臨床婦人科産科 48巻6号 (1994年6月)

今月の臨床 早期癌—診療ストラテジー

Overview

1.子宮頸癌 塚本 直樹
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 子宮頸癌は,境界病変である軽度異形成,中等度異形成,高度異形成を経て上皮内癌,浸潤癌へと進行してゆくものと考えられている.わが国の子宮頸癌取扱い規約では,異形成は3段階に分類され,癌である上皮内癌とは厳密に区別する立場がとられている1)

 しかし,異形成と上皮内癌は連続性の病変であり,高度異形成と上皮内癌とは生物学的に区別しがたいとの立場から,異形成と上皮内癌を一括して子宮頸部上皮内腫瘍(cervical intraepithelialneoplasia,CIN)とする主張がなされ,欧米ではこのCIN分類が採用されている.CINは3段階に分けられ,CIN lは軽度異形成,CIN 2は中等度異形成,CIN 3は高度異形成・上皮内癌に相当する.

2.子宮体癌 泉 陸一 , 藤村 正樹
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早期癌の発生過程について

 周知のごとく,近年わが国においても体癌の絶対数自体が増加しているとの報告が相次いでおり,とくに若年層(50歳未満)における増加が目立つとされている.リスクファクターとして,年齢,肥満,糖尿病,高血圧,未妊,未産,不妊,外因性エストロゲンなどが知られてきたが,このうち日本では肥満,糖尿病,高血圧などとの関連性を否定する調査結果が得られている.外因性または内因性エストロゲンの発癌への関与は明らかであるが,それが発癌のどの段階に,そしていかなる機序で働いているかについてはいまだ十分な解明はなされていない.

 閉経後婦人に好発する機序について,第一には月経によって内膜がくり返して機械的に剥脱されるという現象が起こらないこと,第二には低レベルであっても黄体ホルモンに拮抗されないエストロゲン(unopposed estrogen)が存在し,それが持続的内膜刺激を引き起こす結果,内膜腺の過形成(腺腫様増殖症)(adenomatous hyperplasia)が発生し,それを発生母地として体癌が発生してくると理解されている.しかし体癌発生のメカニズムを理解するうえできわめて重要な過程である,腺腫様増殖症から体癌に至るプロセスについては,現在いろいろな角度から究明がなされている段階である.

3.卵巣癌 関谷 宗英
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 国際的にみるとわが国の卵巣癌発生率は低率であるが,粗死亡率は44年間に8.8倍増加している1).卵巣癌の特徴は,①無症状で進行する(silent disease),②早期癌の診断法が確立されていない,③組織型がきわめて多彩である,などで,初診時進行癌がわが国では約50%を占めている2).未だ前癌病変も明らかにされておらず3),早期癌の定義も国際的に統一されていない現状である.

子宮頸癌 診断

4.細胞診 和田 順子
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子宮頸部早期癌の特徴

 老人保健法が導入されて以来,子宮頸癌検診は全国的規模でシステム化され,確実に定着し効果をあげている.それはこの検診において発見された癌の60%以上が早期癌であり1),これにより早期治療が行われ,生存率の向上に貢献している事実による.

 日本産科婦人科学会癌検診問題委員会では,子宮頸癌の「一次検診」の手順はまず細胞診を行うが,対象は無症状の健常婦人とすること,細胞診のスクリーニングと診断は細胞検査士と細胞診指導医によること,細胞診の判定は日母クラス分類に従うことを定めている2)

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 子宮頸部早期癌は,今日のレベルをもってすれば細胞診によってきわめて高い確率で診断を推定できる.しかし細胞診が推定診断にとどまる以上,病変の存在部位を指摘し,同部から確定診断用の生検診を誘導するのはコルポスコピーであり,コルポスコピーがUCFのときにはサービコスコピーである.コルポスコピーは,得られた所見の質的,量的解析によりdiagnostic colposcopyとしての地位を築く努力がなされつつある.

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 子宮頸癌の国際臨床進行期分類(FIGO)は,1929年に初めて設定され,1961年の改正で0期は上皮内癌(CIS)と定義されるとともに,I期の細分類(Ia, Ib)が行われ,1970年の改正および1973年の一部修正により,Ia期は組織学的に微小浸潤癌(初期間質内浸潤)が確認されたもの,と定義された.1985年にはIa期をさらに細分類する改正も行われたが,日本産科婦人科学会では,診断基準が不明確で,分類が複雑という理由でこの分類を採用しておらず,1973年の分類が用いられている1)

 臨床的に,CISとIa期を確実に鑑別することは必ずしも容易ではない.治療法も従来に比して差が縮小傾向にあり,その鑑別の重要性は薄れつつある.しかし,Ia期では低率ながらリンパ節転移が見られることを考えると,的確な術前診断を行い,治療に臨む必要がある.ここでは,組織診の立場から早期癌(扁平上皮癌)の鑑別について解説する.

