特集 脳腫瘍と作業療法
コラム:生きる力を支える世界のこどもホスピス
田川 尚登
1
1認定NPO法人 横浜こどもホスピスプロジェクト
pp.260-261
発行日 2021年3月15日
Published Date 2021/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5001202439
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1997年夏,次女が悪性脳腫瘍と診断され,余命を告げられた.主治医はいとも簡単に「治療方法はありません.余命は半年.残りの時間を楽しく過ごすことしかありません」と言った.冷たい言葉だとその瞬間は強く反発したが,後にこの「家族で楽しい時間を過ごす場〜こどもホスピス」の開設活動に奔走することになるとは,何という運命だろう.
医師の言葉通りに,娘の意識がなくなる前日まで,家族で一緒に小旅行を楽しんだ.帰宅すると容体が悪化し,入院後に呼吸が止まり,人工呼吸器をつけたが,やがて脳死状態になった.そこから呼吸器を外すまでの時間,外す日を決める決断に,医療関係者がしっかりかかわってくださったおかげで,親として,子どもに代わる代諾ができた.寄り添いの気持ちが,自分自身の悲しみからの立ち直りを早めたように思う.これこそが緩和ケアだったと感謝の気持ちにつながった.わが国では「小児慢性特定疾病医療費助成制度」を利用できるが,小児がん等,重篤な病気・病態の子どもと家族には利用できる支援制度が少なく,子どもと家族は,病院と自宅の空間での介護生活で,社会から切り離されていく.
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