作業療法ジャーナル 52巻11号 (2018年10月)

特集 身体障害のある方の運転を再考する

藤田 佳男 , 江藤 文夫 , 澤 俊二
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特集にあたって

 2017年版(平成29年版)の運転免許統計(警察庁交通局運転免許課)によると,約20万件の身体障害者用車両や義肢使用の条件付き免許が交付されており,免許保有者が多い都道府県では1万人以上の身体障害者が運転免許を保有している.本誌では運転に関して2002年(平成14年),2015年(平成27年),2017年に特集,2011年(平成23年)に連載が掲載されているが,その多くは脳卒中や認知機能(高次脳機能)障害に焦点が当てられている.また近年の学会では運転関連演題は増加しているものの,身体機能に焦点を当てた報告は少ない.われわれは,運転に必要な認知・予測・判断に続く「操作」の部分について専門的な評価,指導を行い,発展させているであろうか?

 これらの疑問を基に本特集では運転支援の歴史を振り返り,身体障害や操作に特化した最新の知見や実践例,および今後を踏まえて自動運転についてご紹介いただくこととした.企画担当としては,パーキンソン病等の神経筋疾患や切断等の,OTによる実践例も紹介いただきたいところであったが,紙幅の都合により次回の楽しみとしたい.

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Key Questions

Q1:身体障害者に対する運転免許制度はどのように変わってきたか?

Q2:日本での運転リハビリテーションはどのように始まったか?

Q3:作業療法士が運転に関与しはじめたのはいつか?

はじめに

 日本におけるOTの自動車運転への関与は,記録にあるかぎり1980年代前半より始まっているが,一部の施設ではそれ以前にも行われていたものとみられる.その後さまざまな施設で自動車運転支援が開始されたが,当初は周囲の理解も十分でなく,2005年(平成17年)前後まで組織的・継続的な取り組みは少なかった.しかし,社会状況の変化や運転に関する医療系研究会の設立等により取り組みが推進され,2017年(平成29年)の調査によると550カ所近くの施設が自動車運転に関与しており,指定自動車教習所(以下,指定教習所)と連携して実車評価を行う施設も210カ所を超えている.

 これを見るかぎり,ここ10数年で自動車運転支援は広がりをみせたといえる.しかし,学会等での報告は脳疾患が大半であり,整形外科疾患や神経筋疾患は驚くほど少なく,疾患に関係なく支援が行われているかどうかは明らかでない.特に切断や脊損等,整形外科疾患(いわゆる肢体不自由)については,運転リハビリテーション(以下,運転リハ)のルーツであるにもかかわらず,適切な支援が受けられないまま運転を再開している例も見受けられる.

 そこで本稿では,障害者の運転および作業療法のかかわりについて,創成期から,取り組みが広がった2000年代初頭までを振り返り,運転を中心とした地域での移動性を支援する専門性について再確認することを目的とする.

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Key Questions

Q1:パーキンソン病患者の自動車運転の現状は?

Q2:パーキンソン病患者の自動車運転について,疾患病態の観点より知っておくべきことは?

Q3:パーキンソン病患者の自動車運転について,突発的睡眠の観点より知っておくべきことは?

はじめに

 神経疾患患者を取り巻く自動車運転に関する問題が社会的関心を集めている.2014年(平成26年)6月1日,道路交通法が改定され,一定の症状を呈する病気等にある者を診断した医師は,公安委員会へ任意でその旨を届出することができることとなった(表1).「一定の症状を呈する病気等」にはパーキンソン病およびその類縁疾患は含まれていない.しかし,この「一定の症状を呈する病気等」には「重度の眠気の症状を呈する睡眠障害」および「自動車等の安全な運転に必要な認知,予測,判断又は操作のいずれかに係る能力を欠くこととなるおそれがある症状を呈する病気」が該当する.