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 conization(cone)は,子宮頸部上皮内新生物(CIN)および初期浸潤癌(early IC)の最終的診断法としてきわめて重要であり,biopsy-cone—hysterectomyの図式で診断と治療が行われてきた.また,coneによってこれらが完全に切除された例では治療法としてよいとされている,最近,初期病変の増加により従来のメスによるcone(cold cone)の診断法としての能力を保ちつつ,改良を加えることにより治療法としてもレベルアップする傾向にある.われわれは1981年よりcone法に治療的な意味合いをもつ接触レーザーを使用している1-4).今回,過去12年間に術前診断がCINおよびMICの1,058例に対しconeを行った中で生じたearly IC(MICとIb“occ”)186例に対象をしぼり,その成績を簡単に紹介すると共に,本題であるIb“occ”の検出頻度や,組織学的背景を含めた術前諸診断上の特徴(予知因子)について述べてみたい.

子宮頸癌 治療

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 子宮頸部早期癌に対する治療の原則は,子宮全摘術であり,子宮温存を目的とした手術を行う場合には,適応と要約をよく考慮すべきである.レーザーコニゼーションは,子宮頸部円錐切除術のひとつであることから,他の方法との差を熟知した上で本法を選択すべきである1)

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 子宮頸部上皮内腫瘍(上皮内癌(CIS)を含める)では,症例を選択して子宮を温存し病巣のみを切除する治療法が期待されている.これまで,このような治療手技としてcold knife coniza—tion,レーザー円錐切除術,高周波円錐切除術などの方法が行われてきたが,最近Loop Electrosur—gical Excision Procedure(以後LEEP)を用いた新しい子宮頸部病巣切除法(以後LEEP Sur—gery)が注目されている.

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 子宮頸癌検診の普及と検診技術の向上に伴い子宮頸癌初期病変の頻度は増加しつつある.日産婦腫瘍委員会報告によれば,1989年の登録子宮頸癌患者数は5,851名に対し,上皮内癌1,852名(31.7%),Ia期946名(16.2%)で初期癌が約半数を占めるに至っている1).愛知県がんセンターでも同様で40〜50%が上皮内癌およびIa期例である.全国的には非登録患者数を考慮すればさらに多いものと推測される.一方,癌年齢の若年化,分娩の高齢化に伴い妊孕性温存治療の必要な症例も増加しつつあり,その対応が臨床上必要不可欠となってきている.このため子宮腟部円錐切除は子宮頸部初期浸潤癌,CIN病変に対し臨床進行期の確定診断(すなわち上皮内癌,Ia期癌,Ib“Occ”期癌のunderないしover treatmentを避け適切な治療法を決定施行する)のみならず,子宮温存療法としても施行される機会が増加してきている.実際,上皮内癌,Ia期の24%に治療的円錐切除が行われている(表1).また妊娠中に円錐切除を必要とする機会も増加しつつある.

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 一般に子宮頸癌に対する根治術式は広汎子宮全摘出術(以下,広汎全摘と略)であるが,早期癌であるIa期癌に対しては合併症や後遺症の軽減のために切除範囲を縮小する術式が試みられてきた.わが教室においてはその試みの過程で,拡大単純子宮全摘出術(以下,拡大全摘と略)と骨盤リンパ節郭清術を導入し,広汎全摘に比較して手術侵襲の軽減や術後膀胱機能の回復に良好な成績を得てきた1).ここでいう拡大全摘とは準広汎子宮全摘出術(以下,準広汎全摘と略)と同義であり,日産婦子宮癌登録委員会でその呼称が準広汎全摘に統一されて以後は当教室でも拡大全摘の呼称は用いなくなっている.この術式の意図は,担癌部分である子宮頸部をぎりぎりに切除せず基靱帯に1〜2cmの余裕をもって切除を行うという点と,文献的に多いとされる腟断端再発を予防するために腟壁切除部分を約1cmとる点の2点にあった.骨盤リンパ節郭清術については転移頻度検索の目的で行われてきた.この術式の導入は,まだIa期癌の診断基準そのものが明らかでなかった時期に縮小手術を試みた点で大きな意義があった.

