作業療法ジャーナル 52巻12号 (2018年11月)

特集 回復期リハビリテーション病棟の質—ICFに基づいた作業療法

  • 文献概要を表示

特集にあたって

 回復期リハビリテーション病棟は,2000年に創設され19年目を迎えている.病床数(届出数)は,毎年右肩上がりで増え続けており,現在8万床を超えている.創設当初,回復期リハビリテーション病棟協会が示した人口10万人に対し50床の目標は,地域格差があるものの全国平均で達成された.すなわち,量的な面ではある程度整った状態となったが,そこで提供されるリハの質はどうであろうか? 診療報酬では,実績指数の導入により,“より早く,より良く”することが求められるようになった.一方で急激な病床増に伴い,若いセラピストも多く所属する傾向になってきた中,昨今では参加・活動に焦点を当てたアプローチが取り沙汰されているが,回復期リハ病棟という限定された環境下でどこまで追求できているのか.また生活の連続性を欠くことなく,対象者の視点に立った回復期のリハが提供できているのか,今一度見直す時期がきているように思われる.

 そこで今回,「回復期リハビリテーション病棟の質—ICFに基づいた作業療法」と題して,総論で回復期リハ病棟の創設・発展に尽力されている先生に回復期リハ病棟の変遷から解説していただき,続いて現場で活躍しておられるOTの方々に,国際生活機能分類(ICF)の生活機能レベル(心身機能・構造,参加,活動)別に,現場で実践されている作業療法を事例も交えてわかりやすく述べていただいた.

  • 文献概要を表示

Key Questions

Q1:日本の地域におけるリハ医療整備元年とは?

Q2:2000年から現在までのリハの診療報酬の変化を要約すると?

Q3:回復期リハ病棟の成果とは?

日本のリハ医療の改革は1989年に始まった

 1989年(平成元年)にリハ医療を提供する全国の病院幹部と日本リハビリテーション医学会の理事が協力し,日本における適切なリハ医療の発展を目的に,日本リハビリテーション病院協会(現在は日本リハビリテーション病院・施設協会)が設立された.当時の日本は「寝たきり老人」が社会問題となっていたころである.「寝たきり老人・寝かせきり老人」を生み出したわが国は,その解決を病院への長期入院という方法で対応していた.その結果,一般病床,精神病床,その他の病床ともに増加し続け,1990年(平成2年)には合計167.6万床という対人口比で世界最大の病床保有国となったのである(図1).

 こうした状況下で活動を開始した日本リハビリテーション病院協会は,1991年(平成3年)に「地域リハビリテーションの定義」を公表し,1993年(平成5年)に「リハ専門病院の位置づけ」を発表し,各地域にリハ専門病院開設の必要性を訴えた.さらに1995年(平成7年)には「リハ医療のあり方(その1)」,1996年(平成8年)には「リハ医療のあり方(その2)」を作成し,ここではリハ専門病院ではなく,リハ専門病棟こそ必要と修正提言を行った.病院より病棟のほうが全国の津々浦々にリハ医療が普及すると考えたからである.また,1999年(平成11年)には厚生省老健局老人保健課との協働で「地域リハビリテーション支援活動マニュアル」を作成し,各都道府県で「地域リハビリテーション支援体制整備推進事業」が開始となり,全国各地に「地域リハビリテーション広域支援センター」が指定される等,地域リハ活動が積極的に展開されるようになった.さらに厚生省保険局医療課には「リハビリテーション専門病床群」の創設を要望した.厚生省は介護保険制度の施行にあたり,介護保険の適応とする以前に十分なリハ医療が提供される仕組みが必要と判断し,2000年(平成12年)4月に診療報酬の特定入院料として「回復期リハビリテーション病棟」の創設に踏み切ったのである.1989年の日本リハビリテーション病院協会設立から11年間の地道な活動が実ったと考えらえる.

  • 文献概要を表示

Key Questions

Q1:回復期リハ病棟におけるOTの役割とは?

Q2:回復期リハ病棟におけるOTの姿勢とは?

Q3:作業療法における機能・活動・参加へのバランスを考えるとは?

はじめに

 2008年度(平成20年度)の診療報酬改定以降,改定ごとに回復期リハビリテーション病棟(以下,回復期リハ病棟)における質の評価が強化されてきており,チームアプローチの充実と,各職種の専門性の向上が両輪となって機能することが求められている.回復期リハビリテーション病棟協会の2017年度(平成29年度)の調査報告書1)によると,回復期リハ病棟に配置されているOTは,100床当たり8.9人である.10年前の調査2)の5.0人から4人弱増え,回復期リハ病棟の質向上への期待とともに,ますますOTの活躍の場が広がっており,チームの中で果たすべき役割も大きい.