 パーキンソン病やその類縁疾患は,そもそも運動障害を主徴とする疾患であるため,自動車運転にはその技術が問われる.また日中過眠を呈することもよく知られているうえに,運動症状の改善目的に行われるドパミン補充療法には突発的睡眠の警告があることから,運動障害以外にも睡眠障害の観点からも適切な対応が求められる.特に薬剤性に生じる突発的睡眠による自動車運転事故の問題は注目度も高く1),治療の継続性にも影響する重大な問題であることから,臨床的には対応が困難なこともしばしば経験される.したがってパーキンソン病とその類縁疾患の自動車運転問題は,特に本邦では単に技能評価や技術支援をすればよいというものではなく,運転そのものの可否をも含めた極めて複雑な問題である.発症好発年齢から新たに普通運転免許を取得する患者には相談を受けることは滅多にないが,運転免許の更新もまた相談を受けることは通常経験されない.むしろこうした問題とは無関係に通常の手続きにより行われていることが一般的であろう.相談を受けることがあったとしても,各患者と主治医とで外来診療のかたわらで行われていることが通常と思われる.そこに一定の決まりや規則は存在しない.とかく法的に規制のある他の疾患や運動技術の問題が主体の疾患とはまるで異なる様相を呈する問題である.本稿ではパーキンソン病とその類縁疾患の自動車運転に関して,まずは現場での理解と患者啓発が重要であり,近年の本邦および海外での現状を総説する.

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Key Questions

Q1:脊髄損傷者にとっての自動車運転とは?

Q2:自動車関連動作とADL動作との関連性は?

Q3:頸髄損傷者の自動車訓練の実際は?

はじめに

 近年のバリアフリー化に伴い,車いすで利用できる環境も整備されているが,車いすユーザーである脊髄損傷者の中には,通勤時間帯が混雑する,車いすの経路では遠回りになる等の問題により,自動車運転を希望する者が多い.神奈川県総合リハビリテーションセンター(以下,当センター)は,脊髄損傷専門病棟と障害者自立支援施設を有し,今まで40年以上にわたって脊髄損傷者の自動車運転支援をしてきた1).頸髄損傷者の自動車運転獲得に向けたリハは,両施設にて年単位でのかかわりとなることも多い.脊髄損傷者の自動車運転に携わるOTは,自動車関連動作に必要となる身体的な要素とともに,ADL動作との関連性も踏まえておく必要がある.また,身体面だけでなく,自動車や車いすといった環境面にも配慮しながら支援をしていくことが求められる.本稿では,頸髄損傷者の自動車運転について,運転可能となる損傷レベルを踏まえたうえで,日常生活動作との関連性,実際の介入方法について述べる.

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Key Questions

Q1:脊髄損傷者に対する運転支援の実際は?

Q2:脊髄損傷者が希望する運転支援とは?

Q3:脊髄損傷者の障害に応じた運転リスクや支援とは?

はじめに

 ニュースに自動運転の話題があたり前のように報じられる時代となった.つい10年ほど前であれば,まさしく夢のような話であったことが現実のものとなってきている.2020年の東京オリンピックでも自動運転のバスやタクシーを運行させる構想があるという.これら自動運転の話題は,高齢者および認知症者にまつわる交通事故の報道が増えている1,2)ことと無関係ではないだろう.

 本邦でも高齢者の将来的な移動手段として自動運転を挙げる報告が散見される3)ようになり,実際に技術的な検討を行う報告4,5)もみられている.しかし自動運転にも「レベル」があり6),システムが基本的に運転を行うレベル4,5に至るのは2025年以降との見通しをしているメーカーが多く,まだまだ自動運転で運転に関する諸問題が解決するまでには時間がかかると思われる.高齢者や認知症者のドライバーに対しては,2009年(平成21年)の改正道路交通法で認知機能検査が義務づけられ,さらに2014年(平成26年)の改正道路交通法施行により高次脳機能障害者に対する対策の強化が図られたのは,運転支援にかかわる者には周知の流れである.

 高齢者に限らず,障害と共に生きることとなった方々にとって,自動車を運転できることは,社会参加という観点からは大変意義深い.その一方で認知症ドライバーに象徴されるように,適切な評価の裏づけと支援がなければ,彼らを自動車社会に送り出すことへの世間の理解は到底得られるものではない.法改正を含む前述の流れは,そのことを明確に示しているものである.