 しかし1978年12月に日産婦子宮癌登録委員会によりIa期診断基準が提示されてからは,それに該当する症例に対しては原則として単純子宮全摘出術を行っており2)現在までに再発例を1例も経験していない.

12.準広汎全摘 工藤 隆一
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 準広汎性子宮全摘出術(準広汎全摘)は早期癌の手術として根治手術のOver treatmentを回避し,かつ完治することを目的とした手術術式として考えだされた.本術式の適応については,最近議論の多いところである.この手術の必要性についての考え方は,治療の目的に対するphilosophyとも関係する事項であることから,このことについては本稿では議論することは紙面の関係で避けたい.次に準広汎全摘の定義であるが,一般には膀胱子宮靱帯に操作を加え,尿管を剥離し腟壁と子宮頸部周囲組織を若干切除する術式とされている.このような観点から以下手術の適応と術式の概要について述べる.

子宮体癌 診断

13.内膜細胞診 蔵本 博行
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内膜細胞診の適応

 子宮内膜細胞診は,今や子宮体癌の診断手段として,まず最初に行ってみるべき検査法であるといっても過言ではあるまい.体癌の95%はなにがしかの出血を伴っているところから,不正子宮出血を訴える場合には,たとえ少量のものでも,40歳以上の年齢であればまず実施したい.

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 子宮体癌(体癌)の診断では,婦人科における画像やマーカーによる診断法が急速に進歩した今日でも,こと早期癌に対しては細胞ないしは組織の形態学的方法に依らざるを得ない.なかでも子宮体部(体部)はその臓器特異性がゆえに,とくに内膜でホルモンとの関連で細胞所見よりむしろ組織所見に重点をおく場合が少なくない.

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 子宮体癌の発生頻度は,十数年前全子宮癌の数%を占めるにすぎなかったが,近年,急増しており,1992年,当院では26%にまで達し,欧米とほぼ同程度にまでなっている.その予後は,早期であっても筋層内浸潤度と相関していることが知られており,傍大動脈リンパ節郭清や手術術式の選択など治療法を決定する上で筋層内浸潤度の診断は重要である.この目的で超音波断層法,CT,MRIが用いられているが,なかでもMRI所見が最も精度が高く,子宮体癌症例に対しては必須の検査項日になっている.そこで本稿では,それぞれの検査特性と所見を中心に述べる.

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 子宮内膜増殖症(endometrial hyperplasia)は子宮内膜の過剰増殖をいい,子宮体癌取扱い規約では腺の形態や異型の程度により嚢胞性腺増殖症(cystic glandular hyperplasia),腺腫性増殖症(adenomatous hyperplasia),異型増殖症(atypical hyperplasia)に分類されている1).一方,International Society of GynecologicalPathologistの分類では(表1)のように2),細胞異型(atypia)の有無により内膜増殖症(en—dometrial hyperplasia)と異型内膜増殖症(atypical endometrial hyperplasia),組織構築により単純性(simple)と複雑性(complex)増殖症に分けている.単純性増殖症は主に嚢胞性腺増殖症が該当し,複雑性増殖症は腺成分がさらに密に増殖を示し,“back to back”の像も呈し,腺腫性増殖症が含まれる.そして子宮内膜増殖症を単純性から複雑性へ,細胞異型のないものから伴うものへと連続性のある病変として取り扱っている.

子宮体癌 治療

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 本邦において,子宮体癌は明らかな増加を示し,それに伴い異型増殖症の診断とその取扱いは重要な課題となってきた.しかしながら,組織学的に内膜上皮内癌と異型増殖症の鑑別は困難であり,内膜癌におけるいわゆる初期病変の定義については明確でない.また,異型増殖症の取扱いに関しては必ずしも一定の見解が得られていない.内膜増殖症の取扱いに関する全国83機関のアンケート調査の結果1)では,異型増殖症の取扱い方法は経過観察36%,ホルモン療法35%,手術療法29%であり,ほぼ三等分されている.したがって,十分な病態把握の下に異型増殖症の適切な取扱い法が確立されることが望まれる.

 本稿では,異型増殖症の診断および内膜癌との関連とともに,当教室におけるその取扱いについて概説する.

