胃と腸 55巻5号 (2020年5月)

増刊号 消化管腫瘍の内視鏡診断2020

序説

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 消化管における内視鏡の歴史は硬性鏡の時代も入れると案外古いものであるが,現在のような軟性鏡を用いた内視鏡診断の歴史に関しては,1950年にガストロカメラGT-1〔オリンパス光学工業(当時)社製〕が世界で初めて胃内撮影に成功したときから始まったと考えられる1).当時の内視鏡開発にかかわった医師や技術者たちの奮闘ぶりは「光る壁画」(吉村 昭・著)2)で知ることができるが,彼らの努力なくして内視鏡診断はもちろん,内視鏡学は始まらなかったことは事実である.当時の内視鏡では内視鏡先端に仕込まれた超小型カメラにフィルムを装填して,腹部を透過してみえる内視鏡の光を頼りにシャッターを切って撮影され,フィルムを現像して初めて画像が得られるものであったと故・丹羽寛文先生から直接お聞きしたことがある.したがって,病変が写っていることは偶然の産物でしかなく,ましてや画面の中央で病変を捉えられることはほとんどなかったことは想像に難くないが,間違いなく“存在診断”の始まりであった.

 その後,内視鏡は消化管内を直接のぞき見しながら病変らしきものを捉え,確実に撮影することができるようになり,病変らしきものから組織を採取することで病理診断の裏付けをもって病変と認知でき,“存在診断”がより確かになった.さらに,病変の存在部位,形,大きさ,発赤やひだ集中などといった情報,いわゆる内視鏡所見と病理組織診断結果を対比することで,“存在診断”だけでなく“質的診断”も行われるようになった.1990年代に入ってズーム式拡大内視鏡が登場したことで生体内での病変の表面微細構造(pit pattern)を観察し,これらの所見と固定標本における実体顕微鏡観察下で対比,さらに病理組織像との対比を精力的に研究したことで“質的診断”は飛躍的に向上した3).近年では光学およびデジタル技術を駆使して明瞭かつ高精細な拡大(70〜100倍)や超拡大(約500倍)画像,光の特性を利用して得られた微細血管模様や微細構造の画像から病変に関する情報はより高度となり,これら画像所見をパターン化(分類)することで,生検で組織を得なくても,病理組織診断に迫る“質的診断”が可能となった.そして,各種観察法に関する分類を用いることで,誰でもと言っては過言かもしれないが,容易に“質的診断”が行われるようになってきた.さらに現在では人工知能(AI)にこれらを学習(ディープラーニング)させ,自動診断が可能な状況になりつつある.筆者もこの内視鏡診断の歴史の一部に身を投じてきた一人であり,拡大内視鏡診断の黎明期の激しい抵抗にさらされた時代を経験した者としては,今日の発展をみるに隔世の感や,“悦び”,“歓び”といった感情は禁じ得ないのであるが,一方で一抹の不安もあり,気持ちは複雑である.

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●「考える内視鏡診断」のポイント

・咽頭癌のハイリスク症例に対しては系統的な内視鏡観察が重要である.

・口腔底や輪状後部など観察しづらい部位があることを熟知し,発声させたりValsalva法を行ったりするなどの工夫をするべきである.

・白色光観察では扁平隆起性病変や色調変化のみの病変が多く,陥凹性病変は少ない.

・画像強調内視鏡(IEE)を用いて,brownish areaを見つけることが咽頭癌の早期発見には重要である.

・IEE拡大観察でIPCLの構造や配列,血管密度に着目することで癌か非癌かを鑑別可能である.また,日本食道学会分類を利用して咽頭癌の深達度診断も可能である.

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●「考える内視鏡診断」のポイント

・まずは問診でESCCの危険度を推察する.飲酒時の顔面紅潮と喫煙歴がポイントである.

・ガスコン®水で食道をよく洗ってから観察する.

・NBIでBAの発見に努める.

・いきなり拡大観察せず,白色光で凹凸,色調変化を観察する.

・空気量を調整し,縦走ひだや畳み目模様を観察する.

・NBI拡大観察でJES Type B血管が認められた場合はESCCと診断が可能である.