 筆者らは,主として高次脳機能障害者に対する自動車運転再開に向けた評価を,2007年(平成19年)ごろよりOTを中心として実施してきた.初期には神経心理学的検査を柱としていた評価も,ドライビングシミュレーターの導入や近隣の教習所と連携した実車評価の開始等,より実際的な内容を加えた流れへとかたちを変えてきている.その過程で,高次脳機能障害者だけでなく,脊髄損傷者や関節置換術後の股・膝関節変性疾患患者等,高次脳機能障害以外の方々にもドライビングシミュレーターを試行する機会を得た.その結果,脊髄損傷の完全麻痺者では,明らかな反応の遅さや,手動ブレーキ,アクセルの操作ミスを頻繁に目の当たりにすることに驚かされた.また不全損傷者においては,高次脳機能障害者と似た反応のムラや,複数対象への注意配分の困難さにしばしば遭遇することに気づかされた7〜9)

 身体障害者,とりわけ脊髄損傷者に対する自動車運転支援は歴史が古く,運転席への移乗や車いすの積み込みの支援が主として行われてきている10,11).しかし運転そのものの質や内容についてはあまり検討されてこなかったように思われる.本稿では主に動作面からの支援が多かった脊髄損傷者について,いくつかの知見を提示したい.

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Key Questions

Q1:脳血管障害による身体障害を補うための運転補助装置にはどのようなものがあるか?

Q2:脳血管障害により身体障害を補うための運転補助装置の特徴は?

Q3:脳血管障害を有する人に対する運転補助装置導入のポイントは?

はじめに

 身体障害を有する方々にとって移動障害は社会参加に対する大きな制約因子となる.自動車運転は自由な移動手段として幅広く利用されており,特に公共交通機関の利用に制約を受ける場合,その必要性はきわめて高い.

 近年,車種の多様化と安全性能の向上,運転補助装置の開発と改良の進歩により,身体障害を有していても安全に自動車を運転することが可能になってきている.本稿では,脳卒中による身体障害を補うための運転補助装置について述べるとともに,運転補助装置の導入を行った脳血管障害事例を報告する.

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Key Questions

Q1:自動車運転への工学的支援とは?

Q2:運転席の圧力分散性とは?

Q3:運転動作に求められる姿勢保持とは?

はじめに

 身体障害者への自動車運転の支援では,ハンドルやアクセル,ブレーキ操作等の運転技術や移乗,積載に関連する動作の獲得だけでなく,それらを安全で継続的に行うための環境整備が求められる.神奈川県総合リハビリテーションセンター(以下,当センター)では,OTやPTだけでなく,エンジニア等,多職種がかかわりながら,さまざまな障害に対して,自動車運転を支援している(図1,2).エンジニアの役割は,義肢装具や福祉用具の選定・適合,生活環境の整備等を含めた工学的な支援を行うことであり,リハビリテーション工学研究室では義肢装具士やリハエンジニアが常駐している.

 今回の特集では,パーキンソン病や脊髄損傷,片麻痺等,疾患別にみた運転支援が述べられている.本稿では,肢体不自由者の運転動作姿勢,特に姿勢保持と座面の圧力分散性に着目しながら,運転席の適合調整について,事例を交え紹介する.

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 自動車の自動運転技術は,全世界的に研究開発が著しい分野である.本稿では,すでに発表した文献1,2)の要約・一部抜粋を基に,トヨタ自動車株式会社(以下,トヨタ)の自動運転技術に対する考え方,技術開発の現状,課題と今後について紹介する.また最後に,高齢者やお身体の不自由な方に向けた運転支援,自動運転の有効性について述べる.