 回復期リハ病棟で実践される作業療法は,ICFモデルにおける生活機能(「心身機能・構造」,「活動」,「参加」)へバランスよくアプローチする必要がある.回復期リハ病棟創設前後の作業療法の展開について,筆者自身の経験も踏まえ,生活機能へのアプローチのバランスの考え方,また,多職種との役割分担(協働)を述べたい.

  • 文献概要を表示

Key Questions

Q1:作業療法における「心身機能・身体構造」の視点は?

Q2:作業療法の目標に「心身機能・身体構造」をどのように位置づけるか?

Q3:回復期リハビリテーション病棟における「心身機能・身体構造」の治療戦略の考え方は?

はじめに

 回復期リハビリテーション病棟(以下,回復期リハ病棟)には,廃用を予防し,日常生活動作(ADL)能力を高め,在宅復帰を目指すという目的がある1).これらを国際生活機能分類(ICF)における「心身機能・身体構造」,「活動」,「参加」に対応させると,地域・自宅で役割をもって生活するために(参加),ADL動作能力(活動)や,心身機能の向上を図り(心身機能・身体構造),その結果廃用を防ぐ,と考えることができる.本稿では,回復期リハ病棟や訪問リハの経験を通して,回復期リハ病棟における「心身機能・身体構造」の作業療法の考え方について,西広島リハビリテーション病院(以下,当院)の取り組みと実践を交えて述べる.

  • 文献概要を表示

Key Questions

Q1:活動への導入の仕組みづくりをどうするか?

Q2:活動へのアプローチのあり方とは?

Q3:具体的な症例での展開は?

はじめに

 昨今の回復期リハビリテーション病棟(以下,回復期リハ病棟)は,実績指数の導入等でわかるように,FIMによる患者の自立度を成果としている.成果とはすなわち「より早い退院」である.

 一方,International Classification of Functioning,Disability and Health(ICF)は,健康状態,心身機能・身体構造,活動と参加,環境因子,個人因子から構成され,われわれOTはバランスよく具体的に介入することが求められている.もちろん回復期リハにおいても同様であり,医学的背景としての「心身機能・身体構造」は,「活動」を診るために必須といえる.

 活動に対するアプローチは,いくつかの手法がある.ADL・IADL訓練は作業療法にとって重要な介入の一つであるが,Activity等による生活への汎化作用も見逃してはいけない.

 今回,山梨リハビリテーション病院(以下,当院)での活動に対する仕組みの紹介と具体的な実践を報告する.

  • 文献概要を表示

Key Questions

Q1:回復期リハビリテーション病棟における「参加」とは?

Q2:「参加」に向けたOTの役割とは?

Q3:多職種連携環境調整のポイントは?

はじめに

 近年,回復期リハビリテーションでは心身機能やADL能力の向上に加え,「活動・参加」に向けたアプローチが求められている.浜村1)は,これからのリハに求められるものとして,「高齢で障害があっても住み慣れた地域で納得できる活動ができるよう,地域ぐるみで支えていく体制づくりが必要である」と述べている.回復期リハビリテーション病棟(以下,回復期リハ病棟)の作業療法においても,心身機能・ADL改善,在宅復帰支援にとどまらず,対象者のNeedsに合わせ残存能力を最大限に活かし,新たな「活動・参加」に向けて支援することが求められる.本稿では事例を踏まえ,回復期リハ病棟での「参加」に向けた作業療法について考察する.

わたしの大切な作業・第7回

日々の料理をつくること 平川 克美
  • 文献概要を表示

 月日の経つのは早いもので、父親の介護のために、実家に「単身赴任」してから七年が経過した。先日女房と二人で、埼玉県に墓参に訪れ、一年遅れの七回忌の供養をした。

 実家に戻るために、家族で暮らしていたマンションを出て以来、今に至るまで家族の元には戻っていない。というのは、女房は彼女の母親の介護のために実家に戻り、家族と暮らしていたマンションは空き家になったので、借金の返済のために売却してしまったからである。

提言

求められる当事者との協働 池田 望
  • 文献概要を表示

ピアサポート×作業療法士

 この原稿を書く数週間ほど前に,札幌精神科作業療法研究会の定例会で,北海道ピアサポート協会註)の代表理事とスタッフのお2人から,ピアサポートの実践とOTとの連携についてお話しいただく機会を得ました.小見出しの「ピアサポート×作業療法士」はその際のタイトルです.代表理事曰く,「OTさんはピアのイメージ」,「患者さんとかかわる時間が他のスタッフより長く,作業を通して“一緒に”という“ピア感”がある」,「嬉しかったのは話を聞くだけの一方通行ではなく,一緒に笑ってくれたこと」,「人として,めっちゃピアやんと思った」とのことです.そのうえで,ピアサポーターとOTは患者さんのリカバリを促進する仲間という点から広義のピアとなれる,という趣旨のことを話してくれました.

