.

 人や動物,生きて動いているものにかかわる仕事がしたいと話す,一風変わった私を見た母親から「作業療法っておもしろそうよ.八衣子さんに合っているかもね?」と言われたと思う.まあ,「理学」よりは,「作業」のほうが,楽しそうだし細かいことも嫌いじゃないしな…….その程度の理由と思い込みで選択した進路だった.振り返ると卒業後は,「作業療法」が人生の多くを占めていた.「作業療法」で培った経験,迷い悩み喜びや悲しみ,考えた抜いた末の成功や失敗,作業の魅力や力など,すべて対象者である患者さんや先輩・同僚から教えてもらった.このすべてが私の考え方の根幹「礎」となっている.

講座 子どものあやし方,褒め方,叱り方,励まし方・第1回【新連載】

  • 文献概要を表示

はじめに

 本講座では,子どもの作業療法をより楽しく,効果的に実施するために,最も身近な技術ではあるが,時にとても難しい技術でもある,あやす,褒める,叱る,励ますことについて解説する.経験の浅いOTが治療環境を工夫していくうえで役立つ材料になれば幸いである.本講座のシリーズは,今回の総論的な内容(第1回)に加え,より実践的な内容として,自閉スペクトラム症児(第2回),重症心身障害児(第3回)の作業療法場面を取り上げ,そして家族支援の視点(第4回)の計4回で構成されており,ぜひとも参考にしてもらいたい.

シリーズ ポストコロナ社会を考える—変わるもの,変わらないもの

ポストコロナへの展望 玄侑 宗久
  • 文献概要を表示

 新型コロナウイルスによる感染が終息しない.書いている今(師走の末)と掲載時での時間差で,どうなるかは分からないものの,そう簡単には終わりそうにない,というのが現在の実感である.

 いつかは終わると楽観して「ポストコロナ」を考えるわけではない.ここでの思考こそがコロナウイルスの終息を呼び寄せる,との思いで標題の内容について考えてみたい.

  • 文献概要を表示

 コロナ禍は医療教育のあり方も変えようとしている.2020年の新型コロナウイルス感染症拡大により,多くの養成校は臨床実習の中止を余儀なくされた.学生が患者と実際に接して学ぶ臨床実習.この貴重な機会をどう確保するか.そこで試みられたのがオンラインシステムの活用等である.本欄では2号にわたり,いくつかの養成校から2020年度の対応を紹介いただく.(編集室)

連載 作業療法を深める・第51回

孤独死防止と自己変容 結城 康博
  • 文献概要を表示

はじめに

 昨今,「お隣さんが『孤独死』だったみたいで,5日後にやっと発見されたらしいわ!」と,「孤独死」,もしくは「孤立死」という事件がめずらしい事象ではなくなった.しかし,「孤独死」と聞くと,暗い,寂しい,つらいといったイメージを多くの人が抱くに違いない.「何とか防げなかったのだろうか?」と.

 このような孤独死予防策の1つに,地域の見守り活動の重層化が挙げられる.しかし,本稿では,自身の生き方の変容を中心にしながら,孤独死防止について論じていきたい.

連載 脳損傷者への就労支援—対象者のデータベース化と多職種による支援の試み・第11回【最終回】

  • 文献概要を表示

当院での就労支援における心理士のかかわり

 当院では1990年(平成2年)の開設当初より臨床心理士(公認心理師)が在籍し,リハ部の一員としてチームでアプローチしている.近年は高次脳機能障害の評価・対応が業務のほとんどを占める.高次脳機能障害は症状に個別性が高く,見た目ではわからない,目に見えない障害であり,家族・会社といった周囲の人も,本人さえもその存在を的確に理解しづらいことがある.また,急性期〜回復期の入院生活では,与えられた枠組みの中で活動するため,さほど高度な認知機能を必要とする場面はなく,問題が顕在化しにくい.そのため面会する家族にも気づかれないことも多いが,退院後の在宅生活や仕事上で支障をきたす症状もある.こういった症状の有無のわかりにくさや,本人も障害の存在に気づきにくい点に支援の難しさがあり,元の生活や職場に戻ればまた同様にできると訴える患者が多い1).障害の認識の問題は職場でのトラブルに発展しかねないため,本人と職場が適切に障害を理解して本人の強みを活かすためには,リハ医療の働きかけが必要であり,到達目標として患者が自ら周りに障害について説明できるように支援することが望ましいとされている2)

 また,高次脳機能障害を生じた患者の心理面もさまざまである.仕事や役割,人生の目標や自己肯定感を喪失することで,不安,抑うつ,過敏性,他者への不信,絶望感,無気力,怒り,恐怖心,社会的ひきこもり等の心理反応が生じる3).精神的に不安定な状態は認知機能の低下にもつながりやすく,リハへの意欲や動機づけも低くなり,リハの十分な効果が期待できない.

連載 老いを育む・第10回

魂の痛み 柏木 哲夫
  • 文献概要を表示

トータルペイン——全人的痛み

 世界のホスピスの母と言われているシシリー・ソンダース博士(Cicely Saunders, 1918-2005)は末期患者の痛みを“Total Pain”(トータルペイン,全人的痛み)として説明しました(図 1).末期患者は身体的苦痛だけではなく,不安やいらだち等の精神的苦痛,仕事上の問題や経済上の問題等の社会的苦痛,それに人生の意味への問いや,価値体系の変化等の霊的苦痛を経験します.英語でいえば,physical,mental,social,spiritualとなります.

