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Key Questions
Q1:パーキンソン病患者の自動車運転の現状は?
Q2:パーキンソン病患者の自動車運転について,疾患病態の観点より知っておくべきことは?
Q3:パーキンソン病患者の自動車運転について,突発的睡眠の観点より知っておくべきことは?
はじめに
神経疾患患者を取り巻く自動車運転に関する問題が社会的関心を集めている.2014年(平成26年)6月1日,道路交通法が改定され,一定の症状を呈する病気等にある者を診断した医師は,公安委員会へ任意でその旨を届出することができることとなった(表1).「一定の症状を呈する病気等」にはパーキンソン病およびその類縁疾患は含まれていない.しかし,この「一定の症状を呈する病気等」には「重度の眠気の症状を呈する睡眠障害」および「自動車等の安全な運転に必要な認知,予測,判断又は操作のいずれかに係る能力を欠くこととなるおそれがある症状を呈する病気」が該当する.
パーキンソン病やその類縁疾患は,そもそも運動障害を主徴とする疾患であるため,自動車運転にはその技術が問われる.また日中過眠を呈することもよく知られているうえに,運動症状の改善目的に行われるドパミン補充療法には突発的睡眠の警告があることから,運動障害以外にも睡眠障害の観点からも適切な対応が求められる.特に薬剤性に生じる突発的睡眠による自動車運転事故の問題は注目度も高く1),治療の継続性にも影響する重大な問題であることから,臨床的には対応が困難なこともしばしば経験される.したがってパーキンソン病とその類縁疾患の自動車運転問題は,特に本邦では単に技能評価や技術支援をすればよいというものではなく,運転そのものの可否をも含めた極めて複雑な問題である.発症好発年齢から新たに普通運転免許を取得する患者には相談を受けることは滅多にないが,運転免許の更新もまた相談を受けることは通常経験されない.むしろこうした問題とは無関係に通常の手続きにより行われていることが一般的であろう.相談を受けることがあったとしても,各患者と主治医とで外来診療のかたわらで行われていることが通常と思われる.そこに一定の決まりや規則は存在しない.とかく法的に規制のある他の疾患や運動技術の問題が主体の疾患とはまるで異なる様相を呈する問題である.本稿ではパーキンソン病とその類縁疾患の自動車運転に関して,まずは現場での理解と患者啓発が重要であり,近年の本邦および海外での現状を総説する.
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