・基底層型癌が疑われる場合は,内視鏡のみでの診断は難しいため,生検を併用する.

・ヨードの撒布では,空気量を調整し縦走ひだや畳目模様を観察する.

・ヨードの影響で,表在癌が基底層型癌へ変化することがあるため,ESD直前に撒布することが望ましい.

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●「考える内視鏡診断」のポイント

・食道扁平上皮癌の内視鏡診断では,治療方針選択につながる深達度診断が最も重要である.

・深達度診断において,まずは通常観察で食道を十分伸展させ肉眼型を決定する.

・次に送気を調整しつつ,病変の硬さや緊満感などを評価する.ヨード染色による畳目模様も有用である.

・NBI拡大観察では,JES分類を用いて血管評価を行う.

・通常観察とNBI拡大観察において,深達度診断に乖離を認めた場合は,積極的にEUSを行い最終決定する.

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●「考える内視鏡診断」のポイント

・食道表在癌の治療方針を決定するためには,拾い上げ診断,範囲診断,深達度診断が重要である.範囲診断にはNBI観察,ヨード染色が有用である.深達度診断には,通常観察,拡大観察,さらにEUSを行い診断する.

・特殊型食道癌は頻度が極めて少なく,まずは食道扁平上皮癌の典型的な拾い上げ,診断を行い,その特徴に合致しない病変に特殊型を疑うという診断体系が肝要である.

・特殊型食道癌を疑う通常内視鏡像として,隆起を主体とし,上皮下発育を呈する場合が多いこと,特徴的な色調・表面性状を呈する病変が多いことが挙げられる.

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●「考える内視鏡診断」のポイント

・本邦ではSSBEに伴うBarrett食道癌が多いので,食道胃接合部(EGJ)を深吸気下で注意深く観察する.

・表在型Barrett食道癌のほとんどは発赤調を呈していることから,まずBarrett食道粘膜内の発赤部位に着目する.

・表在型Barrett食道癌の多くが0〜3時方向(前壁から右壁方向)に認められることから,この部位の粘膜面の変化に特に注意する.

・病変を0〜3時方向に認めた場合,他部位にも病変がないかしっかりと観察する意識を持つことで多発病変を指摘できる.

・酢酸撒布にて発赤がより明瞭となり,拾い上げ診断や範囲診断に有用なことがある.

・NBI,BLIなど画像強調内視鏡(IEE)による拡大観察が質的診断および範囲診断に有用であり,胃癌の診断に準じ表面構造と血管構造を詳細に観察する.

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●「考える内視鏡診断」のポイント

・スクリーニング検査時に,良性腫瘍に関する予備知識があれば,腫瘍発見時の対応,適切な方法での組織採取が行える.

・内視鏡検査にて隆起性病変を認めた場合は,存在部位,形態,表面性状,色調,硬さ,透光性,可動性,大きさ,個数,びらんや潰瘍形成の有無などを観察し,必要があればEUSの所見も加え,質的診断を行う.

・最終的には,病理組織学的な診断が必要であるが,上皮が滑って生検しにくい場合は,ボーリング生検あるいはEUS-FNABにて,腫瘍本体を採取する.特に,2cmを超える腫瘍では良悪性の鑑別が必要である.

・画像だけでは診断できないGIST,平滑筋腫,神経鞘腫の鑑別には,c-kit・desmin・S-100蛋白の3種類の免疫組織化学的検査が必要である.

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●「考える内視鏡診断」のポイント

1.早期胃癌の内視鏡診断のステップには,①存在診断(detection),②質的診断(characterization),③術前診断(preoperative diagnosis)がある.

2.それぞれのステップには,①技術,②知識,③経験が必要である.

3.さまざまなモダリティを臨床応用するためには,診断法の有用性に加えて限界となる病変について理解しておくことが肝要である.

4.限界例を考慮した明快なストラテジーに沿った診療clinical practiceを実践することが,医師が“考える内視鏡診断”である.

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●「考える内視鏡診断」のポイント

・通常内視鏡観察は,遠景から徐々に近接し,接線・垂直方向など複数の方向から撮影する.