“不”定期連載 北村薫の図書室・第5回

  • 文献概要を表示

 2020年(令和2年)11月3日,日本リハビリテーション・カウンセリング研究会の第1回となる学術大会が開催された.本研究会は2019年(令和元年)2月に発足した多職種向けの研究会である.研究会の方針は,①リハビリテーション分野において認知行動療法をはじめとした精神心理療法のエッセンスを取り入れクライエントの意思を引き出すこと,②認知行動療法(以下,CBT)の知識・技術を共有基盤とした多職種連携を円滑にすることとしている.

 大会のテーマは「人間性と身体性—リハビリテーションは興味と共感を持つことから」であった.テーマからもわかるように,人を包括的に捉えるために,われわれが今後考えていく必要があることについて検討する大会であった.

  • 文献概要を表示

Abstract:本研究は,統合失調症者の認知機能障害の特徴と,作業技能に影響する可能性がある認知機能障害を検討することを目的とした.統合失調症者28名を対象として,運動技能とプロセス技能評価(AMPS)および統合失調症認知機能簡易評価尺度日本語版(BACS-J)を用い,相関分析やAMPS自立群と非自立群による比較検討を行った.その結果,BACS-Jの運動機能とAMPS運動技能(rs=.398),BACS-Jの注意と情報処理速度とAMPSプロセス技能(rs=.418)の間に有意な相関を認め,AMPS自立群・非自立群による比較では,BACS-Jの注意と情報処理速度に有意な差を認めた.注意と情報処理速度が,作業技能に影響する可能性のある認知機能障害であることが示唆された.

  • 文献概要を表示

Abstract:強制把握は,触覚性刺激により把握反射が誘発され,いったんつかむと自分では離せず,日常生活において大きな障害となる.今回,脳梗塞発症後,右利き手の強制把握,保続,失語症を呈し,食事全介助となった患者を担当した.当初は左手を利き手に用いる訓練を行っていたが,効果はなかった.しかし作業療法開始時より,意図した動作では,右手に強制把握が出現しなかったことを考慮し,食事自立に向け,①掌側の手・指へ摩擦刺激を与え,感覚刺激に慣れてもらう強制把握低減訓練,②患者の意志の実現のため,右利き手でスプーンを持って行う摂取動作訓練,③両手を用いた作業を導入した.介入1カ月で強制把握は認めず,自力でスプーンを把持し,摂取は可能となった.

 要因は,連続的な摩擦刺激で,表在感覚の閾値が上がり,強制把握が低減した状態で,患者の意志に沿う積極的な右手の使用を進めたことで,“使える手”と再認識し,自力での食事摂取を可能としたと考えた.

昭和の暮らし・第51回

  • 文献概要を表示

 今回の写真は,先月号の隣に展示してある子どもの遊びをテーマにしたコーナーで,水遊びや砂場遊びに使われる玩具と,キャラメルのおまけ等である.

 金魚の形をした玩具は,水に浮かべて遊ぶ浮きもの玩具であり,中に小石が入っていて,振るとカラカラと音が鳴る鳴りもの玩具でもある.また,写真中央の持ち手と注ぎ口の付いた金魚は,ジョウロとして水遊びに使われる.

--------------------

目次

表紙のことば/今月の作品

第56巻表紙作品募集

Archives

学会・研修会案内

研究助成テーマ募集

次号予告

編集後記 西出 康晴
  • 文献概要を表示

 協会の「がん」専門作業療法士の制度設計の際,がん患者に携わる専門作業療法士の方との出会いは,貴重な経験であった.がん患者に携わる作業療法士の専門性の確立のための会議は,日本,そして世界でのがん治療の知識と自らの現場での経験を出し合い,アカデミックで情熱にあふれる時間であった.その中で,「がん患者」へのチームアプローチにおける作業療法の役割・重要性等について,多くの情報をもらい,あたかも自分が経験したことのように思えるくらい引き込まれた.「脳腫瘍」における作業療法の知識等もずいぶん教えていただいた.本特集は,がんのリハビリテーション,そして脳腫瘍患者への作業療法が,体系化され,より効果的な作業療法へと進化していることがうかがえる内容であり,会議のときの感覚が蘇るように感じた内容であった.

 また本号では,個人的にずっと心待ちにしていた,岸本光夫氏企画の講座「子どものあやし方,褒め方,叱り方,励まし方」をお薦めしたい.発達障害児の治療において主たる治療手技ではないが,なくてはならない作業療法士のスキルといっても過言ではない.ある意味,コミュニケーションの手段であり,治療を支える基盤であると同時に,治療の良し悪しを左右する重要なポイントにもなり得るものとも感じている.「あそこで,もう少し落ち着くのを待ってから,次の場面展開に移っていれば……」,「あそこの場面でしっかり褒めておけば……」と同じような反省は幾度となくしたことか.

基本情報

09151354.55.3.jpg
作業療法ジャーナル
55巻3号 (2021年3月)
電子版ISSN: 印刷版ISSN:0915-1354 三輪書店

文献閲覧数ランキング(
4月12日~4月18日
)