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編集後記
小澤 俊文
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1総合犬山中央病院消化器内科
pp.761
発行日 2020年5月24日
Published Date 2020/5/24
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403202047
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現在の高画素内視鏡が日常診療に用いられるようになってから久しく,拡大内視鏡をスクリーニング検査に使用する施設も多くなっている.それにより消化管腫瘍においては生検や切除前の時点で,病理組織学的所見に迫れる内視鏡診断が可能となってきた.通常観察では病変の存在診断や質的診断を行うが,拡大・画像強調などIEE(image enhanced endoscopy)による詳細な表面観察を加味することにより,病理組織像や病態を含む病理組織学的構築を想定することが検査医に求められる時代になりつつある.病変の表面構造からルーペ像を推測する,すなわち“考える内視鏡診断”を習慣づけることが現代の消化器医には必須とも言える.診断名が何かは不明であるが,取りあえず生検しておこうとの姿勢ではいくら症例の経験を経ても診断能向上は望むべくもない.もちろん,経験値を否定する意図は毛頭ない.ところが,“考える内視鏡診断”を推奨し,その思考過程を詳細かつ統一的に記したテキストは決して多くはないのが実状である.
学会や研究会を通じて多数の症例を経験することは将来遭遇する症例に対峙する際の重要な擬似体験となるが,その診断過程に内視鏡所見から組織構築や病態を説明できるだけの“根拠”が示されなければ応用が利かない.すなわち,未知(未経験)の症例に遭遇した際に疾患名や病態に迫れる術を持ち合わせていないため0か100かの対応にとどまってしまう.診断名が正しいか違っているかは確かに重要ではあるものの,研究会など他者の読影プロセスで最も勉強になり納得がいくのは,“鑑別診断をいくつか挙げつつ根拠をもってそれぞれを除外していく姿勢”ではないかと愚考する.
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