・胃全体の背景粘膜を理解し,病変周囲粘膜の萎縮・化生の状態を把握し,質的診断の一助とする.

・組織型診断は通常/拡大内視鏡所見を総合して診断し,拡大観察時は真の表面構造の有無を大切にする.

・範囲診断は,通常/拡大観察ともに病変から離れたところから観察し,目立つ変化だけに気を取られすぎないようにする.

・深達度診断は,肉眼形態,病変径,病変の立ち上がりの所見を大切にする.

・内視鏡切除標本作製は見るべき断面が適切に出るように内視鏡医がなるべく切り出しを行う.

・診断した症例の組織を振り返り,日々フィードバックを得るようにする.

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●「考える内視鏡診断」のポイント

・H. pylori未感染胃では部位と腺領域ごとに好発する腫瘍の形態と組織型にそれぞれ特徴がある.

・胃底腺領域,特に噴門部近傍や胃体部大彎には胃型形質を有する低異型度(超高分化型)腺癌が好発する.

・胃型低異型度腺癌のうち胃底腺型胃癌は多くが粘膜下腫瘤様の形態を呈し,表層の血管拡張や腺窩上皮過形成,黒色点など随伴所見が診断に有用である.

・腺窩上皮型癌成分を有する胃型低異型度腺癌は,主に褪色調で表面乳頭状から微細分葉状の隆起型を呈する.

・生検診断は時に難しい.病理医との十分な情報共有が必須である.

・胃底腺幽門腺境界領域の印環細胞癌は褪色調平坦型で,白色光で全周を死角なく観察する.特に小彎から後壁側は要注意.

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●「考える内視鏡診断」のポイント

・SMT様の隆起性病変の診断では,まず大きさ,表面の弧の形状,隆起の立ち上がりの性状から主座を推測する.さらに,病変の部位,個数,隆起の形状,陥凹の有無と性状に着目し鑑別診断を行う.

・EUSでは,病変の局在(非腫瘍胃壁構造との連続性),辺縁性状,内部エコー像を観察する.

・NETは発赤や陥凹など上皮に変化を伴うことが多く,大きなものは不整形で陥凹を伴うことが多い.黄色調,表面に血管拡張を伴うことがある.EUSで第2層に連続する低エコー腫瘤として観察される.

・GISTは球形で丈が高く,頂部に深い円形の潰瘍を伴うことがある.第4層に連続する低エコー腫瘤として観察される.

・転移性胃癌は多発し,丈が低く陥凹を伴うことが多い.

・組織診断のため,狙撃生検やボーリング生検,EUS-FNAを試み,診断困難であれば内視鏡的切除も考慮する.

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●「考える内視鏡診断」のポイント

通常観察では

・多彩な内視鏡像が同時に観察される.

・非上皮性腫瘍としての性質(粘膜下腫瘍様)が観察され,蚕食像はなく,硬さが目立たない.

拡大内視鏡観察では

・腫瘍浸潤により腺管構造が破壊された無構造領域や異常血管が観察される.

・間質の細胞浸潤により窩間が引き延ばされ,腺管の膨化所見がみられることがある.

・前述の特徴を捉え,狙撃生検を行うことで,診断能は向上する.

・治療後に腺管構造や上皮下毛細血管の回復が観察され,治療後評価にも有用である.

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●「考える内視鏡診断」のポイント

・ポリープの内視鏡診断は,典型例の内視鏡所見と病理組織像を対比して理解しておくことが必要である.

・通常内視鏡観察では発生部位と背景粘膜,肉眼形態と表面性状から診断し,さらに拡大内視鏡観察では腺窩,窩間部などの表面構造の観察を追加し,病理組織学的特徴を推測して診断を行う.

・頻度が高いポリープとしては,萎縮のない胃底腺粘膜でH. pylori未感染者にみられる胃底腺ポリープと,主にH. pylori感染者にみられる過形成性ポリープがある.

・胃ポリープは,発赤調でびらんや過形成性変化を伴うことが多いため,胃過形成性ポリープの内視鏡像と病理組織学的特徴を十分に理解し,若年性ポリープ,炎症性線維性ポリープ,粘膜下異所性胃腺などの典型例との相違点を熟知しておくことが,正確な内視鏡診断に必要である.