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 子宮体癌の治療は,原則として手術療法すなわち子宮摘出術が第一選択であるが,妊孕能の温存を強く希望する若年症例に対しては,子宮を温存する治療法が望まれることがある.若年者の体癌発症の危険因子として,排卵障害を伴う不妊とホルモン環境の異常が挙げられ,とくに多嚢胞卵巣(PCO)を合併している症例が高率にみられる1).PCOによる無排卵により,子宮内膜はエストロゲンの刺激に長期間曝露され,内膜増殖症を経て癌化すると考えられる.このような若年体癌では,高分化型腺癌であることが多く,プロゲストーゲンに対する反応性が高い.

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 子宮体癌の新しい進行期別分類(FIGO,1988)に,摘出子宮の病理組織所見の組織分化度と筋層浸潤の深さ,骨盤と労大動脈リンパ節所見が導入されたことは,これらが,子宮体癌の予後因子として重要であることを示している.したがって,体癌の治療は摘出物の病理組織所見より予後因子を分析し,それに基づいて,進行度別の個別的治療を手術,放射線治療,癌化学療法を組み合わせて行うのが原則となる.

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 1988年に改訂されたFIGOの子宮体癌臨床期別分類(以下新分類)では,骨盤(および/または腹大動脈)リンパ節に転移が認められた症例はIIIC(またはIV)期に属することになる.われわれの成績では,IIIC期症例はI-II期症例と比較して,またIII期の中でも,IIIA期症例と比較して有意に予後が悪く1),リンパ節転移は重要な予後因子のひとつと考えられるが,リンパ節転移の有無を術前に診断することは必ずしも容易ではない.

 今回は早期癌の特集であるので,リンパ節郭清の必要性と共に,郭清を省略しうる可能性についても言及したい.

卵巣癌 診断

21.画像診断 田中 善章
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卵巣早期癌診断法としての画像診断

 卵巣癌において,その予後決定因子のなかで最も重要なものは臨床進行期であり,その予後改善のためには早期診断による早期治療が必要である.画像診断法としては超音波,CT,MRIがあるが,早期診断のための腫瘍スクリーニング法としては診断時間や簡便性またそのコストパフォーマンスという点で最近注目されているのが経腟法による超音波診断であり,集団検診にも応用されている1).よって本項では主として超音波診断について述べるが,最近ではパルスドプラー法による血流測定も応用され,悪性腫瘍においては腫瘍内neovascularizationの証明や卵巣動脈pulsatilityindexの低下がみられるとの報告2)があり,また超音波経腹・経腟法,カラードプラー法,腫瘍マーカー(CA125)測定コンビネーションによるスクリーニング3)なども推奨されている.

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 卵巣癌は,発生臓器が解剖学的に非直達的位置に存在し,しかも無症候性に進行するものが多いことから,臨床的悪性度や死亡率がきわめて高く,その早期診断法やスクリーニング法の開発が望まれている.

 卵巣癌の診断法としては,超音波断層法やCT・MRIなどの画像診断や腫瘍マーカーが有用であるが,卵巣癌の絶対数が10,000人に2〜3人と少ないことから,スクリーニングに画像診断を行うことは時間的,経済的にも大変であり,内診や腫瘍マーカーなどによる高危険群の絞り込みが早期癌の発見効率を向上させる上からも必要と思われる.しかしながら従来用いられてきた卵巣癌に対する腫瘍マーカーの測定法では,早期癌(I期)での陽性率が低く,しかも偽陽性などの問題もあり1),必ずしも早期診断法として適しているとは言えなかった.そこで本稿では,これらの問題点を考慮に入れ,腫瘍マーカーを卵巣癌のスクリーニングや早期診断に応用するために我々が試みているいくつかの工夫について述べる.

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 卵巣癌は,患者が何らかの主訴で自ら病院を訪れる頃にはすでに進行癌である場合が多く,その早期発見のためには,診断効率の高いスクリーニング法に基づいた検診体制の確立が急務であるとされている.卵巣癌のスクリーニング法としては,複数の腫瘍マーカーの組み合わせや,各種画像診断による検診などさまざまな方法が試みられているが,腹腔鏡を卵巣癌スクリーニングの手段として用いるには,コスト,患者への侵襲などから考えても妥当な方法ではない.ここでは,いかなる場合に腹腔鏡が早期卵巣癌の診断において重要な役割を演ずるのかを考えてみたい.