 研究会にお2人をお呼びしたのは,今後,OTは当事者との協働がさらに重要になると感じていたからですが,お2人の話を聞いて,ますますその思いは強まったのでした.そこで,この「提言」では,OTと当事者との協働の可能性や意義について述べてみたいと思います.

  • 文献概要を表示

今回の協会長対談は,日本を代表する作家である五木寛之先生にご登場いただきました.読者の皆さんも一度は五木先生のご著書を手にされたことがあるのではないでしょうか.対談のテーマは「人生100年時代を生き抜くために」.この未曾有の時代を生き抜くヒントを,五木先生と中村会長のお話から汲み取っていただければと思います.(編集室)

あなたにとって作業療法とは何ですか?・第47回

  • 文献概要を表示

「自分の人生の主導権を握る」を支援する黒子

 作業療法は,その創設期から,クライエントが自己実現を果たす助けになる独特な方法として「作業(occupation)」を選びました.この「occupation」は,「所有意志をもって占有する」ことを意味するラテン語「occupatio」から派生しています.つまり,作業療法は,クライエントが自分の人生の主導権を握ることを支援する療法といえるのではないでしょうか.

 かくいう私も,気がつけばOTの歴だけは結構長くなってしまいました.臨床現場でかかわった方々や教育現場でバトルを繰り広げた教え子たちの,いわゆる「自分の人生の主導権を握った」姿に遭遇します.私の想像をはるかに超えた,進化発展した(化けた)姿を垣間見るにつけ,「自分の人生の主導権を握る」支援の前提に,クライエントの未来を信頼する大切さを感じています.そして,それを下支えする能力を磨き続けることが私のすることだと思うようになりました.

News Flash ニュース速報

  • 文献概要を表示

 作業療法士は1965年(昭和40年)の「理学療法士及び作業療法士法」(以下,PTOT法)成立とともに国家資格としてわが国に誕生した.この国に作業療法の種をまき,育ててくださった関係者,先輩諸氏,関連団体の皆様に心から深く感謝申し上げる.

 さて,このたび,長年にわたる議論の末に,作業療法の定義の改定と相成った.そこで「新定義を活かす」と題して,ここまでに至る法律,通達,従来の協会の定義を紹介し,新定義についての私見を述べる.

連載 食べる楽しみを支える・第5回

  • 文献概要を表示

はじめに

 今回は重度嚥下障害がある患者さんに対する食事支援です.「重度嚥下障害」がどの程度からなのか,明確な定義はありませんが,ここでは「回復の見込みが少なく,誤嚥を繰り返し,経口摂取をあきらめかけている人」と定義しておきます.

 このような重度嚥下障害がある患者さんの対応に苦慮しているOTは多いと思います.そして,対応方法における選択肢の少なさは,安易な人工栄養導入のきっかけとなります.逆にいうと,この経口摂取と人工栄養との境目にいる重度嚥下障害がある患者さんへの対応をOTが行えれば,安易な人工栄養導入を防ぎ,患者さんの「食べたい」という想いを守ることができるのです.

 本稿では経口摂取をあきらめかけている方々が「最後まで口から食べる」ための最後の手段となり得る対応方法ついて解説します.

連載 睡眠を考える・第3回

子どもの眠り 福田 一彦
  • 文献概要を表示

眠りの発達

 ご存じのように生まれたばかりの赤ちゃんは,2〜3時間くらいの間隔で睡眠と覚醒を繰り返し,夜と昼の区別がない.お子さんを育てた経験のある方であれば,夜中に何度も起こされてあやしたり,授乳したりで大変な思いをしたことを思い出すだろう.夜と昼のメリハリができはじめるのは,満期産の子どもで生後第7週(3カ月に入る直前)である.この時期には,睡眠以外にも,行動や認知上の変化が生じる.「いないいないばあ」等でニッコリと笑う「社会的微笑」や,オモチャ等を手に持ってしゃぶる等の行為が出現するのもこの時期である.