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●「考える内視鏡診断」のポイント

・SNADETsの診断では,粘液形質を背景とした胃型・腸型腫瘍に大別されることを熟知しておく.

・通常観察では,脂肪粒を反映した“絨毛の白色化”を観察することで腺腫・早期癌,特に腸型腫瘍を拾い上げることが可能である.

・白色絨毛陽性病変では,腫瘍径,色調,肉眼型,結節の有無,易出血性,絨毛の白色化の分布を観察する.

・白色絨毛陰性の十二指腸球部病変は胃型腫瘍を念頭に置いて観察を行う.

・M-NBI,M-CVを用いたoptical biopsyが望ましいが,拡大内視鏡所見と組織学的異型度や粘液形質の乖離に留意する.

・内視鏡治療を前提とする場合は,安易な生検を避ける.

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●「考える内視鏡診断」のポイント

・十二指腸は部位によって背景粘膜の構造が異なることを認識する.

・隆起表面の大部分が周囲と同様の非腫瘍粘膜に被覆されており,粘膜下腫瘍(SMT)様隆起の形態を呈することを確認する.

・通常観察では,SMT様隆起の辺縁の性状,病変のサイズ,色調,陥凹の有無,陥凹の境界,びらん・潰瘍形成の有無,単発・多発,病変の硬さ・可動性について観察する.

・通常観察において粘膜表面に変化がみられた場合には,拡大内視鏡観察を行い,病変表面の腺管構造と血管構造を観察する.

・超音波内視鏡検査(EUS)では,病変の存在する層,周囲の層構造との連続性,病変の境界,病変内部のエコーレベルや性状について評価する.

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●「考える内視鏡診断」のポイント

・各小腸腫瘍の頻度,好発部位を考慮することが鑑別診断に有用である.

・カプセル内視鏡とバルーン内視鏡の特徴を理解し内視鏡診断を行う.

・単発性か多発性か,色調,表面性状,病変の可動性の有無などを考慮し総合的に診断する.

・確定診断には生検が重要であり,結節や潰瘍辺縁から確実に行う.ただし,血管性病変を疑う場合は,鉗子生検は禁忌である.

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●「考える内視鏡診断」のポイント

・小腸リンパ腫にはさまざまな組織型があり,内視鏡所見により,組織型を類推できる.

・びまん型ではNK/T細胞リンパ腫を考えるが,B細胞性のIPSID(immunoproliferative small intestinal disease)を鑑別する.

・潰瘍型で,動脈瘤亜型や耳介様周堤を伴う例は,びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)やT細胞リンパ腫が多い.

・MLP型は濾胞性リンパ腫やマントル細胞リンパ腫に多いが,MALTリンパ腫でもみられる.

・MLP型で,白色顆粒状小隆起であれば濾胞性リンパ腫,多発腫瘤を伴う例ではマントル細胞リンパ腫を考える.

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●「考える内視鏡診断」のポイント

・粘膜下腫瘍(SMT)様病変の最初の診断において重要な点は,病変のサイズ,立ち上がりの形態から,病変の主座が浅い層にあるか深い層にあるかを推定することにある.

・SMT様病変が上皮あるいは上皮直下の表面構造に変化を及ぼしているか否かを注意深く観察する.変化がある場合には,生検は有用である.

・小腸SMT様病変の色調は,典型例は他の消化管と同様であるが,残存する上皮の厚さ・状態の違いなどにより非典型的な色調を示すこともある.

・狭い管腔である小腸では,中心に潰瘍を有する2型様の病変は時に上皮性腫瘍との鑑別が難しい場合があるが,その際は陥凹境界部の性状や辺縁隆起の形態が重要である.

・GISTの診断は,生検では限界があり,出血リスクも伴うため,EUSを優先すべきである.

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●「考える内視鏡診断」のポイント

・大腸腫瘍性病変の内視鏡診断は通常観察を基本とする.

・病変を発見した際,最初に行うことは上皮性・非上皮性病変の鑑別である.