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 婦人科悪性腫瘍の進展度診断および予後判断において,術中腹水細胞診は今日不可欠のものとなっている.中でも,卵巣癌においては,生存曲線に及ぼす影響が,子宮頸癌,子宮体癌に比して大きく,その臨床的有用性は高い1).本稿では,卵巣癌における,術中腹水細胞診の有益性を検討すると共に,当科で施行している腹腔内リザーバーを用いた卵巣癌のfollow upを併せて紹介する.

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 悪性卵巣腫瘍治療の基本は根治術(内性器全摘,大網切除,傍大動脈・骨盤リンパ節郭清および可及的腫瘍摘出)とそれに引き続く周期的化学療法であり,早期癌であってもこれが原則であろう1).しかしながら,reproductive ageにある悪性(および境界悪性)卵巣腫瘍患者の場合,個体保存だけではなく種族保存の観点に立った取扱い,すなわち,妊孕性を保ちつつ根治性を損なわない治療法(保存手術)が求められることがある,この場合の要点を,①保存手術を行うための必要条件,②保存手術時の実際と留意点③化学療法の卵巣機能に与える影響,の3点にしぼり概説する.

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 生活様式の欧米化に伴い,内膜癌はわが国でも発生の増加が危惧されている子宮悪性腫瘍である.子宮頸癌と比較して,進展形式や組織型など予後因子に関しての理解もまだ十分とは言えない,先に行われた日本産科婦人科学会総会でも(東京,1994年),従来までの術前ステージング法を組織成熟度や後腹膜リンパ節所見,腹腔内細胞診まで加味したsurgical stagingへと変更する案が提示されている.こうした点を踏まえて子宮内膜癌の術後摘出標本の取り扱いについて,当院において経験した症例を中心にして解説する.

Q&A

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Q 糖尿病合併妊娠(糖尿病妊娠)では羊水量が多い症例があり,正常羊水量でも胎児が安全と言えないと思うのですが,糖尿病妊娠の胎児管理試験は何を行うのが良いのでしょうか? (徳島市YT生)

 A 現在,分娩前胎児管理試験として,羊水量測定(amniotic fluid index:AFI使用)とnonstress test(NST)の組み合わせ(Modified biophysical profile:MBP)が,最も簡単で信頼度の高い検査方法と考えられています.当院の統計でも,1987年9月から1993年12月までに5,917回のMBPを行い,この間4例の分娩前胎児死亡(5,821分娩中)がありましたが,分娩前胎児管理試験施行前に胎児死亡に至った3例を除くと,MBPの結果は正常だったにもかかわらずその後に子宮内胎児死亡に至った例(falsenegative)は1例であることからも,MBPの信頼度の高さが明らかです.

産婦人科クリニカルテクニック ワンポイントレッスン

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 単純子宮全摘術時の尿管損傷はそう多くみられるものではないが,骨盤内に高度の癒着があったり,出血が多く子宮傍結合織の集束縫合や結紮をくり返す様な場合に,尿管損傷を心配しながら手術を進めることが少なくない.一般的に尿管の損傷は子宮傍結合織の集束切断,結紮するときに起こり易い.これは子宮周囲の癒着などで子宮の挙上が十分でなく,尿管が少しも下方に移動しないまま子宮傍結合織を切断することになることによって起こる.子宮が十分挙上できればその後の手術操作は極めて容易になることはすでに多くの方々が経験されるところである.子宮を最も強固に骨盤に固定しているものは仙骨子宮靱帯であるのでこの切断が本法のキーポイントになる.

産婦人科クリニカルテクニック ワンポイントレッスン—私のノウハウ

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 子宮卵管造影法(HSG)は,卵管疎通性の検索など,不妊症において,多くの情報を得られる確立された検査方法である.しかしながら,しばしば間質部での筋のspasmあるいは微小血栓などにより,実際には通過性があるにもかかわらず卵管閉塞と診断される場合がある.卵管閉塞の診断がつくと(特に両側性の場合),腹腔鏡を行ったり,治療を目的とした通気あるいは通水が行われるが,腹腔鏡は侵襲的検査あるいは治療法であり,通気・通水は閉塞症例に対してその診断的,治療的信頼性が低い.これに対し,今回紹介する子宮鏡を用いた選択的卵管通水法は外来で行うことのできる簡便な方法で,かつ,一般的な通水法に比べ信頼性が高く,さらにHSGにて卵管閉塞と診断された症例に対する治療効果も認められる有用な方法である.