 その後,半年〜1年をかけて睡眠が夜に集中し,夜中に目覚めることが減っていく.1歳半までに午前中の昼寝がなくなり,午後に1回の昼寝をとるようになる.午後の昼寝も徐々に消失していき,3歳児で7割,4歳児で8割,5歳児で9割,そして,6歳ではほぼ全員が昼寝をとらなくなる.

  • 文献概要を表示

はじめに

 認知症の初期の段階は,病気を否定する気持ちをもちやすく,病院受診の拒否等,戸惑いや不安は少なくない.家族も,症状理解の難しさもあって,病気かどうかの見極めができず,場合によっては本人の苛立ちを助長してしまう等,対応に苦慮されていることも多い.認知症初期の本人や家族の葛藤を埋める社会的資源は乏しく,この空白の期間を埋める社会資源として登場したのが,認知症カフェである.OTにとっても認知症カフェは,対等に生活者としてのアイデンティティを感じられる場所であり,非常に学ぶことが多い.兵庫県の認知症カフェと作業療法士会の取り組みについてレポートする.

多職種を交えたリハビリ事例検討会・第21回

  • 文献概要を表示

事例提示

Aさん,10代男性,身長153cm,体重29kg,BMI 12.39(低体重)

病歴:急性脳症後遺症,精神運動発達遅滞,痙性四肢麻痺,症候性てんかん.3歳のときに脳症発症,痙性四肢麻痺にて寝たきり,全介助,コミュニケーションが困難となる.連日てんかんにて強直発作を認め,経管栄養を行っている.また筋緊張抑制のため薬液注入ポンプ植込み手術を実施し,現在もバクロフェン髄注療法を受けている.昨年に尿閉が出現したこともあったが,現在は自己排尿あり.3歳時より植込み型ポンプの交換を2度行っている.

生活歴:現在ADL全介助,経管栄養,コミュニケーション困難,自尿あり,排便は週1回程度.唾液や痰による,むせ込みが多く,1日数回吸引することもある.落ち着いている日は,朝,夕に1回ずつ行う(アレルギー体質でもあり,季節によって差がある).特別支援学校に通っており,先生と共に授業に取り組んでいる.学校のお迎えがある朝と夕にヘルパーが入る.

家族:父,母,兄との四人暮らし.定期的に母方の祖父母も来て,家事全般の支援をしてくれている.主介護者は母.主におむつ交換,吸引,清拭を担当している.しかし母は難病を患っており,強い力が必要な移乗等の介助は困難である.入浴や移乗は,主にヘルパー,父,兄が行っている.

居住環境:賃貸マンション(エレベーターあり)

性格:活発

趣味・関心:動画や声かけ等の刺激に反応することがある

処方薬(朝-昼-夕-就寝前):トリヘキシフェニジル塩酸塩散 0.6mg(1-1-1-0),ジアゼパム散 0.8mg-0.8mg-1.5mg(1-1-1-0),バルブロ酸ナトリウム 180mg(1-1-1-0),ラメルテオン 8mg(0-0-0-1),ガゼイ菌製剤散 1g(1-1-1-0),モサプリドクエン酸塩水和物散 3.3mg(1-1-1-0),トピラマート 50mg(1-0-1-0),シプロヘプタジン塩酸塩水和物散 3mg(0-0-0-1),チザニジン塩酸塩顆粒 0.23mg-0.23mg-0.8mg-0.8mg(1-1-1-1),ランソプラゾール腸溶錠 15mg(1-0-0-0),ナトリウム(174mg)・カリウム(447mg)・マグネシウム(42mg)配合剤顆粒(1-1-1-0),ラモトリギン錠 45mg(1-0-1-0),レボカルニチン錠 250mg(1-0-1-0),エピナスチン塩酸塩シロップ用 15mg(1-0-0-0),酸化マグネシウム細粒 0.4g(1-0-1-0)

  • 文献概要を表示

 第1回国際臨床作業療法学術大会/第5回日本臨床作業療法学会学術大会が,7月21,22日に九州大学百年講堂で開催されました.「Advanced Occupation-based Practice」をテーマに友利幸之介氏(東京工科大学)が大会長を務められました.総参加者は314名で,うち国内280名,海外34名.本学会は毎回多くの参加者が発表を行う参加型の学会ですが,今回は国際学会のため英語抄録が必須となり,発表者がどれほど増えるか懸念がありました.しかし,蓋を開けてみると総演題数は84演題(口述14演題,ポスター70演題)とその懸念を払拭する発表数でした.