・上皮性病変の腫瘍・非腫瘍鑑別は通常観察でも病変の色調,表面や辺縁部の性状所見から容易に診断が可能である.

・腫瘍性病変の質的(良悪性)診断は,通常観察のみでは困難な場合があり,NBI併用およびpit pattern拡大観察を用いることが望ましい.

・非上皮性腫瘍を診断する際は病変の部位や色調に加え,EUSが有用である.

・癌の深達度診断においては通常観察で得られた色調,肉眼形態,立ち上がり部分の性状,病変辺縁部の伸展不良所見,それにNBI併用およびpit pattern拡大観察から得られた表面構造の詳細情報を加味すると病変の病理学的成り立ちを想像することができ,より正確な診断が可能となる.

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●「考える内視鏡診断」のポイント

・病変の十分な水洗と粘液除去を行う(その際に腸管洗浄剤もしくは60℃前後のお湯を用いることで粘液が除かれて,視認性が上がる).

・水洗時には病変部からの出血に気をつける(特にSM深部浸潤癌).

・腸管内での送気・脱気を繰り返し,正常周囲粘膜の性状,病変部の伸展性について観察する.

・病変内部での隆起,陥凹の有無について観察する.

・NBI拡大観察で,血管走行と表面構造について観察する.

・NBI拡大観察で異型が強いと考えられる部位のpit pattern観察を行って,最終の術前診断を行う.

・pit pattern観察で治療適応の判断が難しい場合はendocytoscopyにより表層部から観察を行って,腺管の構造異型,細胞異型の観察やEUSによる深達度診断も併用する.

・NET G1では非上皮性腫瘍との鑑別および10mm前後の大きな病変では固有筋層との関係について観察を行う.

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●「考える内視鏡診断」のポイント

・大腸鋸歯状病変は大きくHP,TSA,SSA/P(またはSSL)に分類される.

・HP,TSAは左側結腸に,SSA/Pは右側結腸に存在する傾向がある.

・HPはMVHP,GCHPの2型に亜分類されている.

・TSAは松毬状,枝サンゴ状の隆起型と二段隆起型の2種類の形態がある.

・SSA/P発見のポイントは粘液付着であり,存在を疑った場合は水洗しすぎないようにする.

・SSA/Pの範囲診断にはインジゴカルミン撒布による色素内視鏡観察が有用である.

・SSA/Pに発赤,隆起した領域を認めた場合は,病理組織学的に変化している可能性を考える.

・SSA/Pは癌化する可能性があることを念頭に置き,必要があれば拡大内視鏡で詳細に観察する.

・判断に迷う病変は無理に分類せず,改めて再検討する機会を残しておくことも有用である.

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●「考える内視鏡診断」のポイント

・発生部位(特に虫垂・盲腸,直腸)と病変の単発/多発を考慮する.

・病変の大きさと立ち上がり,粘膜面の評価,EUS所見などから,病変の局在(粘膜固有層,粘膜下層,固有筋層,壁外)を推定する.

・生検鉗子などを用いて硬さ(cushion sign陽性:弾性軟/cushion sign陰性:弾性硬)を評価する.

・特徴的な色調(黄色,黄白色,透明感,暗青色,黒色など)から疾患を推察する.

・表面の性状(平滑,結節状),境界明瞭/境界不明瞭,陥凹/潰瘍/びらんの有無,また腫瘍露出部があれば拡大内視鏡所見により評価する.

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●「考える内視鏡診断」のポイント

・肛門管には多種多様な病変が存在する.

・狭い肛門管は内視鏡検査が困難な部位であり,見落としやすい.

・肛門管病変を疑うためには,内視鏡挿入前の視診や指診が大切である.

・肛門管病変が疑われた場合は,入念に肛門管観察を行う.

・反転像が有用である.ただし,穿孔に注意する.

・生検も併施する.

・内視鏡検査だけでなく,視診,指診そして肛門鏡も適宜行う.肛門鏡検査は下剤不要で,内視鏡検査室に行かなくても外来や病棟でいつでも実施できる.