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 中国広州市と香港には、廉価な中国製品を仕入れて母国に輸出することで一財産築こうとする交易人が、世界各地から集まる。私は、タンザニア出身者の交易活動を調査している。彼らの中には中国語はおろか、英語すら十分に操れない者も、現地の文化や慣習の知識をもたない者も大勢いる。生き馬の目を抜く中国市場へと果敢に乗り出す彼らはたくましいが、時として無謀な挑戦にもみえる。実際に交易人たちは、「中国で詐欺に遭って一文無しになった」といった苦労話を語ってくれる。それらの苦労を乗り越えることができたのは、中国や香港で偶然に出会った同胞の助けによる。彼らはいつも「中国にいる同胞がきっと助けてくれる」と自信満々に語る。

 私は「誰かはきっと助けてくれる」という彼らの信念が不思議だった。もし私が異国で窮地に陥って日本人の同胞に出会ったとして、彼らは私を助けるだろうか。助けてくれるかもしれないが、無謀さをとがめられるのではないかと不安になるし、何より私自身が他者に迷惑をかけることに躊躇してしまう。

提言

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自分自身を振り返って

 私がOTの資格を取得したのが1986年.

 すでに,30年以上の月日が経っている.

あなたにとって作業療法とは何ですか?・第46回

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癒しと動機付け

 OTとして45年目になります.この間,主に身体障害と発達の領域の対象者に,機能回復訓練,装具製作,義肢適合,自助具製作,手すり設置等,現場で一般的に実施されていることを一通り経験しました.これらに加え,都立神経病院に勤務したことで神経・筋難病の方々へのコンピュータの活用に長くかかわってきました.

 時代とともにコンピュータが進化し,インターネットがブロードバンド化され,Wi-Fi環境が整備されたことで,人工呼吸器を装着して生きる神経・筋難病の方々も社会参加が可能になりました.

連載 睡眠を考える・第2回

夢とはなにか 福田 一彦
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夢の生理学的メカニズム

 前回(第1回「続?眠りの都市伝説」),REM睡眠のタイミングで起こすと約8割の確率で夢を覚えていると申し上げた.REM睡眠でなぜ夢をみるのかについて簡単に説明しよう.

 REM睡眠の中枢は脳の奥深く,古い脳の中にある.そこから脳の上部の,より新しい脳の部分に向けて神経が投射し,脳全体に刺激を送り,脳の中に蓄えられている記憶を活性化することになる.これが夢の材料である.ランダムに刺激された夢の材料同士が,つじつまの合うようにストーリーとして組み立てられて夢となる.このように,夢は記憶を素材としてつくられるが,ランダムに刺激された内容を組み合わせるため,完全にはつじつまが合わなかったり,現実にはあり得ない荒唐無稽なストーリーとなったりするのである.

連載 食べる楽しみを支える・第4回

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はじめに

 食事の介助摂取者に対する作業療法介入で中心になるのは,食事姿勢や道具の選定等,自力摂取の場合と同様です.しかし,異なる点もあります.

 1つめは,介助摂取には患者さんの上肢や体幹の運動がほとんど必要ないということ.自力摂取では摂食動作に伴う上肢や体幹の運動が必要であり,それを前提とした姿勢調節や動作指導が求められますが,介助摂取ではそれらが不要です.

 2つめは対象者の基本的な活動能力.食事動作はADLの中でも特に運動強度の低い動作です1).その動作が自力では困難になった患者さんですから,自力摂取者よりも心身機能・体力の低下が著しい人が圧倒的に多くなります.そのため,食事介助においてはこの体力等の低さも考慮しなければなりません.

 本稿では,体力が低下した介助摂取の患者さんが安楽に,かつリラックスして食事時間を過ごすための一般的な食事介助方法について,OTがかかわりやすい部分を中心に解説します.

連載 作業療法を深める ㉓人口減少社会

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 日本の総人口は2008年(平成20年)をピークに減少に転じ,2065年には約8,800万人にまで減少することが予測されている(国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成29年推計)」).これは,人口や経済の規模が一貫して増加を続けた明治以降の100数十年とは根本的に異なるベクトルの時代に私たちが入ったことを意味している.それは医療・福祉や作業療法にとってどのような意味をもつだろうか.ここではそうしたテーマを幅広い視点から考えてみたい.