 基調講演ではTufts大学のLinda Tickle-Degnen先生が「The Art & Science of Occupational Therapy」のタイトルで,作業療法のArtとScienceをどのように橋渡しし,相乗効果も期待しながらエビデンスの質を高めていくかについてご講演くださいました.まずは日々の実践を振り返ったり文献レビューをしたりと小さな簡単なことから始めて,次第に研究のかたちを磨き上げるようにするといい,と述べられました.また,作業中心の実践を広めるためには,作業療法の専門性を相手に合わせてわかりやすく伝えることと,OTが成果を出し報告し続けることが重要であると伝えられました.

ひとをおもう・第8回

相対性を考慮する 齋藤 佑樹
  • 文献概要を表示

 先日,療養病棟で脳梗塞を再発したセイジさんが回復期病棟に転棟してきました.セイジさんは5年前,定年退職直後に脳梗塞を発症.車いすレベルで食事や排泄が可能になりましたが,身寄りがなく,療養病棟での生活を続けてきました.私は以前,療養病棟に配属されていたことがあるので,セイジさんのことをよく知っていました.セイジさんは明るく社交的で,周囲の人に積極的に声をかけ,いつも場を明るい雰囲気にしてくれる人でした.

 回復期病棟入院から1週間後の朝,科内のミーティングを終え病棟に上がると,看護師さんからの申し送りに「リハビリ拒否」の文字がありました.

  • 文献概要を表示

Abstract:人工股関節全置換術(THA)の合併症である脱臼について調査を実施した.脱臼整復後にリハ科で生活動作指導を実施した患者を対象とした調査の結果,2008年(平成20年)〜2015年(平成27年)の8年間で64名の患者が計255件の脱臼を呈していた.周術期に発生した脱臼は6件であり,周術期以降,特に術後1年以降に呈する脱臼と定義される遅発性脱臼が多数であった.「活動性が過度に低く脱臼に至った群」や「除痛が得られ活動性が向上した結果脱臼に至った群」が存在し,活動性が過度に低い群は加齢による心身機能面の変化が影響を及ぼしていると推測された.当院の作業療法は,THA全症例の周術期リハにかかわり,術前後の生活動作指導を担当しているが,病棟ADLや入院中の脱臼のみに目を向けるのではなく,退院後も必要な時期に生活動作指導を受けられるよう,地域でかかわる職種との情報交換等を通じて支援体制を整え,脱臼を防ぐ対策をとる必要性があると考えられた.

  • 文献概要を表示

はじめに

 橈骨遠位端骨折等で手関節や前腕を固定された場合に,手指の機能維持のために6 pack exercise1)が行われることが少なくない.この主な目的は手指の自動運動による浮腫の軽減,腱滑走の維持,可動域の維持であり,筋力増強を目的としたものではないが,症例によっては,筋力の維持・増強,可動域維持・改善を必要とする場合もある.今回われわれはゴムバンドを用いて,指の各関節に対し筋力の維持や増強のための抵抗運動ができ,さらに可動域維持にも対応できる簡易器具(金網ゴムネットと仮称)を百円ショップの商品を組み合わせて製作した.これはOTが簡単に製作でき,目的に応じて容易にゴムバンドの位置や抵抗の強弱を調節できる利点がある.入院患者の自主運動練習用に適しているのではないかと考え紹介する.

昭和の暮らし・第23回

  • 文献概要を表示

 ビール等の酒類をどこで購入されるだろうか.近年は,量販店でまとめ買いをする方も多くなったようだ.もちろんコンビニでも買うことができる.

 こうした中,「御用聞き」という言葉があまり使われなくなってきた.酒やしょうゆを扱う酒屋が,定期的に個人宅に足を運び,必要な品物を尋ね,配達するという古くから行われているシステムである.販売店と消費者の親しく,かつ信頼の厚い関係がこうしたシステムを維持していた.

--------------------

目次

表紙のことば/今月の作品

次号予告

研究助成テーマ募集

  • 文献概要を表示

 発達障害の作業療法にかかわるものにとって,発達障害について正しく知ることは最も大切である.本誌の第1章では,医学的見地からの発達障害の定義および歴史的変遷,日本の発達障害関連支援施策,OTの経験知,日本作業療法士協会が取り組む学校OTに関する情報,当事者の求める視点,発達障害と精神科医療との連携について明確な解説がなされ,関心のあるすべての読者にとって最も基本的かつ大切な情報を提供している.