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●「考える内視鏡診断」のポイント

・消化管に多発するポリープを認める場合,特に若年者ではポリポーシス症候群の可能性を考えるべきである.

・ポリポーシス症候群には腺腫性,過誤腫性や過形成性のポリポーシスなど多数の疾患が含まれていることを知っておくべきである.

・病変部の色調,形態や表面構造などからある程度内視鏡的に鑑別可能である.

・消化管病変の分布を把握すべきである.

・病理組織学的に診断を確認することも大切である.

・消化管外徴候の評価や遺伝子検査も診断の参考になる場合がある.

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●「考える内視鏡診断」のポイント

・ディープラーニングの登場により,AIの画像認識能力は人間を超える領域に入った.

・上部消化管内視鏡のAI診断は,病変の拾い上げ診断,癌と非癌の鑑別である質的診断,深達度診断などの量的診断,解剖学的部位診断,H. pylori感染診断など多岐にわたって研究されている.

・AI診断は,胃がん内視鏡検診のダブルチェックや内視鏡検査中のリアルタイム診断支援にも応用が期待される.

・医療AIの開発には莫大な資金と時間が必要となる.

・医療AIを使用するには薬事承認が必要である.

・AI診断はあくまでも補助診断であり,最終的な診断は医師により行われる.

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●「考える内視鏡診断」のポイント

・大腸内視鏡AIは主に,大腸ポリープ検出・大腸腫瘍の病理組織診断予測・大腸癌の深達度の診断支援・潰瘍性大腸炎の診断支援をターゲットとする.

・CADeによる大腸ポリープ検出についてはex vivoの研究がほとんどであり,前向き研究の報告は少ない.そのため,エビデンスについては議論の余地が残り,慎重な解釈が必要である.

・CADxによる腫瘍鑑別能については,さまざまなモダリティで感度・特異度90%の高い診断能が報告されている.さらにT1b癌の診断についても高い診断能が報告されており,実用化が期待される.

・内視鏡AIを一般臨床で使用するためには,“医療機器”として薬事承認を取得する必要がある.2019年12月時点で,本邦で薬機法承認を受けている大腸内視鏡AIは“EndoBRAIN®”のみである.

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目次

欧文目次

「今月の症例」症例募集

早期胃癌研究会 症例募集

次号予告

編集後記 小澤 俊文
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 現在の高画素内視鏡が日常診療に用いられるようになってから久しく,拡大内視鏡をスクリーニング検査に使用する施設も多くなっている.それにより消化管腫瘍においては生検や切除前の時点で,病理組織学的所見に迫れる内視鏡診断が可能となってきた.通常観察では病変の存在診断や質的診断を行うが,拡大・画像強調などIEE(image enhanced endoscopy)による詳細な表面観察を加味することにより,病理組織像や病態を含む病理組織学的構築を想定することが検査医に求められる時代になりつつある.病変の表面構造からルーペ像を推測する,すなわち“考える内視鏡診断”を習慣づけることが現代の消化器医には必須とも言える.診断名が何かは不明であるが,取りあえず生検しておこうとの姿勢ではいくら症例の経験を経ても診断能向上は望むべくもない.もちろん,経験値を否定する意図は毛頭ない.ところが,“考える内視鏡診断”を推奨し,その思考過程を詳細かつ統一的に記したテキストは決して多くはないのが実状である.

 学会や研究会を通じて多数の症例を経験することは将来遭遇する症例に対峙する際の重要な擬似体験となるが,その診断過程に内視鏡所見から組織構築や病態を説明できるだけの“根拠”が示されなければ応用が利かない.すなわち,未知(未経験)の症例に遭遇した際に疾患名や病態に迫れる術を持ち合わせていないため0か100かの対応にとどまってしまう.診断名が正しいか違っているかは確かに重要ではあるものの,研究会など他者の読影プロセスで最も勉強になり納得がいくのは,“鑑別診断をいくつか挙げつつ根拠をもってそれぞれを除外していく姿勢”ではないかと愚考する.

基本情報

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胃と腸
55巻5号 (2020年5月)
電子版ISSN:1882-1219 印刷版ISSN:0536-2180 医学書院

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