特別インタビュー

政治を変えるツールとして 堀越 啓仁
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—本日は,OTとして初の国会議員である堀越啓仁先生にお話をうかがう機会をいただきました.天台宗の僧籍もおもちとのことですが,まずは簡単にご経歴をお聞かせください

 私の実家は天台宗のお寺で,小学校4年生のときに得度しました.家族からは小学校1年生ぐらいから,「将来はこの寺を継ぎなさい」と言われ続けてきました.でも,中学生になると自分のやりたいことが出てきて,“何でお坊さんにならなきゃいけないんだろう,人権侵害も甚だしいな”と思うようになりました.

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はじめに

 認知症カフェ(以下,カフェ)は,厚生労働省の認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)で全市区町村において開催することが目標とされており,地域で認知症の人と家族を支える重要な取り組みとして位置づけられている.ここ埼玉県でも,2017年(平成29年)末の時点で3年前の3倍を超える287カ所まで増えている.この時代のニーズに応えるべく,埼玉県作業療法士会(以下,当士会)も,カフェの運営や開催支援を積極的に行っており,多くのOTが活躍し,貴重な地域支援実践の場,機会となっている(表).

学会・研修会印象記

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 2018年(平成30年)6月28日(木)〜7月1日(日)に,第55回日本リハビリテーション医学会学術集会が,福岡国際会議場,福岡サンパレスにて開催されました.拙文ですが,本学会に参加し私が感じたことをご報告致します.

 私は臨床1年目から回復期を担当し,今年で臨床3年目となります.今回,OTとしての知識の向上とともに,患者さんの活動・参加を拡大するために何ができるのか,何を期待されているのかを考える機会とするべく,本学会に参加致しました.当院は,整形外科疾患の高齢者が多く,摂食嚥下機能低下による肺炎や認知症を合併している方もいらっしゃいます.今回の学会でこのような患者さんに活かせる内容を学びたいと考え,摂食嚥下や認知症分野にかかわる講演やセミナーを中心に聴講しました.私は学会3日目より参加しましたが,全国のリハ医やリハ専門職の方々が参加されるこの学会の熱気や,多種多様な分野のプログラム等に圧倒されながらも,自分の臨床での疑問をじっくり考えることができる貴重な時間を過ごすことができたと感じています.

ひとをおもう・第7回

期待を加工する 齋藤 佑樹
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 小脳梗塞を呈したユリさんは,発症から3週間後に回復期リハ病棟に入院してきました.入院直後はめまいがひどく,寝返りをするだけで嘔吐してしまう状況でしたが,症状が軽減してからは能力面の改善が目覚ましく,運動失調がありながらもすぐに歩行器を使用して病棟内を歩行できるようになりました.

 担当のYさんは,ユリさんがめまいに苦しんでいた入院当初は無理に今後の目標を決めようとせず,身の回りのことを安楽に行う練習を中心にかかわってきました.1カ月後,めまいが軽減し,ユリさんが今後のことについて内省することができるようになったころに初めて面接評価を実施しました.

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Abstract:施設入所高齢者に対する認知機能介入では,諸活動を用いた試みが行われているが,認知機能と諸活動との関連は,十分な検討が行われていない.本研究の目的は,根拠をもって活動を用いるための予備調査として,施設入所高齢者の認知機能と諸活動との関連を明らかにすることである.対象は,施設に入所する認知症高齢者16名(平均年齢87.1±9.1歳).調査項目は,基本的特性,諸活動への参加時間や頻度,種類,Mini-Mental State Examination(MMSE),日本語版Neurobehavioral Cognitive Status Examination(COGNISTAT)であった.Mann-Whitney U検定を用いて検討を行った結果,COGNISTATの判断課題とスポーツ的活動参加との間に有意な関連が認められ.スポーツ的活動への参加は,社会的判断等の認知機能の維持につながる可能性が示唆された.