 第2章では,わが国で実施されている発達障害児・者支援の現状と課題,将来への視点について,医療,福祉,教育,就労,家庭生活,地域生活,性教育にわたる幅広い領域における取り組みが集約されている.発達障害に対する支援は,幼少期から老年期まですべてのライフステージにわたり,住み慣れた地域で,発達障害がある当事者も一般市民も,共に継続的かつ健やかに生活するための包括的な支援が求められる時代である.日本の作業療法の歴史を振り返れば,発達期に発達の遅滞や心身機能構造面に障害があるすべての子どもたちを対象とした医療・療育における長い実践がある.しかし,2005年(平成17年)に発達障害者支援法が施行され,発達障害の啓発,都道府県での発達障害者支援センター設置等,発達障害児者の自立と社会参加の援助について国・自治体の責務が規定されたことを受け,発達障害がある子どもの早期発見,早期支援が推進され,専門家チームの一員として,地域におけるOTの需要が高まりつつある.しかしながら,たとえば福祉型の障害児通所支援として児童発達支援,医療型児童発達支援,放課後等デイサービス,保育所等訪問支援等,就学前から就学後にかけての複数のサポート体制があるなかで,そこで行われる支援が具体的にどのような内容なのか,またOTに求められる役割とは何かをイメージできるOTは多くはないであろう.また,教育の現場においても,発達障害はスペクトラムの概念であることから,その障害像が幅広く,知的能力障害や適応能力障害の併存とその程度によって,小学校,中学校の通常級,特別支援学級,通級指導学級,高等学校,大学,特別支援学校の小学部,中学部,高等部(普通科,就業技術科,職能開発科)等に在籍している.OTは特別支援教育における専門家の一員として教員の後方支援を担い,発達障害の特性に応じ適切な教育が受けられるよう,合理的配慮を提案できる職種でもある.しかしこの領域も,多くのOTにとっては新しい領域であろう.加えて,思春期からの第2次性徴期における問題行動,就労,結婚,出産,育児,家庭生活等,成人に至るライフステージのさまざまな場面で生じる課題も含め,本章は非常に読者の理解を助ける内容となっている.

Archives

学会・研修会案内

編集後記 山本 伸一
  • 文献概要を表示

 今月の特集は,「回復期リハビリテーション病棟の質—ICFに基づいた作業療法」である.2000年(平成12年)に回復期リハビリテーション病棟は誕生した.それは日本独自の仕組みであり,画期的な導入であった.さらに,本特集でも執筆いただいた医療法人社団 輝生会の現会長である石川 誠氏が中心となって,全国回復期リハビリテーション病棟連絡協議会(現回復期リハビリテーション病棟協会)が設立された.あれから18年.回復期リハビリテーション病棟に勤務する新人OTの数が右肩上がりに増加した.若いエネルギッシュなパワーをもっているという素晴らしさの反面,人材育成の課題に直面したこともあって,現場や各団体での新たな臨床教育の検討を余儀なくされた.一方,ADLは作業療法の特化した専門分野であると自負していたものの,病棟へ出向くことが少ない現状から,診療報酬では「ADL加算」も導入された.これらは,質の担保を問われてきた歴史である.回復期リハビリテーション病棟が,作業療法をけん引してきた側面があるように感じるのは私だけであろうか.特集のそれぞれの論文は読みごたえがある.なぜなら,その歴史の結果であるからだ.今後の当病棟の展開に期待がかかる.

 またニュース速報では,日本作業療法士協会の中村春基会長より「新定義を活かす」と題しご寄稿いただいた.1985年(昭和60年)以来の33年ぶりの作業療法定義の改定である.「作業療法は,人々の健康と幸福を促進するために,医療,保健,福祉,教育,職業などの領域で行われる,作業に焦点を当てた治療,指導,援助である.作業とは,対象となる人々にとって目的や価値を持つ生活行為を指す.」(註釈は5文)何とも深い.「人々の健康と幸福」という目的・価値観までが作業療法の範疇である.責任をもって,目の前の対象者にそのように取り組んでいるかを問いたい.私たちは作業療法士.その責務に対してプライドをもって臨床に取り組もう.私たちにしかできないことがある.未来を創りましょう.

基本情報

09151354.52.12.jpg
作業療法ジャーナル
52巻12号 (2018年11月)
電子版ISSN: 印刷版ISSN:0915-1354 三輪書店

文献閲覧数ランキング(
11月5日~11月11日
)