 筆者は,フレキシブル・ヒステロファイバースコープ(オリンパスtype HYF-P)を用いて選択的通水を行っている.これは,ファイバー部分の全長25cm,外径3.6mmでチャンネルの内径1.2mmである.チャンネル入口部に卵管内人工授精(HIT)用に開発した三方活栓とゴム栓付きカテーテル(PR−22 SV-D,オリンパス)を装着し,チャンネル内に導入する.このカテーテルの先端には5mmと10mmの目盛りが付いており,卵管口への挿入深度の目安となる.子宮腔内観察のためCO2灌流を行う.

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 私はもともと,教室の主任教授の岡田先生の指導でエストロゲン,プロゲストーゲンの合成・代謝について研究を行っていたのですが,1979年岡田先生のこ推挙で米国のバッファロー医学財団研究所に留学し,アロマターゼの世界的な権威である大沢由男博士の指導を受け,性腺外組織におけるアロマターゼの免疫・生化学的な研究に着手したのが,今日行っています仕事のはじまりです.

 その後大学に戻り同様な仕事を続けていますが,当時は基礎・臨床両分野を合わせても,わが国で数人程度しかいなかったアロマターゼの研究者も最近では随分と数も増え,アロマターゼという言葉も概念も浸透してきた感があります.今ではスルファターゼの研究も合わせて行っていますが,近年増加傾向が指摘されていますエストロゲン依存性の乳癌や内膜癌に高いアロマターゼ活性やスルファターゼ活性が認められるのは大変興味深いものです.

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 細菌性腟症患者(176名)の臨床症状について調査した.対象は妊婦,IUD挿入者を除外した症例で,10歳代後半から60歳代までほぼ均等に発症していた.細菌性腟症(Bacterial vaginosis,以下BVと略)の3大症状は,帯下の増加44.3%(78/176),下腹痛34.1%(60/176),不正腟出血21.6%(38/176)であり,以下帯下の悪臭10.8%(19/176),外陰異常感8.0%(14/176)であった.また,まったく臨床症状を示さないBV患者も18.2%(32/176)存在した.BV患者にみられる合併感染症としてモビルンカス感染が19.6%(33/168),クラミジア感染が13.8%(21/152),トリコモナス感染が10.2%(18/176)にみられた.BVの治療に関して,フラジール500mg/日,7日間投与を1クールとすると,1クールで69.4%(68/98),2クールまでには80.6%(79/98)が治癒した.また,IUD挿入者における細菌性腟症罹患率は40.6%(13/32)であった.

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 産婦人科における腹腔鏡下手術は,卵巣嚢腫,子宮筋腫,子宮外妊娠,不妊症などを対象に次第に広がりつつある.腹腔鏡下手術では出血の防止と確実な止血が開腹手術以上に必要とされる.最近,腹腔鏡下手術用に開発された超音波切開・凝固装置HARMONIC SCALPELを用いて,卵巣嚢腫,卵管・卵巣・腸管癒着症,子宮筋腫などを対象に腹腔鏡下手術を行い,これまで使用してきた鋏,電気メス,レーザーと比較してその有用性を検討した.HARMONIC SCALPELは,切開能力に勝れ,熱や電流による副損傷がなく,発煙が少なく視野が確保できるなどの特徴をもっていた.HAR—MONIC SCALPELは卵巣チョコレート嚢胞核出術,子宮内膜症や術後の癒着剥離術,子宮筋腫核出術など比較的難度の高い手術においても,その有用性が認められた.

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 循環障害が病態の本質である動脈硬化,狭心症,心筋梗塞,脳血栓症,妊娠中毒症などではPGI2・TXA2陰陽バランスが乱れ,TXA2優位への偏移が病態形成の一因と考えられている.TXA2合成阻害剤は選択的にTXA2の合成を阻害してPGI2・TXA2陰陽バランスをPGI2優位に改善できるため,前述した諸疾患の治療に有効と考えられ臨床応用されている.内科領域では,心筋梗塞発症早期の梗塞巣の縮小化や気管支喘息の気道過敏性の抑制に有効であった.脳外科領域では,脳血栓症における虚血時の血小板凝集,血管収縮を抑制し,循環障害の軽減に有効であった.産婦人科領域では,妊娠中毒症の治療,予防目的に投与され,とくに子防効果は優れており,低用量アスピリン療法の無効例に対しても有効であった.副作用は長期持続点滴による静脈炎以外は見られず,母児双方に対して安全な薬剤と考えられる.

基本情報

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臨床婦人科産科
48巻6号 (1994年6月)
電子版ISSN:1882-1294 印刷版ISSN:0386-9865 医学書院

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