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Abstract:本研究の目的は,都市部における訪問リハでの公共交通機関の利用練習や外出のリハの実施実態を調査し,公共交通機関の利用練習を非実施とする理由,練習実施の工夫点を質的に分析することであった.郵送調査を全国都市部の訪問リハ事業所を対象に行った.546通中234通の返信があり,外出練習は96.1%,公共交通機関の利用練習は44.4%で実施されていた.練習ができない理由は,練習ニーズに対する対応,課題にかかわる要因,ニーズのなさにまとめられた.練習実施の工夫として,練習全体にかかわることから,事前準備,練習実施中,事後作業の工夫が抽出された.これら結果は,訪問リハ事業所において,公共交通機関の利用練習が増加し,発展していくために共有されるべき情報であり,今後の活用が望まれる.

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Abstract:脳卒中急性期は,多様な症状の出現により問題点が浮き彫りとなりやすく,対象者のもっている本来の能力を見いだすことが難しいと感じる.くも膜下出血発症後,現状に混乱した発言や行動が目立った患者を急性期より担当し,多くの問題点より直接退院することは困難と判断した.しかし,問題点だけを探り,本人が能力を発揮する環境を奪っているのはわれわれではないかと考え,能動的に動くことのできる環境づくりと周囲のかかわりを見直した.一つの「できる」は,次なる「できる」につながり,ご家族も含め,自宅退院という未来の予測が立つに至った.機能障害を探り,生活の中で何ができないかだけにとらわれることは活動制限を助長するに過ぎず,それは一歩間違うと,一つの「できない」に惑わされ,「できないであろう人」をつくり上げてしまう恐れがある.急性期より一つの「できる」を見つけ,動き出しは「できる」の現れであると信じてかかわることが重要である.

昭和の暮らし・第22回

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 1960年(昭和35年)ごろまで,出産は「お産婆さん」によって自宅で産むのが主流であった.その後,病院や診療所での出産が増加し,1970年(昭和45年)以降は,自宅での出産は,あまりみられなくなっている.「団塊の世代」と呼ばれる,戦後すぐのベビーブームに産まれた方の多くは自宅出産であったことがうかがわれる.

 ちなみに戦前は「産婆」とか「お産婆さん」と呼ばれた職業は,1948年(昭和23年)に公布された「保健婦助産婦看護婦法」により「助産婦」という名称になり,現在は,2002年(平成14年)に同法が「保健師助産師看護師法」へと改正されたことにより「助産師」と改められている.

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目次

表紙のことば/今月の作品

次号予告

研究助成テーマ募集

Archives

学会・研修会案内

編集後記 江藤 文夫
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 障害では環境要因が重視されるが,生活活動における移動に関連した議論において,遠距離を自動車や新幹線等で移動する国ばかりではなく,ロバや象などの動物が重要な移動手段である国もあることを障害統計に関する国際会議で耳にした.今月号の特集は,わが国における身体障害のある方の自動車運転である.自動車の直訳英語はautomobileと思うが,「クルマ」という呼称は歴史を反映して英訳も単純ではない.

 さて,身体障害のある方の自動車運転の普及では,めずらしく日本でも欧米同様に当事者の頑張りの果たした役割が大であった.1960年(昭和35年)の道路交通法の制定以前には,警察官には運転できない改造自動車で走り回り,たびたび逮捕された豪傑もおられたようである.1936年(昭和11年)に運転免許を取得し,自動車運転を仕事とされていたF氏は1953年(昭和28年)に事故で両大腿切断を受傷された.クラッチ車しかない時代に,右手でクラッチとブレーキ,断端でアクセルを操作する装置を考案し,免許の更新期限の1956年(昭和31年)に改造車を持ち込んで実際に運転できることを示したが,法律の壁に阻まれ免許は失効したという.以来,免許制度の改正を訴え続け,道路交通法の施行前に国立身体障害者更生指導所に入所し,運転免許を取得したそうである.ただし,同所で正式に自動車運転訓練を開始したのは1961年(昭和36年)からである.1962年(昭和37年),F氏は長野県のリンゴ園を改造して障害者のための教習所と作業場を開設した.これが,身体障害者教習の草分け東園自動車教習所の始まりである.

基本情報

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作業療法ジャーナル
52巻11号 (2018年10月)
電子版ISSN: 印刷版ISSN:0915-1354 三輪書店

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