連載 脳損傷者への就労支援—対象者のデータベース化と多職種による支援の試み・第11回【最終回】
就労支援における臨床心理士のかかわり—高次脳機能障害のある患者に対して
築山 裕子
1
,
山本 真裕美
1
,
武原 格
1
Yuko Tsukiyama
1
,
Mayumi Yamamoto
1
,
Itaru Takebara
1
1東京都リハビリテーション病院
pp.284-288
発行日 2021年3月15日
Published Date 2021/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5001202445
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
当院での就労支援における心理士のかかわり
当院では1990年(平成2年)の開設当初より臨床心理士(公認心理師)が在籍し,リハ部の一員としてチームでアプローチしている.近年は高次脳機能障害の評価・対応が業務のほとんどを占める.高次脳機能障害は症状に個別性が高く,見た目ではわからない,目に見えない障害であり,家族・会社といった周囲の人も,本人さえもその存在を的確に理解しづらいことがある.また,急性期〜回復期の入院生活では,与えられた枠組みの中で活動するため,さほど高度な認知機能を必要とする場面はなく,問題が顕在化しにくい.そのため面会する家族にも気づかれないことも多いが,退院後の在宅生活や仕事上で支障をきたす症状もある.こういった症状の有無のわかりにくさや,本人も障害の存在に気づきにくい点に支援の難しさがあり,元の生活や職場に戻ればまた同様にできると訴える患者が多い1).障害の認識の問題は職場でのトラブルに発展しかねないため,本人と職場が適切に障害を理解して本人の強みを活かすためには,リハ医療の働きかけが必要であり,到達目標として患者が自ら周りに障害について説明できるように支援することが望ましいとされている2).
また,高次脳機能障害を生じた患者の心理面もさまざまである.仕事や役割,人生の目標や自己肯定感を喪失することで,不安,抑うつ,過敏性,他者への不信,絶望感,無気力,怒り,恐怖心,社会的ひきこもり等の心理反応が生じる3).精神的に不安定な状態は認知機能の低下にもつながりやすく,リハへの意欲や動機づけも低くなり,リハの十分な効果が期待できない.
Copyright © 2021, MIWA-SHOTEN Ltd., All rights reserved.